Gamerch
フードファンタジー攻略wiki

ブルーチーズ・エピソード

最終更新日時 :
1人が閲覧中
最終更新者:ユーザー47835

エピソードまとめへ戻る

ブルーチーズへ戻る

ブルーチーズのエピソード

旅行楽団「幻楽歌劇団」の主席バイオリニスト。

音律に精通して、自然に関する全てを好む。

子どもが一番純粋無垢な存在で、神様の恵みだと思っている。

劇団にいる無垢な歌声を持っているオペラが気になっているが、一番好きなのは団長様。

彼は常に自分の心に従っていて、好きなことがあれば時間と争い、出来る限りそれを自分のものにする。

例えば――好きな気持ちを曲にすること。

それは彼の周りの者からもお墨付きのやり方である。

子どもがとても好きで、子ども達が傷ついたりすることが嫌いなので、亡くなりそうな子どもたちを拉致して、こっそりと子どもたちを自分の「エルフ洞窟」で「育て」ている。

子どもたちが亡くなってしまうと「エルフ洞窟」で子どもたちの生前の容貌を保存する。


Ⅰ.プロローグ

あらゆる不朽の名作のインスピレーションは


二つしかない、


作曲家の承認、と作曲家の不承認。


――ブルーチーズ《冒頭と幻想ロンド》創作談出典。




御侍様、あなたは時間を止めたいと思ったことがありますか?


大切な朝顔は早朝の日差しに照らされて永遠に咲いています。

生まれたばかりの牛は憂いに満ちた瞳を失いません。


また行く宛もなく飛んでいるほこりも、星と同様自分の場所を見つける事ができます。



こんなにも豊かに満ち溢れている渇望が片時も離れる事なく僕の脳裏に現れる、考えるだけで、心身ともに喜びがあふれてたまらないのです。


食霊にとって、人間が言う「夢」は、命の行方や旅の目的地などの心の行方を象徴しているものです。それではブルーチーズがはっきりと教えましょう。


でも、この二つの間には依然として、微細だが根本的な違いがあります。



人間にとって、過ぎ去った青春を嘆き、あの時には二度と戻れないという詩はどうすることもできないとため息をつくだけの内容ですが、僕にとっては、時間を留めることはまだ実現していないとはいえ、いつかは叶えたいとずっと願っている事です。


そうです。ブルーチーズはそうするつもりだし、今もそうしています。


御侍様、理解できないと言わないでください。僕は弦掛けをして、この長い時間が経てば経つほど、より新しくなる心の曲をあなたに捧げます。


すべては僕が生まれたあの場所から始まります。



三百年程前、僕は初めてとある梅雨の季節のある村に召喚されました。正しく言うと、その村の隣です。住民たちがブルーチーズを発酵させて保存する深い岩穴です。


そこに暮らしている住民たちは自分の村を「モラー」と呼んでいます。長い時間をかけ、その住民たちの足跡を探している間、「モラー」という言葉の意味を偶然知りました。それは現地の言葉で「大陸以外の土地で流離」という意味です。


そして、さらに長い時間をかけ、ここに暮らしている住民たちは人間ではなく、ティアラワールドで消えた種族――エルフだったことを知りました。でもそれは後の話です。


あのとき、この土地に生まれたばかりの何も知らないブルーチーズにとって、すべては自然のことでした。あの故郷で生まれた自然感がすべてのことから遮り、自分は小さい世界に浸っていました。生活の境はそのイメージだと思いました。


僕を初めて召喚したジャッキーもそうです。僕は彼女の外見がモラーの他の住民たちと明らかに違っていたのに気にも留めませんでした。



ジャッキーは人間の娘です。僕の長い莫大な記憶の中で、彼女の人間像を三つのイメージに分けました。


最も煌めいていて、多くを占めるのは、彼女が成人になってから、さまざまな色のドレスを着て、舞台でバイオリンを弾いているイメージです。


その中に、一番回想したくない芸術の色に溢れた思いがあって、それは最後に車いすに座ったまま亡くなった彼女です。


残念ながら、亡くなる彼女、または舞台でバイオリンを弾く彼女が、本当の姿ではありません。


真実に一番近いジャッキーのイメージは、彼女が誰にも知られないで平凡に暮らしていた時です。モラーでの、短い少女時代ではあるものの、誰も流離いの日々を知らない時期です。

Ⅱ.雲雀


誰がカナリアを好きで、誰がヨナキウグイスを好きなのか、


僕と何の関係があるのでしょうか?


