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【黒ウィズ】リュオン編(GP2020)Story

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最終更新者:にゃん

リュオン・テラム(cv.小野友樹)
最強の審判獣ネメシスと契約した聖域を守る執行騎士。
戒律を破るものには容赦なく刑を下す厳しさを持ちながら、
同じ騎士団の仲間や団長には、時折年相応の顔を見せる。
開催日:2020/08/31

目次


Story1 副団長就任!?

Story2 手を抜けない騎士たち

Story3 真心をこめて




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story1 副団長就任!?


「リュオン。いままで並の団員としてよく頑張ってくれた。

お前の頑張りに報いて副団長に任命する。がんばってくれ。

「よかったわねえ。これでお給料もあがるわね。

「いままで辛い思いをさせてすまなかった。リュオンの頑張りに、少しでも報いてやりたくて、俺頑張ったんだぜ。


「断る。

「ええ!?こんなにいい話を断る!?

「いまの境遇で良いって言うのかよ?

「副団長なんて聞こえはいいが、ようするにあんたの尻拭いだろ?ごめんだな。

「可愛げのない奴だ。あんなんだから、聖堂のおえらいさんたちに睨まれちまうんだよ。

「副団長になれば、リュオンも少しはここで動きやすくなるでしょうに……。

「あいつほど生き方が下手なやつ、見たことねえよ。

無愛想で可愛げがなく、聖域の民からも怖がられている。

「昔のあなたほどじゃないけどね。

「なんとかして、みんなから慕われる執行騎士に変えてやりてえんだけどなあ。

「いままで他人に優しくされたことないから、そういうのがわからないのよ。

「なんとかして副団長の件、承諾させたいが……。

「そうだ。お祝いしてあげましょうよ。副団長になったお祝い。

お祝いして断れない空気を作り出すのよ。

「そいつはいいが、どうやって祝ってやったもんかな。


 聖域には、小さな露店がいくつも並ぶ区画がある。

聖職者たちの子息や、下町の子どもたちは、よくここで遊んでいた。


「次は僕の手番だな?行くぞ。この「執行騎士団カード」で場にある敵のカードをすべて薙ぎ払う!

「そんなあああッ!あと1ターンあればこちらの勝ちだったのに!?

「ふっ。聖域のカードゲームマスターとは、僕のことだ。

これに懲りたら、二度と僕らの遊び場を荒らすんじゃない。わかったね?

「参りました……。

「さすが、シリス兄ちゃん!やってくれると思ったぜ!

「デッキの構築力。引きの強さ。どちらが欠けても、勝利の女神は微笑んでくれないのさ。

「さすが聖域カード四天王のひとりと言われるお人だ。言葉のひとつひとつに重みがあるぜ。

「他の3人と僕との差は、真剣味かな。人生に費やした時間の違いってやつ?

カードゲームは遊びじゃない。人生賭けなきや意味ないんだ。

「うおおおおっ、かっけえ!俺もシリス兄ちゃんみたいになりてえぜ!

「その真剣味とやらで、仕事の方にも精を出してくれると助かるんだがな。

「なぜここに!?

こ……こらー!子どもは、こんなところで遊んじゃダメだろ帰った帰った!

「またかよ……。はいはい。他人のふり。他人のふりっと。

「お疲れさまです。リュオンさん。巡回ですか?僕もちょうど不良少年たちを補導してましてね。

「そして、子どもに混ざって遊んでいたわけか?

「あ……。

「サボっていたことは、団長に報告させてもらう。

「また弱みを握られちゃいましたか……。いいですよ。団長に報告したいなら報告しても……。

ただ、僕にも面子というものがあります。弱みを握ってるのはあなただけじゃない。

ね?リュオンさん――

……いない。


 ***


「さあ、お嬢ちゃんたち買ってってくれ。

 聖域でも、甘いものは貴重品だった。

 しかし、ここ第ー聖堂の街には、菓子を売る店などが並んでいた。

「こいつをくれ。

「へえ、毎度って……ええ!?

「なんだ?俺の顔になにかついているか?

「いえいえ。ただ、これは女子どもの食べ物。執行騎士様のお口にあうかどうか……。

 指摘されてリュオンは、耳まで赤くなりそうな顔を慌てて逸らす。

「こ……これは、頼まれて買いに来たものだ。食べるのは、俺じゃない。

「そうでしたか。そりゃあ、失礼なことを申しました。

 お釣りと品物を受け取ると、リュオンは逃げるように立ち去った。


「やっぱりその格好のままじゃまずかったな。

「今度は、マグエル先輩が代わりに買ってきてくれ。

「おいこら。先輩をパシリに使おうってのか?いい度胸だなあ!?

