失われた雀羽・ストーリー・サブ・Ⅱ楓林
Ⅱ楓林
遊び
二人はまだ子どもだ
秋山
楓林
あちこち死んでしまった毒虫だらけ。彫花蜜煎は、まだ驚きから平静を取り戻していない蟹釀橙を見る。彼女は急に遊び心が強くなり、地面の枝を拾うと、毒虫の死体を突いた。
蟹釀橙の息が止まった。彼はその枝をじろじろ見ている。彼の心臓も彫花蜜煎に突かれているようだ。
彫花蜜煎:蟹釀橙~これを見て。
蟹醸橙:な、何を......?
彫花蜜煎:よく見ると、この虫そんな恐ろしくないよ。なんでさっきあなたはそんな大きな声で叫んだの?
蟹醸橙:......ぼ、僕は全然怖くなかったのに!
彫花蜜煎:じゃあさっきなんで地面に座りこんだの~?
蟹醸橙:えっと、えっと......木の根につまずいて転んだ......そう!木の根につまずいて転んだ!
彫花蜜煎:本当にそうなの~?
彫花蜜煎は笑って一匹の虫を拾う。その虫は完全に死んでいないので、足がまだ動いている。蟹釀橙はびっくりして後退する。
彫花蜜煎:ほら!近くで見れば可愛いよ!
蟹醸橙:こ、こここっちに来るな!!!
蟹釀橙の赤い顔を見ると、彫花蜜煎はやっと虫を捨てた。そしてしかめっ顔で拍手した。
彫花蜜煎:わかったわかった、いじめるのはここまで。どう、怪我してない?
蟹醸橙:た、ただの虫なら僕を傷つけるのは不可能でしょ。もしまた現れたら、僕は「シュー」「シュー」と全員片付けてやる......え!話まだ終わってない、待って!
彫花蜜煎は蟹釀橙が怪我をしていないことを確認すると、彼の言葉を無視し前方の三人のところに向かった。
蟹醸橙は上向くと、頭上に黒い霧が浮かんでいるのを見た。心の底が震えたった。
蟹醸橙:は、速すぎ......僕を待って-!
彫花蜜煎:早くついて来て、迷子になったらうちも何もできないよ~
親しみ
情熱は氷を溶かす、でも強すぎる情熱は……
秋山
楓林
蟹醸橙:ヤンシェズ、さっきは本当にありがとう!!君がいなければ、僕はもっとひどい目に合ってた!
蟹醸橙:本当に虫が怖かったんじゃない。ただすぐに反応できなかったんだ。僕を信じてよ!
彫花蜜煎:ヤンシェズは信じないとは言ってないのに......
蟹醸橙:......安心して。もし僕の協力が必要なら、絶対力を借してあげる!
ヤンシェズ:......
ヤンシェズにとって熱情的な蟹釀橙は苦手な相手。彼はいつものように冷たい顔を見せる事しかできない。
そして興奮しすぎた蟹釀橙は手を伸ばして、ヤンシェズを抱きしめようとする......
蟹醸橙:ええ!ーーどうして逃げるんだよ!
彫花蜜煎:あはは......彼をびっくりさせたから逃げられたのよ。
蟹醸橙:いいや、彼はきっと照れ屋さんだから!
彫花蜜煎:いいえ、あなたは何か勘違いしていると思うぞ......
蟹醸橙:......そうなの?!
蟹釀橙は首をかしげ、ヤンシェズの後ろ姿を見ると、明るい笑顔でついて進む。
松の実酒:二人とも......
松の実酒は何かを言おうとしたが、京醬肉糸の扇に阻まれた。
京醤肉糸:構わない。
松の実酒:しかし......
京醤肉糸:せっかくのお出かけなのだから、好きにさせよう。
闇
黒い霧の中で走る黒服人
秋山
楓林
黒服の人:ここ......そう、ここだ!
濃い霧に囲まれた楓林の外で、数十人の黒服の人たちが困った顔で徘徊している。
黒服の人:だ、旦那、この森は怪しすぎると思います......本当に入るんですか?
黒服の人:そう......ほらあそこで、変な影が俺たちを見ている。
他の人達は指された方向を向いたが、風で歪んだ木以外何も見えない。
黒服のリーダー:余計な心配をするな。今回の任務は極めて重要なもの、ちゃんと勇気を出せ!
黒服のリーダー:お前、お前、そしてお前も、別々に三人のチームを作って先に前の様子を見に行け!あまり遠く離れないように注意しろ!そして他の者も列を離れるな!