僕はただ、あの小さな雲雀が翼を震わせる声を聴くだけで、


自由と自然の関係が分かるのです。


――ブルーチーズ《雲雀E交響曲》の後書きより。



ジャッキーは優れたバイオリンの才能を持っていました。


人々が彼女を追悼するとき、皆は決まってその話を最初にします。


僕は、それに文句を言えません。その話題こそが彼女の生涯を代表するものだとは言いたくありませんが、彼女のバイオリンの才能を否定することもできないからです。彼女の演奏を聴いた人々は、その美しい音色に魅了されていました。


彼女の数奇な人生の始まりは、ミドガルのとあるバイオリンの展覧会です。僕は新聞や記者の要約、伝記作家の筆記からその一部を知りました。


ジャッキーは、四歳でバイオリンに一目惚れをしました。


彼女は他人には理解できないほどの才能を持っており、十年後、彼女が十四歳のとき、バイオリンの音色によって彼女の名が人々に知られました。ミドガル大劇場で独奏した演奏家の中で、彼女は最年少の演奏家だったのです。


ですが、彼女に召喚されたばかりのとき、僕はそのことについて知りませんでした。彼女はちょっとした特技を持つ平凡な人だと、そう思っていたのです。


あの時、彼女はモラー人と同じローブを着ており、そのローブがモラー人から頂いたものだと教えてくれませんでした。


毎朝、彼女はモラーのマーケットで演奏をしていました。モラーの住民たちは、彼女のバイオリンの演奏が大好きでした。演奏が終わると、住民たちは彼女に綺麗に咲いた朝顔や甘いチーズ、そして焼きたてのクロワッサンと熱いお茶を贈るのです。


家賃の代わりに、彼女は余った食べ物を大家さんに渡していました。それは毎日繰り返され、変わることはありませんでした。


その頃、ジャッキーはたったの十六歳で、ぼさぼさの赤い短髪でした。しばらく経った頃、彼女がモラーに移り住んでから、自分で髪を切ったことを僕は知りました。


彼女は眉を描かず、左の眉が右側よりも少し短くなっていました。モラーの天気は良好で、あまり暑くはありません。日差しがよく彼女の茶色の瞳に反射していました。


彼女は日差しを浴びながら演奏するのが好きでしたが、ある日、彼女の右手の親指に棘が刺さってしまいました。


僕は、棘を抜いてよく消毒したほうがいいと彼女に言いました。しかし彼女はその棘に愛着が沸いてしまったようで、大切にしていました。


彼女が満足げだったので、僕はそっとしておきました。


モラーにいた頃を思い出すとき、僕はまるで目を閉じ巻貝の音を聴いているかのような感覚を覚えます。海が目の前にあるかのように感じるものの、実際は遠く離れたところにあるんですけれどね。


Ⅲ.放浪者

放浪者は可哀想なのではない。


可哀想なのは、放浪する勇気がないことだ。


――ブルーチーズ《放浪者の歌》創作メモより。



自分がジャッキーと共にどのくらい長くモラーに滞在していたかは分かりませんが、その地を離れたあと、滞在期間についての意見が彼女と食い違うことがありました。


彼女は経った時間が、人間の世界でいうとたったの三ヶ月だと言いました。


僕はもっと長い時間が経っていたと思っていたため、僕たちは議論を交わしました。最後に、彼女はとある演奏会の入場券を見せました。入場券には三ヶ月前の日付がはっきりと記されています。彼女は、その演奏会から逃げたのでした。


