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【白猫】Original Horizon Story1

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最終更新者:にゃん


目次


Story1 鍵

Story2 混乱

Story3 そんなレベルと違う

Story4 任命式(略式)

Story5 孤狼来たる

Story6 門の前にて

Story7 女の子

Story8 ズバっと

Story9 どんな気持ちで

Story10 宣言

Story11 伝え聞きしもの

Story12 違和感




登場人物


 




story1 鍵



…………

……ハァ……ハァ……ハァ……

……ウチの、勝ちだな……

…………

これで、ウチに……!

――っ!!


……?無事、だ……

ソウルが流れ込んで……?全然こないんだけど……?


……ぅぅぅぅぅ……

シロー?

ああああああああああああっ!!!

!!

場に凝縮したソウルが……彼に……!?

――シローを選んだか。

え!?

どういうことだ!?

――未来樹は語っていたのだ――

<予言の子>、その二人がぶつかりしとき――

<鍵>もまた、その持ち主を選ぶ。

なんだと?……それでは、お前……!

ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!ああああああああああああっ!!!

シロー!?おい、シロー!!

なんでだよ!?勝ったろウチ!?ウチがやるんじゃねえのかよ!?

がぁああああっ!!!???

シロー、吐き出せ、そんなの!ウチが引き受けるから!

……やらねぇ、よ……っ……!

え?

わかった……どうして……俺が、選ばれたのか……!

間違ってる……クロカ、お前はっ……

!?

……正さなければ……!世の中を……っ……!

何を言ってんだよ!?

――うるせぇ!!!

!!

この世界は、歪んでいる……!

――強者たちに!都合のいい常識を押しつけられている!!

……シロー……?

――こうなったら――

出来損ないどもを始末して!

もうー度!やり直すしか!

やめろよ……!おい……!?

うぉぉぉぉおおおおおーーー!!!

シロー!シローーーーォオオオオ!!!





――<最誕>の時は来た――




【クロカ・マニト】



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story2 混乱



――シローが放つ光に包まれ、ウチの意識は薄れていった。

シロー……急に、何を言い出した……?

勝った方が命を失う、そういう話じゃなかったのか?

わけがわからん……


……そして、目が覚めたとき。

何か、違和感を覚えた。

何かがおかしい……ついこの間までの世界と、何かが微妙に変わっている……?


目が覚めたか。

師匠……?ここは……?

……どこからどこまでが、夢っスか……?

お前の夢のことなどわからん。

……シローは?

……組織を抜けた。

!!

リシュール島のサニオから通達があった。

そこにいるそうだ。シローや、イズネ、ル=グインたちは。

……?

連中は、シローを首領として、あらためて、アテル・ラナに宣戦布告をしてきたのだ。

シロー、生きてたんだ!よかった……!何が命を失う、じゃ……?

…………

はぁああああああああ!!センセンフコク?????シローがシュリョー???????

ワっケわかんねえよなあ!?俺もわかんねえんだよ、詳しいことはよぉ!!!

どゆことなんスか師匠!?

だから詳しくはわかんねっつの!だから予測も交えて話していいか!?

どぞどぞ!

シローが発した光、見たか?

覚えてる。

たぶんあれが<再誕>の力だったんだと思う。でよ。

オーゲサに<再誕>とか言ってっけど、実際、どこがどのくらい生まれ変わるのよぶっちゃけ?

と、俺は思ってたのよ実は。範囲とか、面積とか、時間だとか人数とかとか。

む。言われりゃたしかに。

な?ー瞬で全世界が過去ごと塗り替わるんなら、気づける余地もねえし、別にいいってか仕方なくね?って思ったりもしてたんだけどさ。

そこまで万能ってわけじゃあなかったんだろうな。<再誕>の力ってのは、おそらくまずは、『陣営』を整える力なんだよ。

陣営とな?

わかんないんだけど、なんかそんな、気がしてさ。

まずは陣営……まわりくどし。

まーなんか段階なんだろうけどな。で、サ。

リシュール島は創り直されたんだよ。アテル・ラナを潰すための勢力として。

……シローが……

……そんなことを望むとは、思えないっス。

信じたくないのは、俺も同じだ。

なんか、ちょっと……ラストの方、様子が変だなとは思いましたけど……

てか、ル=グイン様あやしくないスか?

