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バター茶・エピソード

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バター茶のエピソード

爽やかな風貌であり、目には世界の移り変わりがしっかりと見えている。長年の修行と研磨によって、心身共に極限に近いほどに強くなっており、悟りの極致に至っている。


Ⅰ 董さん

布包を持って愚僧は街中を歩く。


「ランプ、お香と蝋燭……」


堪布の言いつけを細かく思い出しながら愚僧は布包の中身を、忘れ物がないか確認する。


人がいっぱい詰まってる酒屋を通りすがるところで、愚僧は一曲の歌に耳を惹かれた。


悠長なメロディーに深みのある歌詞。


少女達が舞台の上で踊り、長袖が空中で舞い、生き生きとした壁画を編み出す。


思わず足を止めてそれを鑑賞する。


なんとなくそのリズムに沿って梵文を何句か詠んだ。


「僧侶でも色を好むの?」


面白がるような声が愚僧の耳に入った。振り向くと、書巻を持っている一人の女子が愚僧の隣に立っている。


愚僧は両手を合わせてお辞儀をした。


「世間は常に美を追求している、好んでも好まなくても可笑しくはないですが」


そう返答して、愚僧はしばらく思量したら、言葉を続けた。


「愚僧が好むのは禅を感じさせるその美しい楽理です」


その女性は驚いた風で、


「辟易しないの?」


「何をです?」


彼女は頭を傾げてしばらく考えると、


「僧侶が……そういうことを言っていいの?」


「好むかどうかのくだりのことでしょうか?」


「……ええ」


愚僧は少し変に思った。


「法理に沿わない事もなければ寺の規則を破ったわけでもない、他人を煩わしたわけでもないから、良くないことはないでしょう?」


それを聞いて、女子は突然軽く笑いだした。


「そうね、他人の邪魔さえしなければ、好きと言い出してもいいわよね……」


そう言って彼女は手を伸ばしてきた、けどすぐ何か思いついたように両手を合わせて愚僧にお辞儀をした。


「こんにちは大師、私は董糖、皆に董さんと呼ばれているわ」


愚僧は頭を振ってお辞儀を返しながら、


「大師と呼ばれるほどのものではありません、小僧の名はバター茶といいます」


Ⅱ 趣味

愚僧は寺に戻り、いつもと変わらない普通の日常に戻った。


街中の一件はすぐに忘れた。


食霊の命は人間よりもはるかに長い、すれ違った命は数えきれず、あれはそのうちの一つでしかない。


そう思って、愚僧は堪布から経巻を受け取り、無尽蔵な仏法の研修に戻った。


ある日の朝、愚僧は経閣の中で親しみのある姿を発見した。


「董さん?」


少し躊躇って、愚僧はそのお経に夢中している後ろ姿に声をかけた。


「え!?」


董糖が振り返って、愚僧に手を振った。


「や~バター茶





愚僧は董糖と一緒にとある静かな庭の中を歩く。


彼女は経巻を持っていて、時々それを読む。


「どうして寺に来たんですか?」


念珠を摩りながら、愚僧は疑問を口にした。


「あなたのために来たのよ」


愚僧を一目見て、董糖は適当な感じで答えた。


「お」


眉を顰めて、愚僧は頭の中を一回り探る。


「約束はしていなかったはずですけど……」


「……」


董糖は愚僧を見て口を開いて、訳のわからない感じの表情を作った。


「どうしたんですか?」


「いえ……何でもないわ。やはりバター茶は彼らと違うわね。」


「彼ら?」


董糖は経巻を閉じ、話題を逸らした。


「何でもないわ。私はずっと仏経がつまらないものだと思ってた、あの日あなたと話したら面白い人だなと思って、そんな面白い人が読むものにも興味が出たってだけよ」


