Gamerch
白黒wiki

【黒ウィズ】白白コンビがやってきた!

最終更新日時 :
1人が閲覧中
最終更新者:にゃん

白白コンビがやってきた!



story



 それは別の時間、別の異界でのこと──

アイリスー!このおにぎり、革命!

ふふっ、キャトラの好きなカニカマとちくわ入りよ。美味しいでしょ?

ほらほら、そんなに慌てて食べると、飛び出た具が逃げちゃうよ?

アタシがそんなおまぬけなマネ……ああっ!?

 少女が心配した通り、かぶりつこうとした子猫の口元からポロリとカニカマがこぼれる。

あっ、私のカニカマ──うわ、ああっ!!

 落下するカニカマを受け止めようとしたことが裏目に。

今度は手元のおにぎりが転げ落ちていく。

こらーっ!待てーっ!

もう、だから言ったのに……。キャトラ、待ってー!

 てんてんと転がるおにぎりを追う一人と一匹。

その時不意に、足の裏が空気を蹴った。

へっ?

きゃっ!?

 うららかな昼下がり。

草原に突如として現れた大穴に、一人と一匹は落ちて行く、落ちて行く──





TOP↑

story



はぁ。こんな倉庫の整理なんてしてないで、外でひなたぼっこでもしたいにゃ~

 そうだね、と君は手を動かしつつ苦笑する。

何か事件でも起きれば、外に行く理由にもなるにゃ。何か起きれば……

 そうそう事件なんか……と、君が言おうとした時だった。

……にゃにゃっ!?

 目を見開くウィズ。その視線の先を確かめる間もなく……

君の全身に衝撃が響いた。

イタタタ……

……あっ!ごめんなさい!クッションにしちゃって……

 天井を背景に銀髪の少女が頭を下げるのを見て、君は自分が倒れたことを知る。

どうやら、落ちてきた少女の下敷きになってしまったらしい。

キミたち、どこから落ちてきたんにゃ?

どこからって、おにぎりを追っかけて、穴に……あれ?ここどこ?

私たち、飛行島の原っぱでピクニックをしてたんですけど……

 君は立ち上がると問いを返す。飛行島?聞いたこともない。

どうやら、別の異界から迷い込んだみたいにゃ。

いかい?

 言葉の意味が通じていないようだ。ウィズは少しだけ悩みながら話し始める。

えーと……キミたちは何と言うのかにゃ。別の世界だと思えばいいにゃ。

別の世界!?アイリス!アタシたち、迷子ったみたいよ!

うん……ソウルの感じも違うみたいだし……

ねえキャトラ。あなたこのあいだ、不思議なルーンを拾ったわよね?

うん。名前調べてもらったんだけど、<門のルーン>って言うんだって。

それが原因じゃないかしら?

そっか~……。でもアレ、どこかで落っことしちゃったから、探しにいかなくちゃ……

それも落っことしてたの……もう……

 アイリスと呼ばれた少女は、君を見つめて静かに微笑んだ。

初めてお会いした方に、失礼ですけれど……一緒に探し物をしてくれませんか?

私たち、このあたりのことは何もわからないし……

にゃはははは。そんなことならお安い御用にゃ。

その<門のルーン>を見つければいいだけにゃんて、簡単簡単!

 君よりも早く、ウィズが快諾する。だが、それを受けてキャトラは少しもじもじとした。

実は、落としたモノがほかにも二つあるんだけど……

ん?なんにゃ?

カニカマとちくわなんだけど……

 聞きなれない言葉。話をきけば、どうやらその二つは食べ物らしい。

キャトラ……きっともう、ばっちくなってるわよ?

アタシルールだとまだ大丈夫なの!

……ごめんなさい。少しわがままなところもあるけど、悪い子ではないの。

にゃはは。一つが三つになるくらい、なんてことないにゃ!

ありがとう、黒猫さん。

ウィズって呼んでにゃ。それから──

 君が自己紹介を終えると、キャトラが不思議そうな顔をする。

猫と魔道士のコンビなんて、珍しいわねぇ~

ふふふ……

 同じ猫連れ。どことなく、共感するところがある。

さあて、それじゃあ落し物探しに出発にゃ!

