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梅茶漬け・エピソード

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梅茶漬けのエピソード

常にニコニコしているため、性格が良くて優しいイメージだが、少しやんちゃなのでニコニコしながらイタズラすることもある。

Ⅰ 涙

涙なんて嫌い。

みんなには、いつでも心の底から微笑んでいてほしいと思う。


だけど、いつもそんなにうまくはいかない。


私の御侍はお金が命という奴だった。

何よりも金。

だから私を召喚した時、彼はとても喜んだ。

食霊がまだ貴重な時代だったから、堕神を撃退できる食霊の御侍は莫大な賞金をもらえるのだ。


召喚されたばかりの頃、御侍は私にとても優しかった。

用意されたのは一番いい部屋に、柔らかいベッドと広くて明るい窓。

その時彼は揉み手をして、私にあれやこれやと気を使ってくれたものだ。


だから私はのん気にも、本当に親切な人だと思ってしまった。


だけど私が戦闘のできる食霊ではないとわかると、態度はがらりと変わった。


暗く湿った、しょっちゅう虫が這っているような部屋。

ボロボロのベッドと冷たくなった食事、それに、見下した視線。


「ま、それほど強くないとはいえ、しょぼい堕神ぐらいなら倒せるだろう。働かざる者食うべからず、堕神を倒せなければ、お前さんに存在意義なんてないからな。」


そうして、彼は毎日懸賞をとってきて、私は自分より明らかに強い凶暴な堕神たちと戦わされることとなった。体の傷が癒える前に、また別の場所に送られるのだ。


毎日堕神を倒して彼の大好きな賞金を獲得すると、私はあの湿った薄暗い部屋に戻って、何とか一息つくことができた。


いつもムシロの上に座って、こう考えたものだ。

ここが本当に、私の帰る場所なの?


