創世日祭典・ストーリー・メインクエスト1-16
メインクエスト
わからず屋
納豆と梅酒は祭典を歩いて、とある射撃の名手を発見した。ただちょっとわからず屋な感じ
1神からのプレゼント
創世日ー光耀大陸
空には光り輝く星たち、地上は色鮮やかな明かりにライトアップされている。今宵の光耀大陸は観光客で賑わっている。
梅酒が祭典の入場口で目を輝かせながらその時を待つ。会場の歓声は熱気を帯びていた。
梅酒「さすがは創世日を祝う祭典。賑やかですね!納豆……納豆?」
呼びかけに返事はなく、不思議に思った梅酒が振り返るとそこには何やら何かを呟きながら記録を取っている納豆の姿があった。
納豆「「創世日」それはティアラ最大の祝日。各国が交代で祝い……祭典の期間中はいかなる理由であっても戦闘行為は禁じられ……皆が揃って神の恩恵に感謝する日……」
梅酒はそんな納豆の真面目な姿を見て、笑みを浮かべながら首を振りつつも納豆の襟を持って行列の進みに合わせて、ゆっくりと前進していく。
この時、白と黒の服を着たふたりの青年が梅酒の注意を引いた。彼らは何やら言い合いをしている。
ワンタン「はあ……せっかく山を降りて遊びに来たのに、ずっとこの調子では。こんなに行列ができるのを知っていたら早めに来るんだった。」
亀苓膏「朝起こしに行った時にもその考えがあったなら……」
ワンタン「そうだなぁ……今から昼寝をしてくるから、入場する頃また呼んでくれ。今度はすぐに起きるから。」
亀苓膏「なんて理不尽な……。」
ワンタン「はは、冗談だよ。正直に言うと、今年の参加者がこんなに多いとは思わなかったんだ。みんな、神君の贈り物目当てかな?」
納豆「あの!すみません、「神君の贈り物」とはなんですか?」
梅酒が気付いた時には、既にそこに納豆はいなかった。いつの間にか筆を置き、白黒のふたりに質問を投げかけていた。
ワンタン「地元の人ではないようだ。祭典に参加するのは初めてかな?」
納豆「はい。僕たちは桜の島から来たんです。」
ワンタン「そうか。君は知らないだろうが、毎回祭典のときは、神君様が豪華な贈り物を気に入った者に贈るんだ。」
ワンタン「前回は一口飲めば寿命が延びると言われていた神酒だ。ですが今年は別格で、神君の願いだってさ。」
納豆「願い?」
ワンタン「ああ。花火大会の前にこの祭典で最も神君を楽しませた者の願いを一つ叶えてくれるとか。」
納豆「えぇー!?」
ワンタン「どう?創造しただけでも楽しみにならないかな?」
納豆「うん!」
納豆は大きく頷き、再び筆をとる。
納豆「この情報は知りませんでした!記録しておかなくては!」
ワンタン「え??」
ワンタン「はは、君はなかなか面白いね。」
納豆「うん!すぐ記録しちゃうね。」
納豆「ありがとうございます!」
ワンタン「どういたしまして。そういえば、この祭典で屋台の景品に珍しい書籍や記録本もあるようだ……君がもし興味があるようでしたら気に留めておくと良いかもね。思わぬ収穫があるかもしれない。」
話を聞いた納豆が、目を輝かせた。
ワンタン「では、またの機会に。」
梅酒「仙人様のようなふたりでした……納豆、私たちも行きましょう。お好み焼きも待ってます。」
納豆「うん、今すぐ……」
2授業参観
祭典会場はお祭り一色である。見渡すと、各国のグルメが並び、観光客も国それぞれの独特な服装に身を包んでおり、至る所から楽し気な笑い声が聞こえてきた。
梅酒「はぁ、お好み焼きは一体どこに……?入り口で待っていると言っていたのに。」
納豆「僕たちが来るのが遅かったから、もう遊びに行っちゃったのでは……、」
梅酒「そうかもしれませんね……申し訳ない、本当に遊び好きで……ほんとは今日ふたりを会わせたかったのですが。」
納豆「大丈夫です。もしかしたらどこかで会うかもしれませんし、梅酒はどこか行きたいところはありますか?」
梅酒「そうですね……特にはないので、さっきの君が言っていた書物が手に入るイベントを探してみますか?」
納豆「それはいいですね!」
納豆は目を輝かせて、すっと巻物を取り出して何かを確認する。
納豆「私たちに一番近いのは射的ですね。」
梅酒「おお……いつのまに屋台の記録まで?」
