創世日祭典・ストーリー・サブヒレイナ学園祭
ヒレイナ学園祭
1-1解けない謎
ティアラのアート界で有名な画家であるホットドッグ――その性別は謎であった。
真実を追求しようと、ホットドッグの周りには、いつも芸能記者が張り付いている。
ティアラ創世の祝典に遊びにきたホットドッグの元に、スカウトマンが声をかけてきた。
ホットドッグ「……ミスコン大会?」
スカウトマン「はい、貴方はスタイルが良く、歩くビーナスと呼ばれています。ミスコンに参加したら、きっと優勝できますよ。」
ホットドッグ「ありがと。そんな風に褒められると、ドキドキしちゃうわね~。」
スカウトマン「是非参加してください!」
ホットドッグ「ええ、いいわよ。参加できるならしてみようかしら?」
スカウトマン「ありがとうございます! 今年のミスコンは、あなたのような参加者がいて、さぞかし盛り上がるでしょう!」
スカウトマン「では、参加登録カードの記載をお願いします。」
ホットドッグ「わかったわ。」
ホットドッグはサラサラと登録カードに内容を記載していく。
スカウトマン「……ええ? えええ!? えええええ!! ハハハハハハハァ……!?」
その日を境に、スカウトマンはホットドッグの秘密を探るのをやめた。彼が何を見たかは誰も知らない――
1-2気をつけて!
たこ焼き「いらっしゃいませ! 当店のおすすめは如何ですかー?」
その瞬間、たこ焼きの笑顔が凍り付いた。
ブラッディマリー「おすすめのメニューはなんだい?」
笑顔を忘れてはいけない……たこ焼きは引きつった笑みで目の前の男を見上げた。
たこ焼き「(この人……なんか怖いな)」
ブラッディマリー「いいね、それをもらおうか。」
たこ焼き「は、はい……。(落ち着いて……落ち着くんだ)」
ブラッディマリー「ん? 君、顔色が悪いよ? 大丈夫かい?」
たこ焼き「あー……今日はお祭りだから、お客さんが多っくって、ちょっと疲れちゃって……あはは。」
ブラッディマリー「確かに。こんな賑やかなお祭りは久しぶりだよね。」
ブラッディマリー「そうだ、聞きたいことがあるんだけど……。赤い髪で、頭に二本の角があって……鎧をつけた男を見なかったか?」
たこ焼き「えっと……?」
ブラッディマリー「連れはふたり。尖った耳に、釣り目のいけ好かない男と背が低くてポニーテールに大きなリボンをした女が一緒だ。」
たこ焼き「……すみません、見てないです……。」
たこ焼き「あ、ミックスたこ焼きができました。お待たせしました。」
ブラッディマリー「ああ、ありがとう。じゃあこれ、お代。」
たこ焼き「え!? あ、あの……多いですよ!」
ブラッディマリー「私の探し人――ビーフステーキがここに来たら、そのお金で食べさせてやって。私、ブラッディマリーからのおごりだって言ってね、フフ……。」
たこ焼き「……は、はぁ……?」
たこ焼き「(うっ……! こ、こいつはヤバい奴だ……!)」
1-3オーラ
花火大会がもうすぐ始まる――たこ焼きは店の片づけをしていた。そこに一組の男女が顔を出す。
たこ焼き「あ、すみません! 今日はもう完売しちゃって……!」
豚骨ラーメン「お嬢さん、そこにあるたこ焼きは? 売り物じゃないの?」
女は腕を組んで真っ直ぐにたこ焼きを見つめる。その強いまなざしに、たこ焼きは萎縮してしまう。
たこ焼き「あ、これは取り置きでして……! ごめんなさい……。」
たこ焼き(あいつが『予約』とか抜かすから、もうっ!)