「……部屋に戻るのが楽しみだ。

「まったく。お菓子ぐらいこそこそしないで堂々と食えばいいのによお。

「団長たちに見つかったら、なんて言われるか……

それに俺は、食べるのも好きだが、作る方も好きだ。

でも、そんなこと言えるわけない……。

「だからって、おいらのポケットに隠さなくてもいいじゃねえか。もう、入り切らないぜ。

「う、そうか……。

「副団長になる話、受けちまえよ。個室があてがわれるから、お菓子の隠し場所に困らないぜ?

「俺にはまだ副団長の資格はない。剣の腕も、騎士としての覚悟も、団長には及ばない。

「どうしてそー変なところで真面目なのかねぇ。


「ヘー。リュオンさんって、お菓子好きなんだ?

いい秘密握っちゃったなぁ。


 ***


「なに!?リュオンがお菓子を――!?

「え!?リュオンがお菓子を――!?

「僕らにコソコソかくれて食べてるようですよ。なんか、自分で作るのも好きだって言ってたなぁ。

「だったら、副団長就任祝いにケーキを作ってあげればいいのよ。

「きっと喜ぷだろうぜ。

「そんな単純な人かなぁ?

「ラーシャ、お前お菓子作れるか!?

全然!

シリスは!?

「作れるわけありませんよ。食べたことすらないんですから。

「だったらシリスに命じる。

お祝いのケーキの作り方を調べてこい。

「なんで僕が……。

「そしたら、仕事中サボってたこと不問にしてやろう。

「ちくしょう、もう報告済みかよ!?

わかりました!やりますよ……。


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story



 翌日から、ケーキ作りのための情報収集がはじまった。

「ケーキ?まあ食べたことはないけど……。お菓子屋に聞いた方が早いんじゃないですか?

「お菓子屋にも何件か聞いて回ったんですがね。

「すみませんね。執行騎士様のお役に立てなくて。

「僕も本当は、こんな仕事やりたくないんです。

「は?

「あ、いやいや。ご協力感謝いたします。


「ケーキ食べたことある人、全然いないじゃんか!

身分の高い聖職者たちなら、知ってるかもしれないけど……あいつらに知恵を借りるなんてゴメンだしな。

向こうの本屋には、まだ立ち寄ってなかったな。なにか情報があるかも――

……。って、僕はなんでこんな真剣になってるんだ!?リュオンさんのお祝いなんて知らないっての!

あんな堅物で融通の効かない人が、副団長だって?笑わせるなよ。

でもまあ、お祝いされると嬉しいしな……。

はあ……しょうがない。もう少し頑張ってやるか。


「ケーキには、まず土台となる生地が必要なんだと。

「あと必要なのはクリームという食材ね。なんでも牛から絞ったお乳と砂糖が必要なんだそうよ。

砂糖は高級品よ?お給料で足りる?

「任せとけ!可愛いリュオンのためなら、全財産失っても痛くねえぜ!

……と言いてえところだが、有り金はたいても足りなさそうだ。

「お買い得ですよ。

「甘く見てたぜ。ケーキってこんな金がかかるものなのか……。

「まったく。そうなるんじゃないかと思った。

「はいこれ。使って!

「お前、これ……。私も同じ気持ちよ。だから、サザだけに苦労させないわ。

「いいのか?本当に使っちまうぞ?

「遠慮しないで使いなさいよ。

「ラーシャお前……いい女だな?

「は?なによ、こういう時ばっかり。調子がいいんだから!もう!

「首締めるんじゃねえ……っ!


「なるほど……。今度の休日には、こいつを作ってみるか。

「今度は、なにを作るつもりだ?

「シュークリームというものがあるらしい。生地がふんわりとしたパイのようなものだ。

ちょうど団長の就任記念日が近い。今年は、シュークリームに挑戦してみるか。

「そうやって毎年、贈り物しているけどよぉ。

どうしていつも渡す時に、街で買ったものだと嘘つくんだよ?


