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オムライス・エピソード

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オムライスのエピソード

アイドルオタク。ゼリーの忠実なファンで、ゼリーのそばにいるプリンのことを嫌っている。マネージャーでも一応男性なので、いい気分ではないようだ。



Ⅰ ヨーエの名

私の名はヨーエ。御侍様から頂いた名だ。


太陽の光が輝く日には、当然意義あることをすべきだろう。

例えば、私と同じでゼリーちゃんが好きな御侍様と一緒にゼリーちゃんのコンサートに行くとか。

超素敵なことじゃないか?


「世界一可愛いゼリーちゃん、小生を待っててね!!!」

私は壁に飾ってあるポスターを見つめながら独りつぶやいた。


「ヨーエ、どこにいるの?」

御侍様はあちこちを見ている。どうやら私を長い時間探しているようだ。

ここは騒がしいし、御侍様の声がもともと小さいこともあって、今の彼女はすごく心細く見える。


「ここにいるよ!レイシ!」

御侍様は私に御侍様と呼ばれるのが嫌いで、いつも本名で呼んでほしいと言っている。

まあ~私は別にかまわない。だってレイシという名前もなかなかかわいいから~


「何をしていたの?」

「なんでもないよ~」

私は壁に貼ってあるポスターを自分の後ろに隠した。

よし!見られなかった!ゼリーちゃんのポスターはもちろん持ち帰って独り占めする!


「早く私の隣に来て。」

これは彼女の口癖。御侍様は1人でいるのが怖いらしい。


「ちょっと待って!すぐ行く!!!」

私は大声で答えると、御侍様は安心した顔を見せる。


御侍様は本当に1人でいるのが怖いのか?

