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味噌汁・エピソード

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味噌汁のエピソード

自身の外見と性格は僧侶として妥当ではないと思っている。

変わろうと決めたものの、一生懸命努力してきた結果を以前の習慣によっていつも台無しにしてしまう。

自責の念に駆られながらも、相変わらず楽しそうに破戒してしまう。

Ⅰ 苦い思い出

 御侍がいなくなってから、早いものでもう一年。


 生活に変化があるかと思ったが、相変わらずだ。


 日がな酒肉に溺れ、思い出したように念仏を唱え、山を下りては女を探す。


 うん、僧侶としてこれ以上ないぐらいまともで単調な日常だ。


 「疲れず、愉快に、それが何より。」


 本堂で、仏像にもたれかかり、ちびちびと清酒をすする。

 自分の日常を振り返ると、思わず軽いため息が漏れる。


 もし……


味噌汁~いるか~!」


 聞き慣れた声が外から聞こえる。盃を持った手が思わず震える。


 このバカがいなければ……


「ぽーーん」


 という音とともに、玄関が蹴り飛ばされた。遠くからでもわかるその人影。


 しかも、あんなものまで持ってきて……




 いつか晴れた空の下で、女と喧嘩をしたことを思い出す。可愛い彼女は、拙僧の愛を信じようとしなかった。


 しばしにらみ合っていたら、そばにいた天ぷらが耐えきれなくなって、助け船を出してくれた。


「本当だ!お嬢さん、信じておくれ、味噌汁は君を本気で愛しているんだ!」


 天ぷらは真剣なまなざしで女を見つめ、誠実な口調で言った。


「え?そうなの?」


 女はきょとんとした。


「ああ!君への思いは、俺の彼への思いと同じぐらい熱い!」


「……」



 また別の深夜には、ある女と酒を飲んで歌い、互いの胸の内を打ち明け合った。


 桜舞い散る森の中、互いの瞳にある情熱を確かめ合い、口づけを交わそうとしたその時。


 滝のような花弁が、二人を埋もれさせそうな勢いで降ってきた。


 頭上の枝の上で、天ぷらが涙をぬぐい、感動した様子でこう言った。


「ううう……味噌汁……味噌汁よ!俺の親友!ついに、ついに本当の愛を見つけたのか!?」


 言いながら、桜の枝を絶えず揺さぶっている。


 花の雨は降り止まず。



 もういい。

 拙僧は盃の酒とともに、涙と、今まで失敗した三十八回の恋の苦い思い出も飲み干した。


「や!味噌汁、なぜ泣いている!?俺が来たからか!」


 バカはやけに熱くもたれかかってくる。


「帰れよ!」

「恥ずかしがるなって、男たるもの、友情には素直になるべし!」

「……」


 だから拙僧はこのバカが嫌いなんだ。


Ⅱ よい友を持つべし

「一体何をしに来たんだ。」


 大殿で、拙僧は天ぷらと向かい合って胡坐をかき、盃を持って、イライラと尋ねた。


「もちろん、重要情報を伝えにだよ。」


 天ぷらは力のこもった声で言った。


「え?」


 拙僧の眉毛も動く。


「山で人を見つけたんだ!」


 天ぷらは興奮極まる声で言った。


「……」


 拙僧は酒を奴の顔に吹き出しそうになった。


「ここはそれほど深い森でもあるまいし、人ぐらいいるだろう!?」

「あ……っそ。」


 天ぷらはがっかりした表情を見せた。


「女だぜ?」

「え!?」


 拙僧はにわかに顔を上げ、まるで獲物を見つけたオオカミのように、奴の顔をじっと見た。


「どんな女だ!」

「うん……普通に可愛い。」


天ぷらは拙僧に驚いたらしく、一瞬言葉を失い、それからぼそりといった。


「お前、可愛い系が好みだろ?」

「お前という友達の願いを、俺は忘れたことはないよ!」


しばらく黙り込み、拙僧は体中に本能的な喜びと、感動が溢れてくるのを感じた。


「よし、友情に乾杯。」

「おお!何だかよくわかんないけど……」


天ぷらも熱く答える。


「友情に乾杯。」


うん、バカもたまにはいいことするな。


Ⅲ 無邪気な信頼


 山道の両側の森の中で、拙僧は天ぷらと泥棒みたいにここでしゃがんで、緊張しながら何かを待っていた。


 お茶一杯飲むくらいの時間が経ったら、顔が綺麗でスタイルも抜群な女性が我々の視界に入ってきた。


「おおお!可愛らしいオナゴだな」


 と興奮した拙僧が狂ったように天ぷらの肩を揺らした。


「は!そうだろうそうだろう!」



「どうナンパすればいいか……」


 オナゴを尾行しながら、拙僧は顎をかいて呟く。


「ん?」


 拙僧のつぶやきを聞いたように、天ぷらはこっちに振り向いて、拙僧をじっと見つめてくる。


「あんた何悩んでんだ?」

「あ、拙僧はただ適切なナンパの仕方を考えているだけだが」


 思わず答えた。


「あ?それか!簡単だ。」