俺も思った。

敵に回ったってことスよね?ちょい前まで長やってたル=グイン様が、アテル・ラナの。

あいつは予言第ー主義だから。

予言が絶対正しいなんて保証、どこかにあるんです?

スルドイ!だよなあ、俺もちょい思ってた。予言に振り回されすぎじゃね?って。

もしミスってたら、相当ヤバイことになんじゃね?ってな。

…………

……それで。戦うんですか?

ル=グイン様や、シローたちと?

俺はそのつもりだ。

お前はどうする?

…………

やんなきゃなんない気がします。

だってなんか、シローの奴……

滅茶苦茶道を踏み外してるカンジじゃねっスか……!?

……だな。

あとで、会議室へ来い。現状を確認し、方針を決める。

了解っス。




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story3 そんなレベルと違う


…………

ー回整理しよう。

急とかってレベルじゃねーだろ、もはや。このー連は。


ウチとシローは、次期統領見習いになった。で、すぐに最初の仕事ができて。

なぜなら、師匠の元弟子の、サニオってのが、喧嘩を売ってきたからで。

島の組織――<アテル・ラナ>は、ずっと昔から、法王とかとつながりがあったみたいで。

法王づたいに色んな人がドミティア島にやってきた。

レディ・キラーとか、昆虫忍者とか、フリーの人とか。界隈では名だたる冒険家たちだ。

そして、ウチとシローは、一緒のチームを組まされた。

チームでリシュール島へ、サニオの手がかりを探りに行った。

途中、別行動になった。あとから聞いた話によると――

セレナさんたちは、サニオと思われる人物を確かに討伐した。だけど――

それは本体ではなかった。なんらかの術で、サニオは死体を操るのだという。それではないか、と誰かが言った。

セレナさんたちが戦っていた頃、ウチとシローは、謎の男に案内されて――

イズネという人に出会った。こちらも師匠の元弟子だ。

ウチは、野生の勘で危険を察知し、魔法のジャーキーを噛んで師匠へ居場所を知らせた。

急行してきた師匠は、イズネってのを見て、動けなくなっちゃって……

……ウチと、シローも、戦いたくなくなっちゃって……

……ピラウとペルマナが、ウチらのことを逃がしてくれた。……命を、懸けて……

…………

……サニオってのは、なんだかたくさんもじゃもじゃ言った。

ウチらのご先祖様が、悪党だったとか。世界を自分の物にしたとか。

そのへんはまあ、実感湧かん。でも、ウチとシローには、先祖代々の、創り直す力が宿っているとかなんとか。

……で、思いついた。

その力を使えば、ピラウとペルマナを、取り戻せるんじゃないかって。

ついでに世界も正しくできればなおヨシ。……まあ、それもそれで、重いけど。

で、<再誕>の力ってのには、<鍵>が必要で……

<鍵>を生むためにはウチとシローがマジバトルしなきゃならなくって……

勝った方は、その<鍵>で扉を開くときに、死ぬとかで。……色々あったけど、ウチが勝った。

なのに、ウチは死なず、それどころか、シローに<鍵>が渡ったっぽくなり……

シローは光って、気づいたときには、別の島で、敵になっちまった。


…………

……後半、全然整理しきれてねえな。

…………

……もうー度、シローに会ってみないことには、だな……



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story4 任命式(略式)


グッモ~二~ン♪お姫様、目覚めの気分はどうだい?

え……オズマさん……?戻ってきてたんですか?

こいつは昔から、タイミングだけはよくてな。

運じゃない、努力でだぜ?

はぁ。……それで?まだ、あちこちで戦争中なのに、どうしてここへ?

任命式っての?こーゆーことはキッチリしとかないとさ。

誰のために戦ってるかを明確にしといた方が、モチベも上がりやすいし。

……にんめーしき……?

やれやれ、そんなに余裕があるわけじゃないんですからね。

私から説明しますよ、構いませんね?

手短にな~。

なんスかソレ、他人のときばっかり。……コホン。改めまして――

現在もなお、各島では戦闘が続いておりますが、こちらは方針を切り替えました。

一進一退。それを継続してもらっています。

サニオの本体がどこにいるかは、もう割れたことだしな。

よって無理に殲滅を狙わず、こちらも時間稼ぎを行っています。

それによって、何人かこちらに回すことができました。その人もそのー人です。

こんにゃろう、このオレを捕まえてその人だとぉ!?


帰還した。

りんりん!ダーさんがお前だけでも戻れって言ったの!だから戻ってきたの!