そう言って董糖は少し咳払いしたら、お芝居口調で一曲を歌った。


「ほら、私も楽理が好きだから」


愚僧はなんとなく頷いた。


「なるほど」


「……は」


董糖は袖で口を隠しながら笑いだした。


「なぜ笑うんですか?」


彼女は答えず、逆に問題を出してきた。


バター茶、ここの僧侶は皆あなたのように面白いの?」


しばらく考えても、彼女が言う面白いとは何を意味しているのかわからなかった。


故に愚僧は適当に返答するしかなかった。


「多分?」


董糖は袖を下ろした、口元は今も笑みが含まれている。


「なんだか私も出家したくなってきた」


しばらく考えて、愚僧は真面目に答えた。


「女性の僧侶は庵に行かなければなりません」


「……」


董糖はしばらく沈黙して、


バター茶


「はい?」


「つまんない」


「……え?」


Ⅲ 面倒事

徐々に、愚僧と董糖の付き合いがますます深くなった。


一般の香客と信徒とは違い、董さんは仏を信じてるわけではないけど、彼女は他人の信仰には十分な敬意を払っている。それはとてもいいことだと愚僧は思う。


彼女は街中の放蕩でいやらしくて不快でいらつくような女子たちとも違う。


知識が豊富で礼儀正しく、芸術にも精通している彼女は、愚僧が出家して以来知り合った最も気持ちのいい友人である。


だけどどうやら愚僧のこの友人は、最近面倒事に巻き込まれたらしい。


「流言?」


お茶を淹れながら、愚僧は董糖に疑問の声を出した。


「そうよ、今城中で私に関する流言は蔓延しているわ」


「どういう流言ですか?」


いままで愚僧はそういった噂話には全く興味がなかった、それらは全部俗人の邪念によって生み出されたものだから。


だけどこの流言は彼女に関係していると、愚僧は思わずにはいられない。


「表ではいつもお高くとまってる私は、裏で寺の僧侶と逢引きしてる、だってさ」


それを聞いて、愚僧は茶碗を抱えてゆっくりと彼女の隣に座った。


「釈明すればいいでしょう」


「随分と落ち着いてるね」


「後ろめたいことは何もしていませんから」


「それもそうね」


この話題が終わり、愚僧たちはしばらく仏の言葉を楽理に使う方法について語ったら。


「愚僧が代わりに釈明してきましょうか?」


「誰に?」


「……」


「ほら見ろ。だから発想が下劣な人はめんどくさい」


「う……少し不敬かもしれないが……確かにその通りですね」


「……は」


夜も遅くなって、董糖は帰った。


愚僧も日課に戻った。


経巻の内容を繰り返して読む。


「……受想行识 亦复如是」


「うん……」


珍しく、いつも平静不乱な心に小さな波が生じた。


「やはり……手伝おうか?」


「しかし、逆効果になってしまわないだろうか……」


「えっと……どこまで読んだっけ?」


Ⅳ 真摯

また買い出しの日がやってきて、愚僧は堪布から長い買い物リストを渡された。


人混みに押されながら、愚僧は経文の他、董糖の事も考える。


得がたい親友のために、愚僧にできることはないだろうか?


僧侶は流言など気にしない、やましいことは何もしていないから心は常に平静に保たれる。


それに、これも悪くない修行になれるかもしれない。


しかし董糖は俗世の人間だし。


ため息をつき、愚僧は念珠を摩りながら最後の店に向かう。


やはりこれは董糖自身が解決すべきことだ。


或いは、彼女から助けを求められるまで待とう。


そう考えながら、愚僧はとある茶楼を通るところで、


「『閣水詩会』」


愚僧は茶楼の看板を静かに読み出して、思わず考えた。


董糖なら、これに興味があるだろうか?


