桃源幻郷・ストーリー・5~終章
第五章-手掛かり
意識が朦朧として、やっと殺意に気付く。
真夏十八日昼 客室
質素な客室の中、柿餅は机に突っ伏して、淡々と茶と酒を飲んでいる二人を見ていた。二人が飲み終わった所で、臘八麺は思わず彼に問いかけた。
臘八麺:兄弟子、いつまで私たちを見ているつもりですか?
菊酒:顔に何かついているとでも言うのか。
柿餅:なんか二人とも変だぜ。このままじゃ、俺もおかしくなりそうだ。
臘八麺:しかし私はそう思わないですが……
菊酒:……君がおかしくない時なんてあるのか?
柿餅:……
柿餅:いいや、話題を変えよう、あんたら今日誰かに尾行されなかったか?
臘八麺:尾行?どうして尾行されるんですか……
菊酒:君、また悪い事でもしたのか?
柿餅:……ひょっとして昨日隣のおばさんを手伝って野ウサギを捕まえてやったから、お礼しにきたとか?
その返事に菊酒は睨みを飛ばし、しかし柿餅はやっと雰囲気が元に戻ったと感じた。彼は手を振り、真面目な話を始めた。
柿餅:真面目な話をしようぜ、今日何か発見したか?
しばらく沈黙した後、誰も答える事はなかった。向かいに座る二人は困惑した表情を浮かべて柿餅を見ていた。柿餅は湯飲みを掴んで茶を飲み、自分を落ち着かせた。
柿餅:てことは、二人は半日外にいて何の手がかりも見つけてないのか?
臘八麺:兄弟子……?
菊酒:どう言う意味だ、どうして手掛かりを見つけなければいけないのだ。
柿餅:何を言ってるんだ?ボケたのか、それとも俺がボケたのか?一体……
柿餅は訳が分からず頭を掻いて、答えを見つける前に、菊酒と臘八麺は同時に頭を抱え出した。臘八麺の湯飲みは床に落ちてバラバラに砕けた。彼は砕けた破片の形を見て眉間に皺を寄せた。
柿餅:どうした?!こ、これは天地否の卦……大凶の兆しだ!お前ら……
二人が怪しげでそして辛そうな表情を浮かべているのを見て、彼は慌てて質問を更に投げようとした。しかし、扉を叩く音が突然響き、会話を遮った。
龍:お客さん、晩ご飯の用意が出来たよ。
竜の声が聴こえてきた瞬間、菊酒と臘八麺の顔色は落ち着きを取り戻した。話を聞き終えると、二人は何も言わず部屋を出て行った。親切な様子で呼びに来た家主についていっているようにも見えた。しかし、柿餅からすると、怪しさしか感じなかった。気付けば、部屋には困惑している柿餅ただ一人しかいなかった。
龍:火晶さん?調子が悪いのか?
龍の声が聴こえてきて、顔を上げた柿餅が見えたのは笑っている龍の顔だった。気付けば身震いをして、無意識に龍の視線から逃れようとして、呼吸も荒くなっていった。
柿餅:お、俺は大丈夫だ、先に行ってくれ、俺もすぐに行く!
龍は何も言わず、三人が去った後、柿餅は自分の部屋に逃げ込み、一息ついた。
彼は慎重に扉と窓を閉め、袖に隠していたボタンを押した。
柿餅:(ここはやはりおかしい、まず菫糖姉さんに伝えなければ……)
頭が混乱している彼は必死で自分を落ち着かせようとするが、何かを見逃しているのかもしれないと思い返そうとしても、自分の記憶はなんだかぼやけている事に気づく。
彼は自分の頭を押して、もう少しはっきりさせようとしたが、手元の湯飲みをこぼしてしまいその瞬間玉華茶の香りが部屋に充満した。この匂いを嗅いだ柿餅は突如ある事を思い出した。
前日
菊酒:気付いているか、この村の水は変な味がする。
柿餅:そうか?うーん……変な味なんかしないぜ?
