恐怖の遊園地・ストーリー・メイン第九章〜第十二章
第九章-トロッココース
物語 道は塞がれた。唯一残された方法とは……?
三人は手品師の指差した方向へと進んでいった。だが道は大きな石に阻まれ、動かそうとしたが、動かせなかった。お化け屋敷に直接続く道はここしかないと言うのに。
チーズ「どうしよう?道がふさがってるよ。」
ピザ「あっちに他に道がないか見てみよう!」
チーズ「何だってあんなに急いでいるのかな?」
カッサータ「…なんか面白いものでも見つけたいんだろう。」
チーズ「あ…なにやってるんだろう?」
カッサータ「ううん……何か面白いものでも見つけたんだろう。飛び跳ねてるみたいだ。」
チーズ「あれ、なんかどこかで見たことある気がするのはなぜ?」
カッサータ「うううん…旅館のご主人のところの…」
チーズ「――ジョーン!ぷはははは…」
ピザ「全部聞こえてるぞ!!!オレのどこがゴールデンレトリバーだってんだ!」
チーズ「どこもかしこもだよぉう~~」
ピザ「犬じゃねぇよ…おい、カッサータ!人の頭を撫でるんじゃない!」
カッサータ「ハイハイ…思わず手が出ちゃってね…」
チーズ「いい子いい子ぉ~~~なんだってこんなに早く戻ってきたの?」
ピザ「旗を取りに来たんだよ。さっき石を動かして、持っていくの忘れたんだ。それがまさか、オレの悪口をいってたとは!今度はほんとに行ってくるぞ!また悪口言うんじゃないぞ!」
チーズ「わかった、わかったぁ、はやくいきなよぉ。」
しばらく経って
トロッココースターの入口
ピザ「おい――こっちにこいよ!!!どう行けばいいかわかったぞ!」
チーズとカッサータは急いでピザのいる方へ向かった。ピザは洞窟のような穴の入口を指さし、興奮した様子で二人を見た。
ピザ「このトロッコに乗っていこう。降りたらお化け屋敷がもうすぐそこだ!」
カッサータ「ううん……随分暗そうだな。しかもこの遊園地、廃園になってだいぶたつだろう、動くのか?」
ピザ「動くさ!!さっき見に行ったんだ!元電源を入れたら、トロッコが動いたんだ!」
カッサータ「…お前、なんだか興奮してるみたいだけど。」
ピザ「そ、そんなこと!てか、早くいこうぜ!」
チーズ「自分が遊びたいだけだよ。」
カッサータ「同感。」
ピザ「おい!!!聞こえてるぞ!」
自分の決心を証明するかのように、ピザは足早に真っ暗な洞窟の中へと入っていった。カッサータとチーズは顔を見合わせ、クスッと笑ってからようやく、少々ご機嫌斜めのピザについて行った。
ピザは元電源を入れ、しばらく経つと洞窟の中にセピア色の明りが着いた。決して心地の良くない電波音のあと、小さなトロッコがギシギシと音をさせながら、乗車口のホームにやってきた。
この小さなトロッコは乗ってしまうと動かすことはできない。つまり、誰か一人が元電顕のところで操作しなければならない。このうちの誰か一人が、この危険な場所で、仲間から離れなければならないのだ。
カッサータ「じゃあ、俺が操作するよ。出口で集合ってのはどうだ?」
ピザ「反対!」
チーズ「チーちゃんも反対!こんな危険なところに一人残せないよ!」
カッサータ「じゃ、どうするってんだ」
全員で頭を悩ましているちょうどその時、可笑しな格好をした人の群れが、洞窟の中から出てきた。服についているマークからして、おそらく遊園地のキャストだろう。
キャスト①「お客様、この遊園地で一番有名なアメージングショーを観に行くのでしょう!どうぞ!素晴らしいショーをお楽しみ頂く前に、是非こちらの同じく有名な、最もスリルあるアトラクション、トロッココースターをお楽しみ下さい!」
キャストたちはどうすればよいかわからずにいる三人を取り囲む。悪意はないながら、少々熱が有り余り過ぎているキャストらを前に、カッサータは武器を上に持ち上げ、間違って彼らを傷つけないようにするほどだった。
カッサータ「ちょちょちょ!!気を付けろって!!!武器だって!危ないって!刺さるぞ!離れろ!」
ピザ「うわ!オレの旗を引っ張るな!!!」
人だかりの中から一本の手が伸びたかと思うと、三人を小さなトロッコへと押しやった。混乱の中にありながら、スキを見て安全ベルトまで締めてくれた。
ゴットン――!
