失われた雀羽・ストーリー・サブ・Ⅲ山荘
Ⅲ山荘
蘇生
彼が目覚めた
地下宮殿
某所
無限の闇の中、時間の流れは果てしなく続いているようだ。
一つの星は急に弱い光を放った。一つの小さな手がゆっくりとそれをつかんだ。そして、他の所から光が沢山集まるに伴い、一つの懐かしい力も注がれてきた。
意識は虚無から戻ってきた。男の子みたい人は千年の夢から起きたように、ゆっくりと目を開ける。
妖鏡:ここは……ああ……痛い……
妖鏡:思い出した……あの野郎のせいで!!!あの変な服を着た野郎が僕をここに閉じ込めたんだ!
周りの広い祭壇を見ると、妖鏡は怒りながら立ち上がって体を動かした。
妖鏡:どのぐらい寝てたんだ……朱雀様がどこにいるかもわからない……
妖鏡:ふん、あの野郎は独りよがりでこの法陣を作ったけど、今更力が弱まった。フン、そんな弱いもので僕を釘付けにできるつもり?
妖鏡:どこかに遊びに行くかな……
妖鏡は腰を伸ばして、取り戻した自由を味わう。
急に、遠くから異質な波動が彼の意識に入ってきた。
妖鏡:この気配は……人間か?ここにまだ人間がいる?
何かを考えているかのように、鏡の妖の目玉がくるくると回り、ゆっくりと笑顔を見せた。
妖鏡:えへへ~人間は妖怪や鬼を一番怖がるらしい……だから……ヒヒヒヒヒ……
未知の要素
法陣に影響を与えたのは?
地府
法陣
一人の青年は複雑な法陣の中に立っている。そして遠くないところから一つ小さな影が彼の方へ歩いて来る。
高麗人参:ここの法陣の力が弱くなりました、少しばかり修復した方が良いです。
高麗人参:諦聴、機関城に連絡して下さい。
猫耳麺:わかりました。
猫耳麺:でも……どうして急に力が弱くなったのでしょうか?……何か起きたのでしょうか……?
高麗人参:この世界の法陣は数え切れない程存在する。その中の原理、吾でも全て理解できる事ではありません。
高麗人参:しかし中の危険性は必ず城主様にお知らせしてください。
猫耳麺:かしこまりました!
言い終わると青年はまたゆっくり目を閉じた。
分散
はぐれた
秋山
古い陵墓
京醤肉糸は顔色を変えずに服についた埃を拭き取りながら周りの様子を観察する。
松の実酒:大丈夫ですか?
京醤肉糸:平気だ、貴方は?
松の実酒:私も大丈夫です。でもこれで本当に分散しました。
巨大な岩が上の穴を完全に塞いでしまった。周りには六本の暗い路地がある。ある路地の先からは、岩が落ちてくるような重苦しい音が聞こえてくる。
松の実酒:あの子の状況もわからない。
京醤肉糸:こうなってしまったからには心を落ち着けて臨もうという奴だ。
松の実酒:ここは罠ばかりです。落ち着く事等できませんよ。
京醤肉糸:心配するな、あの子たちの腕を磨くチャンスとして扱おう。
松の実酒:そうですが、早く彼らを見つけなければなりません。
京醤肉糸:あらあら、親より気苦労が多いね。
松の実酒:……こんなにたくさんの通路がありますが、どれが出口ですか?
京醤肉糸:待て、何か来る。
松の実酒がすぐ止まると。半身の構えで深淵のような道を鋭い目で見た。
ほぼ同じ時、道から金属の衝突音が聞こえてきた。利器を持った十数人の青銅の兵士が群がって道から現れて二人を真ん中に囲んだ。
京醤肉糸:なるほど、墓を守る兵士だ。
松の実酒:青銅の兵士?なかなかの数ですね。
京醤肉糸:まあ、所詮勢いしかない者共だ。
松の実酒:でもあの子たちがこれにあったら大変な目に合うでしょう。
京醤肉糸:ではさっさと目の前の奴らを片付けよう。
松の実酒:ええ、ただ時間の問題です。
到着
神物はここだ!
秋山
古い陵墓
京醤肉糸は玉佩の神物の在り処を示す反応に従い、霊廟の道のりをひたすら歩いている。
京醤肉糸:玉佩、また反応したようだ。
松の実酒:位置を確定しましたか?