それと、新しく駆けつけてくれた方もいます。そちらは、あとでまたお会いしてください。

……どうして、私に報告を?

それはですね。

クロカ。お前がこの作戦の総大将にふさわしいからだ。

え!?

事情は聞いている。はるか祖先からの因縁。その血に宿す力。

お前以上の適任はいない。

で、でも……

それにですね。

ル=グインの代わりを立てねえと、アテル・ラナとしてはメンツが立たないのよ。

あいつ、寝返ったしな。

とまあ、そういうことですんで。今後、あなたを中心として、動いていこうと思います。

クロカさん。総大将の任、受けてくれますか?

…………

…………

……お受けします。

…………

汝に、白の加護あれ――



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story5 孤狼来たる


「そんじゃ、細かいことはー旦こっちで叩いてから共有すっからさ~。

先に、新しく来たメンバーと顔合わせしといてもらえる?」


…………

……お受けします、か……

……?

――大人になったねえええええ!?

はぁ?

何言われても、やらないとか、受けないとか、そんなばっかだったクロカがさぁあああああああ!?

こんなに立派になっちゃってえ!師匠とすりゃあ、そりゃもう涙がチョチョ切れんばかりで…‥!

……やめてくださいよ。

くださいよ!?

……ぉお~ん!立派になったねえ……!!!

や、マジで。

事態、何も良くなってないですから。……<再誕>の力が……

悪用されたってことですよ、簡潔に言えば。

…………

シローが何考えてるかはわかりませんが……

……ピラウとペルマナのこと、忘れたってんなら……

…………

……会ってみないと、だな。

ですね。

この先の部屋で、待っているそうだ。

わかりました。


……………………

…………


……お前か。ここの長は。

初めまして。私は、アテル・ラナ統領、クロカ・マニト。

帝国軍、第十三軍団所属、大佐、ジュダだ。

帝国からいらしたのですか。

帝国はこの件に関与していない。ここへは個人として来た。もっとも、皇帝には話を通してあるがな。

俺以外の援助は期待するな。

わかりました。

…………

…………

……精霊か?

そうだ。

……気が合いそうだな。

……?お前は……?

……いや、互いのためにならんか。歓迎するぞ、ジュダ。

宜しく頼む。

…………

なんだ?

あ、いえ。どことなく、動物の気配を感じたので。

当然だ。俺の本性は、獣。

おおっ……!

気安くするな。俺は今、生まれて初めての昂りを覚えている。

会えるのかもしれんのだからな。英雄の哭き声が鳴り止むことのない荒野に――

――この俺を、放逐した者に。

あなたを放逐した、者……?

…………

いえ……今は、ここまでに。

頼りにしています。ジュダ大佐。

ジュダでいい。



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story6 門の前にて



――え!?神獣に、破壊の因子を混ぜて作られた男!?

しーって!声デカいって!てか、真後ろのドアのすぐ奥にいるってばさあ!

すいません。つい、ドアを閉めた直後に根掘り葉握り聞いてしまって。

いいけどさ。

全部真実なんスか?

法王が言ってたんだよう。ホントかなんてわかんないって!

そっか……師匠ならワンチャン、神獣にも知り合いいるのかなあと。

ワンチャンだけに?どっちかっていうと、トリちゃんだったよぉ。

いや、そういうことじゃなしに――え?

トリちゃんって???

なにが?

はぁ!?

ンンン!?

……あ!!!そうそう!なんか、一瞬思い出した!

トリっぽい神獣に、会ったことある気がするわ!

すごい!さすが師匠!歴史の当事者!滅茶苦茶有力情報だー!

ホントー!?いやあ、照れるなー!もっと褒めて褒めて褒めてー!

つまりエヌマは、鳥だったんスね!

それがエヌマだったかどうかはわかんない!

…………

……はぁ?

見た目だけ、フッっと頭に浮かんだんだけど、名前とかはもう、わかんないの!

…………

……どんな奴でした?<再誕>の力っての、本当に持ってたんです?

だから、わかんないってば!見た目だけ!トリっぽかったって、そんだけ!

ジュダのベースがソレなのかも、鳥系神獣がたくさんいるのかも、なんもわかんない!

…………

それ……何の役にも立たなくないスか……!

へ?

このアホ師匠がーーーー!!!どーせ思い出すんなら、もっと核心を思い出さんかーーー!!!

ガーン!悪くないのに怒られた!