ピザ「ちょちょちょ、待てって!!何すんだよ!!放せって!」
激しい衝突音と共に、トロッコのドアががっしりと閉まった。
キャスト②「何をするって!?勿論私たち自慢のトロッココースターを楽しんで頂くんですよ!!!!!」
あがく間もなく、小さなトロッコは動き出した時の慣性で大きく揺れた。三人は思わず手すりにつかまり、しっかり座るしかなかった。
キャスト②「ジャジャジャジャーン!トロッココースターが間もなく出発しま~す!手すりにしっかりおつかまりになり、外に顔を出さないようにお願い致します!」
奇妙な笑顔を浮かべたキャストがスイッチの前に立ち、大きく手を挙げて、三人が慌てて叫び声をあげるのも気に掛けず、力いっぱいスイッチを押した。
キャスト①「へへへへ!お客様、どうぞスリルたっぷりの旅をお楽しみください!」
ピザ「おいおいおい!待て!まだ聞きたいことがあるっつってんだろーーーーーーーー!」
トロッコは慣性の法則で転がってしまった三人には全く構うことなく、ギシギシと音をさせながら、どんどんスピードを上げ、深い洞窟の中に飛び込んでいった。
ぱっと手すりを掴んだ三人はトロッコにぶるんぶるんと揺られ、チーズは全身の力をこめたものの、あっちからこっちへと振り回されるのを止めることは出来なかった。
チーズ「うぁぁぁぁ!!!!たすけて!!!!!」
ピザ「ヤッホー――いけ~~~!!!」
カッサータ「ピザ、落ち着いて座っててくれ、うーーーいててててーーー」
グォー―ーン――
彼らの祈りが届いたのか、トロッコが長ったらしい余韻を響かせながら、ようやく止まった。
カッサータは安全ベルトを外してトロッコを降り、調べてみると一枚のビニールが車輪に絡まっていた。
カッサータ「ふうぅ、ったく…ようやくとまったな。あれ…こりゃなんだ?」
カッサータは車輪に絡まっていたビニールをはぎ取り、トロッコの周りを一周して緊急制御装置のスイッチを見つけた。
カッサータ「歩いてでるか?それとも…トロッコにまた乗って出るか?スイッチとハンドブレーキがあるようだから、ぶかりそうになったら、止めることもできるぞ。」
ピザ「歩くとしたら大分かかりそうだな。トロッコで行こうぜ。面白いしさ。」
カッサータ「…本当にトロッコ好きなんだな。」
ピザ「ちがうさ!!!時間の節約だ!
