【白猫】Brave The Lion Story
その雄々しき剣士の強さを、
キミはどこまで引き出せるのか――!
2014年10月24日
目次
登場人物
story1 魔刃の咆哮、鳴り響く!
ここね!魔物が大量発生してる森っていうのは!
早く退治して、平和にしないと……行きましょう、主人公!
<うなずいた、その瞬間――>
――はあッ!
<突如として現れた青年が、気合も鋭く剣をー閃――ほとばしる魔力の刃が、キャトラの背後で咋裂する!>
ひぃーーーーっ!??な、ななななな、なにごとぉ~!?
<身をすくませるキャトラ。後ろで、魔刃の直撃を受けた!体の魔物が、力なく倒れ伏す。>
魔物――!忍び寄ってきていたの……
悪い、驚かせちまったな。とっさだったもんで、声かける余裕がなくってさ。
あ、うん……助けてくれて、ありがとね。派手なおにーさん。
<派手なおにーさん>じゃ、ちょいと締まらねえな。ダグラスって呼んでくれ。
んで――ひょっとして、あんたたちも魔物退治を引き受けたクチ?
はい。じゃあ、あなたもなんですね。
ちぃっとばかし、荒事の類が得意でね。飯のタネってわけ。
ちょっとどころじゃないじゃ~ん!すごかったわよ、さっきの技。よく、あんなことできるわね~!
<できちまう>もんでね。いちおう、<魔剣士ダグラス>で通ってる。
それより――あんたら、よけりゃあ共同戦線といかないか?
ちょいと急ぎたい事情があってな。この森にや、古い孤児院があるらしいんだ。
孤児院……ですか?そういう話は聞いてなかったですけど……
もう使われてないって話だからな。ただ、まだ住んでる人がいる、とも聞いてる……
早いトコ助けに行くには、力を合わせた方がいいと思うんだ。
わかりました。いっしょに行きましょう、ダグラスさん!
ああ。よろしく頼むぜ!
story2 魔物はびこる森の深きへ
……こっちだな。
<ダグラスの左目が、かすかに輝く。すると彼は、迷うそぶりもなく、森の分かれ道を進んでいく――>
すご~い、なんでわかるの?
ちょっとした特異体質さ。オレは、どうにも魔力やソウルに敏感らしくてね。
<早足で先に進みながら、ダグラスは語る。>
場に残ったソウルを読み取ったり、誰かの気配を察したり……そういうのが<できちまう>のさ。
そうなんですか……冒険家向きの体質ですね!
かもな。実際、それで食えてるし。
それに……冒険家って、いろんなヤツがいるだろ。だから、こんな目や髪の色でも目立たなくってさ。
え、その髪、地毛だったの?
地毛、地毛。地毛でこの色。染めようが落とそうが、すぐこうなっちまうんだ。
それも、特異体質の影響……なんですか?
なんだろうな、たぶん。おかげで、こう……遊び人に見られるのが悩みでね。
確かに、パッと見、チャラそうだもんね~。
まあでも、冒険家だったら、変なヤツも大勢いるから、悪目立ちしなさそうね。
だったら、ダグラスさん、私たちの島に来ませんか?空を飛ぶ島なんですけど――
島が……飛んでる?マジか?
マジマジ~。飛行島って言ってね。変なヤツらが目白押しよ!アンタなんてフツーに見えるわ!
ヘえ……そいつはいいや。面白そうだな……今度、寄らせてもらうぜ。
<そのとき、がさり、と音がした――木陰から、魔物たちが姿を現したのだ。
それを目にして、ダグラスは、獅子が牙をむくように笑う。>
ただしこの森の魔物どもを、きっちり締め上げてから……な!
story3 泥に咲く花、ただ一輪
さあて……どうやら、こっちの方角に誰かのソウルが――
……!
はぁっ……、はぁっ……
<武器を手にしたエルフの女性が、木の幹にもたれかかり、荒い吐息を繰り返している……!>
だいじょうぶですか!?