梅酒「す、すごい。一体どうやって……」
納豆「簡単ですよ、道行く人の話を記録していただけですから。」
梅酒「でもこんなに広い会場だと性格な位置がわかりませんね?」
納豆「北側です。」
梅酒「え……ええ??いつの間にか会場の地図も記録したんですか?」
そして、すぐに目的地である射的場に着いた。
梅酒「景品の書籍はどこでしょう……?あ、ありました!まだチャンスがありますよ!」
梅酒は飛び跳ねながら、人混みの奥の屋台を覗き、書籍が残っていることを嬉しそうに報告する。しかしそんな時人混みから笑いが起きる。
梅酒「うん?何があったんでしょうか?」
梅酒は頑張って納豆を連れて人混みの中を進む。なんとか前に出てから人混みから納豆を引っこ抜く。
納豆は人混みに揉まれて乱れた格好を整え、頭の面を正す。
そしてふたりは息を荒げながら前を見るーー
ひとりの華やかな服装をした男性が少女の後ろに立っている。男性は銃を構える少女の体を支え、とても親密な様子だった。
シャンパン「体が硬いな、力を抜け。」
フォンダントケーキ「わ、わかってますよ……!手を離してください!」
周りの笑い声を聞いて、シャンパンに抱きかかえられたような体制で耳を赤らめていたフォンダントケーキは急いでシャンパンから距離をとる。
シャンパンはそんな彼女を見て一歩下がり、ため息をついてどこか納得いかない様子。
シャンパン「ああ、好きにするといい。俺のサポートがなかったから、と後で泣いても知らないがな。」
シャンパンは不満げに腕を組んでそっぽを向く。
フォンダントケーキはそんな若い国王のことは気にせず、自分の胸をポンポンと叩いて自分を落ち着かせる。
フォンダントケーキ(落ち着いて、落ち着くの!たかがゲーム!狙いを定めて、引き金を引くだけ、難しくなんてない。大丈夫、大丈夫よ!)
彼女が狙いを定めたのを見て、周りも静かになる。
3伝説な酒天童子
パンー
銃声が鳴り響き、フォンダントケーキは音に少し驚きながら、ゆっくりつぶっていた片目を開ける。目に映ったのは傷一つない的の風船だった。
フォンダントケーキは肩を落とす。だがそんな彼女の後ろであざ笑うかの様な表情を浮かべるシャンパンを見た彼女は頬を膨らます。
シャンパン「ふんーーー駄目だな。」
フォンダントケーキ「お前は……。」
シャンパン「なんだ、失敗したら恥ずかしくなったか?こっちに来い。」
フォンダントケーキ「な、なに?ねぇ……」
シャンパンは何も言わず、彼女の手を掴み引き寄せる。
シャンパン「手、銃、目、ここは一直線。距離から計算した弾道から風船の少し下方をねらうんだ。引き金を引く時は息を止め、手元を安定させる。そう、こんな風にーー」
シャンパンがフォンダントケーキの手を支えて引き金を引く、すると先ほどまで膨らんでいた風船が音を立てて破裂した。
周りの観衆から喝采が起きる。
フォンダントケーキ「わあ……当たった……ねぇ、シャンパン当たったわ!」
シャンパン「そこで休んでいたらいい。射的なんて面倒なことは俺に任せておけ。どの景品が欲しい?全部取ってやる。」
シャンパンはフォンダントケーキの手元から銃を取り、金を店主に渡す。彼女の返事も待たずに、狙いすましたように、近いものから遠いものまで次々と風船を割っていく。
フォンダントケーキ「……」
店主「いい腕だ!景品は好きなものを持っていくといい!」
納豆「わわっ、欲しかった景品の本が取られてしまう……!」
一方、シャンパンは得意げな様子で景品の山をフォンダントケーキの前に置く。
シャンパン「どれがいい?好きなものを選べ。」
フォンダントケーキ「……店主さん。私が最初に割った風船の景品はなんです?」
店主「ああ……お嬢さん、あれは一番近い風船だから末等の祭典のお面ですよ?」
フォンダントケーキ「それでいいの。ありがとう、店主さん。」
フォンダントケーキはそう言うと景品を持ってそのまま立ち去る。
シャンパン「うん?」
シャンパンは何かおかしいと思い、立ち去ろうとするフォンダントケーキの腕を掴む。
シャンパン「怒っているのか?何故だ?」
フォンダントケーキ「離してください、陛下。」
シャンパン「俺に命令するのか?」
