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【黒ウィズ】カトレア編(GW2020)Story

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最終更新者:にゃん


2020/04/30





目次


Story1

Story2

Story3



登場人物




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story


「どうしたルミア?眠れないのか?」

「なにか、お話聞かせて……。」

「俺が聞かせてやれるお話と言ったら、いつものあれしかないぞ?」

 大陸で傭兵をやっていた頃、向こうの傭兵たちの間で語り継がれていたある騎士のお話。

「アシュタルのお話だったらなんでもいい。」

「しょうがねえなあ。途中、言葉を噛んじまっても笑うんじゃねえぞ?」

「うん!」

 めくれたシーツを肩までかけてあげてから――

アシュタルは、栄光の3騎士の物語を語りはじめた。


 蒼き彗星の化身と呼ばれ、のちに唯ー皇帝に従い、戦乱の世を終わらせた栄光の3騎士のひとり。

カトレア・ラインハルトは、なんの変哲もない村の娘として生まれたんだとよ。


 ***


W戦乱の時代じゃ。我らの村にも、いつ敵が攻めてくるかわからん。女といえど己の身を守る方法を身につけねばな。

k剣の稽古ですね!?畑仕事よりも、大好きです!

Wまったくカトレアは不思議な娘じゃ。この村の誰よりも、剣を持つと活き活きする。

k将来、私が長老や村のみんなを守ります!

Wほっほっほっ。その時は、守って貰おうかのう。

 カトレアは、大人たちや男の子に混ざって剣を振ったそうだ。そして彼女が12歳になった頃――


Wほっほっほっ。今日も熱心に剣を振っておるな?でも、あまり根を詰めすぎるのも考えものじゃぞ?

kこうして剣を振っていると、心がこう……熱くなって、なにか出てきそうなんです。

W剣を振って出るものといえば、汗ぐらいなもんじゃ。

kもうちょっと……。こう……して、力を込めて剣をふれば……。えいやっ!

 なんと、カトレアの振った剣から水流が迸ったそうだ。まるで魔法だった。だが、この大陸では、人は魔力を失っている。

kどうですか?長老?

Wな……なんじゃ、その力はみんな~来てくれ~。カトレアが、とんでもないことをしおったぞ!

 振れば水流が放たれるカトレアの剣は、魔法剣ではないか、という噂が流れた。

噂を聞きつけた剣士や武芸者が、魔法剣をー目みようと村を訪れたそうだ。



k見世物ではない。村の人たちが困るから、さっさと帰ってくれ。

 訪れた剣士たちに挑まれても、カトレアはー度も負けることはなかった。

Wなんとカトレア!おぬし、今度は水だけでなく、氷まで放てるようになったのか?

kそうみたいですね。自分でも驚いています。

Wそしてワシも凍った!



Wカトレア……お主は、天から降ってきた蒼き彗星の化身なんじゃろう。

 蒼き彗星の剣士カトレア。彼女は、いつしかそう呼ばれるようになった。

k朱、蒼、雷光。3つの彗星が、地上に降り注ぐ時、戦乱は収まる――と言われている伝説の?

Wお主は、選ばれしものなのじゃ。だからカトレア。すぐにこの村を出て、その力をもっと沢山のひとのために使うのじゃ。

kいやです。私の剣は、村のみんなを守るために磨いた剣です。孤児だった私を育ててくれた長老にまだなにもお返しできていないのに――

Wええい!彗星の化身ともあろうものが、了見の狭いことを!お主の剣は、こんなちっぽけな村を救うためにあるのではない!

 カトレアは、半ば強引に村から追い出されたんだそうだ。

渋々、旅に出るカトレアだったが――

しばらくして彼女の耳に、故郷の村が、戦乱に巻き込まれて滅ぼされたという噂が入って来た。


k長老!みんな!

