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子推饅・エピソード

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子推饅のエピソード

地位や権利に無関心な書生。乱世の中においても、流されずに自分の信念を貫く。大事に思うことに関しては強い執念を持つ。

いつも『モモ』といううさぎと一緒。



Ⅰ 穀雨

どんよりとした夕暮れ時、いつもは暖かな橙色の夕日がこの時は血のような赤さを帯びている。

こんな奇妙な赤色の下で、御侍様は申し訳なさそうに私を見る。


「ごめん......迷惑かけるね......」


私は御侍様の澄んだ瞳を見て、軽く首をふる。。


振り向いてあの灼熱の炎に包まれた山林を見る、風によって勢いを増す炎が草木を伝って私たちを囲んでいく。


猛烈な日の熱気が御侍の額に汗を流させ、着込んだ防寒着も今では余分に感じる。


沸き上がる煙が私たちを包み、黒煙は吸い込むと窒息感を与えてくる。御侍様が耐えきれずに倒れこむのが見えた。


手を差し伸べて起き上がらせようとするが、私の目の前もすでに朦朧としていた。まぶたが重く目を開けることも難しいと感じていた時、目の前の景色が突然ぐるりとまわる。

体に痛みを感じながらも、私はすでに倒れこんでいる御侍へ手を伸ばす。


私はここで......終わってしまうのですか......

悔しいですね......

まだあの者たちに......





それから、数滴の冷たい液体が顔にたれ、困難だった呼吸も次第に楽になった。その後、ざあざあと雨の音が聞こえた、雨はまだ火が消え切っていない木の上に降り注いでいる。


普段ならば、こういった雨の降る音は好きだった。それは私に落ち着きを与え、悩みを洗い流してくれるから。


だがこの時、この音が与えてくれたのはかつてないほどの静けさと、生き残れたことへのわずかな喜びだった。


私はこの時やっと気付いた。この世界を離れることに対して、想像以上に自分が平然とはしていられない事に。


私はその雨を見ようとしたが、もう目を開ける力も残ってはいなかった。意識が薄れていくなか、私は雨のような涼しさを持ちながら、どこか暖かさを感じさせてくれる声を聞く。


「大丈夫?」




私は目を開ける。


まず私の意識が向いたのは、部屋に香る茶の香りだった。

その香りはまるで今までの出来事を忘れさせるようだった、煙によって感じていた息苦しさもそれによって消えていった。


私は体を起こし、周囲を見渡す。そこはとても優美な部屋だった。暗い赤色の博古棚の上には様々な置物が置かれていた。

部屋の中央には淡い木目のある暗い赤色の机があり、そこには茶具が置かれていた。あのほのかな茶の香りはこの茶具から来ていたのだろう。


私がちょうど茶具を観察していると、ドアが静かに開く。私はそれに気付きドアの方の男性に目を向ける。


彼は私が起き上がっているのを見てそれほど驚いてはいなかった。

おそらく、この男性が助けてくれたのだろう。


私は謝罪を伝えようと思ったが、喉の痛みによって声が出せず、私は眉を顰めて喉元を抑える。


男性の表情は少し冷めているようにも思えたが、彼は私に持ってきた薬を手渡しこう言った。


「あなたの喉は煙にやられたみたいです、この薬を飲めばよくなりますよ。」


私は彼に向って軽く頷き、言う通りに薬を飲んだ。

意外だったのは、この薬は思ったほど苦みはなく、さっぱりとした味わいがあった、口にした後ゆっくりと喉の痛みは引いていった。


私は少し驚いた顔で茶飲みを見た後、顔を上げて男性を見る。


「これは私が武夷大紅袍からもらってきたもので、人間の薬とはまた少し違いますが、あなたには効果があるはずです。毎日飲むのを忘れずに。」


男性は言い終えるとその場から去って行き、私はその後ろ姿をみて瞬きをする。

――彼は思ったほど冷たい人ではなさそうですね。



Ⅱ 静かな日々

この療養の日々で、私は私を救ってくれた男性の名を知った———西湖龍井。


西湖龍井は私と同じで食霊だった。だが彼の身なりか、または彼の能力からか、彼の住む湖辺に住んでいた者たちは、皆彼を龍神様と呼んでいた。


その人々は西湖龍井のために湖辺に彼を崇め奉るための像を建てていた。


私が今住んでいるのは、湖辺にある屋敷だが、彼はあまりここにいたくはないようで、湖底に隠した洞府にこもるのが好きなようだった。


彼の言葉を借りるなら、あちらは静かで、誰も来ないからと言う事だった。


私が住む部屋からは窓を開ければ、龍神の像を見ることができる。

時折周囲の人々が訪ね、「龍神様」への供物を持って来たりする。そして自分の願い事の記されたお札を像の横にある小さな木にかけていく。


私もここでただ何もせずに療養していたいとは思わなかったので、「龍神様の従者」として行動する事にした。


農民の願いを集め、それらを整理して彼に渡す。


私は知っている、この一見冷たそうに見える彼は、誰よりも優しい心を持っていることを。





私たちは御侍様や過去の事も多くは語らずに、静かに暮らしていた。


いつも現実的ではないお願いなどを見て無気力な顔になるを見て、私はこらえきれずに笑う。


「私はお隣の家の子がずっと好きでした! 彼女の誕生日に最高の花束を贈って、告白しようと思います! どうか龍神様、告白を成功させてくださいますよう、お願いします。......っぶ龍井、いつから恋愛の神に?」


私は無気力に人々の願いを読み上げる西湖龍井をみる。彼は我慢できずに小さなため息をつき、願いの中から一つ選んで机に置く。


「彼らは私を龍神として、誠心誠意、真にお願いをしてくれる。それなら私もそれに答えなければならない。私ができないことは無理だが、中には私ができる事も少なくはない。」


私は彼が抜き出した願いの札を見る。


それはある農民からのお願いだった

この堕神が蔓延る世界で、彼の田畑は度々堕神によって荒らされてしまう。

そこにある穀物や果実は奴らの蹂躙後はもう腐らせて地に還るしかなく、対抗しようにも人間では堕神に対抗するすべがない。


「龍井これはなんです?」

「おそらく彼が今用意できる一番の供物ですね。」


西湖龍井はいつもそういった大切なものをこっそり元ある場所に返し、心のこもったものは大切に受け取る。


私はたち上がり、座ったによってくずれた服を整える。西湖龍井の顔には疑問符が浮かんでいる。


「......」


私は少し凝り固まった肩を動かす。


「堕神のようなものは、あなた一人にやらせるのは少々危険ですからね。私もあなたの友人なのですから?」


西湖龍井はずっと私を見つめる。彼が自分の決定で私を危険に晒したくはないのは知っていたが、私粘りに最後は彼も引き下がった。


私たちはそうやって西湖龍井の住む湖辺のように、平和で平凡な日々を長い年月過ごした。


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コメント (子推饅・エピソード)

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  • 最終投稿日時 2019/05/10 23:38
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