フォンダントケーキ「今日は創世日、身分は関係ないですよね?」
シャンパン「お前は……」
ふたりが言い争いを始めたその時ーー空が黒い影が覆った。それと同時に、フォンダントケーキは堕神の気配を察する。その影はフォンダントケーキに襲いかかる。
フォンダントケーキは一瞬宙に浮かされたが、気付いた時にはシャンパンの後ろにいた。
酒呑童子「手に入れたぞ。」
梅酒「堕神!」
納豆「あれは酒呑童子。記録で見たことがあります。光耀大陸の堕神です。お酒を持って歩きするのを好み、人間への攻撃性はそれほど高くないとありましたが、その通りだったようですね……。」
周りの人々はあちこちに逃げ回るが、酒呑童子に攻撃の意思はなく、ただあたりをふらついて立ち去った。
シャンパン「大丈夫か?」
フォンダントケーキ「はい。でも……祭典のお面を取られてしまいました。」
シャンパン「なに?いい度胸だ。」
シャンパンは酒呑童子の立ち去った方を睨み、自身の銃を構える。
4シューティングも人の機嫌を取るのも難しい
酒呑童子「わかったよ、返すよ……。」
酒呑童子はシャンパンの銃弾をなんとか交わしたが、シャンパンの銃さばきの前に結局逃げ場を失った。そして悔しそうにお面を宙に放り投げて、酒を抱えて一目散に逃げ去った。
フォンダントケーキ「陛下、お面が取り戻せたならいいです。今日は創世日、見逃しましょう。」
シャンパン「その甘さはどこへ行っても変わらないな。」
シャンパンはどこか納得のいかない様子だったが、ここは言うことを素直に聞くことにした。
お面は宙で放物線を描きながらちょうど梅酒のところに落ちた。梅酒は慌ててそれを受け止めた時にはシャンパンがすでに梅酒の背後に立っていた。
梅酒「ど、どうぞ……」
シャンパン「ありがとう。」
シャンパンはお面を受け取ると、眉を顰めながらではあったがフォンダントケーキに渡した。
シャンパン「機嫌が直ったようだな。だが、どうしてこんなおかしなお面を気に入っている?」
フォンダントケーキ「……私はこれが好きなんです!いいじゃないですか!」
フォンダントケーキの顔色が再び悪くなり、お面を受け取るや否やその場を立ち去ろうとする。
梅酒(すごい、的確に地雷を踏んでる……)
シャンパン「何故また怒ったんだ?」
シャンパンは困惑した表情であたりを見るが、誰もその疑問には答えようとはしなかった。
シャンパン(仕方がない。こうなったら何かプレゼントを与えて、機嫌を直してもらうか)
シャンパンは先ほど積まれていた景品の中から大きなクマの人形を引っ張り出し、それを持ってフォンダントケーキの立ち去った方へ向かう。
シャンパン「待て。俺の許可なく先に行くな……」
梅酒「ああ……ここで騒ぎにならなくてよかった。」
納豆「あぁ……本を持っていかれなくてよかった。」
店主「はは、そこのお友達も射的に挑戦したいのか?」
納豆「うん!」
納豆「うん!」
しばらくしてーー
納豆「シャンパンさんがさっき言っていたことは記録済み……なのにどうして当たらないんだろう……?」
店主「ああ……このゲームはそんなに真面目にやらなくてもいいよ?頑張っているようだし、なんならお面をプレゼントしようか?」
納豆「ありがとうございます。でも僕が欲しいのは本なんです。」
店主「ああ、なるほど。ならこうしてはどうかな?東市に行ってみるといい。あそこには本を景品にしているところがいっぱいあるよ。」
梅酒「東市?確かおでんのお店もそこにあったような。もしかしたらそこでお好み焼きにも会えるかも!納豆、そっちへ行ってみない?」
納豆「うん。それもいいですね。」
梅酒はお面のお礼を言う。少し物欲しそうな納豆を引っ張って東市の方へと向かった。だが東市付近について間も無く、どこかおかしいように感じた。
梅酒「納豆、地図は間違ってないよね?どうしてここには人がひとりもいないんだろう?」
納豆「おかしいなぁ……見てください、屋台はまだやっているのに店主さんもお客さんもいません。」
梅酒「ホントだ……ここで一体何が?」
ゼリッチへの愛の為
ゼリッチの愛を取り戻すのだ。ファンミーティングに誤って入った彼は人生最大の災難?