菊酒:……机にある茶や酒ではない。
菊酒:川と井戸の近くに行ったが、そこの水は変な味がした、苦みがあった。
柿餅:そんな事もわかるのか?!
菊酒:今まで、私たちは普通のは白湯を飲んでない事に気付いたか?
柿餅:つまり……?!
菊酒:私の予想通りなら、茶と酒はその味を隠すためであると。
柿餅:(ひょっとして……茶と酒全部に問題があるのか?!)
柿餅は何かに気付きそうになったが、しかし意識はどんどん朦朧としていき、部屋の外からは足音が聞こえてきた。
龍:火晶さん、どうした?手伝おうか?
柿餅:俺……
柿餅が口を開こうとした瞬間、目の前が真っ白になり、脳には激しい痛みが走り、意識が奪われようとしていた。
柿餅:(まずい……でもまだ……)
第六章-異変
幸い部外者の目は澄んでいる。
真夏十八日夜 茗村
広い部屋の中、二人の人物がこらえきれない笑みを浮かべて得意げに、目の前に立つ三人をみていた。
普段から表情が落ち着いている菊酒と臘八麺、明るいはずの柿餅も、全員が無表情で、目には光がなかった。
龍:入る事を止められなかったけど、自ら実験品になりにくるとはな。最早自業自得だろう、食霊なんて大した事ないな。よく聞け、今からお前たちは茗村の村人だ、無条件に俺たちの言う事を聞け。
普段の和気藹々とした姿と違い、この時の龍は怪しく狂った表情を浮かべて、三人に向かって命令を下していた。
徐々に、三人の表情は明るくなっていった。普通の人のように話し、笑うようになった。この光景を見て、龍の隣に座っていた村長も思わず笑い出した。
村長:成功したようだな。食霊にも効くとは。この事を上に報告した方が良いが、もう少し様子を確認しておこう。
龍:はい、かしこまり……誰だ?!誰か外にいるのか?!
外から微かに声が聞こえてきた、龍は叫びながら扉を開いたところ、小さな人影がすばやく暗闇に逃げていくのが見えた。
龍:おいっ!早く追え!
真夏十八日夜 墨閣
灯りが灯る蔵書閣の中で、二つの影が忙しなく本をめくっていた。近くに置いてあった機関鳥が長く鳴き声を上げ、ようやく落ち着いた。
董糖は最後の一冊を閉じ、思わず眉をひそめた。隣の蓮の実スープの表情も重い。
董糖:一体どこで間違えたのか……
蓮の実スープは叫んだ。菫糖は彼女の手から本を受け取り、同様の反応を見せた。
董糖:彼らが行った場所は……茗村などではない。
蓮の実スープ:だからこの資料ではあの村の記録が見つからないのですね……
董糖:行きましょう、機関鳥が信号を発したのだから、彼らは……きっと厄介な事になっているはず。
第七章-察知
戦い、見知らぬ気配しかない。
真夏日十九日朝 茗村
董糖たちは地図に従い、遠い村にやって来た。この山際にある小さな村はまだ朝日を浴びており、外から見ればとても平和なように見えた。
入り口にいた守衛は居眠りをしていた。一つの黒い影が過ぎ、一瞬のうちに守衛らは地面に倒れた。
宮保鶏丁:終わりました。
宮保鶏丁は歩いてくる董糖と蓮の実スープの方を見た。董糖は心配そうな目で前方に視線を送る。
董糖:直接入ろう、時間がない。
彼女たちは堂々と村に入ったが、周囲を警戒していた。しかしすぐに前方に見慣れた姿が三つ立っている事に気付く、まるで彼女たちを迎えに来たかのよう。
宮保鶏丁:彼らは……
董糖:待って、まだ行かないで……
董糖は前に進んで確認しようとす宮保鶏丁の足を止めた。その次の瞬間、宮保鶏丁は自分の火銃を持ち上げた。
ギィィッーーン!