その様子を黙って見ていた男が、溜息混じりに女を止める。
うな丼「豚骨ラーメン、怯えてるだろう。たこ焼きは諦めて他のものを探そう。」
豚骨ラーメン「あぁ? いつ誰が誰を脅したって?」
うな丼「拙者たちがいなくなれば、すべて解決だ。お嬢さん、悪かったな。出直すよ。」
男が強引に女を引っ張っていく。事なきを得て、たこ焼きはホッと胸を撫で下ろした。
1-4つかず離れず
片づけを終えたたこ焼きは、取り置きのたこ焼きを前に眉をひそめていた。
流しそうめん「悪い! 遅くなった!」
たこ焼き「ホントやわ、随分待ったで。」
流しそうめん「聞いたよ、完売しちゃったんだよな? 予約しといて良かったよ。」
たこ焼き「……何か言うことはないんか?」
流しそうめん「言うこと? えっと……んー! たこ焼きのたこ焼きはうまいなー!?」
たこ焼き「……他には?」
流しそうめん「あ、ありがとうございます……かな?」
たこ焼き「ふん! もうええわ。はよ、行き!」
流しそうめん「なんだよ、たこ焼きは花火見ないのか? せっかくだし、一緒に見ようぜ!」
その言葉に、ピタリとたこ焼きは動きを止める。苦い顔で流しそうめんを見上げて言った。
たこ焼き「……なんでウチがあんさんと一緒に花火を見なあかんのや?」
流しそうめん「ああ、いい席を取れたからさ! たこ焼きなら、みんなも歓迎だ!」
たこ焼き「みんな? 誰がいるん?」
流しそうめん「猫まんまと水信玄餅と……うな丼に、他にもいっぱいだ! へへ、みんなで見たらきっと楽しいぜ?」
たこ焼き「……ああ、そういうこと。だったら行くわ……ホント、あんさんは相変わらずやね……まったくもう。」
1-5もうひと皿
赤ワインとビーフステーキは、たこ焼き屋の列を前に立っていた。ジンジャーブレッドはこの列に並ぶ気はないと別の場所で待機している。
ビーフステーキ「おお、良い香りだ! さすが人気のたこ焼き屋だな!」
赤ワイン「この列に並んでまで食べたいとは、お前は変わり者だな。」
ビーフステーキ「無駄口を叩くな。人気店の行列は、当然のことだ。さて、どっちが奢る?」
赤ワイン「……当然お前だろう。そして、俺様はこの行列に並びたくもない。」
ビーフステーキ「私も同じ意見だ。では、勝負だ! じゃけん……!」
赤ワイン「ぽん!」
赤ワイン「……」
ビーフステーキ「ハッ! 貴様の負けだ! さっさと買ってこい!」
赤ワインは悔し気にビーフステーキを睨みつけ、長い列へと向かう。ビーフステーキは近くの椅子に腰を下ろし、キューブのおもちゃで遊びながら、列に並ぶ赤ワインを見守った。それから暫くして――
ビーフステーキ「お、やっと順番が回ってきたか……店長ー! 唐辛子はかけないでくれるか!」
たこ焼き「は、はいっ! ……ん?」
たこ焼きは遠くで手を振っているビーフステーキを見て目を見開いた。
たこ焼き「お待たせしました。お代は二つ分で大丈夫ですよ。」
赤ワイン「うん?」
たこ焼き「あの方の分を既に頂いているので。彼、ビーフステーキさんですよね?」
赤ワイン「……奴の分、いったい誰が払った? まさか――」
たこ焼き「ブラッディ・マリーさんって方ですね。」
たこ焼きはブラッディ・マリーが来たときの話をした。
赤ワイン「なるほど……な。」
たこ焼き「(ふ……このお客様なんか機嫌悪そう。)」
赤ワイン「店長、すまない。」
たこ焼き「え? わっ……!!」
たこ焼きの前で、赤ワインが無表情のまま、たこ焼きの皿をひとつ落とした。
赤ワイン「悪いな、店長、もう一つ作ってくれ。おごりだった分は落ちてしまったのでな。」
たこ焼き「……は、はぁ……?」
すると、その様子を見ていたビーフステーキが大笑いで叫ぶ。
ビーフステーキ「おい、赤ワイン! そんなに手をブルブルさせて老人か? ハハハハハハハ!!!」
赤ワイン「……店長、作り直すたこ焼きは、唐辛子をたっぷりとかけてくれ。翌日まで影響するくらいに、な。」
1-6邪魔するな
創始日の朝。デザート街。
ミルフィーユは朝から普段通りにパステル・デ・ナタのお店に出向き、デザートを全部独り占めしようとしていた。
けれど、今日朝からお店に現れたのは彼だけではなかった。
寿司「こうするの!難しいわね。」
パステル・デ・ナタ「ええ、たくさん練習するといいですよ。」
寿司「あぁ、おはようございます。私は寿司と申します。パステル・デ・ナタにデザートを教わりに来ました。」
ミルフィーユ「へぇ!いいな、私も教わりたいぞ!」
ミルフィーユ「長い知り合いだが、習ったことはない!なぁ、私も入れてくれ!前のあのケーキを教えて欲しい!うまいし見た目もいいし!後で君が暇がなかったら、自分でも作れるじゃん!」
ミルフィーユ「ん?邪魔とは?」
パステル・デ・ナタ「これを学んでどうするつもりだ?」
ミルフィーユ「……。」
寿司「ねぇ、パステル・デ・ナタ、彼、怒っちゃったみたいだけど……大丈夫なの?」
パステル・デ・ナタ「……大丈夫だ。」
1-7最高って言われたい!
