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お好み焼き・エピソード

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お好み焼きのエピソード

流行りを追い求め、他人の目は気にしない、我流を貫く女の子。一見常識なさそうに見えるが、サバサバしているだけ。空気を読むのが苦手で、思った事をすぐ言ってしまう。おでんに出会うと思わず突っかかってしまう。


Ⅰ.引っ越し

「あら、お好み焼きやないか。朝はようからおでかけかい?」


知らない内に、ウチは家の前で長い事立ち止まっていたみたい。誰かに名前を呼ばれて、やっと意識が戻ってきた。

目の前にいたのは近所の菓子屋のおばちゃん。


「来月引っ越しするんやな、おめでとさん!」

「アハハ、せやで……」

「グルイラオで家を買うたらしいな、ほんまにすごいわ!なんやっけ……デザイン?昔それを勉強したいって言うた時は皆で止めに入ったのよう覚えとるけど、まさかこないに有名になるとはねぇ!あらぁ、うちの子もあないに出世できたらええのに……」


おばちゃんの話は止まらない、目には憧れと羨望が映っていた……だけど、どこがそんなに羨ましいのかウチにはわからなかった。ウチはただここから離れるだけなのに。


おばちゃんの一言一句はウチを想って喜んでくれているのに、ウチはどうしても彼女みたいに喜べなかった。

彼女がこの場から離れた時、やっと上げっぱなしだった口角を緩める事が出来た。


「グルイラオ……」


俯いて着ていた新しい服を見た。これを着た日から全てが変わってしまった。


ウチはお好み焼き、貧乏な御侍の食霊。

正確に言うと、かつては貧乏だった御侍の食霊だ。


ウチが召喚された時、家は困窮していた。

ファッションやデザインを学ぶため、御侍は他人の制止を振り切って貯金を使い切った。

こうして、ウチらは食事もままならず、近所の人たちから服を貰う生活をする事に。


こんな日々は、御侍のデザインがグルイラオで有名になった日まで続いた――

彼女はグルイラオのとある事務所に招かれ、ウチらはこの町を離れる事になった。


平凡で、大都市と比べたら地味だけど、たくさんの思い出が詰まっている場所。ウチの大好きな場所から離れる事に。


このせいで、皆は羨ましそうに御侍とウチを見てくる。


(せやけど、大都市はそないにええもんやろか?)


初めて御侍とグルイラオに行った時、ビジネス界の有名人たちと一緒に絢爛豪華な街道を歩いた。

彼らにとって、美しく輝いている物しか存在意義がないように見えた。

彼らは時代遅れのものに対し、あれこれとあら探しをして、自分を優位に立たせていた。

他人の格好をダサいと言いながら、嘲笑っていた。


――確かに彼らはセンスあるし、御侍の作品を評価しているけど、あの顔は見てるとなんだか無性に腹が立った。


町にある低い家々や人々の素朴な身なりを見て、温かく親切な話し声が聞こえてきて、気付けば口からため息が出ていた。


「せやから、ウチは大都会なんか好きやない、ここが好きなんや……」

Ⅱ.本質

「来たかい?」

店に入って、揺れる風鈴の音色と共に、おでんの声が聞こえてきた。内心はどうしてか更にイライラが止まらなくなっていた。


「うん、なんでもええからテキトーに出してや」


注文して、窓側の席に座った。道行く通行人を見ながらボーっとしながら考えた。


(ほんまに?ほんまに離れないかんのか……)


「食べな」


おでんは大きなトレーを置いて、エプロンで手を拭いてからウチの向かい側に座った。

卵焼き、大根と筍の具沢山スープ、あとは可愛らしいデザートもいくつか……

トレーはお椀と皿でいっぱいになっていた。


食欲がないと思っていたけど、おでんが作ってくれた料理を見た途端、情けない事にお腹が鳴ってしまった。


この瞬間顔が熱くなって、すぐにおでんの方を見た。

彼は笑いを堪えきれず、横を向いて一つ咳払いをした。


「あっ、アンタは……何も聞こえてへん!」

「はいはい、何も聞こえてねぇよ」

彼の言葉からは笑いが漏れていた。ウチは気まずくなって、食事に没頭した。


(悔しいんやけど、認めるしかない……美味しい……)


この料理を作ったのは、ウチの機嫌が悪いから、慰めようとしたんかな……ウチそんなにちょろそうに見えたん?