う、うるさかったです……?もう、行きますから……

…………

…………

師匠のせいで怒られたじゃん!

いや怒られてはなかったよぉ!?


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story



えーと?こっちにもうー人……?

あ、あの部屋っぽくない?

そっスね。……あー、一回崩れたから、統領モード入れないと……

そんなモードあんのね。

……す~っ……ふ~っ……

――行くぞ。


……女の子……?

初めまして。ティナです。あなたも女の子でしょう?

あ、クロカです。まあ確かに。

精霊のアピスだ……?

……ん~~~~~~???

はい???

アピス、どうした?

いや、ちょっと……てか、呼び捨てなのね。

統領モード時は。

まだ待ってなきゃダメですか?

え?

……ファルファラさんに、聞いたんです。

ナーペルというエルフを知っていますか?

ええ。一度、会ったことがある。

そうなんですね。……あいつは、私にとって、敵なんです。

私のお母さんに悪さをしたり、子供をさらって、ファルファラさんを悲しませたり……

もしかすると、尻尾を掴めるかも、ってファルファラさんは言いました。

ファルファラさんは、他の現場が担当だそうで、一緒には来られませんでしたけど。それでも、私も――

みなさんに協力したいんです。ナーペルを見つけられる可能性があるなら。

だけど……あなた、戦闘はできるの?ずいぶん華奢に見えるけど?

大丈夫です。私には、母からもらった怪力と、父からもらった力がありますから。

――っ――!?

それに、こう見えても冒険家としての実績もそこそこ…………って……

どうしました?アピスさん?頭……痛いんですか……?

……いや、すまん。気にしないでくれ、なんでもないんだ。

それならいいですが……

……わかった、ティナちゃん。ちゃんでいい?年下みたいだし。

はい、全然!

ティナちゃん、よろしく。詳しいことは、また改めて……で、いいんスよね?

ああ。今夜、親睦を深めるための会食を準備している。

作戦の前に、まずはそこでお互いのことをよく知ってくれ。

そう。じゃあ、ティナちゃん、それまで――

会食っ♪楽しみだな~♪どんなご飯があるかなー!?

…………

…………

……あの……えーと……

……そ、そだちざかりなので……

あ……うん。たくさん食べるといいよ。



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story8 ズバっと



<その夜。行われた会食で、集まったメンバーは、自己紹介や、作戦に参加した経緯などを、説明し合った――>


――なるほど。把握した。

マジっスか。

マジだ。お前はクロカ。この島の長であり、<再誕>の力の半分を宿す者。

お前はアピス。精霊。記憶が定かではなく、あまりアテにならない。

おぉ……まあそうだけどさ……

オズマは法王だ。ソウル循環論、即ち白の法を司る立場にある。

アテル・ラナとははるか昔から縁があったようだな。

そう伝わってんだよね~。

オズマの付き人ジョニー。基本的に非戦闘員。移動や伝令のサポート係。

はい。戦闘は好きじゃありません。

帝国軍大佐ジュダ。

神獣に、世界の<我儘>と呼ばれる存在の因子を混ぜて作られた男。造ったのは道化師エピタフ。

……うぉっ……!

……もぐもぐ……

…………

……そうだ。そして今回、その因縁に終止符を打つ。

……ふぅ……

ティナちゃん。昔お母さんが、ナーペルの手で暴走させられたことがある。

ちゃん?

ルーグさんて、子供や動物が好きでこういう言葉づかいになるんです。

あ、それは気が合いそう。

……はい。だから、私の手で決着をつけたいんです。

そうか。できるといいな。

昆虫忍者のリンプイ。とある島の守り神だったが、いまでは普通の忍者。

りんりん!みんなが仲良くする世界のためにがんばって戦うの!

俺はルーグ。両腕が呪われているが、ジュダやティナちゃんの前ではたいしたことなく思えるな。

えっ、いや、それは、まあ……

そして、子猫ちゃんたちはいつの間にか行方が知れなくなってしまった、と。

あ、はい。キャトラさんたち、気づいたら、どこにもいなくて……

……どこ行っちゃったんだろ……?

