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雲丹・エピソード

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雲丹のエピソード

他の者に対して強い警戒心を持っている。

体の棘で己を守る。毒舌家で、せっかちである。

性格、外見、どちらもとても派手。

Ⅰ殻


最後の一筋の光が夜色に包まれ、赤い提灯が店の前に灯され、すぐ、その暖かな赤い提灯も風の中で暗い闇色に染まっていく。


蛍が持ってきた点々とした光も、逢魔ヶ時は冷たい色を映し出していた。


「ああ──美人ですね、美人だ!あなたの美しさは……あの伝説の輝夜に浮かぶ真っ白で無傷な美しい玉のようだ──ただ、なぜあなたはもっと私のそばにいてくれないのですか、あの冷たい夜の中に戻らければならないのですか?」


意味深な言葉を情感込めて耳元でささやき、絹のような柔らかで美しい光沢を帯びていた。


「残ってアタシと一緒にいて、そしたらいつまでも一緒にいられるわ……」


遊び半分だけど優しい声色で誘惑し、男の目に浮かんだ感情を嘲笑いたくなる。


「いつまでも一緒に……」

「そうよ、いつまでもアタシと一緒にいたくないの?」

「でも……でも、私の奥さんは……」

「……そう、いやなのね…」

「いや、私は……ただ……」

「愛してくれないの?」

「いや!愛しているよ。ただ…ただ…」

「嘘つき、嘘つきは千本の針を飲み込むのよ」


柔らかな長い髪が一瞬にして花びらのように開き、心地よい夜風も急に止み、手の平がその男の柔らかい頬を撫で、男の瞳の中に映る自分の表情を見た。


アタシの目つきも彼女たちのように、さりげなく最後の優しさを見せられるのか。


「お前!お前は!……助けて!助けて!!!!!」

「返事してくれたら良かったのに…」

「お前はあれだ!あれだ!助けて!お願いだからドアを開けて助けて!」


その瞬間、男の目の前にある全ての愛情が恐怖と化し、彼は絶えず道端の門を叩いた。


でも、今はもう逢魔ヶ時よ。

もうアタシたちの時間だわ。

誰もドアなんて開けないわ。


あなたの無力な姿は、愚かにもあなたを信じた女性と同じだわ。

あの女は、奥さんの実家の追手に川岸まで追いつめられた時になっても、

いつかあなたが迎えに来ると信じていたわ。


男の前に近付いて、彼の恐怖で歪んだ顔はかつての得意げな顔ではなかった。


「郎君、アタシのためになんでもしてくれるって言ったじゃない?

アタシのことが好きじゃないの?」

「好きなのはお前のような化け物じゃない!ああああああ!!」

「郎君、でも化け物でもアタシはアタシだわ。」

「お前みたいな化け物好きなわけないじゃないか?」

「なるほど…あなたが好きなのはアタシの皮だけなのね」


鋭い針になった長い髪が彼の後ろの木戸に突き刺さり、しっかりと針牢に閉じ込めた。

パニックになっている彼を見て、口を少し尖らせた。


つまらない。多くの女性に愛されている男は何か特別なものがあるのかと思っていたわ……

良い皮を持っているだけで、バカを弄んでいただけか……


あぁ……男であれ女であれ……結局はこの皮しか求めていないのね。


Ⅱ祟月


考えていた時間が長かったからか、その男にチャンスを与えてしまい、彼はなんと針牢から逃げ出した。


アタシが追いかけようとした時、彼はもう木の扉を開けて、隠れていた女と子供を扉の外に出した。


その薄い木の扉でアタシの長い髪を遮る事はできない、弱々しい身体も然り。


外に押し出され自分の子供をしっかり抱きしめている女を見た。

木の扉の後ろに隠れている男も一目見た。


記憶の中の痩せ細った灰色の化け物がアタシを連れて木の扉の後ろに隠れ、人差し指を立てて言った。

「シーッ、木の扉の後ろに隠れていろ、そしたら化け物に見つかる事はない!!木の扉の後ろが一番安全だ!」


段々と白が差してくる空を見て、目の前で抱き合い塊になった母と娘を見て、また木の扉の後ろに隠れて生臭い匂いを出す男を見て、背を向けて立ち去った。


これはアタシたちとこの土地の人間で決めた事だ。


夜は、アタシたちの時間、そして昼は、彼らの時間。


夜が明ける前に祟月に戻った。


アタシたちの親分は相変わらずだらしなく床に寝そべってお腹を出して寝ていた。

隣の白髪の男は誰に見せつけているのかわからない上品な姿でそっと湯呑をアタシの前に薦めてきた。


アタシは胡坐をかいて床に座り、温かいお茶を飲んでも心にある苛つきを解消できなかった。


「そんな綺麗なスカートを履いて、そのように座らないでください」


突然、見慣れた笑顔がアタシの前に現れ、あいつはアタシに身構える隙も与えないでアタシを抱き上げた。

彼が脇の下を持ってアタシを持ち上げる動作はまるで普段彼が親分を持ち上げる動作となんら変わりがなかった……

──違う!!!


