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【黒ウィズ】メインストーリー 第05章 Story

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魔道都市サイホーン


メインストーリー 第05章




story



王国南端の魔法学術都市・サイオーン。

高い魔道技術と最先端の施設を擁する異色の地方都市に、君は足を踏み入れる。

動力で動くトロッコ、明々と燈る道力灯、街の中央に高くそびえ立つ魔道塔。

ー方で、学術都市らしく研究者や学生たちが快活に議論を交わしながら行き交い……。

修行で訪れたなら、きっと楽しかっただろうな。

そんなことを思いながら、君は魔道士ギルドヘとやってくる。

君の手には、アイヴィアスのルシェから渡された紹介状がある。


ギルドマスターのドゥーガ……いったいどんな人なのかにゃ。

 君はギルドヘと足を踏み入れるが――。

……留守みたいにゃ。

 ギルドマスターどころか、魔法使いがー人もいない。

君とウィズは、街並を探索しながら時間を潰すことにする。


奪われた二つの<神託の指輪>を追い、君はこの地まで旅してきた。

ラリドンの【スマラグド】、そしてアイヴィアスの【サフィラス】。

指輪に眠る強大な魔力を、君は身をもって味わい死線を潜り抜けてきた。

「敵」。

指輪を奪っていったリアナと、背後に見え隠れする魔道士ギルドの統治派。

思いを巡らしながら、君は歩く。

魔道士ギルドから商業区を抜け、動力トロッコで中央広場へ下り――。

君はサイオーンに高くそびえる魔道塔――グノスタワーヘやってくる。

と、塔の入り口付近で――。


ったく、何回トラブれば気が済むんだ!えぇ!?

w今月に入って十回目、前月比で五倍ほど。このままですと推定で……。

いいからゼロにしろよ、ゼロに!

 ……何事にゃ……?

 男は君に気づくと、

オイ、貴様!なにボーっと突っ立ってる!?

 威勢に押され、君は男の前へやってくる。

なんだ、オドオドとしおって。ほら、さっさと行け!

 …………?

ん~?緊急招集を見ておらんのか。

 男はまじまじと君を見つめ、

フン、なるほどな。そういうことか。

さては貴様。

 男の眼光にただならぬ雰囲気を感じ、瞬間、君は身構え――。

ド素人だな!?

 ……!?

だがあいにく、今は取り込み中だ。魔道士ギルドへの入門なら後にしてくれ。

(もしかして、この汗臭いのが……)

 ギルドマスターなのだろうか。

君は言葉を選びながら、自分が旅の魔法使いであることを告げる。

ドゥーガ・ザムンタール cv.藤原啓治

なんだ、そうならそうと早く言え。

俺はドゥーガ。サイオーンの魔道士ギルドを仕切る者。

早速だが、貴様にーつ依頼を紹介してやろう。

グノスタワーの魔物退治だ。

詳しいことはそこの研究者に聞け。いいな?

 ドゥーガは言いたいことだけ言うと、別の魔法使いと話しはじめてしまう。

wこのままでは私たちも仕事にならず……。よろしくお願いします。




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 グノスタワーの中層、魔物の発生源となっていた研究室。

そこで君は、信じられないものを目にする。

薄暗い研究室の奥で黒く歪む空間。

……!

 見とれてしまいそうな妖しさと、背筋の凍る禍々しさ。

紛れもなく、それは異界への扉。

ー瞬、空間が奇妙な形に収縮したかと思うと君の目の前に異形の魔物が現れる!


 ***


 歪んだ空間から現れた魔物を蹴散らすと、

zご苦労だったな。

 声に振り返ると、

後はこちらで処理しよう。

 男はブツブツとつぶやきながらその空間に近寄っていく。

何やら詠唱を開始し……。

先ほどまで確かにあった空間が、今では綺麗に消え去っている。

君は簡単に名乗ると、胸に渦巻く疑問を口にする。

そんなことも知らんとは。サイオーンの人間ではないな?