??? |
---|
あなた、たちは……
魔物退治に来た冒険家よ!アンタは――
私は、クロエ。この森の孤児院の者よ。
突然、多くの魔物を率いた。巨大な魔獣が現れて……私では、多勢に無勢で……
そりゃそうだ。がんばりすぎだぜ、姉ちゃんよ。
魔物退治はオレが引き受ける。主人公たちは、この人を連れて森の外へ――
そういうわけにはいかないわ……!ここは、私の森だもの……私が、守らなきゃ……
気持ちはわかるけど――
……しょうがねえな。
へっ?いいの、ダグラス?そんなあっさり――
言っても無駄だろ。顔見りゃわかるこりゃ、死ぬほどガンコなタイプだぜ。
ただし、前には出させねえ。あんたが戦うのは、本当にどうしょうもないときだけだ。いいな?姉ちゃん。
……わかったわ。ありがとう――
story4 あせぬ想いのあるゆえに
クロエさん、この森の孤児院はもう使われていないと聞いたんですけど――
五十年くらい前かしらね……魔物が森をうろつくようになって、危険だから院を閉めたの。
五十年前!?あ、そっか。クロエ、エルフなのよね。
そのとき孤児院にいた子供たちは、ちゃんと、どこかに引き取ってもらえたのかい?
ええ。幸い、近くの街に新しい孤児院が建てられたから、そちらに移ってもらったの。
……そりゃよかった。でも、じゃあなんで、あんたは森に住み続けてるんだ?
私はもともと、この森に住んでいたエルフなの。孤児院を始めたのは、森に捨てられる子が多かったからでね……
森に、捨てられる……ですか?そんなことが――
口減らし、ってヤツだろ。今はそうでもないけど、昔、この島じゃ、ひどい飢饉が続いててな……子供を養えない家も多かったんだ。
そうね……その通りだったわ。親に捨てられてしまった子たち……でも、みんなとてもいい子だった。
この森には、あの子たちとの思い出が、たくさんあるの。だから、ここを出てはゆけない――
外の世界にや面白いもんがたくさんあるんだ。魔物も増えてることだし移住を考えた方がいいと思うぜ。
ありがとう、ダグラス。でも……私はやっぱり、この森に骨を埋めるわ。
けどよ――
百年ほど前……
この地の貴族に、森からの立ち退きを要求されたことがあったの。
でも、そのとき……孤児院にいたミーチャって子が、貴族を説得してくれた……
子供が?どうやって?
それが、わからないの。
でも結果として――その子が貴族に引き取られる代わりに、立ち退きの要求は撤回されたわ。
だから……ミーチャが守ってくれた孤児院が、ここにあるから……私は、ここを離れられないの――
story5 泥にまみれても、なおも獅子
デ、デカいの出たぁーっ!!あれが魔物を率いてるっていう魔獣!?
<毒々しくも禍々しい瘴気を全身から放つ魔獣が、じりじりと近づいてくる……>
なんて濃い瘴気なの……!
ヤツは、あの瘴気を防壁として、攻撃を防いでしまうのよ……
なるほどな。だが、どうやら瘴気の濃さにはムラがありそうだ。薄いところを探して狙えば……
――私がオトリになるわ。ヤツを引きつけるから、そのスキに弱点を探して!
だめです、クロエさん!危険すぎます!
覚悟の上よ。この森を……ミーチャの思いを、守るためだもの……!
……ホント、ガンコな姉ちゃんだ。
それであんたが死んだら――それこそ、そいつは泣くだろうよ!
<言って、前に出るダグラス。その左目が激しい魔力の光を放つ!>
――うぉおおおおおおおおッ!!
<ダグラスが凄絶な咆時を上げると、魔獣の瘴気が竜巻のごとくうなり、彼の左目へと吸い込まれていく!
それに呼応するように、獅子のタテガミにも似た長髪が虹色に輝き、ぞわりとうごめく――
やがて――すべての瘴気を吸って、ダグラスは、ぐらりとよろめいた。>
ちょ、ちょっと!アンタ――だいじょうぶなの!?
平気……さ!オレは、特異……体質だって、言った……ろ!
だからって、そんな――あんなの、人が耐えられるものじゃ――
<できちまう>のさ……オレには……な!
……!
これで、瘴気もクソもねえ。あの野郎を、好きなだけぶっ叩ける――
行こうぜ、主人公!力の限りに――ぶちかましてやるッ!!
story6 泥にまみれて、なおも獅子
やったぁー!倒せたぁ~!!
リーダーがいなくなれば、あとは残った魔物を各個撃破するだけだ。ま、なんとでもならぁな。
ありがとう、みなさん……本当に、助かったわ。
礼はいいさ。こちとら、コレが仕事なんだから。
ダグラスさん……本当に、だいじょうぶですか?瘴気の影響は――
ヘーき、ヘーき。どーってこたないって。
それより魔物はまだ残ってるんだ。手分けして片づけに行こうぜ。な?
***
ふう……こっちはこれでだいたい終わりだな。
そうみたいね。もう魔物はいなさそう……
……なあ、姉ちゃん。さっきも言ったけど、早いとこ、この森を出た方が――
ミーチャ。
――!