 カトレアが旅立った後、村に他国の軍隊が侵入した。――それは偶然じゃなかった。

長老や村の大人たちは、事前に他国の軍が迫っている噂を聞いて、カトレアを先に逃したのだった。


「カトレアが村にいたら、きっとワシらのために剣をとって戦おうとするじゃろう。

じゃが、いくら彗星の化身とはいえ、まだカトレアの剣は未熟。軍隊相手に太刀打ちはできん。

あの子をここで死なせたくはない。だから、無理矢理にでも旅立たせたのじゃ。

カトレア、人々の希望になれ。お前こそ、この戦乱を終わらせる蒼き彗星だと信じておるぞ。」


 かろうじて逃げ延びた村の生き残りから、話を聞いたカトレアは、長老たちの復讐をすることを決意した。



Zそこの女止まれ!何者だ!

kここに来る途中、村を襲ったな?

Zそれがどうした!?

k私は、蒼の彗星。戦乱を終わらせるために来た。

 カトレアの振る剣は、冷気を纏い、立ち塞がるものをことごとく凍らせたそうだ。

彼女の剣には、戦乱で家族を失った人々の悲しみが宿っている。いつしかそう言われる必見になった。

k必ず終わらせてみせる――この戦の世を。

 すべての敵を殺したあと、カトレアは泣いた。

その涙は、カトレア・ラインハルトの生涯で、最後に流れた涙だった。


 ***


「ねえねえ、蒼の彗星の剣士は、ひとりで他国の軍隊をやっつけたの?

そんなに強いなら、逃す必要なかったわね?」

「どうだろう?復讐に燃える彼女の心が、普段以上の強さを引きだしたのかもしれない。」

「カトレアはそのあとどうなったの?」

「続きを話してもいいが、もう夜も遅い。いい加減、寝なさい。」

「ええ~。気になって眠れない~。」

「まったく……しょうがないな。」


 ***


 騎士として、仕えるべき主を見つけたカトレアは、とある遺跡を訪れていた。

古代、大陸を支配した聖剣王が、そこに封じたと噂されている聖剣を求めて――

kそこの男。先はどから、あとをつけているのはわかっている。そろそろ顔をみせたらどうだ?

追い剥ぎか……。それとも、貴様も聖剣を狙っているのか?

W殺気を消し……足音を抑え……相手に気付かれないこと丸3日間――

俺の尾行の前に、圧倒的敗北を喫したようだな?蒼き彗星よ。

k丸3日も後をつけてきたとは……。それはもう、ただの変質者だ。

g俺は、何事にも究極の美を求めている。

朝起きて顔を洗う、ちょっとした動作にも、探求と精練を重ねてひとつの美学に昇華する。

それが、雷光の彗星。ガイアス・エクレールの生き様よ!

俺は先ほどまで尾行の美学を突き止めたと、満悦に浸っていたが、その俺の気持ちにお前は泥を塗った。謝れ!

kすまん!これでいいか!

g……いや、やっぱり謝るな!美学のない謝罪は、されても虚しいだけだ。

kどうしろというのだ。

 ガイアスは、なにも言わずに得物を構えた。

g戦う前に……「お前を殺す」などという安っぽい言葉を吐かないのがガイアスの美学。

k言ってるも同然だがな。まあ、いい。さっさと掛かってこい。相手してやろう。

g奏でるのは、戦いの輪舞  。謳うのは貴様への鎮魂歌。聖剣を手に入れるのはこの俺だ!

 雷光の彗星。その異名は、伊達じゃない。

ガイアスの凶器は、カトレアの剣と同じく、迸る雷光を纏う魔法剣。

g打ち込まれる剣。そして相手の剣を受け止める俺すべて予想の範囲内!

kやるな!?彗星の化身を名乗るだけはある!

gこの世の乱を治めるために天が使わした彗星の化身。それがこの俺だ。

同じく彗星の化身を名乗る貴様の実力、ずっと確かめたいと思っていた!

kならば3日も尾行していないで、さっさとかかってくればよかったものを。

g……俺は、人見知りなんだ。いつか気付いてくれると思っていたが、貴様が予想以上に鈍かったせいで3日もかかったぞ!

k変わった男だ……。

gだが、俺は少しがっかりもしている。蒼の彗星が、この程度だったとはな。

 戦いは、終始ガイアスが圧倒していた。

gやはり、彗星の化身は、俺ひとりでいい。このー撃で蒼の彗星は、その名声と共に吹き飛ぶのだ!