いないものは仕方ない。だが、きっと無事だ。あいつらは、強い。

こちらの陣営には、そのほかにナップルなどもいる。手が空いたメンバーも帰ってくるかもしれないが。

現在の主な戦力はこれで以上。次は敵の話だ。

エピタフもナーペルも、現在、関与が確認されているわけではないが……

表に立ってないだけで、十中八九、関わってるだろーよ。

つまり俺たちのすべきことは――

ル=グインにそそのかされて敵側についてしまったシローとイズネの目を覚まさせてやり。

……ほんとにズバっと言うんスねこの人……

そうなんですよ。

その裏にいるであろうナーペルとエピタフを討つこと。

……だけじゃあ、ないですね。そして、<再誕>の力を――

ストップ。そっから先は、そんときになったら考えようぜ。

<再誕>の力うんぬんも、サニオとル=グインがどこまで真実言ってたかもわからねえわけだし。

……しかしよ、アピス。ル=グインが裏切るなんてあるかね……?

……わからん。長い付き合いだが、言われてみれば、奴のことは詳しく知ってはいないしな……

あいつの予言にゃ何度も助けられてきた。なんで見捨てなかった?

おっと悪い。あとで考えとくわ。今は楽しくメシを続けようぜ。

そうだな。

両腕が呪われている?

ああ。<禁呪>によって。

いつか全身を蝕むぞ。

だろうな。だがそのいつかを、永遠と近いほど遠ざけようと考えている。

ほう……

あっ!?

で、デザート……!生ハムメロンなの……!

……ん~……♪お~いし~の~♪

……わ、私もいただきます。

どぞどぞ。

クロちゃんは食べないの?

えっ!?あの……えーと……

……クロカでいいよ!

じゃあクロカ、一緒に生ハムメロンを食べようなの。

何があっても後悔しないように、今この瞬間を全力で楽しもうなの。

あ、案外ふけぇ……!



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story9 どんな気持ちで



…………

……割と、明るい。


ピラウとペルマナは帰ってこないし、シローもいなくなって……

だけど、こっちにも味方はいて。


やることは、戦うこと。戦闘は……血を昂らせて、ハイにする。

それが、動物の本能。

同じ縄張りにいられなくなったら。どちらかが、消えるしかない、……のだ。


…………


やることが定まって……体を動かすうちに、暗さは徐々に、どっか行く。

シロー……お前もそうなんか……?


……どんな気持ちで……

……故郷に刃を向けてんねん……?



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story10 宣言


…………

出発の準備は整っています。

目的地はリシュール島。ドミティア島にも防備を割いた上、残りの全戦力を投入します。

クロカさんたちには、基本、遊撃隊として自由に動いてもらおうかと。定番ですね。

それとも、ここで待つ、という選択肢もあるんですが、……どうしますか?

いや。私も出撃する。

ですよね。それでは――

――この作戦の総大将クロカさんから、ー言、お願いします。

いくぞ!

以上。

はやっ!?

長々しゃべるよりもよくね?

……今の子ってこういうカンジなんですねえ。

シンプルでいいじゃねえか。さっさと解散しようぜ。

ハイハイ。じゃあ、終わりでーす。



…………

クロカ。

はい、ルーグさん。なんでしょう?

よろしく頼む。

こちらこそ。

さっきの挨拶、簡潔で良かった。

……はぁ……

クロカさん。これ、目を通しておいてください。

オペレーションブック……?

伝令の方法や暗号、状況に応じた作戦の予備案など色々記載されてますから。

上陸までに暗記してください。

あんき!?マジっすか?

うちの上司なら5分ですけど。

……ぉぉぉぉぉ……!

だって、いきなりですよね?総大将とか。

思った以上に大変ですよ、人の上に立つってのは。

兵を死なせたくはないでしょ?よろしくお願いしますね。


…………

……こりゃ徹夜だわ……



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story11 伝え聞きしもの



…………

オズマさん。

お。ど~かした?

すれ違いばかりだったので。話したいと思ってました。

あ、やっぱり?いや~、弱っちゃうな~。今夜の予定空いてたっけな~?

…………

おっと。マジメなハナシ?

はい。教えてくれませんか?

法王として。オズマさんが知っていること。伝え聞いていたこと。

ん……オッケー。ただし、判断は自分でしろよ。

オレもオレで、全部を信じてるわけでもないんで、ね。

わかりました。

そもそも法王ってのは、<白の法>ってのがこの世にあることを、唱え続ける者のことだ。

白の法……生命は死ぬと、ソウルとして地に還り、循環ののちに生まれ変わる、ってやつでしたよね。

そ。それの何が大事かってえと、その考えに至るまで、人は。<死>ってのがなんなのか、よくわかんなかったらしい。

そんなことあります?

