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【黒ウィズ】ミコト編(クリスマス2019)Story

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最終更新者:にゃん


2019/12/12



目次


Story1 旅の終わり

Story2 御言

Story3 縁(よすが)の恩


登場人物






story1 旅の終わり


「ここが、最後の結界社です。


 黄泉より現れた崇り神を封じるため、大陰陽師ドウメイ・アマノが作った五星方陣。

1000年もの間、地上を守護してきたその結界は、悪しき策略によって解かれた――

しかし、歌詠の末裔・紬姫の命を懸けた和歌が奉納されたことで、結界は復活し、黄泉の鬼門は閉ざされた。

ただ、その結界は仮のものにすぎない。

だからミコトたちは、五星方陣を完全なものとすべく、結界社を巡り、新たに和歌を奉納する旅をしてきた。

そして、ついに、その旅が終わりを迎えようとしていた。


「ミコトさん、調子悪うあらしまへん?

「大丈夫ですよ、キリエさん。私はまだまだ元気です!

「無理すんなよ、ミコト。平和を願う和歌を奉納するのは、命を燃やす仕事なんだろ。

「そうね。だから紬姫も、使命を果たして亡くなってしまったのだし……。

 歌詠ノ儀式を行った紬姫は、その命を燃やし尽くし、はかなくなっている。

ツバキとハヅキは、紬姫が命を賭す覚悟でいたのに気づけなかったことを悔やみ、ミコトの護衛を務めてくれていた。

「本当に大丈夫ですって!まだお腹も減ってませんし!

「考えてみりゃ、ミコトが和歌を詠むたびに腹を空かしていたのは、命の力を使ってたからなのかな?相棒。

「……恐らくな。俺たちも異能の力を使えば、体力、気力を消耗する。それと同じか、それ以上の負荷がかかるに違いない。

「暗い話はそこまでです、キュウマ。だからこそ、我々も策を練ったわけですからね。

さあ、本殿に入りましょう。ミコト様、よろしいですね?

「はい、トウマさん。紬姫さんのためにも、絶対に、五星方陣を完成させましょう!


 一同は、結界社の本殿に足を踏み入れた。

奥の神台に祈りを捧げ、神棚の封印を解く。

そこには、和歌の記された一枚の短冊が納められていた。


「紬姫の和歌か……。

 本来、結界を維持するために詠まれた歌だ。しかし、言霊を無効化する鈴の力で、歌に込められた力は失われている。

五星方陣を完成させるには、ミコトが新たに歌詠ノ儀式を行い、平和を願った和歌を奉納しなければならない。

「キリエ、術の準備はよろしいですか?

「はい、ご当主様。いつでもよろしゅうおす。で

「は、まずはこちらから――

 トウマとキリエが術を唱えると、ミコトを中心に不思議な光が広がった。

トウマたちはうなずきあい、それぞれミコトの両肩に、そっと手を乗せる。

「さあ、みなさん、我々と手を繋いでください。そうすれば、ミコト様に命の力をお分けすることができます。

「な、なんだかくすぐったいです。

「仕方あらへん。我慢してください。

 ツバキがキリエの、キュウマがトウマの手を取り、さらにハヅキがツバキの、フウチがキュウマの手を取った。

「すみません、みなさん。これ以上は危ないって思ったら、手を離してくださいね?

「これだけいれば、誰も死ぬことはないはずだ。もしも死んだら、トウマの計算が間違っていたということになる。

「私もそう信じてはいますが、言霊の力を持たない我々の生命力が、どれだけ足しになるかは未知数です。

「へっ!たとえ言霊の力がなかろうと、生命力なら誰にも負けねえよ。アタシひとりでもいいくらいだぜ。

「無茶言わないの。それであなたが死んだら、立て替えておいたツケの代金、誰が払ってくれるの?

 いつも通りのやり取りに、ミコトはくすりと笑う。

(みんな、私の大切なお友達です)

 和歌の神として上界にいた頃には、地上の人間たちと友達になるなんて、考えてもみなかった。

今では、彼らのことも、セイやスオウたちと同じくらい大切な仲間だと思っている。彼らだけでなく、地上の人々みんなを……。

「さあ、ミコト様。儀式を始めてください。

 ミコトはうなずき、目を閉じて筆を取った。

((平和のための祈りを……)

 人を、世界を愛する思い。心底からの思いを謳に込めるべく、ミコトは精神を集中させる――


 ***


 都に、死が満ちていた。

邪念にまみれた崇り神たちが、笑いながら人々を殺していく……。


「尊姫(みことひめ)、こちらへ!お急ぎください!

「ですが、みなさまが……!