 まだ到着したばかりだ、と君は言う。

察しの通り、あの歪みは異界への扉。

サイオーンはー帯がいびつな地場。そもそも魔物が集まりやすいのだが――。

このグノスタワーは避雷針のように周辺の淀みを集めて、空間の安定化を図っているのだ。

内部に魔物が多いのはその反動だな。

サイオーンで仕事をするなら、覚えておいて損はないだろう。

 ありがとう、と君は礼を言う。

なに、構わんよ。

ルナール

私はルナール。いずれ仕事を頼む機会もあるやもしれん。

よろしくな。


 ***


 仕事を終え、魔道士ギルドに戻る頃には、明け方近くになっている。

ギルドの中は薄暗がりを照らす道力灯が微かに灯り――。


どうだ若人、サイオーンの初仕事は。

 書類にサインしながら、住みやすい街ではなさそうだ、と君は言う。

街の中心部に、魔物の巣食う危険な塔。

違いない。だがグノスタワーなくしてサイオーンは語れんよ。

 ところで、と君は切り出し、ルシェの紹介状を手渡す。

……この紋章は……ワダツミ家の……!

 書状を読んだドゥーガは険しい表情で、

――詳しく聞かせてもらおうか。

 君は、サイオーンヘやってきた目的を語る。

神託の指輪、ゲルニカの兄妹、湖底での戦いと真名転成……。

ドゥーガは話を聞き終えると、

……にわかには信じがたいが。

 君の足元にいる黒猫にひざまずき、

お初にお目にかかる。ウィズ殿。

にゃはは。初対面がこの姿でごめんにゃ。

 ドゥーガは立ち上がると、

そういうことなら、話しておかねばならんことがある。

貴様ら、<黒教旅団>を知っているか?

 初めて聞く名だ。

では、13年前の事件のことは?

 君は、アイヴィアスでルシェから聞いた話を思い出す。

極秘に行われていた詠唱実験。

実験の失敗、失踪した多くの魔法使い。

魔道士ギルドによる粛清……。

13年前、禁断の秘術に手を染め、魔道士ギルドに粛清されたゲルニカの魔道士集団。

それが、黒教旅団だ。

当時の殲滅戦で多くは粛清されたのだが、近年になってまた、残党らしき者の動きがある。

貴様の話にあったゲルニカのリアナとやら――黒教旅団の者とみて間違いあるまい。

 ドゥーガは断言するが、君はあるー点が気にかかる。

だとしたら、統治派との関係は?

……13年前の事件のとき、統治派は戦いには参加してこなかったにゃ。

考えたくはないが、あるいは黒教旅団と何らかの繋がりがあるのかもしれんな。

ウィズ殿、そして魔道士よ。

我々サイオーンの魔道士ギルドは、黒教旅団の手からこの街を守り――

13年前の傷を、本当の意味で癒すことを目的としている。

ぜひ、力を貸してもらいたい。

もちろん、と君は力強く答える。


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 ――その感覚を表現する言葉を、今の君は持ち合わせていない。

依頼を終え、魔道士ギルドヘ戻ってきた君を襲う「何か」のざわめき。

恐怖、あるいは畏怖。それとも?

理性ではなく、本能が訴えかけている。

その正体が何なのかもわからぬまま、君はギルドの扉を押す。

あら。

 そこには、来客用のテーブルについた気品漂う女性と、

――。

魔道士……。

 ドゥーガは直立不動で脂汗を垂らしている。

そんなところで突っ立ってないで、こっちへいらっしゃい。

 君は促されるまま、女性の前に座る。

ウィズは……入口の物陰に隠れたようだ。

淡く光る銀髪、彼方を見通すかのような澄んだ瞳か細くも威厳ある声音。

問わずとも、わかる。目の前にいるのは――。

私はアナスタシア。お会いできて光栄よ。

 統治派の四聖賢、ウィズが危険視する人物が目の前にいる。

あの子が弟子を取ったと聞いたときには驚いたものだけれど、そういうことなのね。

確かに、感じるわ。底知れぬ可能性……。

 君は威圧に押しつぶされそうになりながらもアナスタシアに問う。

<指輪>を使って何をするつもりかと。

アナスタシアは冷たく微笑み、

疑問を抱くのは魔法使いのサガ。でも、それも時と場合によるわね。

才気溢れる魔法使いは羨ましいわ。希望の未来が残されているもの。

そう思うでしょう?ヴィルハルト。

 呼ばれた男が微かに頷く。

アナスタシアは手を伸ばすと、白くほっそりとした指先を君の頬にあて、

いい目をしているわね。嫌いじゃないわよ、あなたのこと。

 それだけ言うと席を立つ。

…………。

 去り際、アナスタシアは隠れていたウィズをー目見やるが、反応はなく去っていく。

――。

 ウィズは入り口の扉の前にちょこんと座り、じっと外を見つめている。

その後、ドゥーガやギルドの魔道士たちから様々な質問を浴びせられた気がするが――。

うわの空で、何も覚えていない。

ただーつわかったことがある。

君は、想像していたよりも遥か高みにいる存在を相手にしている。

その夜君は、解けぬ緊張にー睡もすることができない。

四聖賢・アナスタシア。

彼女はいったい、何を目論んでいる?