あ、彼女なら詩に興味があっても、集会には興味がないだろう。


そう考えながら、愚僧は中を覗き込んだ。


そこで彼女の姿がいるとは思ってもいなかった。


彼女は眉をキツく顰め顔を真っ赤にして、かなり怒っているようだ。


様子を見に行こう。


門を跨ったところで、彼女達の声が聞こえた。


「アンタ達これ以上適当な嘘話を広めて人の潔白を汚さないで、私はまだしも、僧侶まで侮辱するなんて何考えてるの」


董糖がこれほどの怒りをあらわにするなんて想像すらしたことがない。


しかし彼女と相対している女子たちはやめるつもりがないらしい。


「ほお、僧侶と逢引しているのに潔白とは、このアバズレ……」


彼女がセリフを言い終える前、愚僧は彼女の口を塞いだ。


「あなたどうして……」


董糖は愚僧の出現にびっくりした様子だ。


愚僧は彼女に頭を振って、その口汚い女子と向き合う。


愚僧は真剣な顔で、


「愛し合うことを逢引と言うのは言葉が過ぎた、あれは美しい情緒のはずです」


愚僧は少しとまって、言葉を続けた。


「董さんは別に愚僧を愛しているわけではありません、愚僧と彼女とはただの単純な知人だけです」


「なによアンタ!」


女子は愚僧の手を払って、顔を真っ赤にして怒り出す。


愚僧は両手を合わせて、真面目にお辞儀をした。


「いきなりですみません、愚僧はただ友人が侮辱されるのが耐えられませんでした」


そう言って、愚僧が頭をあげて、揺るがない目線で彼女を見つめる。


「董さんと愚僧は楽理と詩書の話題しか語ったことがありません、そのような不倫な関係など全くありません」


「へ、本当かな?」


彼女は手を振りながら冷笑した。


「きっとアンタの中身の汚ったらしいに違いないわ」


愚僧が頭を振って、真剣に、


「愚僧の心には他意などなく、簡単な愛しかありません」


「は?」


「え?」


「ん?」


皆びっくりした様子だ。


なぜびっくりしたのか、愚僧は困惑した。


董糖さえびっくりした。


眉を顰めて、愚僧は言葉を続けた。


「愚僧は董さんを愛しています、貴女のことも愛しています、仏は全ての人間を愛しています」


「だから貴女にも董さんのような清らかの心で、その愛に報いて欲しいです」


雰囲気が固まった。


恐らく愚僧の真摯な告白を受け止めきれてないからだろう。


ため息をつき、


「世人迷惘、世人难渡」


そう言って、愚僧は董糖についてきてくれと合図した。


沈黙が続く茶楼を出たところ……


「ははははは!」


董糖はいきなり少し失礼な笑い声を出した。


「どうしたんですか?」


「いえ……やっぱりあなた面白いなって思って」


「う……」


バター茶

石楠寺は光曜大陸の辺境に位置するお寺である。


バター茶は石楠寺の堪布の一番弟子であり、彼の食霊でもある。


故に小さい頃から、バター茶は立派な僧侶になることが決まったようなものだ。


課頌、瞑想、苦工。


このように日に日に繰り返して、まるで時計のような規律正しい生活を送ってきた。


バター茶は一度もつまらないとおもったことがない。逆に仏法に濃厚な興味が湧いてきた。


でも、たとえどれだけ仏法を深く精通していても、バター茶には普通の人間の青年と変わらない魂があるから、経文以外にも、彼は偶然接触した楽理という娯楽的で厳粛さもある物事に興味を出した。


それをきっかけに、彼はもうひとりの食霊

ーー董糖と出会った。


知識豊富で歌舞いにも精通している董糖は、徐々にバター茶と何でも話せる親友になった。


だから董糖が流言に巻き込まれた時、バター茶は迷わず身を挺して彼女を庇った。


ことが既に過ぎたと思って、安心して次の仏法大会の準備に入ったバター茶は、董糖の周りに新しい波乱が起きたことに気づかなかった。


彼がそれに気づいたとき……


「すみません、以前ここにあった書房は……」


空になった店の前で、バター茶はひとりの通行人を捕まえて聞いた。


「ん?知らないのか?もう潰れたよ。あの店の番頭が恩をあだで返したせいで、あの店主がかなり大変な目にあったらしいぞ」


「それは……」


「本を買いたいなら別の店に行くんだな」


「いえ……愚僧はここの店主の友人です……」


「友人?じゃあアンタも気をつけろよ。なんでもここの事は見たままの単純なことじゃないらしいぜ」


「……それはどういう意味ですか?」


「噂では、何者かがここの店主に目をつけて、罠を張って彼女を手に入れようとしたから、彼女はそいつから逃げたって話だ」


そう言って通行人は袖を振って、今の人間は昔のように優しくないと言いながら去った。ひとり残されたバター茶はしばらくぼうっとしてそこから動けなかった。


翌日。


石楠寺から一人の修行僧侶の姿が消えた。


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