5はぐれた「家族」
そんな時、遠くの方で叫び声が聞こえてくる。
梅酒「うん?何の声?」
納豆「声のする方角……記録によれば大舞台があったはずです。」
納豆は何かに気付いたかのように屋台の一つに歩み寄ると、そこにはペンライトが置いてあった。
納豆「どういうことか、わかったかもしれません。」
梅酒「うん?」
自分の考えを確かめるように納豆はペンライトの明かりをつける。梅酒も真似してつけると、それは緑色に光った。
オムライス「ゼリッチ~!お待たせしました~小生がすぐにまいりますよ~!」
納豆が何かを話そうとする前に、突然ふたりの前に颯爽と現れた人影に納豆と梅酒は驚く。そのまま通りすぎるかと思いきや遠くで止まったかと思うとその人影は再び戻ってきた。
オムライス「あ!こんなところにもはぐれた同士が!ゼリッチのライブはもう始まってしまうというのにどうしてこんなところで?」
梅酒「え??」
オムライス「承知です!あなたたちもきっと小生と同様、ゼリッチの曲を聴きながら歩いていたら道に迷ったんでございますね!?」
梅酒「あの……私たちは……」
オムライス「ええ、説明などいりませんとも!ゼリッチファンクラブ会長のオムライスと申します!さあ、ともにゼリッチの応援に行きましょう!」
梅酒「ちょ、ちょっと待ってください……」
6ファンの言葉
舞台上ライトアップは済んでおり、舞台前にはペンライトを持ち、まるで軍隊のように隊列を組む人々が立っており、それぞれ整列番号を叫んでいる。
オムライス「ゼリッチ―!いつまでも貴方と共にー!」
オムライス「甘くて可愛い僕らの女神ー♪心を射抜いてー♪」
オムライス「ゼリッチ愛してるー!!」
オムライスの勢いのまま集団に連れ込まれた納豆と梅酒は、周りの目を気にして、見よう見まねでペンライトを振った。
納豆「ゼリッチ……今ティアラで最も人気のあるアイドル、グルイラオ出身、デビューから歌に舞台に活躍。「ひとり百変化」の称号を持っていて、ファンの名前「ゼリッチファンズ」、応援カラーは緑。」
納豆「これは僕がグルイラオで以前記録したもの。さっきのところに誰もいなかったのは、多分ライブがあったからでしょう。」
オムライス「おぉ!どうやら君達は一般のファンだったみたいですね!まだゼリッチへの愛が足りないですぞ!?さささ、私がゼリッチの良さを一から教えましょう!」
ふたりの話を聞いていたオムライスは納豆の肩をぐっと引き寄せ、ゼリッチについて語り始める。
一方納豆も嫌がる素振りはなく、すぐに巻物を取り出し記録を始めた。
オムライス「……今晩のライブは聞くところによるとかなり準備に凝っているみたいで、サプライズまで用意してあるらしいんです!目が離せないですよこれは!」
オムライス「そうです!もう一つ注意事項でございます!」
納豆「??」
オムライスは納豆と組んだ肩を外し、颯爽と集団の前へ出て叫んだ。
オムライス「皆の者!間も無くライブの時間でございます!我らがゼリッチを神君様のお気に入りにすべく!もう一度約束ごとを復唱しましょう!」
ゼリッチのファン「おおお~!」
オムライス「一つ!ライブ開始時は練習通りペンライトを用いて「ゼリー」の文字を描いて応援ーー」
ゼリッチのファン「おおお~!」
オムライス「二つ!規定ラインより前へは出ず、決してゼリッチに迷惑をかけない!」
ゼリッチのファン「おおお~!」
オムライス「三つ!ライブ中は大声厳禁!決して周りの観客がゼリッチの音楽を楽しむのを妨げてはならない!」
ゼリッチのファン「おおお~!」
オムライス「小生らでゼリッチに最高の応援を!」
ゼリッチのファン「ゼリッチに、最高の応援を~!!!」
梅酒「わあ!オムライスが好きなアイドルに対する愛情がひしひしと伝わってきますね。」
梅酒「一体どんなアイドルさんなんだろう?こんなにたくさんの人を熱狂させるなんて。あれ?納豆、何を記録してるの?」
納豆「ファン語録……これも興味深い時代の記録ですから、記録しないと。」
梅酒が納豆の言葉に感慨深くなっている時、周りがざわつき始めた。皆興奮と期待を隠せないようで暗くなった舞台を見つめている。
梅酒「ほら!きたきた!」
7愛を取り戻せ!
