【黒ウィズ】メインストーリー 第03章 Story
目次
登場人物
story
ウィリトナを旅立った君とウィズは、王国北方に位置する森の村・ラリドンヘとやってくる。
そこには都会の喧騒からはほど遠い、静かな田舎の風景が広がっている。
と、君はすぐそばにいたはずのウィズがいなくなっていることに気づく。
彼女の行方を目で追うと……。
すぐ近くの麦畑から、ウィズが勢い良く飛び出してくる。
ウィズはー通り周囲を駆け回ると、ようやく落ち着いて君の隣へやってくる。
私の中に眠る猫的な何かが、こう……暴発しそうになるのにゃ。
だいぶ猫に染まってきた？
それは困る、と君は言う。ウィズの元の姿を取り戻すのも大切な旅の目的の一つだ。
ふと君は、こちらを奇異の目で見る村人の姿に気づく。
君とウィズは軽い沈黙を抱えながら、ラリドンの魔道士ギルドヘたどりつく。
君は自分が魔法使いであることと、魔法の腕を磨く旅の途中であることを告げる。
少女は君の言葉をゆっくり、のんびりと噛み締めてから、
世界は多彩な解釈に満ちあふれている。
第三章 森の町ラリドン
story
あなたの……。魔道士ランクなら……。
うん……。仕事は……たくさん！
村人に避けられている気がするのだけれど、と君は正直に訊いてみる。
……仕事……掲示板に、貼ってあるから。
ありがとう、と礼を言い、君はさっそくギルドの依頼ボードを見てみることにする。
story
ラリドンヘ来て二つ目の依頼を終えた君は、魔道士ギルドを訪れ完了の報告をする。
依頼者も……ありがとう、って。ランドンは……魔法使い、少ないから。
言われてみると、君は自分以外の魔法使いを目にした覚えがない。
仕事……しづらいみたい。
ウィズが君の背中をよじ登り、こっそり耳打ちしてくる。
淀み？
この空気に馴染める魔法使いはそうそういないかもにゃ。
街の人たちも引つ込み思案な感じだし……）
君は、ロレッタが何かを言いたそうにしていることに気づく。
もちろん、と君は言う。
祈りを……挿げなきゃ。
祈り？
……？
それ以上の説明は期待できそうもない。
story 祈りの巫女
「聖域」と呼ばれる森の奥地から戻ってくると、すぐに村の人々が集まってくる。
村人は口々にロレッタの無事を喜び、また聖域の様子を訊いている。
それに……この人たちが、助けてくれたから。
村人たちの変わりように君は戸惑いを隠せない。
でも、これでー安心だよ。
村のみんなも……同じ、気持ち。仕事も……増えると……思うから。
人々の目線に信頼を感じ、君は少しこそばゆい気持ちになるのだった。
story
依頼を終えラリドンヘと戻った君は、魔道士ギルドで思いがけぬ再会を果たす。
魔法使いがギルドヘ入って来た君たちに気づく。
トルリッカで調査に協力した魔法使いだ、と君は説明する。
特に何も、と君は言う。
隠すつもりはなかったけれど、と君は言う。
聖域に眠る＜神託の指輪＞を保護させて欲しいのですが、聞き入れていただけなくて。
事は急を要するのです。ご理解いただけませんか？
ロレッタはじっと君を見る。
自分が？
君に断る隙も与えず、魔法使いはギルドから出て行く。
？
だから……今のうちに……諦めさせて。あの……人に。
＜指輪＞は……持ち出しては、駄目だから。
ロレッタの真剣な表情に押され、君はうなずくことしかできない。
story
聖域の最深部、深い森の中まで君たちはやってくる。
魔法使いはさらに奥へと歩みを進める。
しかし。
まるで意思を持っているかのように、木々が魔法使いの行く手を阻む。
魔法使いは木々をかきわけ先へ進もうとするが、絡み付くツタに阻まれー歩も動けない。
「深層の封印」。
君はロレッタの言葉を思い出す。
魔法使いが引き下がると、木々も素直に解放をはじめる。
なぜ、そうまでして＜指輪＞を？
時代遅れの農民たちに任せておくには、余りに危険な代物なのですよ。
君も試しに深層へと進むが、魔法使いと同様木々に行く手を阻まれる。
ロレッタ殿には、またご相談に伺いますと伝えておいてください。
言うと、魔法使いはー人で引き返していく。
story
君がギルドヘと報告に戻ると、ロレッタが長椅子に横たわり、村人の看病を受けている。
ロレッタは君に気づくと懸命に体を起こす。