証拠がある以上、僕は自分の間違いを認めざるを得ませんでした。


しかしその点について、僕はその後じっくりと考えました。ひょっとしたらモラーは外の世界と時間の流れが違うのかもしれません。ですが僕は、なかなかその証拠を見つけられませんでした。


ジャッキーは、ミドガルでのとある演奏から逃げだしていました。


そのあの演奏は、もともと住民たちのために行われる野外演奏会でした。しかし、あいにくの雨により、とある貴族の「厚意」で、臨時で開催場所が室内へと変更になりました。


貴族が自分のために用意してくれた休憩室に着いたとき、彼女は住民たちが入場できないことを知りました。


「彼らは、今回の入場券をちゃんと持っていますよね?」

ジャッキーは自分のマネージャーにそう詰問しました。

「ええ、そうですね。彼らは今回の演奏会の入場券を持っています」

マネージャーは幼い彼女をなだめました。


「でも、彼らは今、入場していません!」

「今回の演奏がベル公爵の音楽堂で行われる以上、彼らの許可を得る必要があるのです。あなたも知っているでしょう?残念ですが、平民は貴族の領地に入ってはいけないのです」

「そんな屁理屈!彼らは入場券を持っているのよ、それなのに入場できないなんて……?」

ジャッキーは信じられない思いで目を丸くしました。


「私に怒ったところで、どうにもなりませんよ。」

マネージャーはため息をつきました。

「これは私が決めたことではありません。私としては、平民が入場しても構わないと思っているんですよ」

ジャッキーは自分の肩に置かれたマネージャーの手を振り払って、不機嫌そうな顔でソファに座りました。


「ジャッキー、彼らは扉の向こうにいてもあなたの演奏を聴くことができるでしょう?この世界は不公平なんだと認めないといけませんよ。すべての人が、あなたのように才能を持っているわけではないんですから。彼らには昇進できる機会がありません。」


「さあ、早く着替えてください。国王と皇后もいらっしゃるので、今晩の演奏はとても大切なものです。爵位を獲得できるかもしれませんよ。舞台に立ったら、言葉遣いに気をつけてくださいね。」


そしてマネージャーは、休憩室から出ました。それがきっと、彼にとって最も大きな後悔の一つなのでしょう。


もし彼が外で喫煙せずにジャッキーの着替えを待っていれば、出るときにジャッキーのバイオリンを持ち出していれば、油断しなければ、ジャッキーが逃げることはなかったのです。


ジャッキーは、率直な人です。彼女は一つのメモを残しました。


「法律に従い、平民であるジャッキーは今晩の音楽堂に入ることができません。残念に思います。」


ジャッキーはその夜のことを楽しそうに話してくださいました。テンションが上がったのか、彼女はそのままバイオリンを弾き出しました。


ハイヒールを蹴る音、つま先立ちでこっそりと螺旋階段を下りる音、どきどきと鳴る心臓と雷声の笑い声が聞こえたかのような気がしました。


世界中で一斉に雨が降り始めたかのような空模様の中、公爵邸の扉の外には舞台のカーテンが出来ていました。ジャッキーは勇気を出してその雨のカーテンをくぐり、一瞬にして、すべてが変わりました。彼女が振り返ると、そこはもう森でした。目の前にはきらきら輝く星に照らされた洞窟があります。


ミドガルの演奏会なんて、もうどうでもいい。


ジャッキーは洞窟の中に入ることに決めました。



彼女はこの体験を僕に話すたびに、僕にこう誓わせました。彼女は、決してあの時怖がっていなかったと。


僕は毎回、彼女の言う通りにしました。それは自分にとって難しいことではなかったからです。


加えて僕は、宴の席で彼女のご機嫌取りをしたい貴族の男たちの真似をして、大げさな表情で彼女の勇気を褒めたりもしました。彼女はそんな僕を見ては笑い、そしてやめてよねと、嫌がるように僕を叩いたものでした。