しかし、私が知る限り、過去の御侍様はずっと1人だった。




あの日も今日と同じ、すごく明るい日だった。

ここは病院みたいな収容所だ。

堕神に襲われて傷を負い、家を失った多くの人はここで生活することにした。

御侍様がここにいる理由もそうらしい。


風が窓を通って白いカーテンを揺らす。

部屋の中に音楽が響いている。ゼリーちゃんの新曲だ。


御侍様は1人窓の前に座り、外を見ながら巨大なキャンバスに何かを描いている。


「御侍様は空を描いているのか?」

私はキャンバスの青い一角を見て聞いた。

「いいえ、島よ、海の中の孤独な島。」

御侍様が回答した途端、手に持っている絵筆が突然止まった。


彼女はゆっくりと私に向き、びっくりしたような目つきで私を見つめる。


「あなたの…声…」

「声?小生の声が何か?」

私は笑った。


「私はあなたの声を聞いた?」

御侍様はすごい衝撃を受けたらしく、涙がぼろぼろ落ちてきた。


「ど…どうした…小生の声が大きすぎたのか?御侍様、どうして泣いてるんだ?」

私はどう慰めていいか分からず、ただ慌てて見ているだけだ。


「ち、ちがう。私は…もう聞こえなくなったはずなのに。ゼリーの声も聞こえなかった……」

御侍様は背を私に向け、指で涙を拭いた。


「私…あなたの声が聞こえた…」

いつも通りの穏やかな口調に戻った彼女はこう言った。

「ヨーエ、これからヨーエと呼ぶわ~」


「うおおおーー御侍様が小生に名前をくれた!」

「御侍様もやめよう。」

「え?」

「レイシでいいわよ。」



私はこの名前が大好きだ、だって御侍様がくれた名前だから。

Ⅱ 歳月を記録する

「ヨーエ、どこにいるの?」

御侍様は突然私を呼んだ。


「窓のそばにいるよ!」

私が見えなかったのは、カーテンに視界を遮られたからだろう。

「今回は、こっそり抜け出してゼリーちゃんのコンサートを見に行くなんてしなかったよ!」


私は慌てて説明し始めた。しかし向きを変えて御侍様を見ると、私と御侍様の間に視線を遮る障害物がないことを発見した。


「レイシは何をしていたの?」

さすがに思慮の浅い小生も御侍様の異常に気付いた。


「あ、なんでもない。」

御侍様はすぐ正気に戻ったような反応だった。


「あ~レイシはぼーっとしていたんだ~はははは…」

「そうよ、ばれちゃった。」

御侍様は笑った。


「私はレイシの食霊だよ。」

「うん、わかる。」

御侍様の心はまたどこかに飛んだみたいだ。


「レイシ、今度は何を描いてるの?」

私は質問を続けた。


「私の記憶。」

この時の御侍様の表情は、今までで最も優しかった。


好奇心に負けた私は近寄って御侍様の絵を見ることにした。

それは深夜の月光に照らされる樹林の中の小さい芝生だ。


2人の子供が地面に座り、1人の女の子は月に向かって歌を歌っていた。

歌を歌う女の子は葉の隙間を通った月光に照らされ、後ろに白い翼が生えている。

絵の中の美しい横顔を見ていると、どこかで見たことがあるような気がする。


「レイシは天使を描いたの?」

「うん。」

「わあ!!!なんて美しい!ゼリーちゃんは天使なんだ!!!」


「うん、天使だよ。」

御侍様はしばらく黙り込んだ後、言葉を続けた。

「もう記憶があいまいになっているけど、これを忘れたくないから、今のうちに描いておきたい。」


最初は御侍様の言いたいことを理解できなかった。


近づいて絵をよく見て見ると、偶然に御侍様の横顔に気づいた。


私はようやく理解した。今までずっと静かに座って絵を描く御侍様は、もう記憶の中の彼女ではないのだ。


「ヨーエ、何をしているの?」

「あなたを見てるよ。」

私の答えを聞いた御侍様は笑った。


いつも私にだけ微笑を見せる顔はもう皺ばかりで、雪のような白い皮膚も暗く黄色くなった。


計算すると、もう50年以上の時間が経ったことに初めて気づいた。

出会った日のことはまだはっきりと覚えているのに、あっという間に御侍様は少女から50歳をこえたお年寄りになった。


年月が早く過ぎて行くことにため息をついた時、御侍様は手紙を私に渡した。


「ヨーエ、この手紙を送ってもらえない?」

封筒を見ると、表面に下手なじで「ゼリー」と書いてある。


「分かった!あなたの思いをきちんとゼリーちゃんに届ける!!!」


「うん、それはよかった。」

御侍様は小声で答え、また絵を描き始めた。





数日後。


御侍様はゼリーの返信をもらった。子供のように喜ぶ御侍様を初めて見た。


そしてあっという間に、御侍様は姿を消した。私は部屋の中で大声で呼んだ。

「レイシ、どこにいるの?」

「隣の部屋にいるよ。」

「何をしてるの?」

「返信を描書いてるよ。」


こうして、御侍様はゼリーちゃんとの文通を始めた。


ゼリーちゃんの手紙はいつもこちらに届く。

御侍様が返信を書き終わる度に、私は手紙を持って出かけ、外のポストに入れる。


御侍様の笑顔が日々増えていくのを見るのもすごく嬉しい。


手紙をポストに入れるついでに、ゼリーちゃんのグッズを買うことも楽しい日常になった。

Ⅲ突然の訪問

しかし、世界一嫌いな奴までここに来るとは思わなかった。


あいつはプリンゼリーちゃんのマネージャーだ。

カッコつけるために毎日サングラスをかけ、いつも無表情で心も冷たい。いつも私に暴力を振るう。

彼より悪質なやつなんていない!


「おのれ、仏頂面のサングラス、ここに来て何をするつもりだ!?」

毎回プリンを見ると頭に来る。

なんでこんなやつがゼリーのマネージャーなんだ?