京醤肉糸:反応が弱い、まだ距離が遠すぎるのかもしれない。
松の実酒:ここの環境は入り組んでいます。だから感応するのも容易ではないのでしょう。
京醤肉糸の手に握られている玉佩は二人の移動に伴い淡い光を放っている。
京醤肉糸:私の判断が正しいなら、神物は大体この方向にある。
松の実酒:ではこちらに行きましょう、途中であの子たちに会いたい所です。
京醤肉糸:そうであって欲しい、行くぞ。
道に踏み込むと、薄風が吹いて、通路の中にどれぐらいの酸味がたまっているかわからない臭気がした。そのせいで、二人は期せずして眉をひそめた。
京醤肉糸:待て……
松の実酒:また青銅の兵士ですか?
京醤肉糸:いや、この光を見てくれ。
松の実酒:安定したように見えます。そう考えると、私たちは神物に段々近づいているようですね。
そう言って、京醤肉糸は急に何かを感じた。地下から奇妙な波動の反応があった。最初彼は自分の錯覚だと思った。
松の実酒:なぜ急に止まったのですか?
京醤肉糸:驚いたな。
松の実酒:何に気づいたのですか?
京醤肉糸:地下から妙な波動をこの玉佩から感じた。
松の実酒:つまり……
京醤肉糸:神物はここの真下にあるはず。
松の実酒:では早くあの子たちと合流しなければ。そして地下に通じる道を探さなければなりません。
確保
利欲をむさぼって後の危険を顧みない
秋山
地下宮殿
黒服の人:旦那、目標はこの陵墓にあると確定しました、やりますか?
黒服の人は陰険で辛辣に話す。手刀で自分の首を切り付ける手振りをする。
黒服のリーダー:もう一回強調する、目標を傷つけるな!この命令に逆らう奴は絶対に許さない!分かるな?
黒服の人:わ、わかりました!!
黒服のリーダー:そして、あの銅鏡も壊してはいけない!
黒服の人:はい、全て分かりました旦那!
黒服のリーダー:必ず万全を確保しなければならない。各入り口で待ち伏せする準備はできたか?
黒服の人:旦那の指示により全て完了しました。必ず誰も逃げられません!
黒服のリーダー:今回の任務は極めて重要なことだ。何か意外なことが起こるのは見たくない。
黒服の人:ご安心ください、全ては順調です。旦那のご命令をお待ちしています……
黒服のリーダー:よし!任務開始!
黒服の人:はい!!
色々な武器を持つ黒服達はすぐ中に突入した。男の子は多勢に無勢であちこち逃げ回る。しかし捕まえられるのも時間の問題。
???:君たち誰だ?なぜ僕を捕まえる!
???:こっち来るな、さもないと人を呼ぶよ!
黒服のリーダー:喉を壊す程叫ぼうが誰も助けに来ねえよ。
???:助けてーー!助けてーー!
男の子がどうやって助けを求めても、黒服達は無慈悲に彼を追いかける。
しばらくして、男の子は黒服達に捕まえられた。
黒服の人:旦那!目標の確保が成功した!
黒服のリーダー:よし!早くここから離れる。
彼らは知らない、この洞窟の中で、火を見るような細長い目が、この一連のすべてを瞳に収めていた事を。
朱雀様
愚弟の自己修養
秋山
古い陵墓
妖鏡:ふん!朱雀様がいれば、あの人たちは絶対ここに来る勇気はなかった!
妖鏡:彼らが僕に近寄る前に、朱雀様がきっとボコボコにしてくれていた。
妖鏡:いいや……朱雀様がいれば、彼らは入ることもできない!
妖鏡:知ってる?朱雀様の喧嘩はすごかったよ。朱雀様より喧嘩が強い人は見たことがない!
蟹醸橙:君の言葉を聞いてたら、僕も朱雀様に会いたくなってきた!きっとカッコイ方だ!
妖鏡:もちろん、かつて朱雀様は一人の……見た目がおかしい人と喧嘩したことがある。朱雀様がこんな感じで手を振ると、あの人は遠くに投げられて、怪我して逃げた。
妖鏡:こんな風に「ヒュー」って、あの人はダメだ!
妖鏡:今考えても……ああ!朱雀様、やっぱりかっこ良すぎる!
妖鏡:そうだ!朱雀様は強い人と喧嘩したこともある!あれはどこの誰だかわからなかったけど、本当に強かったぞ。
妖鏡:でも君には想像できないだろう、こっちは朱雀様一人しかいない。向こうはこーんなに大勢だったのに、あの方はまた圧勝した!