部隊のライトが再びつき、舞台の中央に照明が集まる。小さな人影がその光の下から現れた。彼女は小さく下をむいて、ツインテールが音楽に合わせて揺れていた。
そして……ピアノの音とともに少女は顔を上げ、明るい笑顔を見せる。彼女が踊り始めると周りの歓声が激しくなる。
ファンA「わああー!神子が踊ってる!」
ファンB「わああー!ゼリッチに会えるなんて夢じゃないよな!?」
ファンC「わああー!ゼリッチ!愛してるよ!」
止まない歓声、ゼリーは華麗に舞いながら観客に手を振る。
ゼリー「ティアラの起源、世界誕生の日……今夜、ゼリッチがみんなに会いに来たよ~!みんな~!こんばんは!!」
まるで夢から覚めるかのように舞台下から大きな歓声が沸き起こる。皆がゼリーの名を呼び、ペンライトで空を緑色に染め上げる。
ゼリー「今日は来てくれてありがとう!みんなに会えて嬉しいよ~!」
ゼリー「今日みんなに会えたことは世界最高のプレゼントだよ!」
オムライス「甘くて可愛い僕らの女神ー心を射抜いてーゼリッチ!愛してる!!!」
応援の中ゼリーは甘い微笑みを見せ、自身の腰にかけていたお面を取り、軽く口づけをする。
ゼリー「今日は創世の祭典……応援、本当にありがとう!」
ゼリー「祭典のお面には世界中の感謝と祝福が込められてるの。今、このお面をみんなにプレゼントするね!みんなの願いが叶いますように!」
澄み切った声がマイクを通して広がる。ゼリーの手から離れたお面は宙に美しい弧を描いた。
会場の熱気が一気に上がり、誰もが手を挙げ、そのお面が自分の手元へ渡ることを期待している。
しかし、そのお面が観客の元へ渡る前にまたしても見覚えのある影がそのお面を空中で奪い去った。
酒呑童子「今度こそ手に入れた。」
梅酒「あ……あれって……酒呑童子?」
その瞬間、会場は一瞬静けさに包まれた。
オムライス「あああ!!!!ゼリッチファンの皆さん!!!ゼリッチからの愛を取り返すのでございます!!!」
大きな声が前方で響いたかと思うと、納豆や梅酒が反応する前にオムライスはファンの皆を引き連れて酒呑童子に向かっていった。
8絶対試さないで!
酒呑童子がファンの人々に袋叩きにされる様子を見て納豆と梅酒は思わず唾を飲む。
梅酒「こんな状況だけど、少し酒呑童子に同情するよ……」
納豆「うん……。」
お好み焼き「ふん!何を同情することがあるのさ!ライブに割って入るなんて、自らやられにきたようなものじゃない。」
お好み焼き「ハァイ!梅酒~!調子はどう?今日のアタシのコーデ舞台上のゼリッチにも負けてへんやろ?」
梅酒「お好み焼きらしい……それより……どうして急に現れたの?」
お好み焼き「アンタらが来るのが遅いから先にまわってたんよ。そんでライブの事を聞いて見にきたんやけどな、まさかこんなに面白いなんてなぁ!」
梅酒「うん、確かにライブは面白いね……。」
その一方でオムライスたちは颯爽と酒呑童子を懲らしめて、お面を取り返した。
そしてすぐさま自分たちの位置に戻りゼリッチとともに歌い始める。
何事もなかったかのような会場を見て、三人はようやく落ち着きを取り戻す。
納豆はすぐさま巻物を取り出し真剣にこう書き記した。「ティアラでの御法度:ライブ中のファンへの妨害行為。」
お好み焼き「ぷはははー!熱心に記録取って可愛いねぇ!アンタ、納豆やな?」
納豆「うん?」
お好み焼き「アタシはお好み焼き!梅酒の友達や!よろしゅうな。」
お好み焼き「はは、ごめんな?一緒にまわろうって約束したのに、我慢できんとひとりで先に行っちゃって。」
納豆「い、いえ、僕たちが遅れたわけですから。」
納豆の人見知りな一面はお好み焼きを喜ばせたようで、彼女は梅酒と納豆の肩に手を回した。
お好み焼き「他のとこも見に行こ?こないにおっきな祭典やし、まだ見てへん場所もめっちゃあんで!」
お好み焼き「そういえばさっき美味しいたこ焼きを見つけたんよ!お詫びにアタシが奢るから食べに行こうや!」
お好み焼きの出番?!