パステル・デ・ナタ「今、オーブンからケーキを取り出そう。」
甘い豆花はデザート街で弟の塩辛い豆花へのプレゼントを探している。この時、甘い香りが漂ってきた。彼はパステル・デ・ナタが寿司にケーキを渡すところを見かけた。
甘い豆花「いい香りだね。マスター、このケーキまだあるか?」
寿司「申し訳ない。このケーキは自分で作りました。」
甘い豆花「自分で? 根気があるね。」
刺身「お姉さん! 朝からここで何をしているの?」
寿司「プレゼントだ。創生日おめでとう。」
刺身「うわ……ありがとう! お姉さん最高! 大好き!」
パステル・デ・ナタ「こんにちは、ケーキを作りたいですか? こちらは無料で習うことができますよ。」
塩辛い豆花『お兄さん最高!』
甘い豆花は思わず身震いして、そのシーンを頭から追い出した。
甘い豆花「いやいや、すみません、お邪魔した。」
パステル・デ・ナタは何も言わず、くるりと後ろのオーブンからスポンジ生地を一つ取り出した。何かを思い付いて、彼はしばらくぽかんとしてから、念入りにケーキを飾り始めた。
1-8運命の出会い
ジンジャーブレッドはハッとして辺りを見回した。気づけば、赤ワインとビーフステーキの姿が見えない。
チーズ「あーもう! ピザとカッサータ、どこに行っちゃったのぉ~!?」
ジンジャーブレッド「あ……もしかして、あんたも迷子? 仲間とはぐれちゃった?」
チーズ「うん、もしかしてアンタも?」
ジンジャーブレッド「そうだね。ただ、迷子になったのは私じゃないけどね。」
チーズ「もー! あのふたり!! チーちゃんを置いてった罪、償わせてあげるんだからね……!」
ジンジャーブレッド「え? 何するんだ?」
チーズ「じゃじゃーん! これをあげるの! コチュジャンがたーっぷり詰まってるクッキーよ!!」
ジンジャーブレッド「いいな、それ! 面白そうだ!」
チーズ「ふっふーん! ひとりはすぐに気づくけど、もうひとりは全く気付かなくってすぐに食べちゃうわ! ああ、反応見るのが楽しみ……♪」
ジンジャーブレッド「なぁ、それどこに売ってた?」
チーズ「買ったんじゃなくて作ったのよ。良かったら作り方教えてあげようか?」
ジンジャーブレッド「作るのは面倒だな……ふむ、あたしは別の方法でやりこめることにするよ。」
ジンジャーブレッド「どうやるかって? あはは、簡単だよ。あいつらに会ったら、力いっぱい殴って怒りを晴らしてやるのさ!」
1-9だから邪魔するな
目の前の光景に、ミルフィーユは目を疑った。
暴飲王子が、パステル・デ・ナタに激しく殴られている。ミルフィーユは静かにチョコレートの方へと移動して、腕を突いた。
ミルフィーユ「何があった?」
チョコレート「あれのためかな。」
パステル・デ・ナタの作ったケーキがデザートスタンドの上で、壺に壊されてしまっていた。
ミルフィーユ「……えっ?」
ミルフィーユはすぐわかった。そのケーキは彼が大好きで、今朝、パステル・デ・ナタから作り方を教わろうとしたものだ。
ミルフィーユ「……うむ、変形しちゃつたけど、味は甘いな……。」
ミルフィーユは指でクリームをすくって口に入れ、嬉しそうに笑った。
その声に、パステル・デ・ナタの動きが一瞬止まる。その隙に、暴飲王子は屋根へ飛んで逃げていった。
1-10暫し拝借
コーヒー「これは……いったい……」
コーヒー「倉庫に在庫の整理に行ってきた間に、ここでなにがあった?」
チョコレート「彼に聞くといい。」
パステル・デ・ナタ「……すまない。」
ミルフィーユがパステル・デ・ナタの肩を自分の方へ抱き寄せた。
ミルフィーユ「まあまあ、コーヒー、許してくれたたまえ! 堕神を撃つ時にちょっと場所を拝借しただけだ。だよな?」
パステル・デ・ナタ「……。」
ミルフィーユ「それより――さっき頼んだケーキ、早くもう一個作ってくれないか?」
パステル・デ・ナタ「そんな約束していない。手を離せ、暑い。」
これはサタンカフェでよく見慣れたシーンだ。祝典の出店でも変わらない光景を見られたことにコーヒーは嘆息する。
背を向けて立ち去ろうとしたとき、細い腕が肩に伸びてきた。そして、彼を別の方角へと導いた。
コーヒー「どうした?」
チョコレート「ちょっと付き合ってくれ。」
Discord
御侍様同士で交流しましょう。管理人代理が管理するコミュニティサーバーです
参加する