君はロレッタを気遣い、ゆっくりと、一部始終を話す。
……中央は……不可侵だと……。
ロレッタは悲痛な表情を浮かべる。
君はロレッタに別れを告げ、魔道士ギルドを後にする。
＜神託の指輪＞の封印を解くことが許されるのはごくー部の魔法使いだけにゃ。
それを、こんな強引に奪いにきてるということは。
中央本部でゴタゴタがあるのかもにゃ。
ウィズが……四聖賢がいなくなったから？
猫になってもまだ巻き込まれるなんて思ってもいなかったけど……。
キミにもちょっと、面倒かけるかもにゃ。
ウィズのためなら別にいい、と君は言う。
story
君とウィズは、未だ体調の回復しないロレッタを見舞いギルドを訪れている。
ウィズがロレッタに寄り添い、頬をすり寄せる。
ロレッタは微かに笑みを浮かべると、弱々しい手つきでウィズをなでる。
しばらくして、君とウィズは魔道士ギルドを後にする。
何か、思い当たることでも？
と、君を追ってー人の女性がやってくる。いつだったかロレッタの看病をしていた女性だ。
……ロレッタ様は森の巫女。大森林の息吹は命の源。
それなのに……このところ、大森林のあちこちで大きな火災が起きているんです。
木々は焼け、水は枯れ、多くの命が失われています。
このままでは、ロレッタ様も……。
長いラリドンの歴史の中でも、こんなことはー度も起きた事がありません。
もしかしたら、大いなる災いの前触れかもしれません。
余所の方へお願いするのは心苦しいのですが、でも、他に頼れる方もいないのです。
かまわないから、と君は女性の依頼を引き受ける。
何が待ち受けているかわかりません。お気をつけて……。
story
大森林を炎に包んでいた元凶、強大な火龍を倒し君はほっとー息つく。
依頼を解決できたというのに、ウィズは神経を尖らせたままだ。
ウィズは突然駆け出すと、近くの茂みへと潜り込む。
ウィズに追い立てられるようにして、目深なフードを被った男が現れる。
誰だ、と君は訊く。
ウィズが男の背後から飛びかかる……が、難なく男にかわされてしまう。
ウィズは男に蹴り上げられ、軽々と宙を舞い地に叩き付けられる。
この地の＜指輪＞も、直に解き放たれることだろう。
森の巫女の意思など介在する余地もなく。
聖賢の弟子よ、楽しみにしていろ。
君が呼び止める間もなく、男は何かの魔法を唱えると、霧のように消えていく。
君は気を失っているウィズを抱き上げる。
……ちょっとだけ……猫になったこと、後悔したにゃ……。
ウィズは再び気を失う。
君はウィズを大切に抱きラリドンヘと歩き出す。
story
ロレッタの容態が急変したと聞き、君は魔道士ギルドヘと急ぐ。
君はロレッタのもとへ駆け寄ると、やせ細った手をにぎる。
君に気づいたロレッタは、微かに唇を動かし懸命に何かを伝えようとする。
……生命の……雫……を……。
生命の雫？
ですが、深層は固く封印されており、誰も近づくことはできません……。
どうすればいい、と君はロレッタに訊ねる。
ロレッタは苦痛に表情を歪ませる。迷っている暇はなさそうだ。
君はもうー度、深層へ向かうことを決める。
強くうなずくと、君はギルドを後にする。
story
君は再び、聖域の最深部……＜深層＞へとたどりつく。
君は、どことなく雰囲気が変わっていることに気づく。
空間が、淀んでいるような……？
君はゆっくりと、＜深層＞へと進む。
すると、あれほど侵入者を拒んでいた木々の妨げはなく、すんなりと進めてしまう。
＜深層＞はー本の巨大な老木を中心として、碧々とした木々がー面を覆っている。
あまりに神秘的で、あまりに荘厳な光景に、君とウィズは言葉を失う。
君は手近な樹木の大葉から、溜まっていた露を水筒へ移す。
早く生命の雫をロレッタに届けるにゃ。封印を取り戻さないと大変なことに――。
！？
しかし、どうしてわかったのです？深層の封印が解けている、と。
君は黙って魔法使いを見据える。
ここでの出会いは口外しないことをおすすめしますよ。
あなたがまだ、魔道士ギルドのー員でいたいというのならね。
君は、去って行く魔法使いの手にきらりと光るものがあることに気づく。
＜神託の指輪＞をどうするつもりにゃ！？
あなた、何者です？
神託の指輪は、しかるべき人間の元で管理されなければならないのです。