……事件、起きたにゃ?

 したり顔で君に笑いかけるウィズに、君は苦笑を返す。

事件解決のために、君たちはまず倉庫の外へ出ることにした。


 ***


アタシ以外にも、お喋り猫っているのね~

私は元々は人間にゃ。キャトラもそうにゃ?

アタシは徹頭徹尾、白猫よ!

ふふっ。お友達が出来てよかったね、キャトラ。

 君も同じ台詞をウィズに言おうとすると……

『私の方がお姉さんだ!』と瞳が雄弁に物語っていた。

……こちらにも、魔物は出るんですね。

 憂いを帯びた顔で、アイリスが呟く。

そうにゃ。アイリスのとこもなのにゃ?

そーなのよ。たいへんなんだから……

 何か事情があるのだろう。ウィズもそれを察し、ことさら明るい声で話題を変える。

そっちにも一度行ってみたいにゃ!魔物くらい、私たちにかかればイチコロにゃ!

ふふ、頼もしいわね。

そーだ!せっかく珍しいところに来たんだし、おいしいモノ食べた~い!

 丁度昼時ということもあり、君はキャトラにどんなものが食べたいかを尋ねる。

ごちそう!

にゃははは……ざっくりしてるにゃ。

アタシの舌は、経験したことのない珍味に飢えているの!

もう……図々しいんだから……

満足させてくれたら、カニカマ半分わけてあげるわよ?

にゃははは……それは遠慮するにゃ。

え?いいの?おいしいのに……

 肩を落とすキャトラの横で、アイリスの表情が徐々に険しくなっていく。

……闇に似た……気配……!

……どうやらこの先に、強い魔物が待ち受けているみたいにゃ。

<門のルーン>の波長も感じられるわ。

さすがアイリス、乙女の直感!

もう、すぐ茶化すんだから……

お目当ての物はすぐそこにゃ。気合入れるにゃ!

 君は頷き、戦闘の構えを取る。


 ***


取り返したりぃ~!<門のルーン>、そしてカニカマ、ちくわ~!

 探していた三つが一遍に揃ってしまった。君は少しだけ、拍子抜けする。

それが<門のルーン>……ただならぬ魔力を感じるにゃ。

ええ、強い力を秘めているわ。

きっと力が暴走して、私たちをここに飛ばしてしまったのね。

ふ~ん。よくわかんないけど、あんまりホイホイ落ちてるもの拾っちゃ危ないわね。

キミたちも気をつけるのよ?

 深々とうなずきながら、君は昔のことを思い出す。

思い返せば、それが原因でよく異界に飛ばされている。本当に気をつけなければ。

それで、どうするんにゃ?

 これで二人はいつでも帰れるだろう。緊張感を一切込めず、ウィズがお気楽に尋ねる。

アタシ、おなか減ったぁ~

 そればっかりだな。

ちがうの、そもそも、お昼を食べ損ねてたワケだし……

にゃははは、キャトラは食いしん坊だにゃ~

だって、このまま帰っちゃうのももったいないし……

ふふ、そうねキャトラ。いつまた会えるかもわからないしね。

 アイリスの同意に、キャトラは飛び跳ねて喜んだ。

わーい!

 それならば、街を案内しようと君は思う。確か評判の良い料理店が街の北側にあったはず。

 君がそう提案すると、キャトラは予想に反してきっぱりと首を振った。

ううん。もっと、人里離れたところにひっそりと佇む、隠れた名店がいいわ。

ガンコイッテツな大将が一人できりもりしてるよーな……

 どうして?

その方が自慢出来る気がするの!

 君が呆れて口を開けていると、ウィズがぴょこんと肩に飛び乗ってきた。

私も賛成にゃ!

街のお店は食べ飽きちゃったにゃ。私たちにとっても新しいお店を開拓するのにゃ!

 なるほど、それもいいかもしれない、と君は思う。どうやらそれは口に出ていたようだ。

よぉ~し、れっつごー!みんな、のど渇いてもあんまり水分補給しちゃダメよ!