「用事がある。お前に付き合う暇はない。」

プリンはいつもの仏頂面で言った。


「貴様!!!」

あまりの怒りで、私は何も言えなくなった。



「ヨーエ、あなたは…」

御侍様が来た。たぶん私の声が聞こえたのだろう。

しかしプリンを見た瞬間、彼女はまた固まった。


「レイシ…。」

プリンの口から御侍様の名前を聞いた私はびっくりした。


「ごめんなさい。あなたは?」

御侍様はプリンに笑った。


「レイシ、こいつは放っておけばいい。」

「ヨーエ…。」

私は御侍様を連れてここから出ようとしたとき、プリンの声はまた伝わってきた。


「彼のことを…ヨーエと呼ぶ?」

「どうした?こんないい名前を聞いて羨ましいか?」

私は顔を真っ赤にしながらプリンにしかめっ面をした。


「どこかで会ったことがない?」

御侍様はまじめに聞いた。

「わたしのこと、忘れた?」

プリンはサングラスを外して御侍様に聞いた。



「馬鹿馬鹿しい!レイシの記憶はまだ確かだぞ!彼女は別にあんたと会ったこともないし、馴れ馴れしくするな………。」

私は慌てて反論した。


「たぶん年を取ったせいね。最近記憶が曖昧なの…。」私を待たずに、御侍様は先に認めた。

「耳も遠くなった。今は頭ももう…。私はどんどん壊れていってる……。」


そこで御侍様は諦めたように微笑んだ。



「え????!!!」

御侍様の言葉は完全に理解できない。私は驚いて御侍様を見る。


「じゃあヨーエのほうは?」


「ヨーエ?」

こいつまたバカな話をしやがってと思ったとき、プリンは小さく咳端する。


「私の言ったヨーエはここにいるバカじゃない。」


「おい!仏頂面のサングラス!今、小生をバカと言ったな!」

私は激怒し、すぐプリンの攻撃に抗議した。



プリンはその言葉を無視し、私の襟を掴んだ。

首が締め上げられた私は声が出せなくなり、ただ渾身の力で後ろの無表情な男を叩いた。


「覚えてるよ。ヨーエのことを、忘れるはずがない。」

御侍様は視線を下げ、顔が暗くなった。


「じゃあ、ヨーエがこいつじゃないこともわかっているな。」

私には、プリンの冷静で穏やかな声は、むしろ冷たく聞こえる。

「あなたのせいじゃない。あの時、ヨーエは…。」


プリンの慰めは役に立たなかった。御侍様の目つきはさらに悲しみを増した。


その時、私はやっと仏頂面のサングラスの手から脱出した。たぶんこれはサングラスから初めての脱出だ。

「あなたがここに来た目的は、レイシにこんな表情をさせるためなのか?」

私は怒りながら聞いた。


「私はゼリーのマネージャーとして、彼女がずっと連絡してる人を調査したいだけだ。」

プリンは正々堂々と答えた。


「なら調査はもう終わったな。帰れ。」

私は御侍様の手を取り、振り返らずにここを離れた。

Ⅳあなたの名前を呼ぶ

あの時、私はどんな気持ちで御侍様を連れ出したんだ?

プリンに対する対抗?御侍様の悲しい表情を見ていれなかった?