ミスコン大会にショッピング女子はメインだ! 美味しい料理を食べた後お好み焼きは会場に駆けつけて、現場は……?
9美味!
お好み焼きは納豆と梅酒を連れて人混みを抜け、グルメ街道へやってきた。
お好み焼き「こっちこっち!おいで!」
梅酒「見渡す限り美味しそうなものがいっぱい……目が回りそう。」
お好み焼き「あ、そうやな。でもあそこの味は食べ飽きちゃったから、今日は新しいものを食べましょ!」
お好み焼き「ほら!あそこがそうやで!」
話していると、香ばしい香りが漂って来る。
少女は慣れた手つきでたこ焼きを器に移し、目にも留まらぬ速さで包む。熱々の美食と甘い笑顔が届けられ、お客は揃って目の前で屈託のない笑顔を見せる少女に親指を立てた。
たこ焼き「あんさんか!いらっしゃい!ティアラ風味ミックスでええか?」
納豆「大丈夫です。」
お好み焼き「なら問題ないで!」
たこ焼き「はいよ!ティアラ風ミックス三人分!」
10母の味
たこ焼き「出来立てやから、気ぃつけや!」
納豆はたこ焼きの笑顔に見とれながらもたこ焼きのいっぱい入った箱を受け取る。
納豆「ありがとうございます。いただきましょう。」
納豆は慎重に一口かじる。すると、次の瞬間には目を見開いていた。
納豆「美味しい!」
梅酒「旅を始めて以来、久しぶりに桜の島味のたこ焼きを食べたよ。」
お好み焼き「どうや!アタシのオススメは間違いないやろ?」
梅酒と納豆は口いっぱいにたこ焼きを詰めながら、ただただ頷いた。
お好み焼き「うふふ、ふたりともハムスターみたいで可愛いなぁ!ゆっくり食べや、アタシの分もあげるし~!」
完全に「ハムスター」と化した納豆と梅酒はお好み焼きの話も聞かずにひたすら食べ続けた。
お好み焼きはしばらくふたりを微笑みながら眺めていたが、しばらくすると祭典をまわりたい衝動が込み上げてきた。
彼女はあちこち見渡し、前方に人だかりができているのを見つける。
お好み焼き「なぁ、店主はん!あっちに人が集まっとるけど何ぞあるのん?」
11とっておきの番組
お好み焼きは人だかりを見つけて、興味本位にたこ焼きに尋ねる。
お好み焼き「ミスコン大会?」
お好み焼き「それならアタシの独壇場やな!アタシが出ないわけにはあかんで!」
お好み焼き「はやくはやく!梅酒、納豆、食べながら行くで~!」
般若「き……き……き……」
お好み焼き「え?誰なん?邪魔しないで、急いでるんよ!」
たこ焼き「あかん!般若や!堕神やから気を付けて!」
お好み焼き「ええ?また堕神?」
般若「き……き……き……」
お好み焼き「ああもう、わかったわ!邪魔をするなら容赦しないで!」
12ショッピング少女は忙しい
般若「あうう~!」
急に現れた般若はお好み焼きに懲らしめられ逃げ去った。
それでも後を追おうとするお好み焼きをようやくたこ焼きを食べ終えた梅酒が落ち着かせる。
梅酒「落ち着いて、急いでるんじゃなかったの?」
お好み焼き「ふん、今回は見逃したる!」
納豆は横で静かに筆を握る。
納豆「「ティアラでの御法度:ミスコン大会に向かっている女性の道を遮る」」
たこ焼きに別れを告げた後、三人は急いで大会会場へと向かった。
お好み焼き「くっそー!」
堕神との戦闘によって、三人が到着した頃には舞台前の席はすでに隙間が全くないほどに埋め尽くされていた。
参加登録も終わっており、見やすい席も取れず、お好み焼きは唇を噛む。
梅酒「まあまあ……あなたは私たちの中では常に一番綺麗だから。参加してもしなくてもそれは変わらないよ。」
お好み焼き「ふん……」