黒服のリーダー:列の外側の者は周りの状況を警戒する、何かあったら早く報告しろ!わかったか!
同時に返事をした黒服達は自分の恐怖心を抑え込んでゆっくりと薄気味悪い楓林に入った。周りから急に冷たい風が吹いてきた。
ううーーうううーーー
黒服の人:旦那、本当に大丈夫かな......
黒服のリーダー:振り向くな!前に進め!
どれくらい歩いたかわからない。この果てない闇と怖ろしい声に刺激された人達はもう限界に至っていた。
黒服の人:旦那、俺らずっともとの所でうろうろしていると思います......ここ、二回通った所です。
地面に散らばっている足取りを見て、リーダーも森にからかわれていることに気づいた。彼は怒った。だが突然の異変がやってきた事で、すべての人が沈黙した。
黒服の人:旦那......霧が、消えました......
楓林を覆っていた怪しげな黒い霧が、なぜか次第に消えた。赤い紅葉がだんだん黒服達の前に現れてきた。そのため黒服達の恐怖はさらに増した。
黒服の人:旦那、こんな怪しいこと、これは罠ではないですか?
黒服のリーダー:もうここまでたどり着いたのだ、罠でも前に進まなければならない!
黒服の人:は、はい-!!!
いたずら
幼稚ないたずら
秋山
楓林
寂寥として誰もいない道、果てしなく広がる漆黒、悲鳴のような風、全てがこの黒い霧で覆われた森に立ち込めている。
蟹醸橙:彫花蜜煎......あとどのくらい歩くんだ......
彫花蜜煎:知らない、館長について行けばいい。
急に、冷たい霧が蟹釀橙の首を撫でた。彼は思わず縮んだ。蟹釀橙は狐疑の目で周りを見渡すと、低い声で尋ねた。
蟹醸橙:あのさ......誰か僕たちをつけているんじゃない?......
彫花蜜煎:そうかもしれない。もし本当に鬼だったら......あなたの後ろにいる!!!
蟹醸橙:うわーーーー!
彫花蜜煎:あはははは!!!また怖がったわね!
蟹醸橙:ち、違うよ。鬼を怖がるなんて有り得ないよ!それに......ここには沢山人がいる。鬼でも近寄りたがらないよ!
彫花蜜煎は震えている蟹釀橙を見ながら何かを考えている。目は細めている。
彼女は蟹釀橙の不注意につけこんで、自分のカバンから一枚の白い布を持ち出した。そして木の影と黒い霧の闇を借りて蟹釀橙の前に来た。
???:せや!!!
蟹醸橙:うわわわーー!!鬼、鬼だーー!!
白い鬼は音もなく蟹釀橙とヤンシェズの前にきた。蟹釀橙は思わず大きな声で叫んだ。
ヤンシェズ:......
彫花蜜煎:あははははは!!
蟹釀橙の反応を見ると、彫花蜜煎は白い布を解いて腹を抱えて笑った。ヤンシェズはこの茶番を見て仕方のない気持ちになった。だが他の人から見ると、彼は相変わらず冷たい顔を見せている。
偶然この一幕を見た松の実酒も思わず首を横に振る。
松の実酒:やれやれ......
奇聞怪談
子どもを怖がらせる館長
秋山
楓林
京醤肉糸:ここは少しうさんくさい、気をつけた方が良い。
松の実酒:何か見つけましたか?
松の実酒はちらりと京醬肉糸を見た。彼の相変わらず落ち着いた表情はいつも松の実酒を安心させる。
蟹醸橙:館長!!!ひそひそ何を喋ってるの?僕たちにも教えてよ!
彫花蜜煎:館長は重要なことを相談しているんだから邪魔しないの!!
松の実酒:私たちは遊びに来ている訳ではありませんよ。
京醤肉糸:怪談の話をしているんだ。
想定外の答えを聞いたようで、松の実酒は思わず眉をひそめた。彼には京醬肉糸の考えがわからない。
蟹醸橙:怪談の話?面白そう、僕にも聞かせて!
彫花蜜煎:うちは知ってるよ~その怪談。中には鬼が怖いという人がいる。普通の人には見えないものが見える。普通の人には聞こえない音が聞こえる。
彫花蜜煎の話がまだ終わらないうちに、風の音は悲鸣をあげたり、泣いたり、笑ったり様々な音に変わる......極めて怪しい。
蟹醸橙:な、なな何か変な声が聞こえた?!
彫花蜜煎:ええ?ーー何も聞こえないよ、気のせいじゃない?
松の実酒:......
蟹醸橙:いいや!絶対何かいる!
蟹醸橙:ほ......本当に?
