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マンゴープリン・エピソード

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マンゴープリンのエピソード

清純派を装っている、計算高い少女。

人気者もしくは注目の的になりたがっている。

競争意識が強い



Ⅰ 述懐

ずっとスポットライトを浴びてきた。人に注目される感覚が好きなの。

もっと正確に言うと、人の上に立つ生活を楽しんでいる。


そう、たとえ御侍様だとしても例外じゃない。


「ドン…ドン…」

2度の緩やかなノックがあたしの思考を中断させた。


「あ~御侍様~」

振り返ると、御侍様がなんの表情もないまま入口に立って、あたしを見ていた。

「御侍様、会いに来てくれたの?」

御侍様は楽譜をドア近くのキャビネットの上に置いた。


「御侍様はあたしに一番優しいよね!」

大喜びで飛んでいき、あたしの御侍である人類を抱きしめた。


あたしの御侍は役に立つ方だろう。

なぜかって?

この人類は人気のあるくだらない物語を書けるほか、作詞作曲ができるのだ。

これはあたしにとって一番大事なポイントで、そういった人類こそあたしの御侍に相応しい。


あたしはあたしと御侍の才能のおかげで、すぐに大勢中から抜け出し、アイドルになった。


「気に入ってくれればいい。」

御侍は愛用の大きなノートを取り出し、そう書いてあたしに見せた。


「御侍様が書いてくれたものだもん、気に入るに決まってるよ。」

あたしは満面の笑みで答えた。


「無理をして笑う必要はない。」

御侍はまた無表情でそう書いた。


たぶん、これがこの人の一番嫌いなところ。自分は無表情のくせに、勝手にあたしの気持ちを推し量る。


「御侍様、ホントだよ、ちっとも無理なんてしてないよ~あたしは御侍様のことが大好きなの!」

誰にでも通用する台詞も、彼だけは喜ばせることができない。

「御侍様は?あたしのこと好き?」


御侍はただ無表情で私を見つめている。淡い金色の髪とエメラルドの瞳、感情の無いきれいな人形のよう。


沈黙がいつもの彼の答え、この質問にも答えが返ってきたことはない。

聞こえてくるのは外のザバーンザバーンと言う浪の音だけ。


ここは海辺に近い住宅で、普段人が来ることはめったにない。


御侍は何も言わず、いつも静かに窓の外の海を見つめている。

人形と言う言葉は、彼を形容するのにぴったりだ。


でも、そんなことあたしにはどうでもいいこと、あたしはアイドルとしてずっとトップに立っていられればいい。


神様がこんなに私を愛してくれるなんて思いもしなかった。

こんな恵まれた環境は、この世界の一般人からするとこの上ないことだ。

無口な賢い人形も、あたしにとっては都合がいい。




もちろん、まさか他の食霊が同業者になるなんて思いもしなかったわ。


あたしがアイドルとしてデビューしてから間もなく、ゼリーとかいう食霊が突然あたしの前に現れた。

マヌケな笑顔で、いつも大勢の前であたしに挨拶をする。


あ~あ~あのへらへらした顔、見るだけでムカつく~

何もわからないなら、みんなを幸せにしたいなんて適当に言わないで!






絶望も味わったことないくせに。


Ⅱ 追憶

(編集者の判断で行間や誤謬、文体や感嘆符など修正しました。違和感や原文との乖離などありましたら編集していただけると幸いです)


来世を信じたことある?