この部屋には、私の他に御侍の家の女中も暮らしていた。

力仕事はまるでダメ、さらに手先は不器用、御侍にとっては、私と同じくらい役立たずだっただろう。

臆病な子で、凶暴な堕神にやられた私の体を見るといつも泣いていた。

そして隣にしゃがみ込み、泣きながら傷口をきれいに洗ってくれたものだ。


「私じゃなくて、どうしてあなたが泣くの?」


私は彼女の頬を撫でて親指で涙を拭ってやり、仕方ないという口調で言った。


「鼻水がこっちに落ちてくるでしょ。」

「あ――!ごめんなさい!あらら……」


その実鼻水など出ていないのに、彼女が慌てて鼻を拭うので、私は思わず笑ってしまった。

だけど、笑ったら傷口がまた開いて、痛みのあまり私は思わずそこを押さえた。


さすがにぼんやりした彼女もそれに気が付いたのか、少し怒り気味に頬を膨らませ、口をすぼめて泣きはらした顔を撫でた。


梅茶漬け!またからかったわね!」

「ごめんごめん、泣いてたから、笑わせてあげようと思ってね。あなたが泣いていれば私も悲しくて、傷の治りも悪くなるわ。いっ――」

「大丈夫!?――また笑ってる!傷口が開いちゃうでしょ!ほら横になって。包帯を替えてあげる。」


いそいそと出ていく彼女を見て、私は思わず首を振った。

本当におばかさん。


Ⅱ 梅子

梅茶漬け、どうしてそんな名前なの?」

「……うーん、自分でもよくわからない。召喚された時、頭に思い浮かんだ名前なの。そういえば、あなたは?ずっと一緒にいるのに、名前を教えてもらっていないわ。」

「私は名前がなくて、ずっと『おい』『こいつ』『役立たず』って呼ばれてるの。梅茶漬け!私に名前をつけてくれない?」

「うーん……思いつかないな……」

「じゃ、『梅子』でどう?」

「え?」

「あなたから名前をもらったことになるでしょ!梅茶漬け!はじめまして!私、梅子!ふふ、梅子、いい名前でしょ。」

「それでいいの?」

「もちろん!『役立たず』よりずっといいわ!」

「気に入ってもらえたみたいね。」

「うん!梅茶漬けは私の初めての友達だもの!何だか、本当の妹みたいな名前でしょ!」

「妹……妹がこんなにトロくさいんじゃ、姉の私は心配よ。」

「ひどーい!」

「プッ、もういいわ。」


私は彼女の膝の上に横たわっている。名前などという小さなことで笑い出す彼女を見ていたら、私も可笑しくて思わず口角が上がってしまう。


あなたも私の初めての友達……梅子……


楽しい時間は長くは続かず、ぼろぼろの扉が急に開けられた。

立っていたのは手下数人を連れた御侍、冷ややかな目で梅子の懐に抱かれた私を見た。


「類は友を呼ぶ、ってか、役立たずどもめ。さあ行け、郊外にまた堕神が出たぞ、今回は賞金も豊富だ。他の人間にとられるわけにはいかん。」


私の背後にいた梅子が突然立ち上がった。

臆病者の彼女は全身を震わせながら手下たちの方を見、両手を広げて私の前に立ちふさがった。


梅茶漬けを行かせてはダメ!ま、まだ傷が癒えていないわ!」


私は傷だらけの体を起こし、よろよろと立ち上がって、震えている梅子を軽く叩いた。


「大丈夫よ。」


梅子の信じられないという視線をよそに、私は御侍たちと部屋を出た。

そして建物を出ると、私は顔を上げて傍らの御侍と向き合った。


「約束は守ってくれますよね。」


「フ、お前みたいな役立たずを必要とする奴がいるとはな。安心しろ、お前が二人分稼いで来れば、あいつも自由にしてやる。」


「わかりました。」


私は、今までの堕神とは比べ物にならないほど巨大な怪物に立ち向かった。触手を振りかざし攻撃しまくってくる奴だ。

いくらもない霊力がどんどん搾り取られていき、まだ治りきっていない傷口にも血が滲んできた。

体が触手の巨大な力に弾き飛ばされ、めまいがし、意識が呑み込まれそうになる。


「まずい!!!堕神が狂暴化した!早く逃げろ!」


私が地面に倒れ、逃げ去っていく彼らの後ろ姿を見ていると、突然視界に人影が現れた。


「梅…子、なぜ……ここに?」


心配のあまり追いかけてきた梅子は怯えていたが、それでも私に向かって駆けてきた。

そしてやせ細った体で私を抱きしめ、私を堕神から引き離そうとした。


だがそんな速度では、堕神からとても逃げられない。


「あ――――!!!!」


意識の最後は、堕神の叫び声と、悔しそうに倒れる声、それに泣きはらした梅子の顔だった。


おばかさん、笑っていなさいって言ったでしょ。