蟹釀橙は慌てて尋ねる。その時、何本かの枯れ枝がすさまじい勢いで落ちてきた。まるで細長い爪のように。蟹釀橙の顔はすぐ真っ青になった。そして彼は来た道へ走り去った。
彫花蜜煎:ほ、本当に逃げた???
ヤンシェズ:......
黒い影
林で徘徊する怪しい黒影?
秋山
楓林
ヤンシェズ:(どこにいるかな......)
京醬肉糸のお願いで仕方なく、ヤンシェズもー緒に蟹釀橙を探しに行った。
彫花蜜煎:蟹釀橙!危ないから早く戻ってきて!も、もうさっきみたいなことしないって約束するから!
彫花蜜煎:蟹ー釀ー橙ー!!!
彫花蜜煎の声が森中に木霊している。もう一方、ヤンシェズは自分の方法で蟹釀橙を探す。彼は地面の足跡で蟹釀橙の逃走経路を推測する。
蟹醸橙:うわやっと見つけた!この森怖すぎる。君がいなければ僕は出かけられないかもしれない。
ヤンシェズ:(足跡......ここか......)
ヤンシェズはしっぽで虫を片付けながら、蟹釀橙を探す。
しばらくして、彼の足が止まった。目の前に広い空地がある。そしてサイズが違う、様々な足跡が重なっていた。
ヤンシェズ:(あの人のじゃない......)
ヤンシェズ:(僕たち以外......また別の人がいる......)
蟹醸橙:ヤン、ヤンシェズ?!ヤンシェズかい!僕はここに、ここにいるんだ!
馴染みのある声がヤンシェズの注意を引いた。一人が黒い霧から出て救世主に会ったようにヤンシェズの胸に飛び込んだ。
蟹醸橙:ねえ知ってる?さっきあそこにたくさん黒い影がいた。そして僕がまばたきしたらまた居なくなった!
ヤンシェズ:......
ヤンシェズは再び地面の足跡を見て、次に警戒心を持って周りの様子を見る。だが怪しい者を見つけられない。
ヤンシェズ(人がいない......?)
蟹醸橙:何を見てるの?びっくりさせないで!!!は、早く戻ろう!!!
ヤンシェズ:......うん。
怪我
泣けない子ども
秋山
楓林
黒い霧が散った楓林は本来の姿に戻ったので、警戒していた一行の気持ちも良くなった。
蟹釀橙も足取りがだんだん楽になった。周りを見渡すと、ヤンシェズの少しこわばった、良くない顔色に気づいた。
ヤンシェズ:......大丈夫だ。
蟹醸橙:この紅葉をあげよう。これは僕が拾った中で最も綺麗な一枚。これを見れば、気持ちが良くなるかもしれない!
ヤンシェズ:要らない。
蟹醸橙:じゃあ、僕の変わりに一時的に保管しておいて、お願い!
ヤンシェズ:......
蟹醸橙:えっ......待って......君の手?!
蟹釀橙の声が急に高くなった。疑惑の目でヤンシェズを見る。ヤンシェズの表情はさらに固くなった。
しかし他の人はヤンシェズが後ろに手を隠す動きに気づき、手を捕まえた。
京醤肉糸:私に見せてくれても良いか?
蟹醸橙:館長に見てもらおう!館長は何でもできるから!
ヤンシェズは仕方なく、自分の手を前に伸ばした。彼の指は赤く腫れていた。腕のサイズも本来の二倍になっていた。指先にも小さな赤い点がある。
京醤肉糸:あの毒虫に刺されて腫れたか。
ヤンシェズ:うん......
蟹醸橙:あ......きっと僕を助けた時にあの虫に刺されたんだ!!なんで言ってくれないんだよ!ゴメン、全部僕のせいだ!!
ヤンシェズ:だだの虫だから......大丈夫。
京醤肉糸:の実酒と一緒に見たが、私たちにとってこの毒は致命的なものではない。そして貴方の体質ならすぐ回復できるはず。だだ暫くの間は少し辛いかもしれない。
ヤンシェズ:わかった......ありがとう......
蟹醸橙:本当?良かった!館長がそう言ってくれて僕も安心した!ヤンシェズ、痛くない?歩けない?背負ってやるから乗って......。おい怪我してるのにそんなに早く歩かないで!
彫花蜜煎:彼はただ刺されて腫れただけよ。足が折れた訳じゃないし、頭が悪くなった訳でもないよ。
蟹醸橙:......
幻境
誰の仕業だ?
秋山
楓林
彫花蜜煎:おい蟹釀橙ー!どこにいるの?