さあね。けど、実際タマにいるんだ。死ぬことを忘れて、寿命をぶっちぎっちまう奴ってのも。

それは例外としても……生物ってのは、自分の持ち時間に限りがあるからこそ、今日なにをするべきかを考えられる。

それはそうかもしれませんが。

んで、その<死生観>を、最初に人類に授けたのが、神獣サマだとかいうハナシ。

法王はその理論を借りてきて、声高に広めてるってワケ。

<白の法>の実態は、まあそんなところだな。

そこでも神獣か……実際、いたんですかね?

お前さんのご先祖様も、そのあたり関わってんだろ?

だそうですけど……ピンとはきてません。

その教えを授けてくれた神獣が、<再誕>の力ってのも持っていた、と?

そゆこと。だから、おたくの組織とオレら法王とは長~い付き合いってワケよ。

なるほど……そこに師匠は、どう関わってくるんですかね?

アピスか。なんか、法王側でも、ちょいちょい耳にする名前だったんだけどさ。

本人も記憶薄いし、まあいいんじゃね?そのあたりは。

他にやりようないですもんね。

そうそう。もう一個あったわ。

法王とアテル・ラナには。共通の敵がいるっぽい。

共通の敵?

コイツじゃね~かな~?って心当たりの奴は、いるんだけどさ。

なんですか?

どうもこう……イマイチしっくりこねえんだよなぁ。

しっくりこない???

なんか、正解の周りをぐるぐる回らされてるだけ、みたいな感覚つつうか……

はあ……?

聞きたいことには答えてあげられたかな?

まあ、はい。たぶん。

じゃオレからもいいか?

どうぞ。

<再誕>の力つつったか。それを発動させるには、二人の子孫がソウルをぶつけ合わねばならない……

はい。

そして勝者が力を手にし、力を行使するとソウルが尽き果て、地へと還る……

はい。

そんなモン、なんで納得した?

え?

ヤじゃね?

…………

それしか希望がなかったり、体に流れる血が、運命を受け入れたり、ってこともあるとは思うけどよ。

他の選択肢はなかったのかね?

……なんです?説教?

オズマさんの時代なら、ド根性でなんとかなったのかもしれませんが。

私たちの置かれた立場は、そんなに甘くなかったんです。

…………

……そうだな。オレは甘い。甘くなってきてんのよ。

弱音を吐かないで下さいよ。まだまだ現役でしょう?

……弱音……?……吐いたか、オレが……?

…………

……おかしいな。

どうかしましたか?

……クロカ。

はい。

お前、元気か?

え!?なんスか急に、そんな抽象的な質問。

元気では……ないですよ。

…………

でも、誰も手加減なんかしてくれませんから。それが自然の掟です。

総大将ですしね。やりますよ。

……ん。

ありがとうございました、オズマさん。色々、スッキリした気がします。

では。


…………



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story12 違和感



……っ……!?

どうした。

……違っている……

違っている?

少し前に来たときと、雰囲気が違う……!

雰囲気だけじゃない、町の様子も明らかに違う。

……おそらく<再誕>の力だな。創り直す力が、この島一杯に影響を与えたのだろう。

即ち、この島全てが奴らの本拠地となったのだ。

なに。住民は?

わからん。そうとは知らず、手先となってしまっているかもな。

そうとは知らず?

疑問を抱かせない。そういう風に創り直せる力だと。

敵が言っていた、不確かな情報ではありますが。

少し難しい話だ。救える者は救いたいが、犠牲も生まれるだろう。

仕様のないことだ。……この島には、英雄たちの嘆きが木霊している――

宿命から解放されるのは、容易なことではないだろう。

――気をつけてください!

おやおや、早速歓迎会ってかい。

ふん。魔物なんか、いくらきたって怖くないぞ!

迎撃するぞ。

おいき、チョウスケ、チョウサク!あたりに伏兵がいないか、探ってくるの!

……この魔物たちって……

いや、全てではない。

でも、群れのリーダーとかは……?

…………

……迷ってはいられない。私たちが止めなければならないんだから。

……だけど……

…………

ティナちゃん……気持ちはわかるけど……

……仕方、ないんですよね……

やりたいわけではありませんが……

……猶予もない。

……っ~~~……

……わかりました。この細腕で――

理不尽な悲しみごとまとめて――ぶっ飛ばす――!




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