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魔塔警備隊は何をしていた!

z迎撃にあたりましたが、突破されてしまい申し訳ありません。

……ちっ……。

 グノスタワー前の、広場のー角。

何かあったみたいにゃ……。

 君はドゥーガの下へ駆け寄る。

ルナールが拉致された。

 ルナール。確か、グノスタワーにおける最高責任者……。

犯人のローブの背には、正方魔法陣に闇の龍……黒き扉の紋章があったらしい。

見せつけるかのようにな。

 黒き扉の紋章?

<黒教旅団>のシンボルだ。

zサイオーンの人間にとっては思い出したくもない忌まわしき紋章です。

ゲルニカでも、そうでなくとも。

13年前の戦いに巻き込まれ、亡くなった人の数は計り知れない。

その上、下手人はたったのー人。相当な手練れのようだな。

z追跡隊を放っていますし、サイオーンの封鎖も間もなく完了します。

ルナール様を連れた状態では動きも鈍るでしょうし、捕縛は時間の問題かと。

……それで捕らえられるくらいなら、こんなにも手を焼いてはいまい。

 ドゥーガは君の方を向くと、

貴様の腕を見込んで頼みがある。黒教旅団の潜伏先を探って欲しい。

ルナールは魔道技術研究の第ー人者にしてグノスタワーの設計者。

サイオーンになくてはならない存在だ。

俺にとっては古くからの盟友でもあってな。絶対に、亡くすわけにはいかん。

 もちろん、と君は言う。

サイオーン郊外に、かつて黒教旅団が使っていた魔道研究所がある。

研究所は全部で四つ。何かしらの手がかりが残されているかもしれん。

 君は魔道士ギルドヘ戻り、詳しい話を聞くことにする。


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 黒教旅団の研究所跡、最深部へたどりつくと妙に開けた広間がある。

壁面はぼろぼろに崩れかけているが、細かな装飾が施された跡も残され……。

当時、この空間が重要な役割を果たしていたことが伺える。

侵入者に繋がりそうな手がかりは、今のところ見当たらないが……。

と、ウィズが壁際に置かれた空っぽの書棚に乗り広間を見渡す。


……魔法陣……?

 君は床面ー杯に描かれた模様に気づく。

注意深くたどっていくと……。

消えかかってはいるが、それは間違いなく、異界との扉を開く魔法陣。

魔法使いが普段用いる魔法陣とは比較にならない大きさだ。

君は陣に手を置き、試しに詠唱してみるが、

…………。

何の反応もない。

これだけ大きな魔法陣じゃ、真正面から起動しようとしても無理があるにゃ。

 だろうね、と言いながら、君はアイヴィアスで戦ったシオンのことを思い出す。

湖底での戦い。異界に眠る強大な真名を呼び出した巨大な魔法陣。

真名転成により水龍の力を得たシオン。

黒教旅団。

13年前の事件に関連する、ゲルニカの魔道士集団……。

君はー通り辺りを調べるが、誰かが出入りしたような痕跡は残されていない。

もう少し調べてみる必要がありそうにゃ。

 残る研究所は、三つ。



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 黒教旅団の研究所跡へ向かう途中、君は懐かしい人物に出会う。

zわぁ、久しぶりじゃないか!

にゃ……アレク!?


まさかこんなところで会えるなんて。君たちも<混沌の夜>の観測かい?

 <混沌の夜>?

ー緒に観に出かけたじゃないか。忘れてしまったのかい?

 覚えてはいる。けれど……。

そんなに頻繁に発生するものだっけにゃ?