月見団子ーー!!!この野郎、早くアタシを放せーー!!!!」

「はいはい」


怒りながら自分のスカートをはたいて、面白くない顔でつかみどころのないヤツを見る、座り直そうとした時後ろから届いた咳の声にびっくりした。


「えぇ、月見の言う通り、みんなは気にしないけど、雲丹はそのスカートにふさわしい姿勢をとるべきよ」

「チェッ、男しかいないのに別にいいだろ」

「うん?」

「姉御、ごめんなさい!!!」

「いい子だね」


鼻の先を触って、ホッキガイの姉御の傍に近付いた。

姉御はいつも端正で優雅な姿をしているが、普通の端正で優雅な女性とは違って、彼女の体からは何か拒めない強い気迫があった。


うっ……月見団子みたいな文人気取りの言葉でいうと、天下に君臨するような気迫……


よく分かってないけど、彼女を尊敬する気持ちの邪魔にはならない。


姉御のような人物がなんで明太子の下で甘んじているか本当に分からない……


彼も悪くないけど……でも、姉御の気迫を見てから、お腹を出して寝てるあのちびっ子を見たら、誰だっておかしいと思うだろ!


雲丹、ボーっとして私を見てどうした?」

「うっ……」

「憂鬱そうな顔をして、あの男の人とうまくいかなかったのかい?」

「………」

「そうみたいね。人間の男に過ぎない、気に掛ける必要はない。」

「うん………」

「眉をしかめてどうする、彼が逃げてよかったじゃない。また夜行の時期になる、あまり騒ぎを起こさない方がいい」

「人間たちなんて怖くない!」


「あなたが怖くないのは知っている、私たちが恐れているのは彼らではない。夜行の時に、あの人間たちが騒ぎを起こしてしまったら、どんなに些細な事だとしても、それはあいつらに隙を与えることになってしまう」


頬を微かに膨らませ、アタシは姉御の机の上に伏せて、彼女が袖を引いて筆で何か字を書いているのを見た。

突然机が激しく動き、一気に書き上げた書は、その動きによって紙の中央に線が書き足されることになった。


頭を下げて見たら、暇を持て余して本を読んですぐ寝てしまった明太子がいた。


こいつは……寝てても落ち着かないのか。


彼の机を蹴った足を見て、アタシは冷や汗をかいて、立ち上がり何歩か後ずさった。


いつの間にアタシの近くに立っていた月見団子が袖口を合わせて、姉御に頬を引っ張られて長方形みたいになっている明太子を見ても、表情は相変わらず一切変化がなかった。


彼は改めて自分の茶托の前に正座した……


ちょっと待って、こいつはいつ自分の茶托を運んできたんだ。

さっきまで玄関の方にいたんじゃ!?