納豆「うん?」
納豆「ああ!般若の情報を知りたいんですね?少し待ってくださいね。」
梅酒「……はぁ、そうじゃないってば。」
納豆「あ、あった。あれ、おかしいですね。」
お好み焼き「なにがおかしいんや?」
予想外にお好み焼きが食いついた。彼女は納豆の巻物が気になるようだった。
納豆「言い伝えでは、般若は桜の島で誕生した堕神です。蛇君の眷属として普段は行動を共にしているのですが……単独行動はしないはずなのに、それがどうして光耀大陸に?」
梅酒「そう考えると、酒呑童子も同じような状況ね。」
梅酒「おかしいね、本来堕神の眷属として共に行動するはずが、どうして単独行動で祭典に?私たちを攻撃して来るし……何か陰謀があるんじゃ……」
お好み焼き「もう、考えてもしゃあないんちゃう?また何かあれば捕まえて聞き出せばええよ。その前に……」
お好み焼き「次のイベントに行くで~!ほら、早く早く!」
梅酒「え?もう機嫌治ったの?」
お好み焼き「ただでさえ時間が足りへんし、いつまでもイライラしてられんわ!ささ、次行くで~!」
グルメの殺傷力
その日まで納豆は知らなかった。料理でも堕神を撃退するなんて。
13勇敢な少年
三人がミスコン大会会場を後にして、祭典をまわってると突然どこからか鼻をつくような辛い匂いを嗅ぎ三人とも咽せる。
前方には舞台があり、舞台には何人もの選手がテーブルにつき、何かをひたすら食べていた。
彼らの前に置かれていたのは熱々の肉まんだったが、どうしてか食べている人たちは皆涙を流しながら苦しそうにな表情をしている。
麻婆豆腐「大食い選手権の選手枠は残りひとりになりました。まだ参加したい方はいますか?」
麻婆豆腐「もし激辛肉まんを誰よりも多く食べることができたら、食事代タダと、この古書がもらえますよ!」
お好み焼き「げ、激辛肉まん!?こわっ!早よ行くで!」
お好み焼きがそそくさと先を行こうと納豆の手を引こうとした時、納豆はまるで足に釘が刺さったかのように止まっていた。
納豆「珍しい……書籍……!」
お好み焼き「んん?納豆落ち着きや、すっごい辛そうやで!!??」
納豆「参加します!!」
麻婆豆腐「あら、そこの勇敢な少年が手を挙げてくれました!最後の挑戦者に拍手!!」
お好み焼き「あちゃぁ~、ダメだわ、止められなかったわぁ。」
14狙いはチャンピオン
舞台の上での大食い大会は熾烈を極めた。
舞台下ではお好み焼きが手で顔を覆っている。
お好み焼き「梅酒、梅酒?どうや?納豆は倒れたりしてへんか?」
梅酒「うん……まだ大丈夫そう……。」
--五分経過。
お好み焼き「梅酒、梅酒?どうや?納豆は血を吐いたりしてへんか?」
梅酒「うん……多分……まだ大丈夫かな……?」
--更に五分経過。
お好み焼き「梅酒、梅酒?今はどうや?お医者さん呼んだ方がええかいな?」
梅酒「必要なさそうですね……。」
お好み焼きはようやく自身の顔を覆っていた手をどけてゆっくりと舞台上を見る。
大会会場では皆少し食べただけで水をひたすら飲み、ある者は突然倒れてそのまま運ばれて行った。
他のものとは違い、表情一つ変えずに肉まんを頬張る。それはまるで味のない饅頭を食べているようだった。
梅酒「納豆ったらすごいです……!あんなに辛いものを顔色一つ変えずに、汗もかかずに食べちゃうなんて!」
お好み焼き「……すごいわぁ!」
すぐに、納豆以外の選手が次々に棄権していった。
麻婆豆腐「おおー今年の優勝者が決まったみたいです!」