僕はそんな時間が大好きでした。なぜかと言うと、その後彼女は突然病にかかり、そのせいで笑顔が少なくなったからです。そしてついに、彼女との別れの時が来ました。


Ⅳ.病と愛

人間というのは悲しいことに、


相手を愛していないとき過ちを犯し、


最後にそれを罪なき愛のせいにするのです。


――ブルーチーズ《愛の喜び・愛の悲しみ》

創作メモより。



ジャッキーの病に、兆候がなかったとは言えません。


彼女が最初にバイオリンの弓を落としたのは、彼女がベランダで練習しているときでした。


そのとき、僕も彼女も気に留めていませんでした。弓は二階に落ち、そのとき写生をしていた若い画家のパレットをひっくり返しました。


その後、そのパレットをひっくり返された若い画家は彼女の夫となりました。



披露宴で、ジャッキーは白いドレスを着て、賓客たちに手土産を配りました。綺麗な箱に入っているのは、手作りのヌガーです。あの時の彼女は、きっとその甘いヌガーと同じくらいに嬉しかったのでしょう。そしてその日に、彼女は二人目の食霊を――ヌガーを、召喚しました。


人々は誰も、この始まりの出来事に裏に、どんな危険が潜んでいたのかなど気づいていませんでした。


彼女がかかった珍しい病には名前がなく、お医者さんにも分かりませんでした。僕とジャッキーは何もすることがなかったある日に、暇つぶしのようにこう名付けました。“時間症”と。



時間に似て、その病は少しずつ体や心を麻痺させていったのです。


病は時間と同じように、少しずつ僕たちの生活を侵略し、硬直させていきました。


不治の病を患えば、誰もが最期には硬直してしまうのです。




病にかかったばかりのときジャッキーの症状は明らかになっていませんでした。聴衆たちは相変わらず彼女の演奏を褒めていましたが、ジャッキーははっきりと気づいていたのです。自分の手が、昔の様に動かなくなっていることを。


ある日、彼女は夫に聞きました。

「このままじゃ、私はバイオリンを弾けなくなるかもしれない。それでもあなたは変わらず私を愛してくれる?」と。


彼女の夫はこう答えました。

「そうなったら君は、もう君じゃなくなるよ。ジャッキー」


ジャッキーの晩年になると、彼は体裁のためにジャッキーとの結婚生活を保っていましたが、もう家には帰らなくなっていました。


写生のために設けられたベランダには人気がなく、バイオリンの楽譜も埃だらけになりました。


ジャッキーは車椅子に座りながら、ベランダから遠くを眺めていました。そして彼女はこう言いました。


ブルーチーズ、私、モラーに帰りたくなっちゃった」


ヌガーはジャッキーの結婚生活に惑いました。


愛情から誕生したはずの彼女には、どうして結婚式で誓いあったあの男性が数年後には憎たらしい存在になったのか、理解できなかったのです。


彼女は僕に聞きました――


「この世界では、愛情はそんなに変わりやすいものなの?人間には、永遠の愛がないの?」


無邪気な妹を前にして、僕はすぐに答えることができませんでした。


「永遠の愛がないわけではないですよ。ただ、愛情も時間症にかかってしまっただけなんです」

僕は考えてから、そう答えました。

「やっぱり、愛情のせいじゃなくて、時間のせいなのね。」


答えを得たヌガーは満足そうにしていました。


しかし、人はどうして時間が犯した罪に対して、当たり前だと思えるのでしょうか?


どうしてこの世界では、すべてのことが結局失われてしまうのでしょうか?


どうして、美しいことは去ってしまうのでしょうか?