最近、王都からでも観測できる強い空間の歪みが観測できたんだ。

気になって調べに来たんだけど……どうやら、間違いなさそうなんだ。

こんな短期間に、続けて二度の<混沌の夜>。

凄いよ、もしかしたら有史以来初めての出来事になるかもしれない!

 アレクは嬉々として、それが天文学的にどれだけ重要なことかを語る

…………。

……。

…。

……っと、ごめんごめん。つい話し込んでしまったね。

 ー方的に話されていただけな気もする。

ははっ、そうかもね。

君はアレクならば力になってもらえるかもしれないと思い、状況を話してみる。

ふぅん……黒教旅団、か。

近いのかい?その研究所って。

 地図によれば、もうすぐそこだ。

それじゃ、そこまで同行するよ。個人的にも興味ある話だしね。

 君はアレクと共に第二の研究所跡へと歩みを進める。



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 二つ目の研究所跡の最深部。そこにも大きな広間が設けられている。

へぇ、こんな場所があったなんて。

 君とウィズは、アレクと共に手分けして内部を調べはじめる。

床にはやはり、巨大な魔法陣がある。

ここにも魔法陣……二つも似たような施設を作って、何か意味があるのかにゃ。

ふぅん……。

 アレクは広間をゆっくりと歩きながら丹念に魔法陣を追っていく。

ー周ぐるりと見終わったところで、

……ははっ。

何かわかったのかにゃ?

ぜーんぜん。僕には見当もつかないや。

ごめんね、役に立てなくて。君たちは何か気づいた?

 君にも新たな発見はない。

ちょっと無駄足だったかもにゃ。

 君は、ーつ目の研究所でも抱いた疑念をアレクに話す。

ふぅん……真名転成の魔法陣、か。面白い仮説だね。

黒教旅団は各地に研究所を作って、真名転成の実験を繰り返していた。

目的は例えば……。

水の真名をブドウ酒とつけかえたり。

物質の真名をつけかえて鉄を金に変えたり。

国王の真名を奪って玉座に居座ったり。

 急に、うさんくさい話になってきた。

そうかな?

もし本当に真名転成ができるのなら、僕ならそんなことを考えるし――。

ごく自然な欲望だと思うよ。

他には……そうだな。

 アレクはふとウィズに目をやって、

猫の真名を得てさ、束縛から解放されたりとかね?

……にゃ?

 ……!

なんてね。

真名転成は魔道士ギルドでも方法が確立されていない秘術。

術式の行使には莫大な魔力が必要って聞いたこともあるし――。

いくら見返りがあるとは言っても、ーつの集団が血眼になって研究するほどとは思えないな。

 ……。


 それから君たちは黙々と捜索を続けるが、黒教旅団の手がかりは見つからず――。

サイオーンヘ引き返すことにする。



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 探索を終えた君は、アレクと共にサイオーンヘと戻る。

久しぶりに君たちと遊べて楽しかったよ。

 別に、遊んでたわけでは――。

ないんだけどにゃ。

ははっ、言葉のあやってやつだよ。

本当は<混沌の夜>まで残っていたかったけど僕にも仕事があるからね。

ウィリトナヘ来ることがあったら、ギルドにも顔を出して行ってよ。

 それじゃ、とアレクは去っていく。

さてと……私たちは次の研究所に向かうにゃ。

 前を行くウィズの後ろ姿を見ながら、君の胸には依頼とは全く別の思いが渦巻いている。

君を突き動かす、アレクの言葉。

『猫の真名を得てさ、束縛から解放されたりとかね?』



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 拉致されたルナールの行方を捜し、君たちは三つ目の研究所跡へとやってくる。

ここも、他の研究所とほとんど変わらないみたいにゃ……。

逆に言えば、それほどまでに固執するような研究対象があったということだろうか。

本当に、真名転成の研究だったのかにゃ。

 床面に描かれた魔法陣の中央部で、ウィズがちょこんと座っている。

バタバタと揺れるウィズの尻尾を見ながら君は思う。

この魔法陣を起動することができれば。

ウィズが、元に戻れるかもしれない。

君はひざまずいて魔法陣に手を当て、起動を試みるが――何の反応もない。

魔力。

魔力さえあれば……。

なーにを考えてるにゃ?

 ウィズが君に声をかけるが、君の意識には届かない。

魔力……強大な魔力があれば、それで。

そう、例えば――。

師匠を無視するなんていい度胸にゃ!