「今の我々には何もできません。しかし五星方陣さえ完成すれば――

「おっと!逃がさぬぞ、陰陽師!

「その娘を、我らへの挿げものとするがいい!

「おのれ、崇り神!誰が貴様らなどに――


「奥義・寸鉄残破!

「ぎゃあっ!な、なんだこいつ!人間の分際で、神たる我が身を傷つけるとは!

「どでけえ相手は俺の獲物だ!ここは任せて行って来い、大親友!

「誰が大親友だ!さあ、尊姫!

「待て!――ぐわっ!?な、なんだ!?なんだこの攻撃は!?

「殺すための道具だ。おまえたちにふさわしい。


 ドウメイに連れられ、混乱の都を駆けた。

途中、幾多の崇り神に襲われたが――


「攻めて攻めて攻め抜きます!

「来な。叩き墜としてやる。

「陰陽の力、ここに!

「アタシはほんとに手を抜かないんだよ……。


 ――妖の群れと人間の少女が現れ、次々と崇り神を打ち破っていく。


「行きなさい、ドウメイ!あなたの五星方陣、見せてもらうわよ!

「クオンさま……!あなたに比べれば不肖の身なれど、このドウメイ、やってみせます!

「殼の破り方、知りたい?

「おまえは黙ってろ!!!!!


「すごい……人間と妖が、共に立ち、共に戦うなんて……。

 討伐者と妖たちの参戦によって、崇り神たちの注意がそちらへ向いたところへ――


「ふん。なにが崇り神だ。かつての大戦で俺たちに敗れた、地上神の成れの果てごときが。

我ら戦神四十七柱が、跡形もなく打ち砕いてくれる!

「力を出し過ぎてはなりませんよ、カタバ。神と神とが全力でぶつかれば、世界が壊れてしまいかねませんから。

今回、我々はあくまで支援に徹します。五星方陣が完成すれば、崇り神たちを黄泉へ送り返せるのですからね。

「ふん。いいでしょう。我ら戦神の〝支援〟がいかなるものか、ご覧に入れて進ぜる!


 上界から降臨した八百万の神々が、崇り神たちを打ち崩しにかかった。


「出おったな、八百万の神々。父上、どうなさいます?

「知れたこと。黄泉にて手にした新たな力で、ことごとくねじ伏せるまでよ……。


「そこまでだ!ゴウキ、ムドー!

「貴様ら……!

「兄上、父上……。

「まだ懲りずに地上の覇権を狙ってやがったのか。黄泉の崇り神どもと結託して、自分たちまでその仲間になるなんざ、鬼の名が哭(な)くぜ!

「人間、妖、八百万の神々……やけに動きが早いと思うたが、ぬしらの仕業か?

「そうよ。私たちの仲間には、黄泉境を超える力を持つ人がいるの。

「そいつと、そいつの弟が教えてくれたのさ。だから、諦めて黄泉に帰りな!

「できぬな。我らは崇り神と結託したのではない。彼奴らを支配し、その力を奪ったのだ。

企図が知れたところで、我らの力に敵わぬなら無意味というもの。今度こそ、ぬしらを始末してくれよう。

「そうはさせない!みんな、行くよ!

真・激桃チェンジ!

オールスピリッツコンバイン!

四心一体!φの陣!!


人が、妖が、鬼が、神が――あらゆる種族が混沌と入り乱れ、都のあちこちで斬り結ぶ。


「光よ走れ、タケミツブレーード!

「天地裁断シヴァ・カーリー!!


 なんだかよくわからない人(?)たちも混じっていたが――とにかく。


(平和を願う心は、みな同じ――)

 熱い思いが、尊姫の胸を焦がす。

同時に、切々と湧き上がるものがある。この思い、この情景を見て感じた、大いなる詩情が――

(みなさまの思い……わたくしが、謳に変えてみせます!わたくし自身の、すべてを懸けて!)

 たとえ、命を燃やしきることになろうとも……。



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story2 御言


「おう、おったぞ!皆殺しだ!

 突然、本殿の扉が開き、鬼たちが飛び込んできた。

「鬼!?どうしてここに!

「五星方陣を完成させはせん。再び黄泉との道を開くのだ!

「先の戦いの残党ですか……しかし、なぜ結界の内側に鬼が入り込めたのでしょう?

「考えるのは後だ。トウマ、キリエ、ミコトを任せる。フウチ、行くぞ!

 キュウマが大鎌を手にし、鬼たちの群れへと躍り込んでいく。

だが、さしものキュウマも、ひとりでは分が悪い。いくらかの鬼が、キュウマを抜けてミコトヘ向かった。

「くそっ、しゃあねえ!ツバキ、とっとと片づけるぞ!