なぜだろう、あたしは過去の自分をはっきりと覚えている。

それは…あたしがまだこの物語の主人公となっていない時のこと。


走り続けるあたしの手は、痩せた小さな影に引かれていた。

ややカールした金髪が風にそよぎ、息切れの合間に声が混ざった。

「ここを離れなくちゃ!」

ここを離れなきゃならないのは、わかっている。

だから、あたしは暗闇の奥に向かって走り続けた。



体が微かに震えた。もう少しで休憩室の椅子から落ちるところだった。こんな嫌な夢を見ることは久しぶり。まったく、気分が悪くなる。

しかし、嫌なことは続くもの。目が覚めた途端、またあたしの機嫌を悪くするヤツが目に入った。


「こんにちは!マンゴープリン!」

笑顔過剰なヤツ。ホントよく毎日元気満々で挨拶できるものね。

「こんにちは!ゼリー

社交辞令なら負けない。

マンゴープリン、明日撮影の仕事があるって聞いたよ。すご~い!」

「焦らないで、あなたも今後同じような仕事が来るわよ!」

彼女が皮肉を言っているのか本当のバカなのか、わからない。

「本当?」

ゼリーは突然嬉しそうな様子を見せたけど、また急にガックリと肩を落とした。

「でもプリンがコンサート以外、他のイベントには参加させてくれないの」

そんなに失望するほどのことじゃないでしょ!あんたのマネージャーはあたしの役立たずのマネージャーよりよっぽどましよ。

プリンか~、本当にあなたを大事にしてるのね」

どうしてあたしが他人に代わって説明しなきゃならないの?こいつあたしがこれ以上この話を続けたくないんだって気付いてもいないの??


マンゴープリン!明日の衣装を試着してみて!」

声が突然外から聞こえてきた。

ゼリー、迎えが来たから行くわね」

「うん!お邪魔しました~、またね~」

「うん、またね」

ようやくゼリーとの会話を終え、向かい側の部屋に入った。しかし、また目障りなヤツが現れた。



オレンジジュース、あなたのセンスは素晴らしいわ!前回勧めてくれた衣装、ホント素敵だった!」

「それはあなた自身がもう十分綺麗だからよ」

「あら、そういえば、この前パーティに参加した時、あなたがくれたアクセサリー、あれを見た友達がずっとどこで買ったの、って聞いてくるのよ!」

「本当?お友達が気に入ったのなら、今度また作ってあげる」

「これ自分で作ったの?」

「そうよ、ただの趣味だけど」

「本当にすごいわ」

ああ、どこに行っても嫌なことってあるのね!あたしが主役でしょ!どうしてあたしのアシスタントとメイク係がセーラー服の怪しい女を囲んでいるの!?


「みんな、お待たせ!」

いつも通りの笑顔であたしは部屋に入って行った。

マンゴープリン、早く来て!」

アシスタントが可動式ハンガーラックを引っ張りながらあたしにそう言った。

「これ全部、オレンジジュースが選んでくれた衣装よ!」

オレンジジュース?」

「ここでしばらく実習しているオレンジジュースです、よろしくお願いします」

オレンジジュースは礼儀正しく挨拶した。こういった場面に明らかに慣れている。

「素敵な衣装ばかりね!ありがとう、オレンジジュース

当然、あたしも礼儀正しく返事をした。ゼリーもあたしをムカつかせるが、なぜか目の前にいるこのオレンジジュースとかいう食霊に、もっと強い敵意を覚えた。

「気に入って頂けたならよかったわ」

彼女は頭を傾けてあたしを見つめ、笑いながら言った。

あたしとは違う大人な笑顔。こういう人を見ると苦い思いがこみ上げてくる。あたしはラックから適当に衣装を選び、合わせてみた。

「すごく似合ってる~!」

「ほら、やっぱり自分のセンスを信じるべきよ!」

あたしのアシスタントはなぜか子供のように喜んで、オレンジジュースに言った。

マンゴープリンが気に入ってくれればいいの。あ、ネクタイが曲がってるわ、直してあげる」

オレンジジュースはごく自然に手を伸ばし、ネクタイを直すとそっと自分の髪をかき上げた。

「あ…ありがとう…」

アシスタントはしどろもどろだ。ふん!ホント目障り!