彫花蜜煎は叫びながら蟹釀橙を探す。だが彼女は前に行くほど、周りが広々としているように感じられた。
彫花蜜煎:おかしいなあ......誰かいるの?......蟹釀橙?ヤンシェズ?
自分の声しか聞こえない。彼女は思わず生唾を飲みこんで足取りを緩め、暗い無人の林を眺める。
彫花蜜煎:館長?副館長?
しかし彼女に返事するのは果てない静寂だ。自分の息まではっきり聞こえる。恐怖がますます背中から登って彼女の理性に食い込む。まるで数匹の蟻に噛まれているかのように、全身が痺れる。
彫花蜜煎:......
黒い霧は風を通さない繭のように彼女を囲む。残されるのはただの闇、彼女は逃げようとするが、ーつの見えない手に掴まれたと感じる......
彫花蜜煎:助けて!あああ............
次の一秒後、地面が陥没し始めた。彫花蜜煎はは自分の体がコントロールできずに下に落ちていると感じた。下は底知れぬ深淵である。
彫花蜜煎:あああーー!!!
蟹醸橙:雕花蜜煎!
激しく揺れ動く中、誰かが彼女を引っ張ったようで、眩しい光が深淵を破った。彫花蜜煎はぱっと瞼を開くーー
蟹醸橙:ああ!痛い!!頭が痛い......何をしているんだ!
荒い息をして、全身冷や汗をかいている彫花蜜煎は驚きの目つきで周りの様子を見る。そして自分が木の下で横になっている事に気づいた。前の蟹釀橙は額を押さえて何かを咳いている。遠くないところでヤンシェズが木に寄りかかっている。
彫花蜜煎:あなたたち......?
蟹醸橙:痛い......僕の頭がそこまで丈夫じゃなかったら......
彫花蜜煎:あなたたち、どうしてここに......
蟹醸橙:それはこっちのセリフだ。僕とヤンシェズがここに来た時、横になっている君に気づいた。どんなに声を掛けても起きなかった。正直言ってくれ、君は悪夢を見たのか?ーーでもこんな時に、ゆっくり寝てる余裕があるなんて、さすがだなあ!
彫花蜜煎:さっき......幻の世界に迷い込んでたみたい......それから崖から落ちた......
蟹醸橙:なに??幻の世界に迷い込んでた??どうして......
彫花蜜煎:この黒い霧のせいかもしれないい......さっき......この霧いっぱい吸い込んだから......
蟹醸橙:じゃあ、体は大丈夫?!
彫花蜜煎:大丈夫だよ、あなたたちのお陰で。そうだ、早くこのことを館長に教えなきゃ!
法陣の急所
この楓林は一筋縄ではいかない
秋山
楓林
彫花蜜煎とヤンシェズは蟹釀橙を探しに行っている為、楓林は再び静かになった。
松の実酒:私たちは行かないのですか?
京醤肉糸:留守番が必要だ。そして人を探すならあの二人だけで十分だ。
京醤肉糸:あの子はそんなことをしない。
松の実酒:まあ良いでしょう......次はどうするおつもりで?
松の実酒:この楓林は確かにおかしい。故にできる限り、無理やり突き進む事は避けたい。
京醤肉糸:この黒い霧も、理由なくここを囲むものではないはず。
松の実酒:つまり......ここには何かが隠されるという意味ですか......?
京醤肉糸:前方のあそこを見なさい。
松の実酒は京醬肉糸に指される方向を見ると、視線が徐々に引き締まった。
松の実酒:どうしてあそこの霧はあんなに濃い......
京醤肉糸:私の予想が正しいなら、あそこは法陣の急所。
蟹醸橙:館長!戻って来たよ!
遠い所から届いた声は二人の思考を中断させた。ヤンシェズ以外の二人は何かを言いたそうだ。
京醤肉糸:その様子、もう怖くないのですか?
蟹醸橙:館長、それはもう過去の話だから言わないで......
京醤肉糸:その顔、また何かあったのか?
彫花蜜煎:館長、あの黒い霧たくさん吸い込んだら、幻の世界に引き込まれる事に気づいたよ!
彫花蜜煎は自分が幻の世界に落ちたことを京醬肉糸と松の実酒に言った。松の実酒は眉をひそめて厳粛な顔を見せる。京醬肉糸は扇子を振って何かを考えているようだ。
松の実酒:ここは未知の危険が多すぎる、もっと注意しなければなりません。特にお二人、もうむやみに暴走しないで欲しいです。
蟹醸橙:
わ......わかったよお......
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