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【黒ウィズ】ソフィとリルムのトリック☆オア☆トリィィート! Story

最終更新日時 :
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最終更新者:にゃん

2015/10/27





story



 我だ。〈魔杖エターナル・ロア〉だ。

 グリモワール・グランプリが終わり、我は再び旅をしている。

 小娘と……ソフィと。だがそれも、もう終わりを迎えるようだ。

4998……4999……5000!5000!!

やったーー!!

ソフィちゃん、すごーい。あの金額をたった一年で返しちゃうなんて……。

 小娘とソフィは王都にやって来ている。いや、帰ってきたと言うべきか。

 旅の始まりは一年前の、ハロウィンの祭りで賑わう王都だった。

 魔道士が互いに大事な物をひとつ賭けて戦うくトリック・オア・トリート〉。

 その対戦相手として、小娘はソフィと出会った。

うん。お城の半分を修復するお金だから、ソフィももっと時間がかかると思ってた。

 小娘とソフィの対決は、途中で余計な邪魔が入ったせいで、決着はつかなかった。

あのかぼちゃオバケをぶっ飛ばすつもりが、間違ってお城を壊しちゃった時は焦ったなあ。

 そのかわり、小娘がやらかした失態の連帯責任を負う形で、ソフィは多額の借金を背負った。

 ソフィが小娘と旅に出たのは、借金の返済が目的である。

 それが返済し終わったということは……ソフィの旅もこれで終わり。

じゃ、ソフィはこれからお城に行って、お金を返してくるね。

私も父さんに立て替えてもらった分を返さなきゃなあ……でも今は――。

お祭りが大事!……と思ったけどお金がない。

お前、そればかりだな。少しは計画性を持ったらどうだ?ソフィを見習え。

お金、お金……お金かあ。チラッ。

ギクッ!

チラッ。チラッ。

ギクッ!ギクッ!

チラッ!チラッ!チラッ!

ギクッ!ギクッ!ギクッ!

もう、リルムちゃん。ロアちゃんを売ろうとしちゃダメだよ。

へへへ。冗談だよ、ソフィちゃん

やって良い冗談と悪い冗談があるぞ、小娘!

大丈夫、けっこう厄介な物らしいから売らないよ。それに、大して高くないしなあ。

小娘、いつか泣かす。

では私も、ソフィちゃんを見習って、魔物でも退治して、そっこーでお金を稼いでくるか。

行っくぞー!

あ、リルムちゃん!ロアちゃんは?

どうせ使わないから、ソフィちゃん持っておいて。

う、うん。



……行っちゃった。リルムちゃん、わかっているのかな?

…………。

 借金を返済し終わったということは……ソフィの旅もこれで終わり。

 小娘はそのことが分かっているのか。アホなのでその可能性は低いだろう。

 ちょうど、一年後のハロウィンの日に、その日が訪れるというのも、少々皮肉なものである。


 ***


 賠償金を、城に返済し終わったソフィと我は、祭りの気配で賑やかな街中を歩いていた。

ソフィ。小娘との旅はもう終わりか?

ロアちゃん……。気づいていたんだ。

魔杖だからな。

これでいいんだよ。リルムちゃんなら、私なんかがいなくても大丈夫だよ。

だが、相当のアホだぞ。

うん。……でもロアちゃんもいるし。

ソフィ、我の昔話を聞いてくれるか?……我は昔、尖っていた。

触れる者全てを傷つけるような……そんな生き方をしていた。

だが小娘やソフィと旅をしているうちに、我ながら丸くなった気がする。

 それは本当だった。我はいま、ソフィに杖として扱われている。ただの杖として。

 小娘には杖としてすら扱われていないが、どちらにしても、昔の我からは考えられない姿だ。

それはきっと小娘やソフィの特別な力だ……。まあ、魔法と言っていいだろうな。

それを失っていいのか。お前たちふたりの魔法を。

ロアちゃん……。

昔、槍だったの?

尖っていたというのは、形状の話ではないな……。ちょっと例えが難しかったか。

ううん。なんとなくわかるよ。ホントはね、私たぶん、リルムちゃんに嫉妬しているんだ。

ソフィもあんなふうに生きてみたいな……って思う。自由で、努力なんかしてないのに……。

あんなにすごい魔道士で……。だから、リルムちゃんとずっと一緒にいたらソフィはダメになる。

そんなふうに思う時があるんだ。だからここでお別れにしようと思う。

そんな考え方では、どこへ行っても無駄だぞ。闘ってみなければわからんではないか。

闘う前から負けた気になっている者は――。小娘以上のアホだ。

…………。

ちょうどいい機会だ。もう一度〈トリック・オア・トリート〉で小娘と闘ってみろ。

闘ってみてダメでも、きっといまとは違う景色が見えるはずだ。

どうだ?我もソフィを手伝うぞ。

ロアちゃん……ありがとう。


 まったく。最近の我はどうかしている。

 そろそろ〈魔杖〉の名も返上せねばならんかもな――



 ***


 そして、対決の時はやってきた。

こうやって、ソフィちゃんと対決するのも、一年ぶりなんだね。

なんか、変な感じだね。

 そういえば一年前のあの時、我はソフィに使ってもらいたいと思っていた。

 一年の時を経て、その願いが叶ったわけだ。つくづく今年のハロウィンは妙な偶然がある。

 だがあの時とは、我も小娘もソフィも、少し変わったのかもしれん。

 成長。もう数百年生きている我が言うのも、おかしなものだが、そういうことなのだろう。

行くよ。ソフィちゃん。

うん。リルムちゃん。

小娘。悪く思うなよ。今回ばかりはソフィに勝ってもらうぞ!

とあー!リルム式はちゃめちゃ――!

あ!ちょっと待って、リルムちゃん!

ほえ?

うっかりロアちゃん、持ったままだったよ。ちょっと置いてくるね。

は?我も一緒に闘うぞソフィ!我を使い、小娘に打ち勝つのだ。

そして、弱い自分を超えるのだ、ソフィ。

うん。でも、ソフィはひとりで戦う。

……そうか。そうだな。ひとりで戦わなければ意味はないか……。我が間違っていたな。

ううん。違うよロアちゃん……。

ソフィ、杖使わないから。

あ。そっち?……そうだったな。

もういい?ロアちゃん。

うむ……。

じゃ、リルムちゃん。改めて試合開始だよ!

望むところだ、ソフィちゃん!

……ま、いいか。



ほい!

はうっ……!こ、小娘、もうちょっと低く投げろ……。き、傷がつく。

左か……

小娘……。

左は秘宝都市だね、リルムちゃん。

ああ、そっか。全然分からなかった。

小娘、いい加減地図くらい読めるようになれ。

 対決の結果……。というかふたりの大暴れの結果。

 ソフィの魔法が再び城を破壊し、またしてもソフィは借金返済の旅をする羽目になった。

 だが、我はソフィがわざとやった気がしている。

 怪我人がひとりもいないというのは、少々出来すぎた偶然に思えるからだ。

 ともかく我と小娘とソフィの旅は、再び始まる。今度の目的地は……。


リルムちゃん、乗って。秘宝都市までひとっ飛びだよ。

オッケー!

小娘、もっと我をしっかり持たんか!前みたいに途中で落とすなよ!

目指すは!

秘宝都市!のなんて名前だっけ?

プレ=ボ、プレ=ボだ。小娘。少しは地名も覚えるようにしろ!

あー、耳が痛ーい。

ふふふ。ロアちゃん、リルムちゃんのお母さんみたい。

せめてお父さんにならんか……。

 今度の目的地は秘宝都市プレ=ボ。さて、何が起きるのやら……。





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