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清酒・エピソード

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清酒のエピソード

寡黙で、人との交流は少ないが、お酒の話題になると話が絶えず、お酒に関するノウハウを逐一解説してくれる。普段は部屋にこもり、出不精である。



Ⅰ 風鈴

神楽殿からちりちりという鈴の音が聞こえる。夜風がお堂を吹き抜ける、この荒れ果てた場所にも、これほど清らかな音を奏でる楽器があるとは。


神楽殿をちらりと見やった。かつてここで繰り広げられた歌や踊りを思い出しながら、私は酒を一気に飲み干した。


神社の最後の神官であられた御侍様がお亡くなりになって以来、ここに住むのは私だけ。


掃除、祭祀、酒を造っては飲む。


変わることのない生活。


「これがいつまで続くのであろう?」


退屈を持て余した私がそう考えた時、突如闖入者が現れた。


「や!?こんなところに神社が?」


澄んだ女の声が鳥居の前に響いた。人の声に驚いた私はとっさに反応できず、彼女の声を遮った。


「どちら様……」


ほうきで階段を掃いていた私は、目の前の女の子におずおずと聞いた。


「あら!こんにちは~」


私にようやく気が付いたのか、女の子は恥ずかしそうな微笑みを浮かべた。


「あたし、おげん。ふもとの村から来たの。」


不思議な力のある声だった。まるで飲む前から酔わせてしまう、甘く澄んだ美酒みたいな。




清酒?あなた本当にそんな名前なの?」神楽殿で、おげんは足をバタバタさせながら、好奇心いっぱいに辺りを見回した。


「人間ではないので、こんな変な名前なんですよ。」私は彼女の後ろから、壁際に並べられた様々な楽器を紹介しながら、そう答えた。


「それって、自分でつけた名前?」おげんの顔に驚きが浮かび、それから口元が上がった。


「ええ……まあ。」私は頭を掻きながら、あいまいな返事をした。


「へへ、あたしもだよ。」おげんはくるっと振り向いて舌を出した。


「え?」


「あたし、親がいないの。」


「ごめんなさい……」


「え?ああ別に、気にしないで。」


おげんはずっと笑顔を浮かべていた。私はなぜだか悲しくなった。


Ⅱ 出会い

その日から、数日ごとに、おげんは山を上がってくるようになった。彼女にとって、ここは心落ち着く場所であるらしい。


久しく寂れていた神社に、少しだけ活気が戻ってきた。


私たちの間柄は、だんだんと打ち解けてきた。




「こっちが白酒、こっちが清酒


「え~また?」


私はまだ子供であるおげんに酒を勧めた。眉をしかめながらも興味津々な彼女に酒の話をするのは、とても楽しかった。




「古文書によれば、この世には八百万の神がおわして、それぞれに祀る方法が少しずつ異なると。」


「へぇ!じゃ、どうすればいいの?」


彼女に神道の話をするのも楽しかった。ともに神を祀り、心の中の世界を共有し、神の偉大さを説いて聞かせる。




「外の世界は、特に変わったことはないわ。強いて言えば戦争ぐらい。」


「私たちには関係ないことですよ。」


彼女に外の世界のことを聞くのも楽しかった。その実、そんなことは私にとって、ただの退屈しのぎでしかないのだが。




そしてその夜、おげんは私の肩にもたれかかり、珍しく浴びるように飲んだ。私はわけがわからない。


「もうやめなさい。」私は盃をそっと取り上げ、彼女の手を振りほどいて優しく言った。「飲んべえさん。」


「め……目が醒めなければいいなと思って。」おげんは何度も盃を取り返そうとしたが、ようやく諦め、独り言のようにぼそりとつぶやいた。


「何があったんですか?」私は彼女の頭をポンポンとたたいて、一人で酒を飲んだ。