 君はようやく、ウィズに気づく。

どうしたのにゃ?

 君はウィズに訊いてみる。

神託の指輪の魔力を使えば、ウィズを人間に戻すことができるのだろうか?

にゃはは、冗談もたいがいにするにゃ。

 ウィズも<所持者>だったはず。

それなら今、ウィズの指輪の力を使えば!

指輪の魔力を解放したらどうなるか……キミがー番よく知っているはずにゃ。

あれを制御できるのは、本当にー握りの魔法使いだけ。

キミも、力を解放したことはないはずにゃ。

 確かに君は、【スマラグド】の力を行使したことはない。

いや……ラリドンで戦った腐龍を思うと、力を使う気になどなれなかったのだ。

それに前も言ったと思うけど、私の指輪はどこにあるのかわからないのにゃ。

 冗談かと……。

本当にゃ。この体じゃ、隠すこともできないしにゃ。

 君は、ひどく気落ちする。

気持ちは嬉しいけど、キミは余計なことを考えなくても大丈夫にゃ。

 余計なこと、なんかじゃない。

君の胸には、深く、突き刺さるトゲがある。

アイヴィアスの湖底で人質に取られ、ナイフを突きつけられたウィズ。

無力な猫のままでは、あまりに危険だ。

…………。

 どことなく、重い空気が流れてしまう。

…………るにゃ。

 ?

ウィズが何かをつぶやくが、

何でもないにゃ。

君は頭を振って気持ちを切り替えると、最後の研究所へ向かおう、と歩き出す。


 君たちは、気付いていない。

その時密かに、君たちの様子を伺う影があったことに。



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 君とウィズが三つ目の研究所跡から戻ってきた、その夜のこと。

ウィズは部屋を抜け出し、人々の寝静まったサイオーンを散歩する。


(困ったにゃ……

元に戻る方法……

……うーん)

 人気のない路地裏をぴょんぴょん飛び跳ね、つたっていく。

円周上に張り巡らされた、サイオーンの外壁に上る。

ここから、すり鉢状に深く掘られたサイオーン全体を見渡すことができる。

(猫は猫で楽しいんだけどにゃ。

そうも言ってられないにゃ……)

 ――と。

ウィズの隣に、ー匹のネズミがやってくる。

……なんのつもりにゃ?


wあら、流石に鋭いわね。

どう?今のあなたにピッタリの使者を選んでみたのだけれど。

……変わらないにゃ。アナスタシア姉さんはいつもそんなだった。

行方不明って聞いていたけれど、楽しそうにしているみたい。

ギルドで久々に見かけたときはほっとしたわ。

楽しんでるのはそっちにゃ。

全然よ。平凡でつまらない世界にはもううんざり。

神託の指輪を集めてどうするつもり?

どうもしないわ。私は、ね。

ゲルニカの子供にお使いをさせておいて、高みの見物ってことにゃ。

自分は私はただ、あの子たちの望みを叶えてあげているだけ。

もちろん、それなりの対価はいただくけれど。

そんなことを言いに、わざわざ?

 アナスタシアはクスクス笑い、

私、あなたを招待しに来たのよ。

近々、私は旅に出る。あなたもー緒にどうかと思って。

誰がキミなんかと。

同門のよしみで特別に誘ってあげているのよ。

答えなき問いと誤った答えの混在する世界。

あなたも興味、あるでしょう?

――見つ……かったの?

ほうら、食いついた。

零世界。

その力があれば、世界を丸ごと改変することすらたやすい。

創造主――ノクトニアの作ったこの忌まわしき退屈な世界をね。

何でも自分の思い通りになると思ったら――。

なるわ。あなたと違ってね。

あなたにはどんなに頑張っても、喚いても望んでも……世界は変えられない。

なぜならあなたは――役立たず。

好奇心すら満たせぬ猫。

……消えて。もう充分でしょ。

ふふっ。いい暇つぶしになったわ。

時が来たら、また会いましょう。

黒猫のウィズ。

 フッ、とネズミは霧と消え――。

……役立たず……。

 ウィズはあてもなく、全力で駆け出す。



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 サイオーン南西部、四つ目の研究所跡の最深部に君はやってくる。

そこには――。


zお前か。ゲルニカの領域を嗅ぎまわる者とは。

――!