一本の剣が風を切って銃身に当たり、火花が散る。宮保鶏丁は突然の一撃を受けた後、数歩撤退した。相手を確認すると、彼女は思わず眉をひそめた。
菊酒は旧知の声が聞こえていないように、何も言わず剣を振り回して彼女たちに近づいた。後ろの臘八麺と柿餅も戦闘態勢に入って、攻撃は次から次へと嵐のように襲い掛かってきた。双方の武器が交錯して、周囲の全てを引き裂こうと風が迸る。
彼らはいつもと変わらない表情をしていたが、彼女たち全員はかつての優しい仲間から見知らぬ気配が漂っている事に気が付いた。
不本意ながらも戦いを続けた、しかし仲間に刃を向ける事は出来ず、ただ容赦ない攻撃を避ける事しか出来なかった。
蓮の実スープ:董糖、私の琴で一時的に彼らを落ち着かせてみます、このままですと埒があきません……
董糖:とりあえず意識を無くさせよう。
宮保鶏丁:承知。
宮保鶏丁は答えてすぐに菊酒に向かって飛んで行った。董糖も力を強め、菊酒と臘八麺はすぐに抑えられた。
しかし、蓮の実スープは劣勢にあった。柿餅の剣は真っすぐ彼女の体を刺そうとしていた、彼女は力を入れて指先で琴線を弾いた。
しかしこの時、柿餅の刃先は意識を持ったように軌道を外れ、空振った。蓮の実スープは驚いたが、琴の音色が響き、柿餅はすぐにねじ伏せられ地面に突っ伏した、胸元には細長い傷が出来た。
しかし蓮の実スープは戦いの最中、柿餅の腕が傷だらけで血が滲んでいる事に気が付く。
蓮の実スープ:(どうして柿餅だけこんな酷い怪我を負っているのだろうか?)
蓮の実スープがそれを考えていた時、宮保鶏丁はすぐに柿餅に近づき、攻撃をしようとした。しかし、柿餅は突然大きな声で叫んだ。
柿餅:待って!
この言葉を言うために大きな力を使ったようで、歯を食いしばりながら身を起こして座った。傷口を抑えながら、息を荒くしていた。宮保鶏丁は警戒を解かず、すぐさま銃口を柿餅の方に向けた。
柿餅:お、俺を殴らないで……
柿餅:俺は大丈夫だ……でもあいつらは……全てを奴らに制御されてる。
宮保鶏丁は彼の話を聞いてやっと自分の火銃を下ろした、菫糖もすぐに近づいて来た。苦しそうな柿餅を見て、蓮の実スープは琴に手を添え治療しようとしたが、柿餅に断られた。
柿餅:その必要はない……傷で……意識がはっきりする。
この時、近くの菊酒と臘八麺が拘束を解こうと動いていた。董糖に確認を取った蓮の実スープは催眠曲を演奏し、しばらくして、二人は眠りについた。
やっと状況が落ち着いた所で、柿餅は董糖たちに自分たちに起きた出来事を話した。
董糖:つまり、この村の水に問題があるのでしょう。ということは……何者かによって制御されている……邪教の者は村人の中に潜伏しているという可能性が高い……しまった!
董糖の話がまだ終わらない内に、後ろから大きな騒ぎ声が近づいて来た。
彼らは慎重に振り返ったが、目の前の光景に驚くしかなかった。村人たちが血相を変えて、獰猛な様子で向かってきていた。狂乱している姿はまるでゾンビのようだった。
宮保鶏丁:……
蓮の実スープ:村の人たちは本当に……
董糖:気を付けて、出来る限りこの無実の人達を傷つけないようにしなければ。
柿餅:良い考えがある。穢れを払う陣を組もう。それがあればしばらくは落ち着かせる事が出来る。
柿餅:ただ、この法陣を組むには、恐らく今の俺一人の力では足りない、お前らの力が必要だ。
董糖:その方法でいこう、まず村人たちを落ち着かせてから、邪教を一網打尽にしても遅くはない。
宮保鶏丁:邪教は私に任せて。
洛:あの人たちは裏山に逃げた!
透き通った声が聞こえて来た。近くの草むらから男の子が出てきた。柿餅以外は、警戒して彼を見ていた。
柿餅:お前は……あのおかしな子か?