くらえ!我が、心魂を込めた渾身のー手。戦闘の美、ここに極まれり!

 凶器に集約した雷光の輝き。それは、長い槍の形となってカトレアに向けて放たれた。

kぐはあっ!

 目の前で倒れるカトレアを眺めながら、ガイアスは虚しさを噛み締めていた。

g俺がたどり着いた究極の戦闘美。それを防げたものは、存在しない。

雷光の彗星の化身と呼ばれ、生まれながらにして将来の成功を期待されてきた。

周囲の期待に応じるように、俺は努力を重ね、10歳の頃には、大人ですら打ち負かすようになった。

 雷光を纏った右手を憎々しげに見つめる。

gどんな相手であってもこの力のせいで、俺の敵ではなかった。俺は、強すぎる罪を背負っている……。

しかし、天から与えられた力とはいえ、ー方的に相手を疎踊するのは、騎士として本意ではない。

だから俺は、戦いに美学を求めることにした。ただ、勝つのではなく、美しく、そして圧倒的に勝つ!

蒼の彗星……貴様には少し期待したのだがな。少々残念だ。

 雷光を受けて倒れていたカトレアが、ゆっくりと立ち上がる。

kいててて……。なかなかやるな……。少し、驚いた。

gまだ立てるか。おもしろい、次はお前が打ち込んでこい。

kならば、遠慮はしない。

g相手の攻撃を受けて、なおも圧倒することこそ、理想の戦闘美学。

お前ごときにやられる俺ではない。雷光の彗星を侮るな!!



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story



gうぎゃあああああああああああっ!?

 カトレアの剣から放たれる水流は、巨大な衝撃に変化してガイアスを襲った。

gまさか……。この俺が……。

 膨大な力の前にあえなく屈してしまった。

その屈辱。理想とする騎士の美学とは、ほど遠い己の姿にガイアスは絶望した。

g蒼の彗星……。これがお前の本気なのか……?

k私も天から与えられた己の力に悩んだ時もあった。

けど幸運なことに、私は仕えるべき主を見つけた。力の使い道を見つけたんだ。

主のため。天下のために剣を振るう――そう決意して編み出したのが、いまの奥秘・氷迅凍破だ。

g心の迷いのなさが、先ほどのー撃か。

 深い後悔とともに、己の得物を見つめる。

g曇りのない蒼の彗星のー撃……正直見事だった。それに比べて、俺の剣には曇りがあった。

俺は、思い上がっていただけだった。己がはずかしい。……己がはずかしいっ!

kそなたも騎士として自分を活かす道を見つければ、迷いは消えるだろう。その時、また勝負をしよう。

 カトレアは、さらに遺跡の奥へと進む。

この先に、聖剣がある。戦乱を収める力があると噂されている剣だ。



Iやはりここに来たか。

k紅き彗星の化身。イグニス・ヴォルガノン。そなたも聖剣に興昧があったとはな。

Iいいや。俺は槍使いだ。剣は、欲しくない。

俺が、興味あるのは、蒼き彗星カトレア――貴様だ。

k今日はよく戦いを挑まれる日だ。これも、聖剣が放つ魔性の気配ゆえかな?

I古の聖剣王が導いてくれたのかもしれねえ。

 イグニスは、紅星槍を構えた。

Iこの前の戦いの続きといこう。

kこれも、聖剣を手に入れるために乗り越えるべき試練か……。いいだろう!来い!

 イグニスの紅星槍とカトレアの蒼輝剣。ふたつの得物が、紅と蒼の魔力を放ってぶつかりあった。

火花が飛び散り、冷気が辺りを包み込む。

Iその腕にさらに磨きが掛かったようだな?

kそなたこそ、槍に鋭さが増した。まるで別人のようだ。

 イグニスの気迫に押されて、カトレアの方からー旦距離を取った。

kなにがあった?