「わかった!

 ツバキとハヅキも刀を手にし、ミコトを守るため鬼に立ち向かっていく。

「ご当主様、うちらだけでミコトさんを支えられるやろか……。

「わかりません。ですが、やるしかないでしょう。

 ミコトは一意専心、極度の集中下で、ゆっくりと一文字ずつ短冊に平和の和歌を書き記している。

そのたびに、ミコトの命は燃えていく。キュウマたちの助けがなければ、そのまま燃え尽きるかもしれない。

「早く戻らなければ、ミコトが――

 キュウマは焦りを噛み殺しながら、フウチとともに大技を繰り出す。

「五光!

桜に、月に、雨、鶴、鳳!

魂絶法!

「「無塵!」」

 退廃の蒼炎が、群がる鬼を焼き尽くす。

だが――

「鬼どもの怨念、受け取ったり……。

 崩れゆく鬼の身体から、崇り神の怨念が湧き出し、鬼の屍が再び動き出した。

「おい、ありゃあ崇り神じゃねえか!崇り神は前の戦いで八百万の戦神が退治したんじゃなかったのかよ!?

「すべて討たれたわけではない。我らは恥を偲んで野に忍び、こうして再起の時を待っておったのだ。

「鬼たちが結界に入れたのは崇り神の力ですか。しかし、崇り神の力の源は黄泉の怨念。それがなければまともに戦えないはず――

「鬼たちの怨念を吸って、力を取り戻したんですかいな?なんちゅうことするんや!

「死せる鬼どもの魂には、いずれ我らの伴をさせてやろう。五星方陣を打ち砕き、再び黄泉との道が聞かれた暁にはな!

 ツバキとハヅキが倒した鬼の屍も、次々と崇り神に乗っ取られていく。

「死ねい、人間!

「上等だ。もういっぺん斬ってやるよ!

「待って、ハヅキ!相手は崇り神。前回は、戦神の力を借りたから勝てたのよ。私たちだけでは――

「正しくは、元・戦神だけどな!

 熾烈な光が、地に満ちた。

清らかなる神の力を宿した白刃が、ツバキとハヅキの前にいた崇り神を十字に斬りつけ、霧散させる。


「よっと。やっぱ自前の身体はいいねえ。

「あなたたちは……まさか!

「セイとスオウか?あのときの!おいおい、八百万の神々が地上に出るのはまずかったんじゃないのかよ?

「社の本殿は神域……つまりは〝ぐれーぞーん〟だ。何より、許可を得ているからな。

「おのれ、八百万の神めが!たった2柱で来るとはな。なぷり殺しにしてくれ――ぎゃあ!

「一撃必中!2柱だけなものか!

「舶来から取り寄せた兵器。どっせーいですわ!

「私が助けてあげますからね~!

 続々と八百万の神々が降臨し、崇り神たちに神の力を見せつける。

「ゆ、夢でも見てんのか?あれ、そういえば俺たち。あの神々、夢で見たような……。


「ここでは人の目にも神々の姿が見える、っと……。

言われた通りに書いたけどさ。本当にいいわけ?ナユタさん。

「大丈夫でしょう。〝ぐれーぞーん〟ですから。


「なんだかわかんねぇけど、おいしいとこ持ってかれてたまるかよ!おいスオウ、アタシにもやらせろ!

「うわっ、割り込んでくんなよ!つうか神を呼び捨てにしてんじゃねえ今さらだけど!

「ハヅキ、それより私たちはミコトさんのところに戻らないと――

「案ずるな、ツバキ。ミコトなら大丈夫だ。今は崇り神を倒すのが先だ!

「あいつら、ずいぶん親しげじゃないか……ひょっとして、ひょっとすると、ひょっとしてしまうのか!?

「神と人間なんですから、ひょっともひょっとこもありませんわ。

「そ、そうとも限らないだろう。人と神だって……はっ。待てよ。そういうトミも、意外とアヤツグのことが……。

「なわけないでしょう!あとジョゼフィーヌですわ!

「……なんか、えらく騒がしくなったな。

「俺たちは、やるべきことをやるだけだ。



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story3 縁(よすが)の恩



「……ふうっ。

 ミコトは大きく息を吐いた。

平和を願った和歌が記された短冊は、神棚の奥で、清らかな言霊の力を放っている。

「うまく行った……やりましたよ、紬姫さん――

「お見事でした、ミコトさん!

「ひゃあ!?つ、紬姫さん!?

 背後から抱き着かれたミコトは、びっくりして振り向き――

本殿に八百万の神々がいるのを見て、さらにびっくりしてしまった。

「セイちゃんスウちゃんトミちゃんマトイちゃん!先生も!あ、そちらの方は……?