Ⅲ 脱走

再び目が覚めた時、梅子は私のベッドに突っ伏して、目の下にひどいクマができている。


私は自分の体にかけている私達唯一の布団を静かに彼女にかけた、ふだん眠ったら地震でも起きない彼女は突然目が覚めた。


梅茶漬け!ようやく目が覚めた!!うう……良かった、目が覚めて……あなたが気絶してた時、体から黒い煙が出たのよ、本当に怖かった…………」


私は彼女のくどくどとした声で少し気が遠くなってしまった。目が覚めたばかりだけど、昏睡してたときの記憶がまだ少し残っている。


深い暗闇が私を引っ張って、私を沈ませた。

両手両足はまるで泥沼に陥ったように重たかった。

一瞬だけ、私はそのまま沈んでもいいと思った。


しかし、焦ってた呼び声が遠くから次々と伝わってきた。

その呼び声はまるで暗闇の中の光束のように私を導いてくれた、私はすべての力を振り絞って泥沼の中から抜け出して、光の中に戻った。


私はまだ泣きながらくどくどしている彼女を引っ張って、ちょっと震えている両手で彼女を抱きしめた。


「え!ど、どうしたの!まだどこか痛いの!」

「梅子、ここを離れましょう……」

「え……ええ!?ど、どうしたのよ急に――!捕まったら殺されちゃうよ!それに……どこに逃げればいいの……」

「どこでもいい、私はあなたを守るから、怖いの?」

「怖くない!あなたと一緒にいればどこに行っても怖くない!」


かつての私は、無邪気に梅子のいる場所が私の居場所だと思ってた。

しかし、梅子の顔に残ってる涙の跡を見ればわかる。

ここは彼女の居場所じゃない。

私の居場所でもない。


あの時の私達は、扉の後から突然離れた影に気づいていなかった。


「あいつらを逃がすな!!!」

「早く追え!!!」


私は梅子の手を引いて、一緒に屋敷から逃げ出した。しかし私達が郊外に来たとたん、後ろからの声が聞こえた。


梅子は驚き慌てて私を見てきた、私は思わず拳を握り締めた。これはどういうことだ……全部……全部うまくいってるはずなのに……


「梅子、あなたは先に行って、私が囮になる」

「……いや……ダメ!」

「いう通りにして、早く!私の速度はあなたより早いから、あなたが先に行って約束した場所で私を待って!」

「いや……駄目……そんなのいや……」

「いうことを聞きなさい!」


ついに、そのおバカな女の子は私に追い払われた。私は後ろの追っ手を見やると、違う方向に走り出した。


重傷がまだ治ってない私はすぐ用心棒たちに囲まれた、私は遠い目でその方向を見て、言い表せない不安を感じた。





「うわあーーーーーー!!!!堕神だ!!!あいつ堕神を引き連れてきた!!!!」


私を包囲した用心棒たちは突然混乱し始めた、そして慣れ親しんだその姿の後ろで、とんでもなく恐ろしい存在が付いてきた。


梅茶漬け!!助けに来たよ!!!」


彼女の後ろで追ってきた堕神を見て、私の口元は思わずピクピクした、結局我慢して口元まで登ってきた言葉を飲み込んだ。


あんな恐ろしい助っ人はさすがに見たくないな……私のおバカさんな妹よ……

でも、あんな危険を冒してまで私を助けに戻ってくるなんて、ありがとう……


堕神は他の人を見るなり、視線をその明らかに彼女よりも魅力的な食料に移した。食霊の私も、その視線から逃れられなかった。


用心棒たちが逃げたり重傷で地面に倒れたりした後、堕神はその深くて無感情な目を私に向けた。


私は私の服を掴んでいる梅子を後ろに庇った。


私はわかっていた、今回さえ勝てば、私たちは自由になる。

そうしたら、私たちはその「家」と呼ばれた居場所を探しに行ける。


Ⅳ 紅葉の館

再び目が覚めた時、体の下のベッドの敷きはもう湿っぽくてカビがはえてる蓆ではなく、日光の匂いがする柔らかくて気持ちいい布団だった。


豪華な和服を身に纏っている男が私のベッドのそばに立っている。彼は手にある扇を開いたり閉めたりして、ぼんやりとした目で遠方を見ている。まるで魂がここにいないように。


私の身を起こす音が彼の魂を引き戻した。私が何かを聞こうとした時、彼は先に口を開いた。


「俺はすき焼き。お前らを拾ってきた者だ」

「私たちを……拾ってきた?」

「そうだ、もし俺が間に合わなかったら、お前らはもう死んでただろう。にしても、あの人類はお前のことを随分良くしているようだな。彼女はずっとお前を背負って歩いてた、疲れきって立ち上がれなくなってもお前を離さなかった」