I俺はなにも考えずに、ただ槍の求めに応じて強者を求めて彷徨っていた。

そんな俺を彗星の化身といって持ち上げ、ついてきてくれるものたちがいた。

そいつらに祭り上げられ、俺は国を興した。

 深く息を吐き出す。あらゆる後悔を押し出すように。

g理想はあった。この戦乱を終わらせたいという……。

しかし、それ以上にあらゆる国家が、欲望のままに振る舞っていた。

 イグニスの国は、欲望という獣に飲み込まれた。

持っていたものをすべて失いながら、それでもついてきてくれたものたちだけは助けた。

I俺には、国をまとめる器などない。それでも、この光のない時代、弱きものたちの光になろうと思った。

kその志、立派だ。

Iだが挫折した――それ以来、己がわからなくなった。

いまはただ、彗星の化身と呼ばれるにふさわしい男かどうか――この槍で己を試している。

 腰を落し、狙いを付けた。

紅星槍は、その名のとおりらせん状の紅い炎を纏う。

I蒼き彗星よ、お前に否定して欲しい。俺のようなくだらない男に天から力を与えられる価値がないと。

kそなたは、己の持つ力を手放したいようだな?

覚悟のないものが持つ力ほど、危険なものはない。願いどおり、否定してやろう。

I行くぞ!


 ***



g凄まじい戦いだ……。

 イグニスの槍は、殺気をまとってカトレアの放つ冷気を穿ち、貫く。

 ー方、カトレアも剣に宿した冷気を駆使して、紅星槍を絶対零度の空間に閉じ込めようとする。

Iその程度か!?俺を否定してみせろ!

kそなたこそ、槍に振り回されているぞ!

 カトレアの剣が、蒼い彗星の魔力を秘めた。

k己を知りたいと言つたな?そなたは、もう死人だということを、私が教えてやろう。

 紅星槍を蒼輝剣が、弾いた。

槍は、イグニスの手を離れて遥か後方に転がった。

g勝負ありだな……。

 イグニスは、なにもない手を信じられない思いで見つめている。

やがて、すべてを受け入れたように気持ちを落ち着かせた。

Iかたじけない。槍と共に迷いが消えた……。

k私は、この遺跡に聖剣を求めてやってきた。人助けに来たわけではない。

 弾き飛ばした紅星槍を拾い上げる。まだイグニスの闘志が宿っているのか、熱を持っていた。

k熱いな……。これが、イグニス・ヴォルガノンの闘志か。

I衰えることのない魔の炎だ。俺の闘争心を常に焦がし続ける。

kならば、私が鎮めてみせよう。

I無理だ。あらゆる方法を試したが、紅星槍が放つ炎は誰にも制御できなかった。

kまあ、見ていろ……。

 紅星槍にカトレアは力を込めた。

冷気が、槍を包み込む。暴れ狂う炎は、抵抗をみせたが――

最後は、カトレアの放つ氷によって鎮められた。

k返すぞ。

I……お、おお。

 受け取った紅星槍は、まるで別物のように冷たく、そして静かにイグニスの手に収まった。

Iこいつは、驚いた。俺でさえ制御出来なかった炎を鎮めるとはな。

参った。降参だ。


イグニス・ヴォルガノンはどの男が、こうもあっさりと負けを認めるとは……。

その潔さ、とても美しいぞ。敗北の美学とは、まさにこのこと!

Iああ~?なんだこの変な男は?

g雷光の彗星ガイアスだ。覚えておけ。

お前を倒す予定だったが、目の前であっさり負けられては、挑む気も失せた。

敗者を処刑するのは、俺の美学に反する。命拾いしたな?

I俺は、ー向に構わんぞ。カトレアに負けて色々吹っ切れた。気分転換に戦ってもいいが?

gいや……やめておく。実は、先はどからお腹が痛い。カトレアの剣が放つ冷気でお腹を壊したようだ。

I大丈夫かよ?ここに食あたりの薬がある。ー応飲んどけ。

gかたじけない……。

 気が付くと、カトレアがいなくなっている。

どうやら、奥にある聖剣の間に向かったようだ。

gあとを追うのか?