洛:おかしくないよ……も、もちろん悪い人でもない!
洛:えっと……とにかく説明は後で!わざと話を聞いていた訳じゃない、ただあんたたちは……きっと良い人だと思って……
洛:そしてこの村を救えるのは……あんたたちしかいない……だからお願い!あの悪い人たちを倒して!
洛は怒りと悲しみを込めながら言った、遠くの村人たちの動きはどんどん速くなっている。
董糖:では村人たちは私らに任せて、宮保は邪教の者を追って。
宮保鶏丁:承知、気を付けて。
第八章-支援
暴走の中、事態はさらに厳しくなる。
真夏十九日朝 茗村の裏山
宮保鶏丁は洛が指した方向に向かって行った。林の中で黒い服を着た男たちは弓の音に怯える鳥のように逃走していた。
宮保鶏丁は火銃を握り、燕のように軽々と林の中を縫って追いかけた。
黒い服を着た男:だ、誰かが追いかけて来る?!
黒い服を着た男:声を出すな、速く走れ!
宮保鶏丁:もう遅い。
冷たい女の声が忽然と鳴り、そして目の前に一つの影が一閃した。男たちは驚いて立ち止まった。
冷ややかで険しい表情を浮かべた黒い服を着た女性が、落ち葉を踏みながら出てきた。彼女はゆっくりと歩いているが、男のリーダーは冷や汗が止まらなかった。
黒い服を着た男:貴様……
男が口を開いた瞬間、声は止んだ。瞳孔を見開き、真っすぐに倒れた。近くの人は顔に赤い何かが付いた事で、やっと事態を飲み込み叫んだ。
バンッ!バンッ!バンッ!
宮保鶏丁は自分の火銃を収めると、叫び声は既に銃声にかき消されていた。
黒い服を着た男:ハハッ……俺たちを殺したところで……解決すると思うか?……まだ他に方法が……ある……
宮保鶏丁が下を向いて、足元の死にそうな男を見た。全身血まみれながらも、途切れ途切れに話、そして小さな笛を口元に持って行き、最後の力を振り絞ってそれを吹いた。
耳障りな音が宮保鶏丁の耳に入った。彼女は眉をひそめ、再び火銃を上げた。
「パンッ」と鳴り、笛は半分に割れ、そしてあの男ももう声を発さなくなった、周りも再び静けさを取り戻した。
宮保鶏丁が立ち去った後ろ姿を見ながら、遠くない林の間に隠れていたチキンスープがゆっくりと出てきた。彼女は自信に満ちた笑みを浮かべて、薬の処方を握り締め、優雅に離れていった。
一方ーー
狂った村人たちは牙が剥き出しになり、物凄い形相でゾンビのように襲い掛かり、田んぼや家屋も破壊され、その場は混乱していた。
洛:うわーー!!くくく来るな!!!
目の前の薪の山が強い力でどかされ、獰猛な顔は急に洛の前に現れた。薪の後ろに隠れていた彼は逃げようとするが、地面に倒れた。
激しく動く腕が伸びてきて、もうすぐ彼の喉元に差し掛かった時、誰かが彼の首根っこを掴んで持ち上げた。彼は驚くが、そのまま高い木の上まで連れて行かれ、彼は幹にしがみつき腰を落ち着かせた。
柿餅:悪いな、しばらくは上に避難してろ。
洛:ふぅ……ありがとう!
洛の首根っこを引っかけていた剣は再び柿餅の手元に戻った、洛が木の茂みにきちんと隠れているのを見て、やっと安心してその場を離れた。
柿餅たち三人は村人の包囲を抜けて村にある空き地に来ていた。彼らは計画通りここに法陣を立てようとするが、蓮の実スープは急に倒れた柿餅の体を支えた。
それと同時に、けたたましい笛の音が鋭いナイフのように蓮の実スープ頭をよぎった。
蓮の実スープ:これは……
蓮の実スープがまだ考えている時、董糖はすぐさま彼女を後ろに引いた。その時、柿餅の剣は危うく彼女に刺さろうとしていた、なんとか彼女の袖を破っただけで済んだ。
二人が体制を整えた時、柿餅はまるで別人になっているようだった、目からは殺意が溢れ出て、体からも狂気が滲み出ていた。
蓮の実スープ:貴方も聞こえましたか……?