 天ぷらの反応は意外にもあっさりしたものだ、拙僧が何かを言う前に、彼はぱっと飛び出した。


「見てろよ」

「へい~前方の美人さんよ!立ち止まってくだせぇ!」


 山道の上で、あのバカは胸元の服を引っ張り開けて、マッスルを露出させ、オナゴがびっくりしたことも気にせず、情熱的に口説いた。


「この俺とふか~い交流をしてみな~いか?」

「……オーマイガッ」


 これ以上の醜態を見たくない拙僧は思わず目を覆った。


「きゃあ!変態よ!」


 案の定、掌と頬が一瞬激しく接触した音が、山林の間で長く響いた。




「なんでだろう?」


 左頬が赤くなった天ぷらが拙僧の隣で蹲って、真面目くさった雰囲気を醸し出しながら頬を付いて深く考え込んだ。


「拙僧は逆にお主がなんで‘なんでだろう’と疑問できるのかが不思議で仕方がないが」


 彼とともに、拙僧も思わず深い思考に入り込んだ。


「マッスルを見せること以上の誠意はないと思うが?」


 バカはバカらしく頭を掻いている。


「せはせでも誠意ではなく悪戯だけどな」


 と拙僧がダジャレる。


「分かった!この俺のマッスルがマッスル過ぎるから直視できないんじゃないか?」


 バカは拙僧の話を聞いてないようだ。


「……真逆だと思うけど」


 と、拙僧は最大の努力を尽くしてこの話をロジカルにしようとしたが。


「真逆?おおお!あの子のマッスルがもっとマッスルというのか?」


 天ぷらが何かわかったように、


「確かにそうだ!」

「……なんか微妙に違うな?」

「そういうことなら、もっと穏やかに行こう!」

「いやいやいや!待ちたまえ」


どうやらこいつは拙僧の言ってることを理解していないようで、慌てて引き止めた。


「変なことをするな!」

「は!?」


天ぷらが眉をひそめた。


「じゃあお前に何かアイディアがあるのか?」

「え……」


ないけど。


「そうだろ、じゃあ行ってくる」


有無を言わせないで、天ぷらが再び飛び出して、遠い場所で緊張しているオナゴに向けて突っ走って行った。


「へい~美しいお姉さん!あんたを怒らせるつもりはねぇ、ただこのマッスルを受け止めて欲しい、そして一緒にマッスルの真意を探求しよ~うぜ!」


 山道の上で、天ぷらの朗々とした声が再び響いた。


 あ、掌と頬の協奏も同時に……


 前言撤回、バカは死んでも治らない。


Ⅳ 食い違い

「そういうやり方では困らせてしまうだけだろ」


 足どりを加速して、神経質にあちこち見回って、かなり警戒しているオナゴを見て、拙僧は天ぷらに突っ込んだ。


「だな、あの反応は困ったものだ」


 バカは頷いた。


「……お主のことを言ってるんだが」


 拙僧は白目をむいた。


「あ?そうか?」


 バカは自覚なしのようだ。


「というわけで、いったいどうナンパすればいいのかやら……」


 問題は回りに回って、原点に戻った。


「俺は……」


 天ぷらは文字を三つ言い出したところで、拙僧に口を塞がれた。


「お主は黙れ」


 拙僧は悪態をつく。


「お……」


 バカは気まずそうに頭を掻いた。


「まあいい、ちょっと古いがこれでいこう」


 考えれば考えるほど頭が痛くなる拙僧は考えるのをやめて、天ぷらをみて、


「ヒーローは美人の危機を救う!」

「おお!どうする?」

「お主があの子をいじめてる時、拙僧が飛び出してお主をボッコボコにする。どうだ?わかったか?」

「おお!問題ない!」


 天ぷらは力強く頷く。



 シナリオは完璧だが、現実は虚しい。


 前半までは順調だが、天ぷらと拳を交えるところになったとき、全てが狂い始めた。


 計画では、彼は抵抗できず逃げるはずだったが。


 しかし……


 “バン――”との響きで、拙僧は口を大きく開いて、意味不明な声を発しながら、体が空中で綺麗な放物線を描いて、女子の心配そうな呼び声の中で重々しく地面に倒れ込んだ。


 なぜあのバカの頭脳回路を信じたんだ?あいつに演技ができるはずがないのに。


 意識を失う前、拙僧はこう自分に聞いた。



 目を開いたとき、目の前に現れたのはそのオナゴの心配そうな顔だった。


 なんて綺麗な人だ、まだ意識がはっきりしていない拙僧はそう思った。


「あ!お坊さん、ようやく目を覚ましてくれましたか」


 オナゴは拙僧が起きたことを喜んでいた。


「あ……」


 拙僧は頭を押さえて難しそうに身を起こした。


「何があった?」

「お坊さんがあの悪人を追い払ってくれました」


 お姉さんが口を覆って、おとなしく笑った。


「あなたのおかげで助かりました、ありがとうございます」


 追い払った?天ぷらは行ったか?周囲を見回すと、確かにあのバカはいないようだ。


「大丈夫ですか?お坊さん」


 女の子の親切そうな声が拙僧の思考を遮った、彼女の美貌をみて、拙僧の内心は歓喜に踊っていた。


 過程はどうあれ、結果オーライでいいじゃないか?