「ヨーエ?何を考えてるの?」

「今日のコンサートでゼリーちゃんはどんな歌歌んだろって!レイシも期待してるでしょ!」

「うん。そうね。」


御侍様は周りの人を見渡して、低い声で言った。

「やっぱり、私のような年寄りはこんな所に来ては変ね。」


「何言ってんだ。レイシは可愛いよ!」

「私はもうあなたのおばあちゃんの年齢だよ。」

御侍様の笑い声も低かった。


「食霊は本当にずっと同じ姿だものね。」



目の前の部隊に目をやると、なんとなく見たことがあるような気がした。

そして舞台の幕から顔を出したゼリーちゃんを見た時、ようやく思い出した。


コンサートの背景は御侍様が描いた絵の中の林とそっくりだ。

気づいた私は嬉しさのあまり、叫びだしそうになる。

しかしちょうどその時、御侍様が私の袖を引いた。


「ちょっとお喋りしよう。ヨーエ。」

御侍様はいきなり私にこう言った。


「いいよ。どうせコンサート始まりまでまだ時間が長い。」

まだ出てくるかもしれないゼリーちゃんを探すことに集中した私は、視線を御侍様に向けなかった。


「ヨーエ。私はまもなくここを離れるかもしれない。」

「どこへ行くの?」

「とても遠いところでしょうね…。」

ゼリーちゃんのコンサートを見に戻ってくる?」

「もし覚えてたらね…。」


「そこにおねえちゃんが経営するカフェがあるの?ゼリーちゃんのグッズやCDを売ってるの?」

気になってそう聞いた。


「ううん。多分ないと思う。」

「ないの?一体どういう所?」


「多分小さな島。私は海に囲まれた小さな島に行きたい。そうすれば私は一人で…。」



「私は連れて行かないの?」

私に話を中断されると、御侍様はちょっと驚いた顔で私を見つめた。


「はは…。」

その後、彼女の微笑みはまるで何かを隠すためのもののように見えた。


突然、観客席の証明は消え、舞台から一筋の光が放たれる。

いつの間にか、ゼリーちゃんは舞台に出て歌い始めた。


私は思わずケミカルライトを取り出し、応援を始めた。

ゼリーちゃん可愛い!!!宇宙一可愛い!!!」





気づいたら、コンサート終了時間まであとわずかだった。


ゼリーちゃんの歌声は素晴らしい!!!可愛いくて優しくて癒やされる!!!」

私は狂喜乱舞して、思うがままに称賛した。

「よし。次はどこへ行く?」


「レイシ?!」

ずっと黙っていた御侍様が心配して聞いた。


この時の御侍様はまるで腰を抜かせた子供のようで、目元の涙は彼女の悲しみを語っていた。


観客たちは次々と帰り、ここに残るのは私と御侍様だけとなった。

御侍様がどうしてこのような状態になったのか分からない。


「ヨーエ。私はさっき夢を見ていたのかも。」

「夢?」

人類は寝てなくても夢を見られるのか?

私は理解できなかった。


長く黙り込んだ後、御侍様はようやく語り始めた。


「私はね。ヨーエと一緒にゼリーの歌を聴く夢を見た。

夢の中で、ヨーエはいつも通り木の下で私の話を聞いていたの。

私は鬼ごっこをしようと提案した。

そして…。墜神に襲われた孤児院を見た。

私は一生懸命にヨーエを探し。彼の名前を呼び続けた…。

ヨーエの耳が聞こえない事も忘れてた。

ヨーエが声を出せない事も忘れていた…。」


「レイシ?」

御侍様が私の名前を呼ぶように、私も御侍様の名前を呼んだ。


「あなたが本当のヨーエだったらいいのに。

そしてこんな夢のような時間が続いたらいいのに……、

そんなことを望んでるの。

もうずっと……、そう思ってる。

わかってるの。

あなたがヨーエじゃないことは。

それでも、今笑ってる人が彼ならいいなと思ってしまうの。」


御侍様の声が段々はっきりと聞こえなくなった。

今の御侍様は本当に私に向かって語っているのか?