董糖:ええ、恐らく状況が変わったのだろう……
先の一撃が当たらなかったと気付いた柿餅は、再び容赦なく剣を振るいながら突き進んでいく。董糖と蓮の実スープはなんとか彼の攻撃を避けているが、荒々しく規則性のない攻撃は、まるで狂った獣が殺戮しているようだった。
この時、村人たちの叫び声も響いて来た。空を貫くように、前よりも何倍も大きな声がした。
宮保鶏丁:……これはどういう事だ?
宮保鶏丁の声が聞こえた。彼女はいち早く董糖と蓮の実スープが隠れている場所に向かった。
蓮の実スープ:一緒に暴走したようですね。笛の音のせいでしょうか……
宮保鶏丁:笛……確かに先程の連中は笛を吹いていた。しかし既に私に壊されている。
宮保鶏丁:そして彼らの持ち物からこれを見つけた。しかしあと一粒しかない。
宮保鶏丁は小さな罐と何かが書かれている処方箋を取り出した。罐の中には赤い丸薬が入っていた。
蓮の実スープ:つまり、あの笛の音によって彼らが動かされたのでしょうか……この紙に書いてあるのは解毒剤の作り方……董糖……試してみましょう……
董糖:まずは柿餅に飲ませてみよう。今解毒剤を作る余裕はない。まず村人たちの暴走を抑えなければならないから、方陣を組もう。
董糖の話が終わると、宮保鶏丁は思い切って外に飛び出した。柿餅も「獲物」の気配に気づいたようで、相手に真っ直ぐ突き進む。
董糖と蓮の実スープはそれぞれ別の方向から飛び出て柿餅が間もなく宮保鶏丁の正面に近づく瞬間、いくつかの琴線が柿餅の手足を締め上げ、柿餅の攻撃が止まった。
一本の毛筆が彼の背中を叩き、顔を上げるように迫った。宮保鶏丁はこの機を逃すまいと、急いで丸薬を柿餅の口に入れた。
柿餅は錯乱しているが、他の三人は彼が丸薬を飲み込む音を聞いた。
「ガシャン」と柿餅の剣が手から滑り落ちると共に、彼の表情もゆっくりと柔らかくなっていった。間もなく、彼はいつもの姿に戻ったが、体はまだ弱っていた。
柿餅:俺は一体……何が起きたのか……?
董糖:覚えていないの?
柿餅:ああ……ただ頭が真っ白になって……目が覚めたら今になってる……
蓮の実スープ:調子は良くなりましたか?あまり時間はないです……
十五分後ーー
眩しい光が持続的に法陣の中心から溢れ出た。複雑な紋様は大地に流れ込み、広大な図案を構築していく。
高所に立つ四人は目を閉じ、自分の霊力を法陣に注ぎ込んだ。光はさらに力を強め、村は金色の光に包まれた。
暴走していた村人たちは、なんとお互いを殴り始めていた。阿鼻叫喚が止まず、悪い力が村全体を呑み込もうとしていた。
終章-花火祭
花火が上がり、日常を取り戻した。
柿餅たちは油断せず、更に霊力を注いだ、ようやく村全体が光に包まれた。
職人:ああーー!!
老人:うわーー!!
村人:#¥@%ーー!!!
乱雑とした悲鳴の中、村人たちの動きは徐々に遅くなり、濁った目も少しずつ綺麗になっていった。
悲鳴は少しずつ止み、地面から上がった光の中、村人たちは洗礼を受けているようだった。しばらくすると、村人たちは地面に倒れ、昏睡状態に陥った。
四人は地面で寝ている村人たちを見て、やっと一息ついた。
柿餅:この法陣は一時的に彼らの邪念を除去する事しか出来ず、完全に治せない。早く解毒剤を作らなければ。
その後、蓮の実スープは邪教から見つけた処方箋で解毒剤を作り出し、それを飲んだ村人たちは相次いで目が覚めた。
真夏日十九日夜 茗村
笑い声が満ちた広場で、再び宴が行われた。料理の匂いが周囲に溢れた。村人たちは色鮮やかで綺麗な花火を上げていた。
菊酒:まだ始まってもないのに、もう我慢できないのか?
