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【黒ウィズ】心竜天翔 Story

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最終更新者:にゃん

2016年11月16日(水)





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 君はたどり着いた酒場の戸を押した。

「とりあえず何か食べたいにゃ。最低でも水のー杯でももらわないと……。

私たちの持っているものの中に、こっちで価値があるものがあればいいけどにゃ。

 と言っても君の押した戸は別異界の酒場の戸だった。

早速、君は酒場の主人と交渉する。だが答えは芳しくない。と言うよりも最悪だ。

ほぼ門前払いである。そんな君を見て、声をかけてくる者がいた。

「あんた、俺のこっちのテーブルに来ないか?

「遠慮することはありません。我々ふたりにはこのテーブルは大き過ぎます。

「ここは厚意に甘えるにゃ。

 とウィズが囁く。君は誘われるまま席に着く。

「イケルだ。こっちはミーレン。見ての通り、物騒なモノを振り回すのが生業だ。

「ご自分を悪く言うのはおやめください、イケル様。

あなたは由緒あるロートレック家の立派な当主なのですから。

 どうやら騎士やそれに類する職業の入らしい。

確かに、空いている椅子に持たせかけられた大斧は、木を切るには不必要に大きすぎる。

君は名を名乗り、誘いに対する礼を言う。

「腹が減っているなら、何か食べるといい。

「肉にゃ。肉入りのスープを頼むにゃ。

 師匠のわがままに乗るように、君はオウム返しにスープを頼んだ。

それを聞いて、イケルとミーレンは困った顔をした。

「肉入りのスープはよせ。こんなところで出される肉は何の肉だかわからない。

「旅は初めてですか?それなら教訓として覚えておくといいですよ。

 ここではそういうものなのか、と君は改めて野菜のスープを頼むことにする。

酒場の戸が開くキィという音がする。

軽装の女戦士がひとり、入ってくる。大きな輪のような武器を背負っていた。

酒場のざわめきがー瞬、沈黙に覆い隠される。

席に着くなり、女は酒場の主人に向かって、注文する。

「スープとパン。あ、スープに肉は無しで。

 酒場のざわめきが息を吹き返す。切れ切れに「アマイヤ」という名が聞き取れた。

「竜狩りのアマイヤか。厄介な奴が来たな。

「ええ。ですが、問題はないでしょう。

 どういうこと?と君はふたりの会話に割って入る。

それを聞いて、またふたりは困った顔をする。

「お前は、王の試練を受けに来たんじゃないのか?

 聞き覚えの無い言葉に、君は首を横に振る。

と、また酒場の戸がやつれた音を立てる。

今度は四人いた。

「やれやれ。やっとセトの谷の入り口か。時間がかかってしまったな。

「誰のせいだ。何が道なら知っているだ。でまかせを言うな。

「うむ。人生という名の道なら知っているぞ。

「殴りたくなってきた。

「アディちゃん、怒ったら体に障るよ。

「その通りだ。アディちゃん。

「ふふふ。

「ギュー、ギュー!

「すでに癪に障っている。店主!スープを人数分。肉は抜きだ!


「竜人。それもふたり、いや3人か。

「あるいは彼らが試練の立会人かもしれませんね。

 話によると、イケルたちは王の試練を受けにここに来たらしい。

イケルたちだけではない。この酒場にいるすべての者が王の試練を受けに来た者たちだという。

その試練を通過すると、このセトの谷の王となることが出来る。そして……。

「この谷に住む竜アレンティノから竜力を与えられ、竜人となる。

それが王の証しだ。

「キミ、気づいているにゃ?私たちはー度この異界に来たことがあるにゃ。

 君はウィズの囁きにこっそりと頷く。あの時は確か竜人の少女ミネバと共に行動した。

君はそのことを懐かしく思う。と、急に酒場がしんと静まり返る。

キィと酒場の戸がひとりでに開く。

そしていつの間にか店の中には、客以外の誰もいなくなっていた。

戸の向こうに何かが蠢く気配を感じる。

「おい。おまえ、少しは使えるのか?

 君は静かに頷き、スープの残りを飲み干す。

心得のある者はすでに察して、自らの武器に手を伸ばしていた。

「やれやれ、シビレる展開になってきたねえ。




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竜の力、人の心――


 別の異界を彷徨う「君」とウィズは、谷の麓にある酒場に辿り着き、その谷で行われていた「王の試練」に巻き込まれてしまう。王の座と竜人の力を授けられる試練で、参加者たちの思惑が交錯する。

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