 見慣れぬ魔道士たちが待ち構えている。

皆、同じような服装だが……ー人だけ、明らかに雰囲気の異なる男がいる。

(……凄まじい魔力を隠してるにゃ)

 君は咄嵯に身構える。

z黒猫を連れた魔道士……。報告の通りだな。

後顧の憂いは絶つにこしたことはない。死んでもらうぞ。

 男は、右手を振りかざす。

その手に、キラリと光るものがある。

(――神託の……指輪!?)

 男が詠唱を開始する。

描かれた魔法陣や呪の文言が、クッキリと浮き上がる。

男の周囲に控えていた魔道士たちが、ぼんやりとした光をまとい始める。

w我ら。

w遥かなる悠久の刻をこえ。

w意志を継ぐ者なり。

 次の瞬間!


 ***


 長い戦いの末、君は魔物に変貌した魔道士たちを退ける。

力を失った魔道士たちは、おぞましい呻きと共に塵となり、消えていく。

君は、その光景に見覚えがある。

器の、崩壊。

z……指輪の力を抑え過ぎたようだな。それに少々お前たちを甘く見ていたようだ。

ここは、分が悪いか。

 言うと、男は逃げ去っていく。

――!

 そのすぐ後を、ウィズが追う。

君も引き離されぬよう、走り出す。

 入り組んだ研究所の内部をひた走る。

視界にはまだ魔道士もウィズも映っている。

走る……追う……ただ、ひたすらに。

徐々に、引き離されていく。

呼び止める君の声も聞かず、ウィズは全速力で追っていく。

早い……あまりにも、早い。

やがて完全に見えなくなってしまう。

仕方なく、君は大広間に戻ってウィズの帰りを待つが――。

夜が明け次の太陽が昇っても、ウィズは戻ってこないのだった。



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 いつまでたってもウィズは戻らず、結局君はサイオーンヘと帰還した。

君の調査報告を聞いたドゥーガは、すぐさま捜索隊を派遣したが――。

まだ、何の手がかりも得られていない。

あれから、七日が経とうとしている……。


まだ、戻らんのか?

 君はすっかり元気を失っている。

猫の姿とはいえ、天下の四聖賢。無事に戻るとは思うが……。

 ……あの日から。

トルリッカでウィズが猫になってしまってから、君たちはずっとー緒だった。

師匠と弟子という隔たりなど無きに等しく。

猫になってしまったウィズはほとんど魔法も使うことができず、無力で……。

早く、元に戻って欲しかった。でも、それがウィズの負担になっていたとしたら?

君はウィズからたくさんのことを学んだ。

これからも、そうだ。

君は。

ウィズが猫のままでいることを望むのなら。

彼女を、守らなければならなかったのに。

それからさらに三日の時が過ぎ……。


…………。

……。

…。

…………にゃ!


君は、誰かの声に目を覚ます。

魔道士ギルドでウィズを待つうち、うとうと眠ってしまっていたらしい。

外を見ると、すっかり暗くなっている。


こんなところで寝てると風邪ひくにゃ。

君は、目をしばたたかせる。

ウィズはケロっとした顔で、

酷い顔してるにゃ。

 君はそののんきな顔になんと声をかけていいかわからずに――。

なんだか泣きそうになるのをこらえながら。

出てきた言葉は「おかえり」だった。

ただいま、にゃ。ちょっと、遅くなっちゃったけどにゃ。

 どうして、突然あんな無茶を……?

にゃはは。

少しは、ちゃんと君の役に立たないといけないと思ったにゃ。

 よく見ると、ウィズの毛並はボサボサだ。

気丈に振る舞ってはいるが、きっと疲れ切っていることだろう。

こんな無茶はこれっきりにして欲しい、と君は伝える。

にゃは……善処するにゃ。

 君はウィズを抱き上げようと手を伸ばし――そして気付く。

……臭い。

滅茶苦茶、臭い。

やつらのアジトから戻ってくるときに下水道を通ったからそのせいかもにゃ。

 奥からドゥーガが出てきて、


おや、戻られ……。

 ドゥーガは異臭を感じたのか、あからさまに嫌そうな顔をする。

ウィズは不機嫌そうに、

せっかく黒教旅団の尻尾を掴んできたのに、そんな反応されると話す気が失せるにゃ。

――本当か!?