清酒……父さん母さんに会いたいの。」幼い顔に、悔しげな色が浮かんでいた。


「親か……」私は盃を持つ手を止め、御侍様の顔を思い出した。「私もいないからな。」


「ええ、あなたは食霊だから……そうでしょ?」おげんの言葉はだんだんぼんやりとしてきた。まるでうわ言のようでも、まどろむ猫が甘えているようでもあった。


「お酒が好きで……」


「日の光には当たれない……」


「祭祀の時はとてもまじめで……」


「みんな知ってるよ……」


ぶつぶつと言葉を続けて、おげんは私の胸の中に倒れこみ、完全に目を閉じてしまった。


笑いながら、私は指先でその髪の毛を絡めとり、小さな声で囁いた。


「大丈夫、私はここにいますよ。」


Ⅲ 話の落とし穴

おげんはそれ以来、二度と自分の両親の話をしなかった。私もその夜の出来事を胸の奥にしまうことにした。


女の子が神社を訪れる回数が次第に減っていった。私は何気ない振りをしながら理由を聞こうとしたが、彼女はいつも笑いながら話題を逸らしてしまった。


仲のいい関係が疎遠になる。あたかも賑わいを見せていた神社が、ある日突然、誰も来なくなるかのように、全てが自然に静まり返っていった。


ある日、私が参道を掃いていた時、宙を舞っている黄色い落葉を見てハッと気がついた。おげんはもう1ヶ月以上も神社に来ていなかったのだ。


それがどうしたというのだ?


私はそう自分に言い聞かせた。


人間とはみなそういうものだ。必要な時には丁寧にお願いしてくるくせに、必要がなくなればあっさり見捨ててしまう。私はもう慣れきっていた。


私の生活も自ずと元の日常に戻っていった。


ただ、心の中では、以前にはなかったものが増えていた。




また数日経って、私は鳥居の前でボロボロの身なりをした男に出会った。


「あなた様は……神官様でいらっしゃいますか?」男は疲れ切った顔をしていたが、私を見るなり元気を取り戻した。


彼の焦った様子を見て、私は思わずドキッとした。


「私は神官ではありません。ここにはもう神官はいませんよ。」


「そんな……」男は打ちひしがれ、魂が抜けたかのように数歩後退りし、嗚咽を漏らした。「神様までも私たちを見捨てるのですか?」


「何があったのですか?」私の不安はだんだんと大きくなった。


「疫病が……大流行しているんです……」男は意気消沈した表情を見せ、しどろもどろしている。私は何が起きているのか即座に分かった。


彼を落ち着かせて空を見上げた。ちょうど正午で、炎のような日差しが照りつけている。


日光が私を傷つけることも厭わず、私は強い日差しをこらえて山の麓へ飛ぶように走った。そして、心の中で祈り続けた。


八百万(やおよろず)の神に祈った。


私は今ほど自分を恨んだことはなかった。自分の性格の中のどうでもいいと思う身勝手さをひどく恨んだ。


Ⅳ 互いの謝罪

世の物事とは望み通りにいかないものだ。


私がおげんを見つけた時、彼女は隅に縮こまっており、私に無理して微笑みかけた。


「あなた、来たの?」おげんは以前のように、無意識に私の服の袖をつかんだが、何かを思い出し、サッと手を引っ込めて謝った。「ごめんなさい。私、疫病にかかっているから、触っちゃいけないの。」


彼女の姿を見て、私は胸が痛んだ。私は大股で進み、彼女を抱きしめた。


「いつから疫病にかかったのですか?」


「そ……そんなに前からじゃないわ。清酒、放してよ。」おげんは私の胸の中で微かにもがいた。


「どうして私に言わなかったのですか。」私は彼女を抱きしめる手に力を入れた。


「あたし……わざとじゃないの……」おげんはバタつかせていた手を止め、小さな声で恐る恐る言った。「最初はあたしにも分からなかったの。ただ……ただ症状があるだけで……何ともないと思ってた……あなたに迷惑かけたくなかったから。」