「……梅子はどこ!」


男が答える前、襖が開いて、従者の服を着た梅子が私の懐に飛び込んできた。


梅茶漬け……ううう……ようやく目が覚めた……私はてっきり……てっきり……」

「よしよし、私は大丈夫だから……それにしてもその服はどうしたの……」

「私……私……」


梅子が言葉を濁して長い間何も言い出せなかったから、そばにいる男は我慢できずため息をついて一歩前に出てきた。


「俺が言おう。俺がお前らを助けた、怪我の治療もした、紅葉の館の最も良い部屋をも貸した。だから対価として、お前らはここで仲居として働いてもらう、文句は言うまい?」

「私……私達?私と梅子が?」

「そうだ、梅子はすでに承諾した。お前も、もう目が覚めたから、何日か休んだら、お前にも働いてもらう」


私は視線を赤面していた梅子に移した。仕方なく彼女の手を引いて、そばに引っ張ってきた。


「なにか心配事?」

「私……もしあなたがいやだったら……」

「梅子と一緒にいれば、嫌なことなんてないわ。ボス、私にも梅子と同じ服をください」

「分かった。ていうかボス言うな、すき焼きでいい」

「分かりましたボス、そうしますボス」

「く!」

「ぷっ」


こうして、私達は紅葉の館で暮らし始めた。

紅葉の館は楓林のそばに建っている。


秋が来れば、一面赤色の美しい紅葉の海が見れる。

その中で建っている小さな温泉旅館が、さまざまなお客様を迎え送りしてきた。

私と梅子はその紅葉の館の仲居になった。梅子はちょっとおっちょこちょいだけど、無邪気でかわいい個性がかなり客から好かれていた。


私も得意な仕事が見つかった。

堕神退治と比べて、私は経営のほうが明らかに得意としている。

私はこの旅館の事務処理をきっちりしているし、美味しい食事を作れる、そしてこれらのことでお客様に心から笑ってもらう。




紅葉の館は、徐々に仕事の場から家に変わった。

紅葉の館の人は徐々に増えていた。

梅子の笑顔を見て、私も思わず笑った。


もしかするとこれこそが、私が今まで求めてきた居場所かもしれない。


梅茶漬け


梅茶漬けは幸運な食霊ではなかった。そして不運にも彼女にふさわしくない御侍に出会ってしまった。


彼女の御侍は金をすべてと思っていた。


だから彼は、堕神を退治することで懸賞金を得られる彼女を道具みたいに扱ってきた。


だが彼女は不運と同時に、幸運でもあった。不幸な生活の中で、彼女は救いとさえ言える存在に出会った。


その名前さえ持たない小さな女の子は、彼女の痛みのために泣いたり、彼女のことを身を挺して守ったりした。

その子の笑顔が、梅茶漬けの薄暗い生活の中で、最大の精神的支えだった。


あの子に負担できない仕事をさせないために、梅茶漬けは御侍の条件を飲んで、能力の限界を上回った堕神退治の仕事を請け負ってきた。


ついに、ある日、梅茶漬けは大きすぎる負担のせいで倒れた。

堕ちかけた彼女は、梅子と自ら名付けたその女の子の呼びかけで、辛うじて踏みとどまった。


嬉し泣きをした二人は、この無数の傷をもたらした場所から逃げると決意した。


しかし二人は気づいていなかった。彼女たちの計画は一人の使用人に聞かれた。

当たり前に梅茶漬けがもたらした利益の甘汁をすすってきた御侍は、二人を見逃すわけがなかった。


しかし女の子の命懸けの誘導で、以前傷しかもたらさなかった堕神は二人が逃げるチャンスになった。

戦いの後、梅茶漬けは気を失った。彼女に守られてきた女の子も彼女を見捨てなかった。


その子は梅茶漬けを背負って、一歩ずつ彼女たちの自由に向かった。

しかし、もうすぐ次の町に着くその時、彼女たちは堕神の襲撃に遭遇した。

今回、梅茶漬けの目覚めは間に合わなかった。


その時、華麗な和服をまとっていた男がまるで天神のように二人の前にやってきて、堕神を撃退した。


男は女の子を手伝って梅茶漬けを彼が経営している旅館に連れ帰った。それは楓林の側に建っている小さな旅館だった。

彼女たちは女の子が一度も触ったことがない柔らかいベッドで寝て、温かい食事を食べた。


紅葉の館で、梅茶漬けの体調は徐々に回復してきた。女の子は彼に恩返しするために、その男の要求を飲んで旅館の仲居になった。

掃除以外、彼女は何もできないから。


唯一彼女を少し心配させたのは、その男は梅茶漬けにも一緒に仲居になってもらう要求だった。


幸いに、目が覚めた梅茶漬けは、その要求に不満を抱かなかった。


梅茶漬けが美味しい料理を作った後の笑顔を見て、梅子はようやく安心した。


彼女たちにはようやく家ができた、違うか?


長い年月の中で、梅子は旅館で一人の常連さんと知り合った。その客は彼女の不器用さによく笑わせられた。

それは優しい人だった。

しばらくの付き合いの後、彼女はその客に惚れた。


梅茶漬けが静かに梅子の気持ちを聞いて、笑顔で彼女を愛する人の馬車に送り出した。




すき焼きは彼女に聞いたことがある。なぜ梅子に離れたくない気持ちを言わなかったのかを。


「あなたと同じよ」

梅茶漬けは青空を見上げて、微笑んだ。

「食霊の時間は無限だけど、人類は違う。彼女の人生は長くないけど、幸せになって欲しい。彼女が持つべき全てを手に入れて欲しい。夫、子供、家族愛、友情、愛情、この全てを」


梅子の結婚式は盛大だった。その男は全力を尽くして、彼女に最も素晴らしい結婚式を贈った。

彼女にとって、その男は自分の全てを託すに足りる相手だった。


梅茶漬けは姉として彼女の結婚式に出席して、彼女の手をその男の手に渡した。


梅子と名付けられた女の子は声が出ないほど泣いた。自分に全てを与えてくれた食霊の手を握り締めて頑として離そうとしなかった。


「泣かないで、何度も言ったでしょう。私はあなたの笑顔が大好きよ」


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  • 最終投稿日時 2019/05/13 17:32
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