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〈ファインティングメア〉 Story

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2017/00/00


story0 プロローグ



「ぷぅ。ぷぅぷう。」

次の話し手に名乗りを上げたのは、みんなから〈腕利き〉と呼ばれる仲間でした。

「ぷぷぅ ぷう~ぷ。」

彼は突然、『宿命』について語りだしました。

「ぷう?」

よくわかりません。

「ぷう……ぷう? ぷうぷう。」

実は自分もよくわからない、と真顔で言いながら、〈腕利き〉は夢の話を始めました。



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story1



「あら。」

「おう。」

昼の市街で、ふたりはばったり出くわした。


「ルリアゲハたちがいない、ということは、さしずめおつかいの途中か。」

「当たりよ。店長に”値切るのが上手い”と評価されているの。」

「……確かに上手いな。傍から見ていると、カツアゲのプロと間違えそうになる。」

「カツアゲ? 知らない言葉ね。何かの料理?」

「まあ、料理と言えば料理か。煮るなり焼くなりするからな。」

そんなことを話していると、


「兄貴!ラギトの兄貴!」

突然、雑踏をかきわけるようにして、ひとりの少年が飛び出してきた。


「知り合い?」

「俺が以前”頭”を張っていたグループの仲間だ。レック、いったいどうした?」

「ティスが、ティスがヤバいんだ!」

馬車の下敷きになってる!死にそうなんだ!助けてくれよ、兄貴!」

「……!」


 ***


通りにできた人垣の向こうに、現場があった。

馬もろとも横倒しになった馬車。

ひとりの少年が、その下敷きになっていて、数人の大人が馬車を持ち上げようとしている。

「……どけッ!」

ラギトは瞬時に〈ロストメア〉の装束をまとった。

ぎょっとなる人々を押しのけ、馬車に手をかける。

「……おおおおおおおおおおおおッ!!」


自身の力で、少年を押し潰す馬車を持ち上げる。『ティス!』近くにいた子供たちが、あわてて馬車の影から少年を引き出した。

みな、ティスの仲間だ。なんらかの事情で親の庇護を受けられなくなり、身を寄せ合って暮らす子供たち。


「〈黄昏(サンセット)〉!癒しを頼む!」

「やってはみるけど………!」

リフィルが骨骸の人形を呼び出し、複雑な印を結ばせた。ぐったりとなっている少年に、魔法の光が降り注ぐ。

「ティス!」

ラギトは馬車を下ろし、異形の姿を解いて、少年の傍らにしゃがみ込んだ。

「兄貴……。」

 ティスは、絞り出すように声を上げた。

「兄貴……悪いけど………頼みが、あるんだ……。」

その顔に、ラギトは死相を見た。

死相と―一『それでもこれだけは言わなければ』という、決死の意志とを。

だから、ティスの手を握り、しっかりとうなずいてみせた。

「――聞こう。」

ティスは、かすかに微笑んだ。


「俺の、夢……稼いで、”外”に出て……みんなのための、家、建てるって……夢。

あれ……諦めちまった。さっき……ああ、もう無理だ、って……。」

「……そうか。」

「夢……諦めたら……〈ロストメア〉になって……暴れるんだろ……?」

「ああ。それを倒すために、俺たちが――〈メアレス〉がいる。」

言わずもがなのことだった。それをあえて告げたのは、ティスの願いを察していたからだった。

「頼むよ……兄貴。俺の、夢……止めてくれ……。みんなを襲ったり、しないように……。」

「……ああ。任せろ。俺が、必ず止めてやる。」

「ヘヘ……ありがと……兄貴……。」

ラギトは無言で、次の言葉を待った。

何もなかった。

ティスがそれ以上、口を開くことはなかった。


「……本当なら、話せる身体じゃなかった。」

術を止めたリフィルが、目を伏せて言った。

「保たせたのね。命を。言うべきことを、言いきるまで………。」

「そういう奴だった。いつも自分のことより、人のことばかり心配していた。」

そっと、ティスの目を閉じさせながら、ラギトはつぶやく。

「こういう奴から死んでいく。」


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story2



降り注ぐ黄金色の日差しが、川の水面で跳ね踊る。

川にかかった大橋の中央で、ラギトは静かに゛それ、、を待っていた。


「……来たか。」


前方。怒涛の勢いで橋を驀進(ばくしん)してくる影がある。

馬車ほどもある、大きな〈ロストメア〉だ。橋を揺らし、駆け抜けてくる。アギトの後ろにそびえ立つ、門を目指して。

橋上に立ちふさがるのは、ラギトだけだ。人や馬車の姿はない。〈ロストメア〉出現の報を受け、退避している。


「アフリト翁の目利きは、確からしい。確かにおまえは、俺が待っていた〈ロストメア〉だ。」

返事とばかり、〈ロストメア〉が吼えた。不埓な邪魔者を叩き潰さんと、正面から猛然とぶつかってくる。

対してラギトは、その左腕に魔力をまとった。

「――はあっ!!」

激突。激震。

異形と変じたラギトの左腕は、突っ込んでくるくロストメア)と正面から衝突し、おぞましい魔力の飛沫を散らしつつ弾き飛ばす。

思わぬ反撃を受けた〈ロストメア〉は、警戒するように唸りながら後退した。


「おまえは俺が止める。悪いが、そういう約束だ。」