まあ、せやろなあ。

いつも通りの美味しさで気分がよくなってきたけど、離れなければいけない事を思い出してまた悲しくなってきて、箸も止まった。


グルイラオに行ったらもうこれが食べられなくなる。


「こないに作ったんは、ウチがもうおらんくなるから?」


おでんは何も言わず、ウチの頭を撫でた。


「行きたない……」

自分がしぼんだ風船みたいにしょんぼりしている事に気付いた。


「本当にいやか?御侍と一緒に世界進出したかねぇのか?」

「せ、せやけど……」

「御侍の服を着てランウェイを歩きたいって言ってたろ?この小さな町にゃそんな大きな舞台なんてねぇぞ」

「怖い……」

「怖がるな」


ウチが話し終わる前に、おでんがそれを遮った。


「お前さんは、お前さんの嫌いな奴らみたいにゃならねぇよ」


この言葉はウチの心に刺さった。

ウチが一番怖かったのは、いつか自分が人を見下すような人たちみたいになってしまう事。

前、おでんにグルイラオで会った人たちの愚痴を言った事を思い出した。

彼はずっと覚えていてくれてたんだ……


彼はいつもの柔らかな笑顔を浮かべながら、ウチの悩みを軽々と言い当てた。


「グルイラオはそんなに怖い場所じゃねぇさ……常連さんがよくグルイラオの事を言ってたからなぁ。お前さんが見たのは、グルイラオの一面にすぎねぇ。しかも……」

「グルイラオにいても、ここにいても、例えブランド物のスカートを履いていても、昔みたいなダサい服を着ていたとしてもだ。お好み焼きはいつになってもお好み焼きさ、本質は変わりゃしねぇよ」


「お前さんは、お金を持っても、昔みてぇに節制の習慣を続けてらぁ」

「昔と同じように、誰に対しても親切で、熱心で、たまに礼節を欠く事もあるが……まあ、これは良くねぇ点だな」

「……」


(感動したばっかやのに、説教かいな!)


「わかっとる!」

「ハハッ、そりゃいい」


Ⅲ.旅立ち

気付けば旅立ちの日がやって来た。

ウチは御侍と一緒に客船に乗ってここを離れてグルイラオに向かう。


多くの人が見送りに来てくれた。ウチらと面識のある近所の人や友達ほぼ全員。

この時初めて気付いた……この町には、こんなにも知り合いがいたんだって。


馴染みある顔を一人ずつ見ていき、思い出が一つずつ浮かんできた――一緒に楽しんだ事、喧嘩した事、家にお邪魔した事、冬服を何着か借りた事……

ウチはここから離れなきゃあかんのか……

海風の塩気で目が痛くなってきた。


おでん、おおきに。ここまででええよ」


おでんはウチの荷物を下ろしてくれた。御侍に向かって会釈をして、いつもの笑顔を浮かべていた。


「気を付けて」


「長い間世話になったなぁ……お好み焼き、黙っとらんで、はよ礼をせぇ」

「もう、わかっとるって!」

ウチは目をこすって、おでんの暖かい目を見つめた。


「おおきに」


他にも言いたい事があったけど、頭が追い付かなくて、何も言い出せなかった。


ポーー


汽笛が鳴り、船に乗るよう催促された、もう時間がない。



「いっ、いってきます!」

「いってらっしゃい」


逃げるみたいに、もう彼の方を見る事はなかった。荷物を持って船の方に向かって走った。


チケットを確認され、甲板から彼と近所の人たちに向かって手を振った。ウチだけじゃなく、御侍もため息をついていた。


「御侍サマ、また帰ってくる?」


「戻るよ、原点を忘れちゃいかんからな。ただこんなに長く離れるんは、私もちょいと寂しいなぁ」


帰るんだ……!

少しだけ安心した。


「良かった、もう会えなくなるんかと思た」

「おっ?誰や?当ててやろか、おでんか?彼は確かにええ奴や」

「うん、せやねん。こないに優しくて、親切にしてくれる友達はもう見つからん」

「……えっ?」


Ⅳ.サプライズ

二年が経った。

グルイラオでの日々は、案外早く過ぎた。


最初の二か月は慣れなかったけど、もうこの大都市には慣れたもんだ。


全ての人が名利を追い求めている訳じゃない、人の身なりを見て嘲笑う人もいれば、美をその目で発見できる人もいる。


おでんは正しかった、短い滞在でウチはこの都市の一面しか見れていなかった。ここは広くて複雑な場所だ。


ここで多くを学んだ、それと同時に生活リズムも早くなった。


毎日忙しくて、御侍もウチも一休みする時間さえ無かった、手紙ですら何か月も送れてない。


もうすぐ御侍のファッションショーが開かれる。ウチもモデルの一人として参加する事になった。

手紙を送れていないから、まだ町の人たちにこの良い知らせを伝えられていない。


「御侍……手紙書いた方がええんやないか?」

ファッションショーの準備がやっと一段落ついて、ウチは疲れた体をソファーに投げだした。全身の細胞が燃え尽きたみたい。


(とりあえず手紙を送って無事を知らせな。町は今どうなっとるんやろか……)