「そうだ、一緒に撮影現場に行きましょうよ!ずっと海を見たいって言ってたじゃない?」

隣のメイク係が突然話題を振ってきた。

「でも…」

オレンジジュースは突然困惑した顔になった。

「そうよ!オレンジジュースは衣装だってアクセサリーだってすごくセンスいいし~」

あたしは唐突に言った。

「そうそう、その通りよ!」

予想通り、周りの人はあたしの言葉に乗ってきた。

「ただ好きでやってるだけよ」

「ならよかったわ!正直今回の撮影は心配だったのよ!写真の仕事は初めてだから、あなたのようなアシスタントがいたら、きっとうまくいくと思うの」

あたしは甘えるように言った。

オレンジジュース、OKしてあげて?」

「その…」

「ダメ?」

あたしは無邪気な瞳を向けた。この手はこれまでに失敗したことがない。

「分かったわ…」

みんなの注目を浴びる中、オレンジジュースはやっと頷いた。

あたしの口角が思わず上がる。

そうよ。すべてはあたしのためにある。あたしの思うままになるの!


Ⅲ 嘘

(Ⅱと同様に、編集者の判断で行間、誤訳っぽい文章など修正しました。違和感や原文との乖離などありましたら編集していただけると幸いです)


うららかな早朝。みんなは撮影のためにバタバタしているが、主役のあたしはただ出番を待てばいいだけ。

ここは御侍様の家から近い砂浜だ。退屈な時間を過ごしていると、オレンジジュースも約束通りやって来た。

「どうした、オレンジジュース?どうして顔を隠しているんだ?」

誰かが言った。何気なく視線を向けると、サングラスにマスクをつけたオレンジジュースがそこに立っていた。

「昨日うっかりして風邪を引いちゃって、ごほごほ…」

「海に来られるからって喜びすぎた?オレンジジュースも意外と子供っぽいのね!」

「ええ、そうなの」

オレンジジュースはそれ以上説明しなかった。

笑える会話だ。食霊が病気になる?そんなこと初めて聞いた。どうやら、オレンジジュースは何かを隠しているみたい。その秘密さえ掴めたら、この目障りな食霊をあたしの目の前から消すことができる。

…そう考えたのだが、なぜか先ほどからどこにもオレンジジュースの姿がない。あいつ、まさかもう帰ったんじゃ!?


突然、自分をおかしく感じた。せっかくの休憩時間なのに、ずっと自分の嫌いな相手を探してるなんて。探すのをやめて御侍様に会いに行くことにした。だが、家の近くまで行った時、ガサゴソ音がするのが耳に入った。

「早くしろ!」

「慌てるな、ここには誰もいないさ」

二人の見知らぬ人物が小声で話している。まさか泥棒!?今家にいるのは御侍様だけだ!

考えるより先に身体が動き、あたしは飛び出した。しかし目にしたのは二人の黒ずくめの人物が気絶したオレンジジュースを連れ去ろうとしているところだった。

「あなたたち、何をしてるの?」

目の前の怪しい二人組を見ていたら、不安な気持ちが突然心の中で広がった。すぐに、あたしが忘れたくて仕方がない闇がまたあたしの心を飲み込んだ。



暗くじめじめした空間は狭く汚れている。鼻を刺すような、賞味期限を過ぎた食べ物の匂いがする。ああ、まるで下水道のような悪臭!子供たちはボロボロな服を着ている。棒のように痩せた体からはぶかぶかの粗布の服がずり落ちている。

これがこの世界のどん底。

「見ての通りよ。この福祉施設はもうもたないわ」

「私たちには貴族の施しが必要なの。どんな代償を払おうとも、ここをなくすわけにはいかないの」

「だから、マンゴープリン、子爵様のところへ行ってくれないかしら」

「ああ、本当?承諾してくれる?よかった!」



うそつき!うそつき!全部嘘!



「君を愛しているよ。自分の子供のように、ずっと愛しているよ」

「信じてくれ、絶対君を捨てたりしない」



黙れ!もう聞きたくない!