「どうも、初めまして。大日照天です。

「あ、なーんだ大日照天様でしたかぁ。

……って、大日照天様ぁ!?あわ、あわわわわ、どうしてこちらに!?


「驚きたいのはこっちだぜ、ミコト。

「和歌の神様やって言うてはりましたけど、まさかホンマにホンマやったとは……。

「紬姫が神様になっていたっていうのも、本当に驚いたわ。

 ミコトは、口をあんぐりと開けて、周囲の面々を見回す。

「えーっと……これ、何がどうなってるんでしょう?

「あなたが儀式をされている最中、鬼と崇り神の襲撃があったのですが――

「八百万の神々がおいでなすって、ぜーんぶやっつけてくれたのさ。

「おまえの命が燃え尽きなかったのも、八百万の神々の加護だ。

「そ、そうだったんですね……でも、八百万の神々が地上に干渉して良かったんですか?

「私が許可しましたので。今回はオーケーです。……おっと、スモモの口癖が。

 大日照天は、こほん、と咳払いをした。

ミコト・ウタヨミ。先だっての働き、そして五星方陣を修復するための此度の働き、まことにあっぱれでした。

「ど、どうも、ありがとうございます。

「あなたのことは大月照天から聞いております。聞けばあなたは、このお役目のため、神に戻ることを固辞されたとか。

ですが、それももう終わりました。あなたのおかげで、地上には平和が戻…のです。で、あるからには――

あなたには、私の下についていただき、上界と下界の架け橋たる神になっていただきたいと思います。

「……え?ええ?えええええ!?

「八百万の神々は下界に干渉してはならぬ決まり。しかし、完全に隔絶されていては、上界と下界を巻き込む騒乱に際し、初動が遅れます。

そのため私は、人の身の姿を借り、討伐者の長として、上界と下界の橋渡しを行…きたのですが――

「マジかよ、そうだったのか……。

「しかし、私も結構忙しくてですね。誰か代わってくださる方がいないかな~と、常々思っていたところでして。

すると、大月照天があなたを推挙したのです。神でありながら、人の子らと友誼を育み、世の平和を愛するあなたなら適任だと。

「大月照天様が……。

「あなたを人の身に堕としてしまったことを申し訳なく思ってもいたのでしょうね。あれで結構、落ち込んでいたんですよ。

あとはまあ、あなたの後任で和歌の神となった紬姫さんがあまりに優秀なので、正直、あなたの席がなくなりそうというのもありまして。

「えっ。

「そ、そんなことはありません!私なんてまだまだ、ミコトさんには遠く及ばず……。

「この謙虚さが、ご利益ぽいんとを大量げっとする秘訣なんですかしら。

「それからなんだ、一度下界に墜ちた神が、そのまま元の位に戻ると、うるせーのが多いのよ。

でも、ナユタさんの下で1からやり直せば、とやかく言われることもねーってわけ。

「とは言うが……大日照天様の下につくというのは、大変な名誉だぞ。

「そうそう。このおっさんの下につくのとはわけが違うぜ!

「おまえら、いつ俺の凄さわかってくれんの?

「いかがでしょう、ミコト・ウタヨミ。上界と下界を結ぶ和歌の神として、私についてきてくれますか?

 ミコトは、八百万の神々を見た。

共に悩み、共に泣き、共に笑い合って過ごしてきた、大切な友達。

それから、ミコトは人間たちを見た。

苦楽を共にし、手を取り合い、心を通わせ合…きた、大切な仲間たち。

そして――ミコトは大日照天に視線を戻した。

「さっき――和歌を挿げているとき、私、夢を見たんです。

人間や、妖や、神々や、鬼や……あとなんかちょっとよくわからない人たちが、平和のため、一緒にがんばっている夢を。

あれはきっと、今の私だから見られた夢だって……そんな気がします。

私は、上界のことしか知りませんでした。でも――

人になって、下界に降りて……おかげで、いろいろわかるようになったんです。人の世の大事さも、神様の偉大さも。

それに、何より――

上界にも、下界にも、私の大切な人が、たっっっっくさんいます!どっちかのみんなと会えなくなるなんて、絶対嫌です!

だから、大日照天様!ぜひ、どうか、やらせてください!

ミコト・ウタヨミは、上界と下界の架け橋になります!!


 ***


「では、新たなる八百万の神ミコト・ウタヨミの誕生を祝して、盛大な宴を催しましょう!

 ――ということで、結界社の本殿で、そのまま神と人の饗宴が聞かれた。

「地上から奉納されたお米で作った料理じゃ!存分に食べるのじゃ!