水でおなかがふくれちゃもったいないから!

 遅めの昼食を終え、君たちは食後の余韻にひたっていた。

ぷぅ~!ごちそ~さまぁ~、ヨはマンプクじゃ~!

 コロコロとお腹を丸くしたキャトラが、アイリスの頭の上で満開の笑顔を咲かせる。

にゃはは、気に入ってもらえて何よりにゃ。

でも、まだおわらないわよ。

え?

シメ!最後にもう一つ、シメのデザートがこわい!

別にデザートは怖いものじゃないにゃ?

 話を聞くと、どうやら『こわい』と言ったものがやってくる、という迷信の一種らしい。

世界が変われば常識も変わる。そのことに感心する君だが、ウィズは呆れ顔。

……よく食べるにゃあ。満腹じゃなかったのかにゃ。

甘い物はベツバラなのよ。

猫の体って、そこまでたくさんの食べ物、入らないけど……

それはウィズだからよ。個性の違いね!

猫にも色々あるんだにゃあ……

 感心したような、呆れたようなウィズに、君も同調する。

う~ん……甘い物、甘い物……何がいいかにゃあ……

ごめんなさい、キャトラがわがままばかり言って。

 太ったら困らない?と君は言う。

キャトラの前には大量のお皿が積まれている。

しっけいな!このくらい普通よ普通!

 これが、普通、だと……!?信じられないという表情で、君とウィズはアイリスを見た。

ええ、いつも通りよ。ね。キャトラ。

そうそう、いつも通りいつも通り!

 にっこりと笑う一人と一匹。君は思う、この調子だと財布が危ない、と。

……にゃにゃ?

あっちの方から、甘そうな、それでいてあまり嗅いだことのないニイオがするにゃ。

 ウィズの言葉通り、風に乗って、香ばしくも食欲をそそる、甘い芳香が漂ってくる。

……デザートは決まり!ね、アイリス?

ええ!

 どうやら二人の気持ちも決まったようだ。さて、と君が立ちあがると……

にゃにゃ……?これは何のニオイにゃ?気になってしょうがないにゃ!

 言うなり、ウィズは駆けて行ってしまった。

……もう見えなくなっちゃった。フットワーク軽いわねぇ。

……あなたも、苦労されてるんでしょうね。

 いつものことだよ、と君は笑う。丁度その時、ウィズが道の向こうから駆けてきた。

新しいお店があったのにゃ!『あまーいヤキトウモロコシ』屋さんだって!

とってもおいしそうだったにゃ!ほら、早く行くにゃ!

 だが。

ヤキトウモロコシ……!?

まさか……!

 突然表情を変えた二人。不思議に思った君が理由を尋ねようとした、その時!

フヒー!

あ、さっきの店に居たトウモロコシの着ぐるみにゃ!

 楽しそうなウィズと比較して、キャトラとアイリスは『あちゃー』という顔で固まっている。

察するに、どうやら二人はあの走るトウモロコシを知っているようだ。

コーン・ポップ……あいつもこっちに来てたのね……!

早く連れ戻しましょう!今ならまだ追いつくはず!

 二人は慌てて走るトウモロコシ──コーン・ポップの後を追う。

トウモロコシ屋さんを追いかけるにゃ?楽しそうにゃ!

 慌てる二人と対照的に楽しそうなウィズの後を追って、君もその場から駆け出した!


 ***


コーン・ポップ!どーしてアンタがここに!?

 逃走劇の末、眼帯をした人間大のトウモロコシを君たちは追いつめた。

『コーン・ポップの激ウマ焼きトウモロコシ』という看板を掲げた屋台を引きながら……

ラッシャイ!フヒー!

 コーン・ポップは君達へ明るく挨拶をする。

ヒトツ、クウカ?オマエラ、シリアイ、ナカマ!トクベツ、カカク!

何セールストークしてんのよ!