Iもうカトレアと戦うつもりはないが、奴と共にいれば、この先、進むべき道が見えてくるかもしれん。

g同感だ。俺も、同じ事を考えていた。


 カトレアは、聖剣が封じられている間にいた。

 かつてこの大陸にいた若き剣士が手にした剣。それには、聖なる力が宿っており――

若き剣士は、聖剣の力を借りて大陸を支配したという。

kそれが、この聖剣か……。

 噂に違わず、まがまがしい剣気を放っている。

g気をつけろ。資格のない者が持つと、命が吸い取られるという噂だ。

Iでも、あんたなら、その剣を持つ資格があるかもしれん。

kここまで来たのだ。どのみち、このまま帰るつもりはない。

 カトレアは、聖剣の柄に手を伸ばした。

 しかし――

k障壁だ。剣を守っているのか。

I古の魔法使いの仕業だろうか?

 長い時間、誰にも手にすることができなかった理由はこの障壁にあった。

gどうする?

kこのまま帰るわけにはいかん。手を考える。



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Iお前の蒼輝剣ならば、どんな敵でも打ち負かせるだろう。なぜ、この剣に拘る?

k私が扱うのではない。

噂を聞いて私の主が持つにふさわしい剣だと思った。だから、ここにいる。

I主か……。お前に見込まれるとは、よほどの人物なんだろうな。

kまだ若いが、将来この大陸の戦乱を終わらせることのできる人物だ。

I迷いのない目だ。そういう目で、希望を語れるお前が羨ましい。

gだが、魔法障壁が張られているのなら手は出せんな。

 魔力を持たない者では、障壁を破ることができない。

g諦めるか、ー度戻って魔力を持つものを連れてくるかだな。亜人に知り合いがいればいいのだがな。

Iおい、なにをする気だ?まさか――

 カトレアは蒼輝剣を抜き、聖剣に向き合う。

k私が本当に彗星の化身だというのなら、この程度の障壁断ち斬ることができるはず。

g今度はお前が己を試すのか?バカなことを。下手をすれば死ぬぞ?

kこの聖剣を手に入れることで戦乱の収束にー歩近づくのなら、我が身の安全は二の次だ!

 障壁に蒼輝剣が突き刺さる。手応えはあった。極寒の氷を纏う刃は、障壁にわずかながら傷つけた。

g障壁に傷がついただと?

I魔法障壁は、魔法でしか破壊することができない。カトレアの剣に宿る魔力は、聖剣の封印者の魔力を上回っているということか。

 カトレアは、さらに障壁を斬りつけた。割れた音がして障壁に剣先が完全に突き刺さる。

gあと少し……。

I面白い。カトレアにできるなら、紅き彗星の化身である俺にも同じことができるだろう。

 真っ赤な炎を燃え上がらせながら、紅星槍の先端が障壁を穿つ。

k私に付き合うつもりか?

Iお前ひとりじゃ、キツイだろ?俺たち3人、力を合わせれば、聖剣を解き放ってやれるかもしれん。

g俺も入っているのか!?いいだろう。この俺が封印を切り裂く美学というものを見せてやろう!

 氷、炎、雷。3種類の魔法剣。

3者の属性が重なり合えばどうなるのか、誰も知らない。


gなんか、すんごいことになった!?

Iお互いの魔法剣が干渉しているのか?

 3者の魔法剣は、魔力の粒子を拡散させ、渦巻く気流のように遺跡の中を席巻する。

kこのままでは、我等の肉体も危うい!

g引き返すならいまだぞ!

kだが……この勢いを借りれば、聖剣の封印が解けるかもしれん!

I頭のおかしいやつだ!けどな……俺は、そういう奴は嫌いじゃないぜ!

g障害を非常識で打ち破る美学……。なるほど!そういう美学もあるのか!?

Iしかし、ひとつ聞かせろ。なぜそこまでして戦乱を終わらせたい?その腕があれば、もっと自由に生きられるはずだ。

k知れたこと……。この力とこの身は、すでに私だけのものではないからだ。

このどうしようもなく理不尽な世の中で、私が僅かな希望になると信じてくれたものたちがいる。

 敵国の侵攻を知り、逃してくれた村のものたち――親代わりだった長老はじめ、たくさんの人々。

k先に逝ったものたちとの約束なんだ……。戦乱を終わらせるのは。

そのためには、この程度の障害など物の数ではない!

 裂帛の気合いと共に蒼輝剣が、突き出される。

魔法障壁は、鋭い氷の刃に切り裂かれ、そして消滅した。


g障壁が!