Ⅳ 懐かしい思い

泣きながら訴えていた人の顔はもう覚えていない。

唯一覚えているのは、あの人が着ていた、黒づくめの人のような真っ黒なローブ。それから夢の中で悪魔のような囁きを繰り返す口。


突然、暗闇の中に、上から微かな光が一筋差し込んで来て、それから、あたしの目の前に金色の糸が現れた。

何故かはわからない、あたしの手を引きここを離れるよう言った子どものことをまた思い出した。


そうだ、もう二度と深淵には落ちない。あたしは誰かの付属品じゃない。


今のあたしは、どこにいても一番輝く、一番特別な存在なのだ。





気が付いたら、黒づくめはどちらもあたしに倒されていた。

黒づくめが目覚める兆候を見せたので、オレンジジュースを連れこの物騒な場所を離れた。




ドアを開け、御侍の家に戻った。

ここはあたしが唯一思いつく安全な場所だ。


御侍はまだ部屋の中にいるようで、ひとまずオレンジジュースをソファーに置いた。


追い払いたい相手をここまで連れてくるなんて。

「ちっ、まったく。早く放り出さなきゃ。」


嫌悪を隠すことなく実行しようとした。

と、御侍がよりにもよってこの時に部屋から出て来た。


「あ~御侍様、ど……どうして出て来たの?」


そわそわして声まで少し震えていた。


「今日は撮影じゃ?」

御侍はいつでもノートを取り出せる。


「そうよ、近くだったから、戻ってみたの。」

「その人は?」

「あ!彼女はオレンジジュース、急に具合が悪くなっちゃって、だから、連れて来たの。」

言いながら、あたしはすぐ身体でその存在を隠した。

「御侍様は部屋に戻ったら~あたしたちもそろそろ行かなくちゃ。」


オレンジジュースはここに置いて行って」

御侍のこの言葉は完全にあたしの予想を超えていた。

どうしてまたオレンジジュースなの?御侍様まで…


オレンジジュースと海は恐らく相性が悪い。」

御侍が書いたこの言葉、暗にオレンジジュースは海辺に行けないってことを言ってるの?





「え?私、どうしてここに?」

ぼんやりとした声が背後から伝わって来た。


目覚めるタイミングが良過ぎるでしょ!


マンゴープリン?そちらは…あなたの…御侍様?」

オレンジジュースはいぶかしんでいたが、突然なにかを思い出したように、ソファーに座り直した。

彼女は私の前まで歩いて来て、またあのムカつく口調で言った。

「本当にごめんなさい。きっとご迷惑をかけたわよね~」


「そんなことない。」

御侍様が素早くノートに書いたが、オレンジジュースはまったく気にしていない。

「お礼に、私に何かやらせてくださいね~」


「あ!十分!なにもしなくていいよ!って言うか、むしろ何もしない方がいいから!」

その瞬間、部屋ごと静止したように、誰も口を開かなくなった。

マンゴープリン自身さえこんな気づまりな状況に陥るとは思っていなかった。


「え?」

またあたしを値踏みするような表情、あたしの言いたいことが彼女にはわからないのだろう。


そしてこの時、御侍は私を見つめ、なぜか笑みを浮かべていた。声のない静かな微笑。






来世を信じたことある?

あの時、あたしの手を引いていた人が最後どうなったのかは知らない。

自分が最後どうやって消えたのかも覚えていない。


ただ、あの子と別れた時、一瞬だけ見えた笑顔は、

目の前の御侍様の笑顔とまったく同じだった……


マンゴープリン

すべてが権力で決まる時代。

人類は堕神が猛威を振るう世界で苦しみに耐えていたが、人類である貴族も同じように自分の権利を振りかざし庶民を苦しめていた。一部の人々の中では、貴族の存在と堕神に違いはなかった。