雲丹、何を見ているんですか?はい、お茶を飲みましょう。九尾から頂いた新茶ですよ。」


月見団子はアタシを手招き、何事もないかの様子で、アタシは口元を引きつらせながら彼のそばに座った。

目の前のホッキガイの姉御によって繭みたいに縛られ梁に吊るされた明太子を見ながら、湯呑を持ち上げた。


「うん!このお茶!」

「どうですか、悪くないですよね。」

「うん!美味しい!」



Ⅲ 百鬼夜行


アタシもいつからなのかは覚えていない。


とにかく、ある日から突然、桜の島の昼は相変わらず人間の物のまま、そして夜はアタシたちの物になった。


アタシたちはびくびくしながら自分を人間のように装う必要がなくなり、彼らの異様な視線から逃げる必要もなくなった。


あれらの化け物の手の中から人間を救う事もアタシの使命ではなくなった、アタシたちはあの果てしない地獄の中から救い出されて、自分の時間を持てるようになった。


アタシたちは自分の居場所を持てる事に、堂々と扉の前に体の模様を刻むことができる。

人間たちの白い目を我慢する事もなくなった。


アタシたちの間では、勢力の区分は人間のように様々な汚い手段を使わない、アタシたちの実力でものを言う。


強い力があれば、自分の欲しい場所を手に入れることができる。

もし負けたら、また次勝って取り戻せばいい。


これが人間のいう妖怪の生活だとしたら、アタシはむしろ妖怪になりたいし、昔のように彼らの存在に囚われた生活に戻りたくない。


赤い夜の日が、実力を決めると約束した日だ。


人間はこの日に名前をつけた。

彼らはアタシたちが集まっている妖しい夜を百鬼夜行の日だと言った。


アタシたちの中にも争いを嫌う奴もいるけど、彼らにとって、この争いは前みたいに人間に支配されているよりずっといい。


たとえば……


──海辺に住んでいるあのタコ。


「八岐!!!!俺様の前に出てこい!!!結界の後ろに隠れてそれでも漢か!!今度こそお前の海を奪い取ってやる!!!」

「うん。」


アタシは八岐の中で、君が戦わなかったら一体誰がアタシたち祟月に勝てるのか見てみたいわ?


百鬼夜行の流れはとても複雑で、具体的なルールはアタシもちゃんと覚えていない。

最初の混戦の後に自分の領地を賭けた賭け勝負もある事しか知らない。


混戦の中には、騒ぎを起こしたいガキや、火事場泥棒を狙った怪物もいる。


アタシは覚えてる、あいつらは堕神と呼ばれている。

自ら進んで死にに来たのに、簡単に見逃すわけにはいかない。


だけど、最終的に勝利し賭場の入場券を持てるのは、混戦で勝利した勢だけ。


つまり、強い者だけが勝てるという事。


混戦の中、火花が飛び散るにつれて、その弱い奴らはいつも力を合わせてアタシたちのような「賭場」の常連客を襲う。

彼らはいつもアタシたちを倒せば、彼らにも付け入る隙が出来ると錯覚している。


だけど、弱者しか同盟を結ばないと思っているのか?


「うっ、やめて…髪の毛を引っ張らないで…」


突然聞き慣れない声が耳に入ってきた。

振り返ってみると、長い髪の奴がなす術もなく彼女の目の前の化け物を見ていた。


……何でこんな奴が夜行に参加してるんだ!?

……いいや、今回だけは、彼女を助けてみよう。


Ⅳ嘘つき


雲丹兄さん……」

「この嘘つきめ!兄さんなんて呼ばないで!」

「じゃあ、姉さん……」

「コノヤロー、どっか行け!この嘘つき!」

「僕は……わざとじゃないんです、怒らないでください言い慣れ……」

「どけ!!やっぱりお前ら八岐とは相成れない!!!!!!!!」


海草に掴まれた袖を振り払って、怒り狂った様子であいつらの親分の元へ向かった。華奢で柔らかくて女の子みたいなこいつ!なんと!そう!男だ!!!!!


雲丹兄さん……」

「あ!!!?」

「えっと、ね、姉さん……」

「この嘘つき!てめぇはあのタコと同じ嘘つきだ!!!針を千本飲み込んで死ね!!!」

「ぼ、僕はわざとじゃないんです…」


振り返って海草の何の罪もない哀れな姿を見て、怒りのあまり手を伸ばして彼の頬を引っ張った。


「僕…僕も女の子だと言ってないですよ…」

「うっ?!……女の子に勘違いして助けて本当にすみませんでした!!!!!!!!!!!!」

「うっーーーーーー」

「八岐、これがあなたが拾ってきた子供ですか、うちの雲丹と仲がよさそうですね」

「うん。」

「これからは彼に来てもらって、雲丹と遊んでもらいましょう。雲丹も寂しくなったら君を探しに行く必要がなくなるので」

「分かった、彼に酒を送らせよう」

「とりあえず大吟醸に代わって礼を言っておきます。そちらのお酒が一番ですから」

「バカ月見団子が聞こえたぞ!!!!!!誰が寂しいですって!?