「これは、街で買ってきたものだが、少し余った。食べるか?食べるなら受け取れ。

「……お、おお。

いいのかよ?こんな高級そうなお菓子もらって。

「気にするな。巡回中に街の住人から差し入れとして受け取ったものだ。俺ひとりじゃ食べ切れない。

「あれ?さっき買ってきたって言わなかった?

「……言ってない。聞き間違いだ。

甘いものはいい……疲れがきっと取れる。とにかく渡したからな?


「いったいなにがしたいんだよ?

「団長のひとことで救われたことがある。いまの俺があるのは、あの人のお陰だ。


 ***


 最初にサザと出会った時、リュオンはまだ右も左もわからない新米騎士だった。

 あの時から、そう時間は経っていないはずなのに、思い出すと懐かしい気持ちになる。

「てめえか?ネメシスと契約したっていう大馬鹿野郎は?

「団長とやらはあんたか?

「質問を質問で返すんじぇねえ。まずは、俺の質問に答えな。

「相当無茶をする男だと聞いている。

俺を戦場で死なせてくれるのは、あんたしかいないだろう。

「お前、戦場で死にたいのか?

「執行騎士になるための試験で、多くの仲間を手に掛けた。

どうして、俺だけのうのうと生きていられる?

「罪の意識って奴か……。くだらねえ。そんなもの抱えてても腹の足しにならねえぜ?

「生意気な新入りに、礼儀を教え込むのも団長の務め……そうだろ?

「痛い目にあいたいなら遠慮はしねえが……。お前、相当バカだな?

「私が相手になります。団長殿は、お下がりください。

「面白いことになってきたな。

「こいつ……笑ってやがる。


「ひいいいっ、ま……まいった!

「やっぱりこうなったか。

口だけじゃねえようだ。いい剣だった。

「どうも……。

「でも、死に急いでる奴の剣だ。俺の敵じゃねえ。

「そう思うなら遠慮せずに斬ればいい。

もっとも、いままで向かってきた奴らは、全員俺にひざまずくことになったがな。

「おうおう、自信たっぷりだなあ。若いって羨ましいねえ。

今度は俺が相手だ。小細工はしねえ。遠慮なくかかってきな。

 やる気のないサザの態度を見て、本気で戦う気がないのだとリュオンは思った。

 だからといって手を抜くつもりはなかった。容赦なく打ちかかっていった。

 だが、地面に脆いていたのは、リュオンの方だった。

「どうしたさっきの勢いは!?

「くっ……。

「死にたがりの相手なんざ、赤子の手を捻るよりも簡単だ。

気持ちだけで相手を斬れるほど、戦場は楽なところじゃないんだよ。

 力の抜けた構えから繰り出される捉えどころのない剣さばき。

 なによりも強かった。いままでない強さだとリュオンは感じた。

「なぜだ……っ!?

「怒りに任せて振るう剣じゃ、俺には届かねえよ?

「そういうあんたは、なにを思って剣を振っている?地位か?金か?

「うーん、そんな難しいこと考えたことねえな。

単純な問題を難しく考えてるから、お前は弱いんだよ。

「意味がわからん……。

「ま、活きの良さだけは認めてやるぜ。ただ、怒りを糧にするのはやめろ。

どうせなら、もっと楽しいことを考えて生きようぜ?楽しくないこと考えても、楽しくねえしな。

「それが執行騎士団長の言うことか?

……あんたみたいな人、初めてだ。

 それまで俺が出会った人は、執行騎士の俺を利用しようとするやっか、陰険な策謀を張り巡らせる奴ばかりだった。

 執行騎士団長という立場にありながら、底が見えないこのサザという男に興味が湧いた。

 同時に、もっとこの男を知りたいと思うようになった。



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「これで準備できたな。

「自分で作ったものをそうやって市販の包み紙で偽装することになんの意味があるんだよ?

「……。

「ひえっ!?

わかったよぉ。もう言わねえよぉ。

「執行騎士リュオンだな?

 聖堂の聖職者が近寄ってくるのは、よくないことが起きる前触れ。

 とっさに身構えるも、代わりに差し出されたのは、ー枚の封書だった。

「招待状?いったい誰からだ?

「詳しいことは知らん。私は、渡してくれと頼まれただけだ。

「こいつは警戒した方がいいかもな。聖堂が俺を罰するつもりならば好きにすればいい。

 聖堂の聖職者――特にあの大教主には、恨みがある。

 騎士団昇進試験のときに、血も涙もなく候補生同士で殺し合いをさせられた恨みだ。

「きっとなるようになる。そんな顔をするな。

「うん……。

 書状で指定された部屋の前に立つ。リュオンはー度深呼吸する。

 静かにドアを開き、部屋の中に足を踏み入れた。


「あー!また崩れた!?