「レイシ!びっくりさせないで。小生の声聞こえてる?」

私は大声で御侍様の名前を呼び続けた。


「え?」

御侍様の瞳に光はないが、それでも私に微笑んだ。

「ヨーエなの?あなたやっと声が出せるようになったの?あなたの声がやっと私に伝わった?」


「小…生は………オム…あははは。ヨーエだよ……」

「ははは。ヨーエなにその喋り方!小生ってなによ?」


御侍様は私を見てるが、別の人を見ているようだ。


「帰ろう、レイシ!」

「うん!」



御侍様は本当のヨーエといるとき。

どんな女の子だったんだろう。

今の彼女は子供のようにちょっとぼけた年寄りとなった。

そんな彼女に、私は少しでも笑ってほしいと思っている。

だからーーー。


「ヨーエどこにいるの?」

「レイシのそばにいるよ。」

「どこへ行くの?」

「どこにも行かないよ。ずっとレイシのそばにいる」


私の名前はヨーエだ。

これは御侍様がくれた、彼女の最も大事な人と同じ名前だ。

彼女の笑顔と引き換えに、これからも私は、

彼女のヨーエで居続ける………。




オムライス

「ヨーエここにいたんだ〜。」

いつの間にか、レイシはオムライスの後ろに立っていた。


「うん!レイシと一緒に帰れるなんて。」

オムライスは御侍様にこう答えた。


ここは古い街道に位置する孤児院だ。

オムライスの御侍様であるレイシはここで生活したことがある。

古くなった丸い屋根に覆われる建物。周りは歪んで不恰好な木造フェンス。

ここは修道院を改築してできた孤児院だから、今は廃墟だけが残っていても、在りし日の美しさを想像できる。



この孤児院はその後名もない小さな堕神に襲われた。


あのときレイシはまだ十歳ほどの子供だった。

自分の不自由な聴覚と、教育役の修道女が亡くなったことで、元々内向的な彼女はより無口になった。

彼女の唯一の友達は、同じ孤児院で育った男の子

ーヨーエだけだった。


しかし、この唯一の友達をも失った。


「ヨーエ。私達はここで初めて会ったことを覚えてる?」

御侍様は聖堂の近くにある古いクスノキを見つめながら、笑って言った。


年を取ったレイシは認知症にかかり、現在と過去の記憶が曖昧になり、オムライスとヨーエが別々の存在だと言う事実すらわからなくてなってしまった。


レイシが覚えてるヨーエは、六十年前墜神が孤児院を襲ったときにすでに死んでる。

レイシはあの時ヨーエと鬼ごっこしたいと提案した自分を憎んでる。


もしあの時ヨーエが自分のそばから離れなかったら、大きな混乱の中で彼を見失うことも起きなかっただろう。

自分のせいでヨーエが死んだ。レイシはずっとこう自分を責めている。


これがレイシにとってどういうことなのか、オムライスにはよく分からない。

ただ、彼女のそんな表情を見るのはやっぱり嫌だった。


「わ…、わたし、ここでのこと全部忘れた。

やだ、こんな美しいとこを忘れるなんて。

残念だよね…あははは。」

彼女の声は震えて、すすり泣いてるのがわかった。

オムライスはそわそわして笑いながら頭を掻き、レイシを見る勇気がなかった。

きっと彼女は泣いている。その顔をぐしゃぐしゃにして、それでも懸命に笑おうとして。


余命が長くない御侍様にあまりつらい思いをさせないように、不器用だが、オムライスはレイシの記憶の中のヨーエを演じ始めた。


それはかつて彼女とヨーエが出会ったときの再現。

オムライスの演技は稚拙で、ちっとも似てなかった。

それでも彼は、大好きな御侍様のために、懸命に演じる。


「こんなことも…あったよね。そう…これも忘れてたの。」

レイシは柔らかく笑った。それはいつもどおり穏やかな声であった。


「ここでヨーエと初めてお喋りしたよね」

レイシはざらざらした木を撫でながら言った。

「あの時のあなたはずっと黙っていたから、私は修道女から教わった手話をあなたに教えた。」


「これの意味覚えてる?」

レイシは手を出して拳を握り、親指を軽く二回曲げた。


「えーと…」

オムライスは急に黙り込んだ。こんなもん学んだことがない。

あのうるさい無表情サングラスでもあるまいし。

「あれだな!知ってる!うん…すぐ思い出すよ。ゼリーちゃん、でしょ!」


「ふふ…。」

困っているオムライスを見たレイシは思わず吹き出した。


「じゃゼリーちゃん超すごいって意味!うん!私もそう思う。ゼリーちゃん本当に世界一かわいいね」

すると、レイシは不思議そうに私を見ている。

ああ、ヨーエらしくなかったか。

オムライスはそう思って、慌てて深呼吸した。


風は吹き続け、枝も低くなっている。

いつの間にか、クスノキからいい香りがする。


御侍様は私を見てない。私を求めてない。

彼女が欲しているのは、『ヨーエ』。


「どうしたの。ヨーエ?悲しい顔して」

「御侍様…」

「さっきあなたの声が聞こえたよ。絶対に聞こえないと思ってたのに」

レイシはそういった。彼女の表情はオムライスと出会っときと同じ、穏やかで悲しい顔だった。



その瞬間、レイシは記憶を取り戻したのか、オムライスは思った。


そんなはずない。期待してはいけない。


「なぜだか、今の私はあなたの声しか聞こえないね、オムライス。」


これは、夢だ。きっと都合のいい夢。

たとえそうであっても、やはり嬉しさを隠せない。

胸が震え、オムライスはその場に崩れてしまう。


「大丈夫?オムライス、どこか痛い?」


ヨーエではない、自分を心配してくれる。

そんなレイシを見て、オムライスは初めて泣き出した。


その時、オムライスは初めてゼリーと関係ない願い事をした。




「できることなら。私の声がずっとあなたに届きますように。」

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