 そのあとの交流で、拙僧はオナゴの目的地が分かった――拙僧の寺で祈りに来たようだ。


「同郷の人達から聞いた話では、ここにはよく効くお寺があるようですから、試してみたいと思ったんです」


 お姉さんは笑いながら目的を教えた。


 あ!なんてすばらしい笑顔だ。


 え?待てよ、拙僧の寺がよく効く?


 何かを思いついた頭を掻いて、以前の記憶を呼び起こした。


 そういえばこんなことがあったな。

 飢饉に見舞われた村人が釈迦牟尼の参拝にここに来たことがあった。

 あの時の拙僧はちょうど暇だったので、獣を狩ってやった。


 まさかそのことで?


 それを思いついた拙僧は、至宝を手に入れたかのように、興奮してお姉さんの両手をしっかり握って、彼女の茫然としている顔をみて真摯に。


「施主が言ってた寺は、ちょうど拙僧がいた寺、拙僧こそがそこの住職なのだぜ」


 オナゴは何かがわかったように、次第に顔の困惑が退いていた、拙僧は喜々と続ける。


「だから、何か悩みがあるなら、直接拙僧に言えばいい!拙僧が全て解決しよう」


「え?」


 オナゴの表情はまた困惑に戻った。


「で、でも……私が祈りたいのは、夫との新婚の円満と、幸せな未来です」


 彼女の声は徐々に低くなり、小声で言った。


「あの……住職さんは……こんなことも……できるんですか?」

「……」


 お姉さんの服を見て、和服の前の裾の両端の図案は、まるで拙僧の視力を嘲笑っているようで。


 ……このお姉さんはどうやら既婚者らしい、はい。


 こん畜生、ばかはやはり独身の運命だな。


Ⅴ 味噌汁

 桜の島の南島は山と森に覆われ寺の多い島である。

 

 ここの僧侶は光耀大陸と比べて、戒律が少なく、しきたりも開放的で、酒と肉を許され、結婚も許可されている。

 

 普通の人から見て僧侶と全く関係ないこれらの事は、桜の島では当たり前のことだ。


 あの寺を除いて。


 その寺は忠実に光耀大陸の仏教の戒律、僧侶の二百五十の戒めを守っている。


 八類五編七聚と記される。


 つまり波羅夷、僧伽婆尸沙、不定、舎堕、単堕、波羅提提舎尼、衆学、滅争。


  これらの戒律以外でも、勤務と休憩も厳しく定められている。


 物好きはそれを孤高と揶揄する。


 この寺院のやり方は、ほかの寺との違いを作りたいだけなのか、それとも本当に修行のためなのかはさておき。一般人から見て、そのやり方は確かにすごい

ことだ。少し俗っぽく言うと、仏性があるとのことだ。


 だから長い間、ここに参拝にやって来る人が絶えることがなかった。


 ここの最後の住職が遷化した時まで。


 そう、この寺には人はずっと一人しかいなかった。その人以外には食霊が一人いるだけだった。


 食霊が寺を引き継いだ、もともと適当な性格の彼は、長年住職の下にいて、寺の戒律に縛られてきたが、結局おとなしい僧侶にはなれなかった


 住職がまだ生きてた頃でも戒律を破りまくった彼は、住職が死んだ後、 更にぶっ飛んだ。まるで長い間押さえられてきたバネのように。


 一日中酒と肉を楽しんで、たまにしかお経を唱えない、時々償悔もするが、一時の気まぐれだけで、すぐに忘れ去ってしまう。

 

 悔い改めるとかするはずがない。

 

 とにかくかなり迷惑なやつだ。

 

 でも、彼は確かに放蕩だが、寺を完全に依存しておくほどには堕落していなかった。


 彼は一人の損友と一緒に、静かに暮らしていた。


 だが、日常は破られるためにあると同じ、平穏もいつまでも続くわけがない。


 この食霊の数多くの趣味の中で、微妙な趣味があった。


 お姉さんをナンパすることだ、それも百パーは結果なし。

 

 彼はこのすべてを世界の、そして損友のにした。


 そしてある日、彼はようやく我慢できず、寺を出る決意をした。


「仏理は交流すべし、一人の苦行では、悟りも開かれぬ」


 そんなことを書いた封筒を本堂に残して、食霊は荷物を背負って北島に向かう決意をした。


 彼の損友、封筒の反面を見たら意外なく追っていった。



「何しに来た?」

「お前の手伝いに決まってるだろ! 手紙見たぜ」

「……お主は拙僧と共に仏礼の研鏡を?」

「いや、封筒の反面ではそんなこと書いてねぇぞ」

「……反面? あ! 確かに酔った勢いで何書いた」

「だろ?」

「で、何を書いた?」

「拙僧は世界のものだ、世の中お姉さんは拙僧のものだ」

「……」


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