だが、人々は暗くじめじめしたおばけ屋敷のようなぼろぼろの古い城で、貴族からの施しを受けていた。

そこはアンナ福祉施設という名の収容所。


マンゴープリンの御侍様はここの院長で、彼女の優しさを誰もが賞賛していた。

マンゴープリンはずっと誇りに思っていた。こんな御侍に出会うことができて、本当に良かったと。


ここに収容されているのは大陸各地の帰る家のない子どもたち。そしてその時のマンゴープリンは御侍様の命令で子どもたちの世話をしていた。


福祉施設は郊外にある。廃棄された建物だったため、屋根もすでに荒れ果てている。

ここは寒さも防げなければ、雨も防げない。空腹を満たすパンとぼろぼろの服以外、提供される物はなにもない。

子どもたちは空の見えない地下室で生活するしかなく、病気になった子どもがよくここに送られて来ていた。


ある夜、彼女の御侍様はこの福祉施設の秘密を彼女に告げた。

名目上、ここは貴族が設立した無償の慈善機構ということになっているが、実際は貴族たちが私欲のために創られたのだと。

貴族は孤児院に金銭を寄付し、代わりに貴族は気に入った子どもを養子にするのだ。


「できることなら、私もずっと自分の力だけであなたたちを守りたいの~」

御侍様はそう言った。


「何か起きたの?」

「ここはそもそも、ペル子爵の支援でここまでやってこれたの。」

「あ!時々深夜に来て、ここから子どもを連れて行くあの男の人?」

「そうよ、今度はあなたを養女にしたいと言って来たの…」

「でも、あたしは御侍様の食霊なのよ!」

マンゴープリンは驚いた。まさか自分の御侍様の口からこんな言葉を聞くなんて考えたこともなかったのだ。


「もちろんわかってるわ。でも、見ての通りよ、この福祉施設はもうもたないわ。」

御侍様が声を詰まらせた。

「私たちには貴族の施しが必要なの。どんな代償を払おうと、ここをなくすわけにはいかないの。」

「だから、マンゴープリン、子爵さまのところに行ってくれない?」


マンゴープリンは呆然として御侍様見つめていた。月の光のせいだろう、満面に憂いをたたえ、黒いロープを着た御待様の顔は青白く見えた。


「分かったわ。」


マンゴープリンが応えたその瞬間、その青白い顔に浮かんだ微笑は、マンゴープリンがずっと忘れられないでいる悪夢の始まりとなった。




同じような夜、マンゴープリンは子爵の住む屋敷にやって来た。

闇夜でも豪華さ隠し切れないほどの豪邸だ。ずっと福祉施設にいたマンゴープリンにとって、これだけで彼女を驚かせるのに十分だ。


がらんとした屋敷の中は、ひっそりと物寂しく、まるで生活感がなかった。

マンゴープリンは子爵に連れられ屋敷に到着した後、子爵の言う通り、腰の曲がった執事について屋敷の中を歩いていた。


彼女はここで貴族のような生活を送ることなど望んではいない。ここにいるのは、御侍の願いを叶える。

それが食霊である彼女がすべきことだ。


「ガチャ――」


そっとドアが開けられる音。

マンゴープリンは向かい側の部屋のドアの隙間から、緑色の瞳が自分を見つめていることに気付いた。


何故かはわからない、だが酷く悪い予感がした。

しかし、この時の彼女には他に選択肢はなかった。大人しく用意された部屋に入ることしかできなかったのだ。


一秒、二秒、時間は絶えず過ぎていく。

マンゴープリンは気が気じゃなかった。


ドアがゆっくりと開いた。

入って来たのは子爵ではなく、金髪で青い瞳の人形のように美しい少女だった。


「あなたは?」

「あなたと同じ、子爵に身代わりにされてるお人形。」

「身代わり?お人形?」


マンゴープリンは彼女が何を言っているのか理解できなかった。彼女は子爵が自分をここに置く理由も知らなかったのだから。


その少女の話によるとここにマンゴープリンと少女だけでなく、ほかに子爵に引き取られた女の子がいると言うことだった。

子爵は愛する娘を失ったため、顔が自分の娘に似ている金髪の女の子を引き取っていた。


しかし、話はそれほど簡単じゃなかった。

引き取られた子どもたちはみんな、子爵に自分の娘と同じになるよう教育された。正確に言えば、彼の心の中にいる娘のようにだ。