禍々しい魔力が、ラギトの全身を包んだ。

〈ロストメア〉の力を意志力でねじ伏せ、我が物とした者のまとう、魔性の装束。

〈ロストメア〉は、ぎょっと身をこわばらせ、続けて、捧猛な咆嘩を発した。

――”外”に出たい。そんな雄叫びだった。


”外”に行きたい。こんなところで終わりたくない。みんなで力を合わせて生きていきたい――


「……知ってるよ。そうだったな。おまえはそういう夢だった。」

ラギトは、すっと鋭く目を細めた。

「だが、おまえを叶えさせるわけにはいかない。」


〈ロストメア〉が”現実”に出ればその夢が叶う。夢が自分で自分を叶えるという行いが通れば、世の摂理が乱れ、何か起こるかわからない。

また、”現実”に通じる門は都市の中央にある。これほど巨大な〈ロストメア〉がそこを目指せば、それまでに大きな被害が出ることになる。

だから、止めなければならない。たとえ、それがどれほど美しく、あたたかな夢であったとしても。

 〈ロストメア〉が駆ける。構上のラギトヘ。夢として生まれた、その願いのままに。


「運がなかったと諦めろ!」

ラギトは吼えて、身に宿る悪夢の力を解放した。


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story



「――おおおっ!」



向かい来る〈ロストメア〉へと、ラギトは果敢に拳を叩き込んでいく。

〈ロストメア〉が牙を剥いて喰らいついてくる。ラギトはー歩だけ下がった。がちんッ、と、目の前で顎が閉じられる。


そのタイミングに合わせて、渾身の拳撃を放つ。

「はあっ!」

瞬間、全身を衝撃が襲った。

「ぐぁっーー!」

吹き飛ぶ。空中で体勢を崩し、地面に激突。激しく横転しつつも、身をひねってどうにか起き上がる。

「今のは――」

構え直すラギトの前で、〈ロストメア〉が吼えた。


”外”へ行きたい。

――そのためなら、どんな苦難も払ってみせる。


強烈な意志に満ちた咆嘩が、空気を震わせる。

”逆境を乗り越える夢”……。あるいは、”苦難を払う夢”といったところか。

〈夢〉に応じて備わる〈ロストメア〉固有の能力。おそらく、攻撃を打ち払う一撃を放つ。”苦難を払う”願いの現れとして。

「いいだろう。」

ラギトは構えを変えた。

身をたわめるような前傾。炳々たる瞳に敵の姿を映して――


爆ぜた。

足元の石畳を打ち砕きながらの爆発的な疾走。風を散らし、空を引き裂き、一瞬で間合いを削りきる。

〈ロストメア〉の咆嘩。打撃力の波が来る。

まるで真正面から鋼の壁が高速で飛んできたかのような衝撃波に打ちすえられたラギトは、


「おー―おー―お、お、おおおおおおおおおおおッ!

あいにく……こういう泥臭いファイトは、俺の得意分野だ!」


押し寄せる衝撃の渦に、気迫と叫びと勢いと根性と覚悟とやせ我慢で抗い、耐えきりー―

強引に打ち破って、固めた拳を振り上げた。


弾丸のごとく放たれた右の貫手が、〈ロストメア〉の肉体を貫通する。

びくり、と大きな身体を震わせるその〈夢〉に、

「いい夢だったよ。おまえは。」

手向けの言葉をかけながら、ラギトは魔力を詐裂させた。


 ***


目を覚ましたとき、ラギトは、自分が橋の上で膝枕をされているのに気づいた。


「ちょうどよかったわ、〈夢魔装(ダイトメア)〉。」

「……〈黄昏(サンセット)〉。」

「左肩の脱臼と、ほか、雑な骨折多数。

手当もせずに倒れているのを見つけて、治癒魔法をかけ終わったところよ。気分はどう?」

膝枕をしてくれている骨骸の人形を見上げ、ラギトはうめく。

「……なんというか、これまで感じたことのないおそろしくなんともいえない気持ちだ。」

「そう。良かったわね。貴重な体験ができて。」

「ああ……。”特に身にならない貴重な体験もあるということのわかる貴重な体験”ができた……。」

「ひねくれたことを。」

「素直な感想だ。」

溜息とともに、ラギトは身を起こした。骨の膝枕のせいで後ろ頭が痛い。意味があったのだろうか。これは。


「ともあれ、助かった。敵を倒したまでは良かったが、思いのほか、ダメージが大きかったな。」

「でしょうね。激しい魔力のぶつかり合いを感知したわ。普通の人なら身体が千切れているところよ。」

「丈夫さには自信がある。実は、風邪を引いたことがない。」

「丈夫なのが理由だといいけど。」

あきれたように、リフィルは言った。


正面衝突を選ばなくとも、ラギトならいくらでもやりようはあったろうに、という顔だった。

リフィルが骨骸の人形を足元の魔法陣へと沈めるのを見ながら、ラギトは立ち上がった。

まだ少しふらつくのを、重心の制御で強引にごまかす。

そのままどちらともなく、門の方へと歩き出した。


「礼をしないといけないな。後で一杯、奢らせてくれ。」

「酒はやらない。おなかが膨れないから。」

「じゃあ、一食だ。」

「それなら、乗った。」


未練がましく燃え盛る太陽が、没していく。黄昏が終わり、深く静かな夜が来る。   


「そういえば、決めたの? あの〈ロストメア〉の呼び名。」

「ああ。あとでアフリト翁に報告しておこう。」


 ***


この世に夢の墓はない。潰えた夢は、何も残さず消えていく。

その声を――痛みと願いを知った〈メアレス〉だけが、心の墓標に名を刻む。


”苦難を払う夢”


その墓碑銘は――




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