「てっきりあなたに嫌われてしまったのかと思いましたよ。」私は冗談のような口調で雰囲気を和ませようとした。だが、最初、私は本当にそう思っていたのだ。


「そ……そんなことないよ。」おげんはそれを聞いて、とても強く、わずかに焦ったように私の服の袖を握りしめた。


確かに、あなたは疫病すら恐れない……


そのことに気がついた私はますます自責の念にかられた。


「あたし、あなたのこと好きよ……清酒、あなたのこと好き……でも、あたし、疫病にかかっちゃったの……面倒だよ……かわいくないよ……」おげんは話し続けているが、声はか細くなっている。


顔を下に向けると、おげんは疫病のせいか、体力がなくなって静かに眠っている。私の胸の中で縮こまり、私が立ち去るのを恐れている。


あの夜と同じように。


「あなたのことは私が助けます。必ず。」彼女の前髪を撫で、記憶をたどる。ある女性の姿が頭の中に浮かび上がって来た。私は確固として言った。


彼女のために、そして自分のために。


「たとえ堕神と取引をしても構わない。」


Ⅴ 清酒

80年以上前、桜の島が爆発し、北の島全域に疫病が広がった。


瞬く間に人々は塗炭の苦しみを味わうことになり、悲鳴が野を埋め尽くした。


この状況を変えられるのは、「犬神」という名前の女性の堕神だけだ。彼女は桜の島の月見台の守護神像だった。目覚めてから300年近くになる。


黄泉で疫病が荒れ狂い、人間が苦しむ。当時の彼女は、そんな光景を見るのが耐えられなかった。そこで、自分なりの方法で人間を救うことにした。


彼女は桜の島の山林に行き、生き残った人間たちをできる限り探し出し、彼らと生活を共にした。


しかし、見落としがあった。


ある村が忘れられてしまった。最後の最後で、ある食霊が犬神を連れて戻り、村人を救ったのだ。


この食霊は堕神との間にあった水と油の宿怨を捨て去った。そして、犬神と共に生活した人間は、もう本当の意味での人間ではなくなるという事実も受け入れようとした。


彼は苦労して各地を駆け回り、ついに命がけで犬神を探し出した。


犬神がこの食霊に会った時、彼は地面に片膝をつき、体のあちこちが透明になっていた。それは霊体が散らばってしまう前兆だった。ここに駆けつけるために、彼は耐えきれないほどの苦難を背負い込んでいたのだ。


残念ながら、彼らが急いで村に戻った時、食霊が大切にしていた人間たちはとっくに世を去っていた。


食霊は悲しみに明け暮れたが、この事実を受け入れるしかなかった。それ以後、彼は山の中に閉じこもるようになり、一日中酒をあおっていた。


彼にとっては人間も、堕神も何もかも関係なくなっていた。


山に閉じこもってから80年の月日が経とうとしていた。


2人の旅人によってこの静けさが破られた。


1人は長刀を背負った青年、もう1人はマントをまとった女の子だった。


2人とも食霊だった。彼らは女の子の御侍を探しに来たのだった。




「大体こんなところです。」清酒は酒壺を持ちながら、ゆっくりと青年と女の子に酒を注いで語った。


「つまり、そのおげんという子と両親はまだ生きているかもしれないってこと?」青年と女の子は顔を見合わせ、不思議そうに言った。


「生きているかどうかは重要ではありません。あなたたちが心に留めておいてくれるだけでいいのです。」清酒はまったく気にしていない様子だった。「私は執念を捨てたいだけです。」


「あなたたちの大切な人を探すのに役立つ情報をあげましょう。」


「その代わり、私とあの子にとって大切な人を心に留めておいてください。」


「公平な取引ではありませんか?」


清酒はこのように言い、盃を持ちながら客を見送った。


徐々に遠ざかっていく2人の姿を見ながら、清酒はかつて女の子と過ごした神社での様々な出来事を思い出していた。


「彼らと私たちは似ているようです……」


「そうでなければ山門を開けなかったでしょうから……」


「どこにいるのですか?おげん……」


「あなたに会いたい……」


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