麻婆豆腐「ただ、まだ時間はあります。果たしてこの少年は過去の記録を破って新記録を叩き出せるんでしょうか?」
一方麻婆豆腐は真剣に食べた数を数える。この時誰も気付いていなかった。もくもくと肉まんを食べる納豆を何者かが影から見ていた事を。
15愚者
麻婆豆腐「終了ー!!優勝おめでとう。同時に新記録達成です!」
麻婆豆腐「名前をお聞きしてもいいですか?」
納豆「……他には?」
麻婆豆腐「どうやら名前は言いづらいようですね。大丈夫大丈夫、なら優勝した感想をお願いできるかな?」
納豆「……。」
麻婆豆腐「あちゃ~……。」
麻婆豆腐「どうやらチャンピオンは秘密主義のようですね!大丈夫大丈夫、これが景品よ!」
納豆は黙ったまま景品の本を受け取り、観客へ軽くお辞儀をする。そして歓声の中、ゆっくりと舞台を降りようとしていた。
麻婆豆腐「最終ラウンドの景品も無くなりました。今季の大食い大会これにて終了。皆さんのご来場ありがとうございます~って、え!?」
その時、一本の触手が納豆の足元に現れ、危うく納豆を転がしかけた。
だが納豆の反応も早く、咄嗟に本を懐に抱えて触手をかわし、眉を顰めながら突然現れた堕神を見る。
暴食「うう~!腹が減った……みんなと一緒、タダで肉まんをいっぱい食べたい!!」
麻婆豆腐「暴食?」
麻婆豆腐「え?ははは、何が食べたいって?」
暴食「わ、笑うな!私を……見るなぁ!」
梅酒「そうだね。」
麻婆豆腐「いいよいいよ、食べたいのでしょ?ほら、あげる!」
16絶対試さないで!その二
麻婆豆腐はまるで子犬に餌をやるかのように激辛肉まんを手渡し、暴食はそれを疑いもせずに口へ放った。
暴食「……(もぐもぐもぐ)」
暴食「……(もぐもぐ)」
暴食「……(もぐ)」
暴食「……(……。)」
まるでゼンマイのおもちゃのように、暴食の動きが次第にゆっくりとなり、最後には動かなくなった。
数秒後、涙と悲鳴が同時に溢れ出す。
暴食「うわあああ、この悪魔めっ!!!」
暴食は涙ながらに麻婆豆腐を触手で攻撃しようとするが、あまりの辛さで触手が絡まっていた。
麻婆豆腐「はは、自分で言ってたでしょ、食べたいって?」
暴食「わざとだな!束になって騙すなんて……!」
麻婆豆腐「いつ束になったって言うの?」
暴食「ならなんであいつはあんなに食べても平気なんだ!!!すごい美味しそうに食べてたし!!」
納豆「……ぼぐのごどでずか?(僕の事ですか?)」
暴食「??」
暴食「ううううこの嘘つき~まさかその無垢な表情に騙されてたなんて~」
暴食は絡まった触手を抱えてそのまま逃げ去った。
納豆「……?」
お好み焼き「さっき喋らなかったのって、辛さで舌が腫れ上がってたからなんやな?ぷっはははは~!」
納豆「うう……。」
麻婆豆腐「そんなに辛かった?もう少し唐辛子を入れてもいいかなって思ってたんだけど。」
麻婆豆腐が下顎をさすりながら発した言葉に、周りにいたものたちは皆思わず振り返って麻婆豆腐を見る。
納豆は舌を痺れさせながらも、また筆をとる……
「ティアラでの御法度:決して女性から手渡された食べ物を安易に食べてはならない、それが一見ただの肉まんであっても。」
麻婆豆腐「うわ、もうこんな時間!?この後まだ用事があるんだった。早く片付けないと……」
麻婆豆腐「チャンピオンさん、ほら、特製ののど飴!食べたらスッキリするよ!景品は大事にしてね!貴重な本だから!」
納豆は感動し、頷く。そして、手を振って麻婆豆腐に別れを告げた。
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