引き取られた子どもは彼の期待に少しでもそぐわないと子爵に虐待された。


少女がマンゴープリンに語った話はすぐに事実となった。

子爵は毎日マンゴープリンに様々な貴族礼儀を教えてた。表情や動作まで彼の言う通りにしなければならなかった。

少しでもミスをしたら、子爵は狂ったように暴力を振るった、自分の怒りが収まるまで。


マンゴープリンも例外なく毎日苦痛を強いられた。

その期間は、マンゴープリンの記憶の中で最も黒い時期だった。

誰も助けてはくれない、自分さえ自分を救えない。

唯一の慰めは、深夜、彼女とおしゃべりをしてくれる、あの金髪に青い瞳の少女だった。


「あなたは食霊でしょ、どうして逃げないの?」

「あたしが逃げたら、御侍様は子爵の援助を受けられなくなるもの。福祉施設のみんなの帰る場所がなくなっちゃう。」

「御侍様?福祉施設アンナ福祉施設の?」

「あそこを知っているの?」

「うん、知ってる。あそこは子爵自分の娘の名前をつけたんだよ。」

少女はなぜか笑い出した。

「そういえば、あそこはもともと子爵が可愛いお人形を集めるために建てたところなんよ。」


「違うよ、あそこは御侍様が帰る場所のない子供たちのために…」

少女は指をマンゴープリンの唇に押し付け彼女の言葉を遮った。

「そう思うなら、ここを出て自分で見てくればいいよ。」

「すぐに、全部終わるから。」



貴族は巨大な権力を握っているが、派閥の争いも免れないものだ。

ペル子爵はずっとギャンプラー伯爵という貴族と手を組んでいたが、ギャンブラー伯爵が失脚した後、ペル侯爵も巻き添えを受けることとなった。



あの夜、屋敷は原因不明の火事になった。

マンゴープリンが気づいた時には、火が蔓延しどうすることもできなくなっていた。

その時、少女がまたマンゴープリンの前に現れた。


「ついて来て!」

「でも!」

「子爵にはもうあの福祉施設を守る力はないの。あなたはここにいる理由も無くなったの。」

言いながら、少女はマンゴープリンを手を引いて彼女を連れ出した。

マンゴープリンはこの少女の手にはこんなに力があったのだと初めて感じた。


少女は彼女を隠し扉に連れて来た。

マンゴープリンはずっと少女に手を引かれ走っていたが、進めば進むほど、闇は深くなっていった。


「ここを降りていくとトンネルがあるの、トンネルを抜けたら、あなたは自由よ。」

「あなたは?」

「私はまだここを離れられないの。」

「ならあたしも残る。」

「あなたはここを離れなければならないの!」

少女はトンネルの突き当りの扉を開け、マンゴープリンを押し出した。

「あなたは御侍様のもとに戻りたいんでしょ」


その一瞬見えた陽光は、マンゴープリンには少し咳しかった。


「早く行って!あなたの御侍があなたの思う通りだったらいいね。」

少女は笑顔でそう言いながら、トンネルの扉を閉めた。

これがマンゴープリンが少女を見た最後だった。


福祉施設に戻ったマンゴープリンは、自分の御侍様に会うことはできなかった。

福祉施設には誰もいなかった。

マンゴープリンはしばらく思考能力を失った。


子爵が失脚したから、福祉施設は消えたの?

福祉施設は貴族のために存在していたの?

なら自分がやって来たことは何のためのものだったの?

御侍様があたしに言ったことは全部うそだったの?


彼女の契約が消えた時、その答えもなくなっていた。




最後に、彼女は一つだけ自分に言い聞かせた。


もう一度マンゴープリンになる時は、絶対にこんな風に追い詰められたりしない。


もし来世があるなら、自分のために生きるんだ。

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コメント (マンゴープリン・エピソード)

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  • 最終投稿日時 2019/04/22 15:20
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