……アナスタシア……？
ウィズがその名を口にすると、魔法使いの表情が豹変する。
キミはあの事件の後、トルリッカに零世界の調査へ来たのではなく――。
探していたのにゃ。
私の持つ、＜神託の指輪＞を。
あなたは、まさか！
戸惑う君に、ウィズが続ける。
ずっと見てきた私にはわかるにゃ。自信を持つにゃ！
促されるまま、君は魔法使いと対峙する。
しかし。
ー度に二つもの指輪が手に入るとは！
魔法使いは＜神託の指輪＞を振りかざす。
指輪の力、試させてもらいますよ。
＜神託の指輪＞よ、我が名、我が魂のもとに真なる扉をここに開け！
…………。
なぜだ……なぜ開かない！？
まさか、偽物……？
君は上空に視線を移す。
そこには、とてつもなく巨大で、禍々しい扉が聞かれている。
扉から、少しずつ、「それ」が姿を現す。
朽ち果てた肉体から凄まじい腐臭をまき散らす、災禍の腐龍――。
私は……なんてものを……。
牙を剥く腐龍を前に、魔法使いは微動だにしない。
指輪は……こんなところで――。
腐龍が魔法使いに喰らいつく！
流石にコイツは危ないにゃ！
君は全速力で深層から脱出する。
＊＊＊
辛くも深層から逃げ出した君たちは、ロレッタのもとへ急ぐ。
君は生命の雫の入った水筒を手渡す。
女性は生命の雫を口に含むと、少しずつロレッタヘと口移しで飲ませていく。
やがて――。
本当に……本当に、ありがとうございます！
君は病み上がりのロレッタに＜深層＞での出来事を話してもいいものか、迷う。
ずっと……私の意識は……森にあった。
だから……。
指輪のことも……腐龍のことも……。
……ウィズさんの……ことも。
女性に気を使ってか、ウィズはまだ猫のふりをする。
……このままじゃ……森が……死んでしまう。
わたしを……深層へ……連れて行って。
けれど……まだ、森は……生きてる。
でも、あの腐龍にどうやって立ち向かえば？
あなたは……時間を……稼いで。
……大丈夫……だから。
ロレッタから強い決意を感じ、君も覚悟を決める。
story
死闘の末に、君はついに腐龍を撃退する。
腐龍の肉体はドロドロに溶け、深層ー帯へと広がっていく。
このタイプの精霊は……すぐに再生するにゃ。
ウィズの言葉通り、溶け出した腐龍の肉体はやがてまたー力所へと集束し始める。
今の私じゃ、コイツの再生を止めることはできないにゃ。
話している間にも、再生は加速度的に早まっていく！
腐龍は元の姿を取り戻し、再びこちらへ襲いかかってくる。
君が詠唱態勢を取ったそのときだった。
きらめくまばゆい光が解き放たれ――。
君の目の前に、気高く美しい、白き精霊が舞い降りる。
ロレッタの全身から光がほとばしり、腐龍を包み込んでいく！
やがて光がおさまったとき、辺りから腐龍の肉体は跡形もなく消え去り――。
力を使い果たしたロレッタが、ぐったりと横たわっている。
……あなたたちが……いて……くれて……。
よかっ……た……。
…………。
それきり、ロレッタは目を閉じる。
君は眠りについたロレッタを背負うと、深層を後にする。
エピローグ
それから五日後。
君はようやく話せるまでに回復したロレッタと魔道士ギルドにいる。
指輪の封印を……守りながら……。
でも……それも、ここまで。
ここまで？
私には……何も……できない。
ロレッタがそっと君に手を差し出す。
その手のひらには、＜神託の指輪＞が乗せられている。
あなたにしか……頼めない。
君は指輪を受け取ると、自らの意思を確かめるようにして握りしめる。
大魔法使いの仲間入りにゃ。
ー言多い、と君は毒づく。
ふと、ウィズが真剣な眼差しを君に向ける。
？
それにしても、思った以上に中央本部は荒れているみたいにゃ。
少し情報が必要にゃ。
水の都アイヴィアスに、知り合いがいるにゃ。ちょっと変わってるけど、信頼できる男にゃ。
……変な……人。
ウィズも人のこと言えないよ、と君は心の中で突っ込みを入れる。
君は荷物をまとめると、新たな旅路へ向けて歩み出す。
森の都ラリドンを離れた「君」とウィズが向かった先は、
国北東に位画する湖畔の保香地アイヴィアス。
歴史ある宮殿と広大な湖水、国内外から多くの責族が訪れるリゾートに、君たちの心はうきうきと弾む――