カッサータ「わかったわかった、じゃ、出発するか―ー!」
第十章-終点
物語 深い洞窟の先で、彼らを待ち受けるもの。
トロッコは慣性に従い、一気に暗闇に包まれる洞窟の中へと入っていく。洞窟に入ったばかりの頃の狼狽ぶりに比べ、トロッコの前方に座るピザは少々異様に興奮し、片手を高く上げて飛び跳ねている。
チーズは一番最後にトロッコから降りた。トロッコの縁にぶつけた肩をもみながら大きく一息つき、イラっとした目で、満面の興奮を隠さないピザをにらむ。
チーズ「いたたたたたたぁ…ったく、この線路、揺れ過ぎじゃない、まったくなんだって私が一番奥なの。」
カッサータ「俺はピザを守んなきゃだし、ピザはチーズを守んなきゃだろが。」
ピザ「おい!オレのせいだってか?!」
カッサータ「そうさ~俺一人じゃ、分身術じゃあるまいし、どうやって2人とも守れっていうのさ?」
ピザ「わかった、わかった、喧嘩すんなって。オレは楽しかったぜ!もう一回乗るか?もう一回乗ろうぜ!今度はオレが隣に座ればいいだろぉ!さ、いこう、いこう!」
カッサータ「すまないが、キミの提案は却下だ、許したまえ。」
チーズ「賛成。」
チーズ「ねぇ、何の為に来たか、覚えてる?門の所で捕まった、あの運の悪い人、一体どこなの??」
カッサータ「俺が思うに、覚えてないだろうな。ま、それが俺たちの愛するピザだからな、ま、よしってことで。」
チーズ「それもそっか。」
チーズ(そうやって甘やかすから、あんななの)
ちょうどその時、恭しく待ち構えていたキャストが駆け寄ってきた。
キャスト①「おおおおおお!お客様、お着きですか!どうぞ!!次はどちらにいかれるんですか!!当園で一番人気のサーカス団アメージングショーにいかれるんでしょう!」
カッサータ「ちょっと、あんた達、ここのキャストさんですか?」
キャスト①「ええ、その通りです。お客様!何か御用でしょうか?」
カッサータ「本当、しつこいな。そんなにアメージングショーを観てほしいのか?」
カッサータ「サーカス団の団長、遊園地の園長、そうか――ピエロか!」 そういうと、カッサータは持っていた武器を手のひらで回し、横殴りに半円を描くと、冷たい光を放つ刃先を呆気にとられたキャストに向けた。
カッサータ「おいおいおい、そんな驚いた顔をして、怖がるなよ。結局、この物語の筋で行けば、お前は倒されるべき悪者だろ。」
もともとおびえていたはずのスタッフの笑顔は不気味な光を放ち、その姿も変わって、最後にはあの見慣れた怪物の姿となった。
ピエロ「へへへへ!」
カッサータ「こいよ!」
ピエロ「へへへへへ!!」
第十一章-お化け屋敷へ
物語 蝋燭を持って、訪ねよう。
度重なる攻撃でも自分をどうすることもできない三人を見て、怪物は嘲笑を浮かべ、巨大な砂ぼこりを巻き上げた。三人が目の前の砂ぼこりをはらい、咳をしながら目を開けると、怪物の姿はとっくに消えていた。
カッサータ「無事だった?」
カッサータ「あそこだよ。」
ピザ「だれか、来てくれ、うっ―ーちょっと引っ張ってくれ。」
一通りドタバタがおさまると。
ピザ「このままこの世界とおさらばかと思った…」
カッサータ「これしきの砂ぼこりでオサラバかなんてことより、俺はいったいどうしたら砂山の中にもぐりこめるのか知りたいね。ほら、ごちゃごちゃ言わず、出てこいよ!」
ピザ「ああ。わかったよ……」
カッサータはピザに手を貸してやり、上に引き上げてやった。怪物が去った方向を見て、カッサータは眉をひそめた。
ピザ「何見てんだ?」
カッサータ「何だか、奴、毎回力を出し切っていないような…まるで…」
ピザ「まるでどこかに引き寄せようとしてるって?」
カッサータ「お前もそう思うか?」
ピザ「はい。」