興奮する妖鏡は蟹醸橙たちに真似して見せた。
久しぶりに人と話をしたせいか、妖鏡は朱雀に関する話を永遠と喋り続け、皆も静かに聞いていた。
妖鏡:本当にもう一度朱雀様に会いたいなあ……
蟹醸橙:ごめん、もうすぐ着くかな?朱雀様の尾羽が置かれた所に。
妖鏡:んんん――ちょっと考えさせて、もうちょっと歩くかな!
妖鏡:ふふ、あれはこの世で最も美しい宝物だ!よく見てね。
深淵
より深くに隠されている秘密……
秋山
古い陵墓
妖鏡の救出が成功した後、京醤肉糸たちは妖鏡に付いていき、朱雀の神物が置かれたところに行く。途中で妖鏡の熱烈で高揚とした声が響いた。
妖鏡:朱雀様の羽根はちゃんと大切にしてね!
京醤肉糸:ありがとう、こんな重要なものを私たちに渡してくれて。
この時、先程までずっと闇の中で彼らを付け回していた人は消えてしまった。
しばらくして、かすかな足音が漆黒の向こう側の通り道から響き渡る……
明四喜:聖教ですか……まあ、今はそのときじゃないですね。
明四喜:あれに比べて、重要なものは何もない。
明四喜は微笑みながら首を横に振って、気楽な調子で暗い道を踏み込んだ。
彼は四喜鏡を持って、鏡の指示に従ってゆっくりと歩いている。
明四喜:妖鏡がここに閉じ込められているのは必ず別の理由がある。
明四喜:手がかりはこの辺にあるかもしれない。
目の前の行く手は巨大な岩に阻まれている。だがこの男はそれでも笑みを崩さない。
明四喜:……墓穴が崩れ落ちるのは面倒ですね。
明四喜:そこまでする必要はないと思ったのに、まあいいでしょう。
彼は四喜鏡を触ると、後ろの深淵に視線を移した。
収穫
情報過多
秋山
古い陵墓
暗い道に急に未知の光が現れた。その光は道の汚い物を全て照らし出した。しばらくして、その光はまた消えてしまった。
明四喜:この反応、なかなかの収穫のようですね。
滑らかな鏡の上に、奇妙な波紋が現れ、淡い光が集まって、鏡の上にぼんやりとした影が見えてきた。
明四喜:(妖鏡はやはり彼にここで封印されていた。)
明四喜:(普通の人間が死物に出会ったら、恐らく命が持たない。)
明四喜:(こんなにも多くの堕神が封印されているとは、さすが彼だ。)
鏡の上ではまだ画面が切り替わっている。
明四喜:ここの地形は思ったよりずっと簡単です。
明四喜は鏡の変わり方を見ている。画面の流れの間に、数え切れない情報が相次いでいる。
沢山の光が点滅している画面が瞬く間に鏡の上で消えてしまった。明四喜がその場に集中していなかったら、その大切な場面を見逃していたに違いない。
明四喜:やはり、これは光耀大陸の地図。
明四喜:そう見れば、この光は墓の位置。
こんな重要な情報を得ても、明四喜の顔はまたいつも通りの様子だ。全ては彼の予想通りだったようだ。
運命
妖鏡の運命
秋山
古い陵墓
朱雀の尾羽が放つ輝きは墓の中にも流れている。松の実酒は匣子を閉じると、用心深く匣を収めた。蟹醸橙はまた名残りを惜しんでいる。
彫花蜜煎:もうしまわれちゃったんだからそんな目を見せないで。
蟹醸橙:きれいすぎるからさ――
彫花蜜煎:よだれをふいて。出るよ。
妖鏡:朱雀様の物なんだから、最も良い物に決まっている!
妖鏡はそう言うと、自分の鏡を持ち出して自慢しようとしたが、鏡が半分割れていることに気づいて、落ち込んだ。
妖鏡は見せびらかすのを諦めた時、急に呆気にとられた――自分の手が透明になっている。自分の注意がずっと朱雀の羽根に集中していたせいで気づかなかった。
妖鏡:(僕の手……いや……僕の力は……)
今さらやっと気づいた、自分の力が法陣と一緒に時間とともに失われて行く……
妖鏡:(……やっぱり……時間は残りわずかだな……起きたのに……また朱雀様に会えないのか……)
彫花蜜煎:鏡ちゃん、どうしたの?そろそろ行くよ。
彫花蜜煎の言葉を聞くと、彼の意識は戻った。
妖鏡:え?おおお!……何でもない。行くよ!
言葉では言い表せないような感覚が妖鏡の心の中に湧き上がってきた。これからどうすればいいのかわからない。だが彼は頭を上げて前方で自分を待っている京醤肉糸達を見て、無意識に両手を袖の下に隠した。
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