I本当に破壊しちまうとはな……。呆れたぜ。

kこれが、聖剣王が扱っていた剣か……。

 カトレアは、台座に突き刺さったままの聖剣を抜く。

k……。

gどうだ?聖剣の凄さは感じるか?

kいや、まったく。持ってみたところ、何の変哲もない普通の剣だ。

I偽物だったのか?いや、偽物に魔法障壁など張って封印するはずがないか……。

g聖剣を扱うには、なにかの資格が必要なのかもな。

k彗星の力ではない別の力か……。


 ***


kこうして剣も手に入れた。まったくの無駄足ではなかった。

使い方さえわかれば、この剣は、きっと聖剣本来の力を発揮するはず。

Iその方法を調べるつもりか?

kそうだ。ここでお別れだな。

I……しばらく、お前についていっていいか?

kなぜだ?

I俺のこの力を振るう先、ひょっとしたら意外と傍にあるのかもしれんと思った。

k私には、護衛など必要ない。

g俺もついていかせてもらう。その聖剣が、本来の力を発揮するところも見たいしな。

それに追求するのは、俺ー人の美学ではなく、この世界全体が求める美学なのだと気付いた。

k言ってることは、よくわからんが……。

いいだろう!好きにしろ


 しばらく進み、遺跡の出口が近くなってきたところで――


Zカトレア。おそーいよぉ。待ちくたびれて、迎えに来ちゃった。

kわざわざ、このようなところまで……。お心遣い痛み入ります。

 待ち構えていた少年に、カトレアは恭しく脆く。

Zねえ、聖剣は手に入ったの?見せて見せて。

k聖剣かどうかはまだわかりませんが、奥の間に封印されていた剣は、こちらです。

Zヘー。格好良い。さわっていい?

Iおい、カトレア。そこにいるガキはなんだ?

kガキとはなんだ!?我が主への侮辱は、私への侮辱と受け止めるぞ!

g主って……そんな子どもに、戦乱を終わらせる力と美学があると思ってるのか?

kもちろんだ。我が主こそ、終わらぬ戦乱に終止符を打つお方だ。

Zうわー。重い。僕ひとりじゃ持てないよ。

g俺にはそうは見えんが……。

Iもしかして、単なる子ども好きだったのか?

 その時、聖剣をいじり回していた主の目が、鈍く輝きはじめた。

右目の輝きは、目にしたものの心をかき乱す。それは、魔法でもなく、幻術でもない。

Iな、なんだ……その光る瞳は――

kこれが、我が主の力だ。聖剣王も同じような目を持っていたという。

Zねえねえ、カトレア。聖剣が変だよ。

 覇眼の光を浴びて聖剣が眠りから覚めたかのように息づきはじめた。

I目の光りに呼応している……?まさか、聖剣の真価を発揮するのに必要な鍵は、その目の光か!?

Zなんか……急に軽くなった。僕ひとりで聖剣を持てるようになったよ。どう?格好良い?

 聖剣を握る姿は、まだあどけなさが残っていた。

だが、そのまばゆく輝く瞳は、この世を覆う闇を払う予感に満ちていた。

k主が成長なさり、その剣を手に地上の乱をすべて掃討するその日まで、私はお仕えいたします。

I……あの子どもに、戦乱を収める力があるかはわからん。だが、俺は……カトレアについていく。

g光る目……。そして聖剣を握った姿。未来の覇者として君臨する予感を感じた。俺の求める美学が、そこにあるように思う!


 ***


「この少年は、後に成長し、戦乱の世を治めたそうだ。

終わらぬ乱世に終止符を打った唯ーの皇帝という意味で「唯ー皇帝」と呼ばれ、人々に語り継がれる存在となった。

唯ー皇帝には、カトレア、イグニス、ガイアスの3騎士が生涯仕えていたといわれている。

栄光の3騎士と呼ばれる彼らの伝説は、これからはじまる……というわけだ。

栄光の3騎士と唯ー皇帝のお話、おもしろかっただろ?

うん?なんだ眠っているのか。しょうがないな……。


ふあ~あ。明日はアシュタルに付き合って市場に行く約束だった。私も早く寝ないと……。

おやすみ。」







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