紫陽花と雨宿り・ストーリー・エピローグ
※ユーザー名が入っていた部分は「御侍」に差し替えしました。
エピローグ
真夏二十一日午後 グルイラオのとある花屋
水信玄餅:わわわ、忙しい! 忙しいっ!
水信玄餅は御侍の元に召喚され、沢山の戦いの日々を過ごした。
その経緯で、彼は成長し、様々な過去を受け入れて、やっと立ち上がれるようになった。
今は元気に動き周り、花屋でバイトをできるくらいまでに元気になっていた。
猫まんま:本当です、彼はいつも元気ですね。
うな丼:それが奴の長所であろう!
御侍:なんだか嬉しいね。あんな水信玄餅が見られるようになるなんて……!
御侍は思わず目頭が熱くなる。初めて召喚したときの水信玄餅は、車椅子に乗っており、笑顔の少ない少年だったからだ。
御侍:今ではあんなに楽しそうにバイトまでしてくれるようになって……御侍として、こんなに嬉しいことはないっ!
猫まんま:泣かないでください、御侍様。
流しそうめん:そうだぜ、御侍! 御侍に泣かれるとみんな困るぜ!
うな丼:まったく……まぁ、気持ちはわからんでもないが。
三人に言われ、なんとか御侍は涙を引っ込める。
水信玄餅:あ、御館様! どうされたのですか?
御侍:うっ……! 水信玄餅、お願いだからその呼び方はやめてくれる?
水信玄餅:御館様は御館様でしょう? あんなにすごいお屋敷に住んでおられるのですから!
御侍:いや……私が住んでいるのはちっぽけなボロ屋ですよ?
水信玄餅:あのレストランは御館様の持ち物ですよね? 離れまであって、釣り場まであります。
水信玄餅:あれだけの土地を構える御館様は、やっぱり御館様だと思います!
御侍:うう、だから……やめて。
流しそうめん:そうだな、こいつは意外と頑固なところがある。
うな丼:そこが長所とも言えるであろう。
御侍:みんな、水信玄餅を受け入れすぎ……。
猫まんま:いや、それは一番は御侍様ですよ。
流しそうめん:そうだぜ、御侍! 自分がどれだけ水信玄餅に甘いか、まさか気づいてないのか……?
うな丼:まぁ、水信玄餅なら仕方ない。奴には……人を惹き付ける魅力があるからな。
御侍:わ、私は誰かを贔屓したりしてませんよ!?
うな丼:だったら、今日ここにみんなで来た理由を言ってみたらどうだ?
流しそうめん:水信玄餅が喜ぶからって、帰ってくるのも待たずにいの一番で出かける準備をしたのは御侍様だぜ?
猫まんま:まったくもってその通りです、御侍様。
御侍:う、ぐぐっ。い、いいじゃん、別に!
口先を尖らせて、御侍は三人を睨みつける。
水信玄餅:私が喜ぶ……? なんでしょうか、御館様。
御侍:あ、うん……君のバイトが終わったら、みんなで桜の島に行こうと思って。
水信玄餅:桜の島に?
御侍:あのね、桜の島で水信玄餅が食べられる場所があるらしくって。
御侍:かつて水信玄餅を作り出した料理人の子孫たちが、和菓子屋を開いてるって話を聞いたんだ。
猫まんま:そこで季節限定で水信玄餅を食べられるらしいですよ。
水信玄餅:へぇ……そうなんですね。
御侍:猫まんまと流しそうめんとうな丼が食べたことあるらしくて、すごく美味しかったって言うんだよ。
水信玄餅:確かに……水信玄餅は、とても美味しいと思いますが。
御侍:やっぱり! だから、バイト終わったらすぐに行こうね、桜の島に!
水信玄餅:そ、それは随分と急ですね……。
御侍:ん? 何か問題あった?
水信玄餅:いえ。そんなことは……ちょっとお待ちください。
水信玄餅が、店の奥へと下がっていく。
水信玄餅:お待たせしました。これを、私から御館様に。
水信玄餅は、手に持っていた花束を御侍に渡す。
御侍:え、ええ? えええ!?
水信玄餅:今日、私の初給料日なんです。それで、御館様に最初に何か贈り物をしたくて。
御侍:な、なんという……ううううぐぐぅっ!
猫まんま:ちょっと御侍様。
流しそうめん:すごい泣き方だな……。
うな丼:なんとも豪快だ。美しさのかけらもない。
水信玄餅:そ、その! 御館様、泣かないでください!
水信玄餅:あの、私がこうして歩けるようになったのも、こうして明るくいられるようになったのも御館様のお陰です。
水信玄餅:あなたが私を召喚してくださり、沢山の愛情を注いでくれたから……私はこうして元気になれました。
水信玄餅:まだあなたの元に召喚されたときは、いろんなことに迷っていて……。
水信玄餅:だから、こうして歩けるようになったのは、あなたのお陰なんです。
御侍:い、いや……君がこうして元気になれたのは、これまで周りの人に支えられたからであって……!
流しそうめん:そのうちのひとりが御侍ってことだ!
猫まんま:大功労者ですよ、御侍様。
うな丼:照れずに受け入れるといい、御侍。
御侍:う、ううっ! そ、そんな大したことしてないよ!
水信玄餅:私のバイトが終わるまで待っていてください、御館様。もう少しで上がりの時間ですから。
水信玄餅はそう言って、仕事へと戻っていった。
猫まんま:ほらほら、しっかりして、御侍様。
流しそうめん:そうだぜ、涙は水信玄餅を食う時までとっておいた方がいい。
御侍:わ、わかってるって! そもそも泣いてないしね!?
御侍は涙を拭ってそう叫んだ――
……これは、未来の話。
これから来る戦いを終えた後の話。
けれど、これは約束された未来。
御侍はティアラを救う。
それが現実になったときに――この未来は、確約される。
その日まで、御侍は頑張らないとならない。
大切な食霊たちと共に、笑いながら過ごせる未来を迎えるその日まで……。
水信玄餅:お待たせしました、御館様! さぁ、行きましょう! 桜の島へ……!
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