柿餅:す、少しだけ……
菊酒は鼻で笑うと、酒を持って静かな場所に飲みに行った。柿餅は引き続き食べ物を口に入れ続けた。
柿餅:あんたも同じだろ。
村人たちは机を囲み、前よりもっと盛り上がっていた。
洛は汚らしい服から着替え、顔も綺麗になっていた。柿餅たちに見つめられて少し戸惑っていた。
洛:今回は本当にありがとう!皆がいなければ、僕は……村の皆が死んでいくのをただ見る事しか出来なかった……
柿餅:どうって事ないよ、やるべき事をやっただけだ!邪教の連中は卑劣だ、被害者はあんたら以外にも大勢いる。
柿餅:だけど、お前はいつから毒に気付いたんだ?
洛:実は最初から知っていた……あの日、僕は外から村に戻った時、裏山で変な格好をしてた黒い服の人たちが川に何かを流しているのを見たんだ。でもその時は特に気にもとめなかった。
洛:裏山のあの川は村全体を通ってる。あいつら河だけじゃなくて、村の全ての井戸にも薬を入れてたんだ。
洛:狂ったフリをした方が、調べやすい事に気付いて。何回か気付かれた時も、アホなフリをして誤魔化した。でも気付いたら監視されるようになって、動けなくなっていた。
洛:その後、柿餅兄さんたちが来てくれた。助けを求めるために、気を引こうと何回も会いに行ったんだ。
洛:ただ、まさか兄さんたちまでも……でも最後董糖姉さんたちが来てくれて本当に良かった。
洛:とにかく……狂ってアホなフリしていた僕をどうか忘れて欲しい……!
洛の最後の言葉は笑いを引き起こした、彼の顔はまた少し赤くなった。
臘八麺:あの姿も可愛らしいと思いますよ。
洛:臘八麺兄さん、川岸に居た時に警告したのに……全然聞いてくれなかったね……
臘八麺:川岸……あっ、思い出しました!あれは警告だったのですね……ごめんなさい……私……
洛:いや、臘八麺兄さんのせいじゃない……あの時僕の話を信じられないのはおかしな話じゃない……
臘八麺:別に信じてなかった訳では……ただ……あの時、菊酒は帰ってから話そうと言っていたので……まさか帰ったら既に薬が効いてたとは思いませんでした……
菊酒:……全部私のせいにされても。
柿餅:だから二人の反応がおかしかったのか!俺は賢いから騙されなかったぜ!
菊酒:そうだな、賢い賢い。自分の体をボロボロにするなんて、君ぐらいだろうな。
柿餅:……
柿餅:あれもあんたたちを救うためだ。
この時、遠くない所で綺麗な花火がパッと咲いた。周りの人たちは柿餅の話で笑った。笑いの中に花火に対する称賛も混じり合い、涼しい風に吹かれて、夜の中に消えていった。
一方、鶏ももを食べている柿餅は隣でボーッとしている蓮の実スープを見ていた。
柿餅:蓮の実姉さん、どうしたんだ?
蓮の実スープは少し笑ってまた遠くを見た。
蓮の実スープ:いいえ……ただ今回の件……簡単に解決できすぎていると……
柿餅:気のせいだろう!一緒に食べようぜ!この鶏ももは本当に旨いな!
蓮の実スープ:はい……そうであって欲しいです。
そう言って、笑みを浮かべてた蓮の実スープは酒を一口飲んだ。
遠くの闇の中で笑い声がした。黄色い服を着た妖しい姿が動き、手に持っている旗は夜風に煽られゆらゆら靡いていた。そして、暗闇に消えた。
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