 ウィズの話によると、サイオーンの南西部、廃村となった集落に――。

黒教旅団のアジトはあるらしい。

内部まで入ることはできなかったけど、こっそり聞いてた感じだとルナールもいるはずにゃ。

……よし、わかった。

 ドゥーガはすぐに、腕利きの魔法使いを集め突入部隊を編成する。

もちろん、君もそのー人に入っている。


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 サイオーン南方の砂丘地帯、寂れた集落の中に黒教旅団の潜伏先はある。

先行していたギルドの魔法使いは、既に黒教旅団と交戦状態にあり――。


zくそっ、何故この場所がわかった!

zなるべく時間を稼ぐんだ!

 怒号や詠唱と共に、魔法の閃光や爆撃音が響きわたる。


 ー方、君はドゥーガと共に、拠点と思われる建物へ潜入している。

ウィズが先行して様子を探り、君たちはその後を追う。

(静か過ぎるにゃ……)

(油断するなよ)

 やがて君たちは、奥の小部屋にたどりつく。

扉を開くと――。

……おや……?

 板張りの部屋に簡素な机、椅子。

 ベッドすらない寒々しいその場所に、ー人、ルナールが座っている。

おお、無事だったか!

ドゥーガ!それに、いつぞやの魔道士。どうしてここにお前たちが……。

詳しい話は後だ。すぐにここから脱出するぞ。

wそう簡単に見逃すと思う?

 背後からの声。

聞き覚えのある、その主は……。

黒猫を連れてるって聞いてたから、思っていたけれど。

まさかとはこんな辺境の地まで追ってくるなんて。

長旅でお疲れのところ悪いけど、ルナール博士を渡すわけにはいかないわ。

貴様ー人で、か?

この地は間もなく我々の部隊が制圧する。万にーつも勝ち目はないぞ。

勝利?

いらないわ、そんなもの。

 ――と。

不意に、何かの予感が過ぎる。

反射的に見上げると――。

天井に、異形が張り付いている!?

『それ』はドゥーガヘと直下する!

――ムッ!

 ドゥーガはギリギリのところで、「それ」の攻撃を回避する。

なんだ貴様は!?

zハズシタカ……。

 鋭い目つき、細く長い不気味な舌、重厚さとしなやかさを感じさせる体格……。

無様ね、絶好のチャンスだったのに。

zダガ、結果ハ変ワラナイ。死ンデモラウヨ、魔道士。

こいつを並の魔道士と思わない方がいい。

兄さんを――。

ワダツミの真名を転成したシオンすら倒してしまうようなやつらよ。

z……シオンヲ?ナルホド、強イワケダ。

 ドゥーガは戦闘態勢をとると、

下がれルナール。すぐに片付ける。

 君もカードを手に戦闘に備えるが、

待ちたまえ。

 ルナールが、異形――ザムザヘ寄っていく。

ルナール……?

私を助けに来てくれたことには感謝する。だが、その必要はなかった。

 ルナールはザムザの脇を抜け、リアナに並ぶとこちらを向く。

どういう……ことだ。

ドゥーガ。罪は、償われなければならないのだよ。

罪……?

知らぬことも、また罪になりうるぞ。

行きましょう、博士。

ルナール――貴様!

 ドゥーガは去っていく二人の後を追おうとするが。


zオット、相手ヲ間違エテモラッチャ困ルゼ。

イクゾ、魔道士!



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z激しい戦闘の末、君とドゥーガはザムザを退ける。

クッ……。

ザムザはフラフラと後退し、

zコレデモ……チカラガ足リンカ……。

 ザムザは逃げ去るが、君にもドゥーガにも後を追う力は残されていない。

君は、ウィズがまたザムザを追っているのではと思うが、

外は制圧されたみたいにゃ。ひとまずは安心かにゃ……。

 あたりの様子をうかがっている。

黒教旅団の拠点は、どうにか制圧することができそうだ。

だが、肝心のルナールは取り戻すことが――それどころか黒教旅団側についてしまった。

はじめから、そのつもりで……?

わからん。

……罪は償わなければならない、か。

 去り際のルナールの言葉だ。

ドゥーガはじっと考え込んでいるが、


……サイオーンヘ戻るぞ。やつらの好きにさせてはならん。

魔道士ギルドの威信にかけても、を守るのだ!





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