ピザ(そう思うってより…どうしてそうするのか、知ってるってのが本当だが…はぁ、かわいそうな団長と団員達よ…)
チーズ「ねぇ、ということは、まだ追っていかなきゃってこと?罠じゃないかしら?」
カッサータとチーズにじいっと見つめられたピザは遠く怪物の去った方向を眺めた。その口元には薄い、やさしささえ湛えた笑みがうかんだ。
ピザ「ま、そう考えすぎんな。もしかしたら、ただ自慢の遊園地で存分に遊んでもらいたいだけなのかもしれないぞ。いこう!お化け屋敷だ!!!!」
チーズ「ちょっと!なになにぃ??こんな簡単にまた出発?待ち伏せでもされてたらどうするのよ!ちょっと、ちゃんと説明しなさいよ!!!」
カッサータ「ここまで来たら、行くしかないだろ。もしかしたら、本当に面白いことがおこるかもしれないぜ。」
チーズ「ちょっと!!待ってってば!!!」
第十二章-古城にて
物語
ピザはこの遊園地に入ってきたばかりの頃の神妙な様子を改め、輝かんばかりの笑顔で胸を張り、この小さなチームの先頭を歩く。
チーズ「もし空の色がこんなんじゃなかったら、本当に遊園地に遊びに来たって勘違いしそうだわ。」
ピザ「え?」
チーズ「いえいえ、気にしないで、どうぞ続けて。」
そう歩きもしないうちに、三人は陰気な古城の前までたどり着いた。
ピザ「うう…本当に入るのか…?」
カッサータ「入ろうぜ!折角遊園地に来たのに、お化け屋敷とばすって手はないだろう!」
チーズ「さっきまで一番楽しそうにしてたのは誰さんだったかしらねぇ~行くわよ!」
ピザ「わっ――心の準備もさせてくれねぇってか!」
カッサータ「大丈夫大丈夫、チーズさえ怖がってないのに、大の男がなにしてる、いくぞ!」
ピザ「アーーー!なんでお前まで!!!押すんじゃねぇよ!自分で入るさ!」
城の中に入ると、シューシューとどこからともなく音が聞こえてくる。それは明らかに、敢えて音を立てないようにしている音だ。無駄な努力だ。
お化け屋敷のキャスト①「さぁ、気合入れて!折角三名もお客様が来たんだからな!たっぷり度肝を抜いてやるぞ!」
お化け屋敷のキャスト②「おおお!」
チーズ「わ…度肝を抜いてやるですって…まぁ、楽しみね?」
ピザ「楽しみ、楽しみだよ。チーズ、その、フォークをオレにむけるの、やめてもらっていいかな?」
カッサータ「ある意味、誰かさんの様子を拝めるのは、確かに面白いな。俺もちょっと楽しみだな。」
ピザ「お、おい、黙れよ!オレは度肝なんて抜かれやしねぇぞ!」
お化け屋敷のキャスト①「おい、お前ら、もうちょっと静かに!」
お化け屋敷のキャスト②「ううう…明らかにあんたが音をたてたんじゃなか…」
お化け屋敷のキャスト①「口答えするな!ま、いい、折角のお客さんだ、急ごう!俺たちの思いを届けるんだ!」
固まってこそこそ話し合っていた「幽霊」たちは、なんとも言えない表情で後ろに立つ三人に全く気付いていなかった。
チーズ「…全部、聞こえちゃった…」
カッサータ「…全部、聞こえたな…」
お化け屋敷のキャスト①「俺の顔に米粒でもついてるのか?!さっさと動け!あん?」
お化け屋敷のキャスト①「……あんた達は?いつ入ってきたんだ!!!」
ピザ「もうだいぶ前からだよ。」
お化け屋敷のキャスト①「ああああああーーー!完璧な計画だったのに!どうしてくれるんだ!!」
ピザ「キミ達…今から準備したらどうだ。オレ達はもうちょっとしたらまたくるってのは?」
お化け屋敷のキャスト①「いいですよ、いいですよ、そうしましょう!!」
まるで煙かのように城の奥へと消えていったキャストを眺め、入口に立つ三人はやれやれと首をふらずにはいられなかった。
チーズ「見てたらなんだか、急に緊張してきちゃったわ…はぁ…」
Discord
御侍様同士で交流しましょう。管理人代理が管理するコミュニティサーバーです
参加する