「うん?手紙?送らんでもええよ。もうすぐ帰るし」

「わかった……えっ?」

「言うてへんかった?!あぁ、ごめん、忙しくて忘れてしもた……」

「えっ?!」


「私達と事務所の契約は今月いっぱいまでやから、その後桜の島に戻ってから展開しようと思う」

「あと、私は近所の菓子屋の和菓子が食べたくてしょうがないねん、ここのはまったく味せん」


「きゅ、急すぎるやろ……」

「何?帰りたないの?」

「帰りたい!帰りたいわ!」


突然のサプライズに、脳が追い付いて行かなかった。

次の瞬間、ウチは色んな物事を思い出していた。町にある古い商店街、背の低い住宅街、青く澄みきった空、おでんの店の食べ物の匂い……


こんなに経っても、ウチはやっぱりあそこが好き。


「来月帰るから、写真ぎょうさん持って帰ってみんなに見せような……胸張って帰るために、ファッションショーを成功させんといかんな」

「もちろんやで!」


Ⅴ.お好み焼き

二年経て、お好み焼きは再び良く知っているあの町に戻ってきた。


船は夕陽が沈む頃、港に到着した。荷物も片付けず、休憩もせず、船旅で疲れ切っていた筈の体を引っ提げて、お好み焼きは楽しそうに町へと向かった。


残り半分の荷物を持っていた御侍は頭を抱えた。膝で考えても彼女がどこに向かっているのかわかったため、頭を横に振りながら大きなスーツケースとバッグを抱えて走っていく彼女の姿を見送った。





――その頃、おでんの深夜食堂では。


おでんは滞在していた少年を見送り、静かになった店内を見て、少女の澄んだ声を思い出していた。


お好み焼きの手紙はここ半年程届いていない……グルイラオで忙しくしているのだろう。彼女と彼女の御侍が元気にしていると良いが。


おでんは窓の外を見た。夜色が深まってきていた、そろそろ開店の時間になる。


彼は軽く店の戸を引いた。


思い出の中の声が風鈴の音色と共に突如聞こえてきた。


「……わっ、どないしたん急に戸を開けたりして?ビックリしたで」


玄関の外に立っていたのはよく知っている少女だった。

長い髪をツインテールにし、顔には素敵な化粧を施してあった。そして洋風で流行りの格好をしていた。――大小様々な荷物とスーツケースが無ければもっと良かったが。


「ヘヘッ、ただいまー」

お好み焼きは満面の笑みを浮かべていた。重い荷物を背負って走ってきたためか、息が上がっていた。


「港から走ってきたのかい?」

彼女の様子を見て、おでんは苦笑いしながら彼女の荷物を引き受けた。


「グルイラオはどうだった?」

「良かったで、でもここのがもっとええ」

お好み焼きおでんを席に座らせ、自分もその隣に座った。


「座っとき、見せたい写真がぎょうさんあるんやで!」

彼女はスーツケースからアルバムを取り出し、めくりながらおでんに彼女たちがグルイラオで体験した事を話した。

最後の一枚をめくった時、おでんは少し驚いたが、すぐに笑顔になった。


「これは……」

「この服は御侍サマがデザインしたんよ、ええやろ?ウチらはグルイラオでファッションショーをやったんやで!ウチの夢が叶ったんや!」

「うん」

「これを早く言いたくてなぁ、走って来たんよ」

「ハハッ、変わらねぇな」

「アンタも言ってたやろ、ウチは変わらんって。あっ……そう言えば、御侍サマは桜の島でもショーをやりたいんやって。せやから帰ってきても、忙しいかもしれへん……」


「うん、あまり無理はしねぇように」


「わかっとる!せっかく帰ってきたんやから、説教されたくないねん」

お好み焼きは笑いながら、目はキラキラさせていた。


おでんの言う通り。

お好み焼きは変わった?もしかしたら変わったのかもしれない。

彼女は広い世界を見て、大きな都市に行って、前よりもっと自分を着飾れて、色んな面から物事を考えられるようになった……

成長した面もあるが、彼女はお好み焼きのままだ。

彼女は相変わらず節制している。親切で熱心で、依然としてこの人情溢れる場所が好きだ。


今までも、今も、これからもきっと。


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コメント (お好み焼き・エピソード)
  • 総コメント数33
  • 最終投稿日時 2020/10/16 05:42
新着スレッド(フードファンタジー攻略wiki)
ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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