悔しいです。



やがて僕は、一つの水晶を取り出しました。

モラーを去る時にいただいたものです。


僕は水晶に一つ目の、そして唯一の願いを唱えました――


モラー、僕の故郷よ。貴方の子、ブルーチーズが困っています。どうかお導きください。


僕は、自分があそこに戻れることを知っていました。そして必ず、時間に打ち勝つ答えを得られるだろうと。


Ⅴ.ブルーチーズ

不思議なティアラワールドにおいて、ブルーチーズの故郷“モラー”もまた、最も不思議な場所の一つだ。


そこは雷雨の日にのみ入り口が現れる場所であり、そこにはティアラワールドの種族――エルフが暮らしている。


ブルーチーズの御侍である十六歳のジャッキーは、そんな空模様の日にこの不思議な世界を発見した。


彼女が偶然通りかかった二つの空間を繋ぐ緑色に輝く洞窟は、モラーの住民たちがブルーチーズを熟成させる場所でもあった。


モラーの言い伝えによると、モラーに住まうとあるエルフ青年がブルーチーズを発明したらしい。


ある日のこと、その青年は牧場にいる父親のためにご飯を送り届けようとしていた。そして青年が麓を通りかかったとき、川のそばで美しい人間の少女が目に映ったのだ。彼は彼女に魅了され、自分がすべきことを忘れたまま、少女の方へと向かっていった。


しかしその少女は自分の方に向かってくる人物を見て驚いたのか、逃げてしまった。青年は彼女を追いかけ、自分の好意を伝えようと声を張ったが、少女は青年の言葉が分からなかった。


そうこうしているうちに、驚いた少女は山腹にある洞窟へと入っていった。青年は外で彼女をずっと待ったあと、驚かさないように、飢えで困らないように、そして好意を表すために、父親に渡すはずだった羊乳のチーズと黒パンをその場に残して、名残惜しそうに去っていった。




それからというもの、青年はちょくちょくその洞窟へと足を運んだが、もう二度と不思議な少女に会うことはなかった。


彼が残したパンとチーズもそのままだ。


数ヶ月後、青年はふと少女のことを思い出し、再び洞窟へと向かった。すると、あのとき洞窟に残したチーズが、洞窟の中の菌によって熟成し、美しい青い模様が浮かび、ピリッと塩辛い特別な味わいのチーズになっていたのだ。




その言い伝えのおかげか、ジャッキーが洞窟を通ってモラーに来て以来、モラーの住民たちは彼女を親切な態度で迎えた。


言葉こそ通じなかったが、そこにいる住民たちは彼女を異世界からの賓客として扱った。

前に現れた少女はモラーに独特な風味を持つブルーチーズを持ってきたが、今回ジャッキーは、彼らが聴いたことのない音楽を持ってきたのだ。


ジャッキーの自由と純粋さを求める気持ちから生まれたブルーチーズは、この地で一番楽しい時間を過ごした。また、彼はモラーのエルフたちから、外の世界とこちらの世界を繋ぐ存在だと思われていた。ジャッキーが自分の世界に戻ることとなったあの日、モラーの住民たちは一つの変わった水晶をブルーチーズに手渡した。


そしてモラーの人たちは、ブルーチーズにこう教えるのだった。“あなたは人間とは異なる存在です。人間と付き合っていく日々の中で、あなたはきっといろんな疑問に出会うでしょう。もし自分の力で解決できないときは、水晶に祈ってみてください。きっとエルフたちからの助けを得られるはずです。


でも、あなたを助けられるのは一度きり。大切に使ってくださいね”


ブルーチーズは、そのことをちゃんと覚えていた。




その一方で、食霊である自分がこの世界で大きく惑うことなどないとも思っていた。


しかし、活力溢れていたはずの少女が――御侍が少しずつ自由と愛を奪われていくさまを目にするや、彼はこの状況を変えようと思ったのだ。


彼は水晶に祈り、とある雷雨の日に、自らの故郷へと帰っていった。


しかし彼の願いを聞くと、モラーのエルフたちは意外にも困った表情を浮かべた。


“秩序ある時の中で暮らせることは、幸せなことです。ブルーチーズ、過去に戻ったところで良くなるはずがないのですよ”