あっ?!誰が寂しいんだ?!!」

雲丹姉さん……お…落ち着いてください、女の子がそんなに怒るのは良くないです」

「コノヤローなんでこんな時は姉さんって呼ぶんだ?!」


……過程はもう思い出したくない。いずれにしても、縁があって、アタシはこのいつも穏やかでふわふわしてる奴と知り合った。


アタシは顎を支えて、タコわさびの奴の代わりにお酒を届けに来たのに、なぜか月見、ホッキガイにお酒を入れている奴を見た。

「おい、アンタも、人が良すぎるだろ」

「うん?」

「……いいよいいよなんでもない」

「……うん!雲丹……」


アタシの目を見たからか、海草は長い間悩んでから結局はアタシの事を雲丹と呼んだ。

彼と呼び方の問題についてとやかく言うつもりはないが、タコわさびの奴は珍しくアタシに頭を下げて、中華海草と何か話してやってとお願いしてきた。


「おい、アンタはなんでいつもモジモジしてんだ?」

「うっ……僕はいつも何もうまくできないから…」

タコわさびの奴の真似をしろって誰が言った、あいつのやり方はアンタには真似できない」

「でも……うっ、痛い…」

「死ぬほどバカだな、アンタに合ってるのが一番良いんだ。なんで人の真似をする」

雲丹姉さんみたいにですか…?僕もスカートを履いてる姿が綺麗だと思っていました!」

「………アンタって奴は」


彼の害のなさそうな表情を見て頭が痛くなってこめかみを抑えた。


「まあいい、タコわさびの奴がアンタに酒を持ってこさせて、何か助けになってやれって言ったんなら、これから、アンタはアタシの子分だ!」

「えっ、でも……」

「でもってなんだ!でもって!嫌なのか?!」


彼の頬をつねって力を入れて引っ張ったら、案の定想像していた通り、手触り悪くない。


「ないですないです!」

「フンっ」


Ⅴ雲丹


人間の間で、このような伝説がある。


移り気のある人なら、魑魅魍魎の夜に、あなたは見た目が艶やかな少女に出会うだろう。

やがて、優しい少女と恋に落ちるだろう。


その時、少女はいつもあなたと永遠に一緒にいると約束するだろう。


しかし、最終的に約束を果たせなかった男は、千本の針を飲み込んで死んでしまう。

彼らがかつて約束したその言葉のように。


雲丹、なぜいつもスカートを履いているんだ?」

「着たいだけかな?着たいなら、誰でも、どんな姿に成長しても、華麗なスカートを履く資格があるだろう?アタシたちはしたい事はなんでもすればいい、なんで他人の意見を気にする必要があるんだ?」


明太子は顎を支えながら、毛筆を回している雲丹を見て口をつぐんだ。

基本的に自由気ままな明太子はあまり理解できなかったようだが、急に腰に手を当てながら立ち上がってはははと大笑いをしだした。


「そうだ、オレたちはしたい事をすればいい、なんで他人の意見を気にしなきゃならないんだ。オレは天下一の明太子様になるんだ!お前はオレ様の手下だ!もちろん何をしてもいい!はははははは!」

「………ある意味、アンタみたいに何も考えなくていい性格が羨ましいよ」

「うん?」

「大丈夫、続けて」


軒下に座って外のさらさらとした小雨を見て、雲丹は灰色の空を眺めながら足をぶらぶらと揺らしている、ホッキガイはゆっくりと彼(彼女)のそばに座った。


「姉御…」

「うん?」

「アタシがこうしてるのって、おかしいと思うか?」

「変だと思う人がいるかもしれないが、私たちは『妖怪』だ。妖怪が何かをして、変って思う必要はある?」

「……それもそうだ。」

「ましてや、さっきは自分でも言ってたじゃないか?」

「えっ?」


ホッキガイはそっとひと口月見団子からの熱いお茶を飲んで、暖かいお茶は雨のもたらす寒さを追い払った。

彼女の眉目は小さく弧を描き思うままに笑った。


「自分がしたい事をすればいい、なぜ他人の意見を気にする必要があるのか?この人たちが虫けらであろうと、あなたの心の中の大事な人であろうと、自分が何がしたいかが一番重要じゃないのかな?」


雲丹は自分の髪の毛を掴んで微かに頬を膨らませた。彼は元々良い顔立ちをしている、この時はまだ少々子供っぽさが残っていたがそばのホッキガイが手を伸ばして彼の頬をつねった。


突然雲丹ホッキガイの懐に飛び込んで甘えだした。


「ありがとうございます姉御!」

「なぜ急にそれを聞こうと思ったんだ?」

「……うっ、アタシにもよく分からない」


ホッキガイは軽く雲丹のなめらかな長い髪をさすった。

この長い髪はこの時は柔らかかったが、懲らしめなければいけない的に直面する時は人を刺せるほど鋭利な刃物のようになる。


突然、月見団子が持ってきたお菓子で大人しくなっていた近くに座る明太子が飛び上がった。彼はハッとなった顔でホッキガイの懐に入っている雲丹を指した。


「あああー分かったぞ!雲丹お前はきっと女装を使って姉御にセクハラしようとしたんだろ!!!あああ!卑怯だ!!!!!!」

「どっか行け!!」

「とにかく!!お前は姉御にセクハラしたいだけだろ!姉御こいつに騙されんなよ!!!」



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ゲーム情報
タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
対応OS
    • iOS
    • リリース日:2018/10/11
    • Android
    • リリース日:2018/10/11
カテゴリ
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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