どうして上手くできないのよぉ!?

「お前が絶望的に不器用すぎるんだよ!貸してみろ、やっぱり俺がやる!

「もう、リュオンさん来ちゃいますよ?

 机の上には、見るも無残な形に崩れたケーキが置いてあった。

 サザやラーシャが慌てて形を整えようとしているのだが、手を出すたびにケーキは形を変容させていく。

「これは……。

「やべっ!?もう来てる!?

「あーあ。崩れたケーキじゃ台無しですね。ドッキリお祝い失敗です。

「まったく、団長までー緒になってなにやってんだよ?ドキドキさせやがって!

「出直した方がいいようだ。

「ごめんねリュオン。あなたに喜んで欲しかったの。

「僕たちのケーキを作る腕が足りませんでした。ただ、それだけです。

「まあ、見た目は悪いが、食えないこともない!リュオン、副団長就任おめでとう。

「その話は断ると言ったはずだが?

「どうしてそこまで嫌がる?

「団長のお世話を押し付けるようで心苦しいですが……。適任だと思いますよ。

「だらしない団長を支えてあげてよ。

「俺は、まだ聖堂への怒りを糧にしている。そんな人間に副団長など務まらない。

「いや、逆だ。そんなお前だからこそ、副団長をやってはしいんだ。

この組織が気に入らないなら、偉くなってお前の手で変えろ。そのための好機だと思えばいい。

「……そんなこと、できるのか?

「偉そうにしている聖職者たちは、みんな俺たちが守ってやっているんだ。やろうと思えばできるはずだ。

奴らが道に外れた行いを繰り返し、目に余る場合は――俺も剣の行方を決めるかもしれねえ。

「あんたらしい考えだ。

「じゃあ、決まりだな。リュオンはこれから副団長になる。

「受けてくれるな?

 まだリュオンが返事をしないうちに――

「副団長就任おめでとう!

「これからはリュオン副団長ですね!?

「う……。

「そーれ、リュオン!リュオン!

「「リュオン!リュオン!

「うるさい!副団長になってやるから、少し黙れ!

「そしてこれが、副団長から、団長への就任記念日のお祝いだぜ!

「こら、勝手に渡すな。

「そういや去年ももらったな?

「露店で買ったものだ。なんていう名前の菓子なのか……知らん。

「リュオンが団長のために作ったんだぜ。名前は確か……シュークリーム?

「言うな!

「ほう、リュオンさんがねえ……。

「なんだその目は?

「見た目はすごくきれい。でも問題は味よね。リュオンの作る料理は、みんな昧が変だから。

「副団長のリュオンに最初の命令だ。

お前のお菓子作りの腕を見込んでこのケーキを完成させることを命じる!

「なんで俺が!?

「もちろん僕たちのためだけじゃありません。完成したら、下町の子どもたちにも食べさせる予定だったんです。

「副団長ともなったら街の人たちに慕われなきゃね。

「そういうことなら、もっと真剣味をもって作れ。これでは、せっかくの高級食材が台無しだ。

「ということは?

「俺がやろう。なんとか形にしてみせる。


 ***


「よし。土台は完成した。あとはデコレーションだ。

子どもたちが食べるなら、見た目も華やかな方がいいだろう。

うん……これなら、きっと喜んでくれるはずだ。

「優秀な副団長を持てて俺は幸せものだよ。

「完全に夢中になってますね。

「お菓子作りになるとリュオンは、子どもみたいに目を輝かせるのね。意外だったわ。

「たとえば、こんな飾りなんか似合うんじゃないか?ほら、きれいになった。

「うわー。とうとうケーキに話しかけるようになりましたよ。

「夢中になってる間だけは、恨みとか大教主のこととか、忘れられるんだろうな。

「いい感じにできたな。きっと子どもたちも喜んでくれるはずだ。

「ま、本人がー番楽しんでるようだからいいんじゃない?

「元々リュオンを祝うためのケーキだったしな。

「それにしても、今日からリュオンさんを見る目が変わりそうです。

「今日のあいつは、特別だ。そう思ってやろうぜ。

「可愛くできたな……。きっと満足してくれるはず。さて、味見を――

どうしてみんな逃げるんだ?




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