「わあ!ありがとうございます!

「なんのなんの、これも喧嘩神輿とうなめんとでミコトが地上の戦乱を終わらせてくれたおかげ。ワタチは恩返しに来たのじゃ!

「え?おいおいちょっと待ちな、あの大戦が終わったのって、ミコトのおかげだったのかよ!?

「いや、いちおう俺たちもがんばったんだけどな?

「私だって、戦乱を終わらせたいというミコトさんの願いを叶えるために、ご利益ぽいんとを差し上げましたわ!

……ところでカフクさん、あなたどうして、そんなところにいらっしゃいますの?

「いろいろと、ありまして……。

「うわぁなんかいるびっくりしたぁ!

「何はともあれ、会えてよかったですわ。実は、コノハさんからお手紙を預かってますのよ。

「えっ……コノハさんからですか?どうしましょう、読んでもよろしいのでしょうか……。

「あなた宛てなんですから、あなたが読まないでどうしますの。

「そ、そうですよね。ここは、ハヅキさんを見習って、前向きな気持ちで、読ませていただきます……。

「紬姫、上界の暮らしはどう?誰かにいじめられたりしてない?

「大事ありません、ツバキさん。皆さま、良くしてくださいますので……。

「紬姫のがんばりといったら、すごいからな。ご利益ぽいんとの量がえげつなさすぎて、先輩神々はむしろひれ伏しているぞ。

「そ、そんなに?紬姫さん、何ぽいんと貯めたんですか?

「えーと、先日で1500万ぽいんとになりました。

「せんごひゃくまんぽいんと!?す、すごい……すごすぎる……。

「いえ、そんな。上界に来てからうかがったミコトさんの武勇伝の方が、もっとすごいです!

「キンキラキンの社を建てたとか。

「社が爆発したとかな。

「セイちゃん、スウちゃん!そういう変なこと教えるのはやめてよ~!

「なんで社が爆発するん……?

「さすが上界、地上の常識では推し量れませんね。

「いや、俺たちの常識でも推し量れねーよ、あんなの。

「社と言えば……これからミコトは上界と下界を行き来するわけだが、その場合、社が拠点になるんだろうか。

「なら、ミコトに会いたくなったら、ミコトの社に行きゃいいってことか。これなら寂しくねぇよな、なあ相棒?

「別に寂しいからじゃないが、旅の途中で訪れるのも悪くないな。

「ありがとうございます!そのときは、ちゃんとキュウマさんの謳を奉納してくださいね!

「うっ……。ど、努力はする。

「あら、キュウマさんは和歌も詠むんですね~。あ、どうも、ツクヨ・オトヒエナです。いつもお世話になっています~。

「こちらこそ……。

 酒や食べ物を手に、人と神々が、上界と下界の差などないかのように、屈託なく談笑する。

その光景を見ていると、ミコトは、じんと胸が熱くなるのを感じた。

(私がならなきゃいけない神様の姿……なんだか、わかってきたような気がします!)

「あ、そうだ!先生、先生!

「ん?なんだ、どうした。俺、酒を呑むのに忙しいんだけど。

「あの、ぜひこの場に呼んでいただきたい方々がいらっしゃるんです。

とても神出鬼没な方々で、この旅の最中も、いきなりいなくなったり、いきなり現れたりしてたんですけど……。

「ははーん。あいつらね。任せとけ。俺もまんざら知らない仲じゃないってね。

魔法使いと黒猫のウィズが、ミコト・ウタヨミを祝いに来ました、っと!

「にゃにゃ!?ここはどこにゃ?おいしそうなにおいがするにゃ!

「わあい!ウィズ様、お供の方!どうもお久しぶりです!

 いったいどうしたの?と、君が尋ねると、ミコトは、満面の笑みで答えた。

「よくぞ聞いてくださいました私、また神様になれたんです!

「それは良かったにゃ!

で、今度は何をやらかしたにゃ?

「まだ何もやってませんってばこれからですよ!これから!

「それだと、これから何かをやらかすみたいだぞ。

「ま、それもミコトらしいけどな。

 いつしか外には、ちらちらと雪が降り始めた。

天と地を繋ぐようなその雪は、しんしんと積もり、静かに夜を冷え込ませていく。

それでも、夜通し行われた宴の熱は、決して消えることはなかった。


天地(あめつち)の 空(くう)の狭間に 降る雪の
積もれど消せぬ 夜すがの温(おん)かな


「ミコト。「温」が「湯」になってるぞ。

「温泉かよ。サクト呼ぶか?

「きゃーっ!また誤字っちゃった……。









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