彼らはそう言うと口を噤み、ブルーチーズの肩を軽く叩いた。


「すみません、時間に関わる問題ですから、助けることはできないのです。ですが、私たちもまた、ジャッキーが健やかに長く生きてくれることを願っています。彼女はとても、かわいい子ですから……。これは《闇の森林》の地図です。森にはとても危険かつ、役に立つ植物が存在しています。もしその種を手に入れることができれば、ジャッキーを助けられるはずです」


「闇の森林?それは、どこにあるのですか?」


「世界のどの場所にもありますよ。心から行きたいと思えば、その姿を現わすでしょう。しかしあそこはとてもとても危ないところです。どうかあなたに、幸運がありますように」

「ありがとう」


しかしこの世界は、すべてのことが完璧にいくわけではない。――ブルーチーズがようやくその危ない森から青い種を入手し、家の扉を開けたとき、泣いているヌガーの姿を目にした。


この世界では、すべての場所の時の流れが同じではない。ジャッキーは、ブルーチーズの帰りを待つことができなかったのだ。




ジャッキーはこの世を去り、巨額の遺産がブルーチーズヌガーに渡った。しかし二人とも商売に興味がなかったため、財産をマネージャーに託し、その一部を使ってジャッキー慈善音楽基金を設立した。貧しい子供たちが音楽を習えるように、と。


その後、ブルーチーズヌガーと別れ、ジャッキーのバイオリンを手にミドガルを後にして、一人で流浪の旅を始めた。




彼は世界を周遊し、世界中にある素晴らしいことたちをバイオリンの曲として記録していった。それは、舞台と病に縛られた人生を送ったジャッキーへの手向け花でもあった。自分では認めたくなかったが、長い旅の中で、彼の中にあった遺憾と悲哀の念は次第に薄らいでいた。


ある日、彼は目的なく歩き、とある崖へと辿り着いた。そのまま崖の下を見るや、彼はふと、あることに気づいたのだ……久しく、闇の森林の入り口を夢見ていないことに。


そろそろ帰りますねと、ブルーチーズはそう呟いた。



彼がミドガルに帰ってきたのは、ミドガルでは久しぶりとなる雨の日の夜だった。


雷が轟くなか、ブルーチーズはベランダでバイオリンを弾き、雨を味わっている。室内では、珍妙なデザインの服を着たヌガーがあちこち走り回っている様子だ。


ブルーチーズが帰ってきたからと、彼女は庭つきの家を買っていた。ここ数年でめきめきと躍進した自らの芸術センスを示すためにと、ブルーチーズの手伝いを断り、下働きのために雇った者たちに買ったばかりの家具の配置を指示しているところなのだ。


ヌガーの活力いっぱいな声を聞いて、ブルーチーズは思わず笑った。ジャッキーが何度も自分に話してくれた、あの日の出来事を思いだしながら。今日と同じような大雨の日に、十六歳のジャッキーは勇気を出し、自分の世界から逃げ、大雨を無視してモラーに行った。そして、自分の運命を変えたのだ……


「すみません、僕の見間違いでしょうか?」


ブルーチーズは目を瞬かせながら、ベランダから庭の小道へと視線を移した。


同じように、いつ庭に現れたのかも分からない、素足の人物もまた、ブルーチーズを見ていた。


「――こんにちは、僕はムースです。……すみません、道に迷ってしまって……あのう――ここは、どこですか?」


庭にいるその人物は、そう言うやまっすぐ顔を上げた。目からは、若者特有の迷いと誠実さが感じられる。


このとき、ブルーチーズはまだ知らなかった。まさか彼らの出会いが、新しい旅の始まりになろうとは。


エピソードまとめへ戻る

ブルーチーズへ戻る


Discord

御侍様同士で交流しましょう。管理人代理が管理するコミュニティサーバーです

参加する
コメント (ブルーチーズ・エピソード)
  • 総コメント数24
  • 最終投稿日時 2021/09/29 22:00
新着スレッド(フードファンタジー攻略wiki)
ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

「FOOD FANTASY フードファンタジー」を
今すぐプレイ!

注目記事
ページトップへ