あなたも巻き込まれていたのね……

 それにしても、喋るとうもろこしとは。何でもありだなぁと君は思う。

さっきは気にしなかったけど、よく考えればヘンだにゃ。にゃはは……

いつのまにお店なんか開いたのよ?どんな早さよ!

モトモト、ジュンビ、シテタ!

な、なるほど……

 なるほどでいいのだろうか、と君は思う。

が、君は深く考えるのをやめた。良いのだろう、アイリスが良いと言うのなら。

とにかく、ここで会えたのは幸運だったわ。

コーン・ポップ、アタシたちといっしょに帰りましょ!

 その言葉に、コーン・ポップは激しい拒絶を見せる。

イバショ、ナイ!カエラ、ナイ!

なぁ~にを言ってんのよアンタは!

居場所が無いなんて、そんなことないですよ。

ソンナコト、アル!ズットココデ、ミセ、ヤル!

このわからずやぁ~!

 毛を逆立てたキャトラが、前足でピシリとコーン・ポップを指し示す。

お灸をすえてやるわ!そしてこんがり焼いてやるんだから!

コーン・ポップ、ツヨイ!タダデハ、ヤラレナイ!ヤラレナイ!!

 拳闘の構えを取るコーン・ポップ。まさかの物理攻撃に君は一瞬面食らうが……

これ以上彼がハジける前に、止めなければならない!色んな意味で!


 ***


これでこりたわね、コーン・ポップ!

コーン・ポップノ、マケ……、フヒー……

にゃははは、何はともあれ、お仲間と合流出来て良かったにゃ。

そうね、置いてけぼりにしなくてよかったわ。

 そうだね、と君も頷く。こんな珍妙な生物を置き去りにされても対処しきれそうにない。

まあ、ヤキトウモロコシもおいしかったし、今回は許してあげるわ!

ハンセイ、フヒー……

でもね、アタシは一つ、納得いかないことがあるの。

なんにゃ?

これ、食べたことあったもん!別のデザートがよかったぁ~!

……ごめんなさい、本当にわがままで。悪い子ではない……のよ、嘘じゃなくて。

わかってるにゃ。キャトラはしっかり、気まぐれ猫してるにゃ。見習いたいほどにゃ。

 お手柔らかにね、と君はウィズを撫でながら苦笑する。

心底満足したかというと、そうじゃないアタシは、ちょっとふまん!

もっといろいろおいしいモノ食べたい!

にゃはは!それなら、もうちょっとゆっくりしていけばいいにゃ。

でも、みんな心配してるだろうし、あまり長居するわけにも……

 苦笑するアイリスに、君も同じ笑みを浮かべる。

異界から元の世界──クエス=アリアスへ戻るときの寂しさは、君も充分に理解していた。

そっか、残念……こっちのおいしいモノ、ゼンブ食べつくしてやりたかったのに……

我慢して、キャトラ。そんなこと出来っこないでしょ?

この胃が、はち切れるまでは……!

だ~め。そんなことになったら、私が悲しいもの。

 アイリスが、尚も未練タラタラのキャトラを抱き上げる。

ありがとうございました。

 こちらこそ、楽しかったよ。そう君は返す。さよならは、お互いに言わなかった。

ふふっ。

またいつかおいでにゃ~

ええ──いつか、そのときがきたら。

じゃ~ね~

フヒー

 アイリスは一つお辞儀をすると、銀髪をはためかせて詠唱を始める。

──カリダ・ルークス・プーラン・ルーチェンム──

またね~!

 アイリスの呪文に呼応した<門のルーン>から眩い光がほとばしり──

再び視界が戻ったとき、そこに一人と一匹と一体?の姿はなかった。

行っちゃったにゃ。

面白い子たちだったにゃ。ずっと元気で、仲良くしてて欲しいにゃ。

私たちみたいに!

 そうだね、と君は返し、空を仰ぐ。

どこかの異界で、自分と同じように、猫と一緒に歩く者がいる。

それを知れただけで、ほんの少し君の中に、元気が湧いてきていた。




コメント (白白コンビがやってきた!)
  • 総コメント数0
新着スレッド(白黒wiki)
注目記事
ページトップへ