<できちまう>……あの口グセ――あなた……ミーチャなんでしょう?
……………………
覚えてたのかよ、姉ちゃん。百年前の話だってのにさ。
やっぱり――そうなのね。でも……その姿は――
オレ、昔から特異体質だったろ。ソウルとか、魔力とか……いろいろ見えたりしてさ。
だから、あのとき、貴族にそれをアピールしたのさ。そしたら、『何かに使えるかもしれん』ってことで、取り引きが成立してね。
そっからは、まあ……オレの体質を利用して、いろんな魔法の実験台にされて……
おかげで、いろんな特技が身についた。寿命とか髪とか、無駄に伸びちまったりもしたけど。
そう……なのね――
ごめんなさい、ミーチャ……私が、止められなかったから……あなたに……すべてを、背負わせて――しまって……
気にすんなって。<できちまう>からにゃ……やらなきゃ気がすまないんでね。
それに……オレ、これでよかったって思ってるくらいだぜ。
こうして……自分自身の力で、姉ちゃんに恩返し<できる>ようになったんだからな……
ミーチャ……
今のオレは、ダグラスさ。魔剣士ダグラス。そうなるって……決めたんだ。
わかったわ……
でも……それでもあなたは、この森の子よ。だから……
……ああ。また、来るよ。何度でも……必ず。
今のオレなら、それが<できる>。だから、また……な?
姉ちゃん――……
story7 おぞましき闇の侵略1
……あんたら!来てたのか!
ダグラスさん!じゃあ、やっぱり――
ああ。またぞろ、この森に魔物の群れが出たって聞いてな。急いで来たんだ。
この森、魔物をひきつけるような何かがあるのかしら……
わかんねえ。けど、今後も魔物が押し寄せる可能性はないとは言えねえな。
となると、やっぱり、クロエさんが心配ですね……
まったくだぜ。ったく、だから、とっとと森を出ろ、って言ったのに……!
ダグラスってば、クロエのことけっこう気にしてるよね~。ひょっとして、お熱ぅ~?
……キャトラって、たまにけっこう古い表現、使うよな……
そ、そんなことないもん!
おっと……魔物の気配だ行くぜ、主人公!!
……あれ?アタシ、はぐらかされた!?
story8 おぞましき闇の侵略2
ダグラスさん、クロエさんのソウルは感じられますか……?
いや……
どうにも、感覚がおかしい……鼻が利かねえっていうかーこの森、妙に<濃すぎる>……
……私も、気になってました。森全体に、不思議な力が働いているんです。
それも――闇や瘴気に近い、禍々しい力が……
くそっ――この森に、いったい何か起こってやがるんだ?
あっ、クロエの孤児院!
姉ちゃんは?いるか!?
んー……
いないみたい……外に出たのかな?
そうか……
しょうがねえ。手がかりがない以上手分けして探す方が早いはずだ。
オレはあっちの方角を探してみる!あんたらはそっちを頼むぜ!
ちょっと、ダグラス――
……行っちゃった。ホント、クロエのことになると、熱心っていうかなんていうか……
きっと心配なのよ。ダグラスさん、優しい人だから。
そんだけかなぁ~。
とにかく、私たちも探しましょう。
story9 穢れたまえ、壊れたまえ
どこだ――?クロエ姉ちゃんっ……!
……!あれは――
<森のなか、やや開けた空間――そこに、クロエの姿がある。
ぐったりとなって、闇の十字架に、ハリツケにされている……!>
姉ちゃんッ!
ミー……チャ――
??? |
---|
おやおや、遅い到着ですねェ。もう少しで、この方が<美しく>なってしまうところでしたよ。
!?何者だ……てめえッ!
あら、怖い。まあまあ、そう殺気立たないで……♪
ワタシはルエル・サクラリッジ。<愉快な道化の影芝居>――<シャッテンシュピール>がひとりにございます。
<告げるルエルの身体から、すさまじく濃厚な瘴気が吹き出し、そこから魔物が生まれていく……!>
この森に放ったかわいいわが子が消されましたのでねェ。何事かと思って、調査に来たんですよ。
ほら、わざわざ来て差し上げたのですから、ちゃんともてなしてくださいねェ?さあさあ。
ふざけやがって……
ギャハハハハハ!
そりゃそうです!道化ですから!ふざけることが仕事でしてねェ!いい仕事するでしょ~お?
さあさ、お立ち会い。このエルフの女性に、たぁ~っぷり瘴気を注いだら、どうなるか……♪
ッ……!させるかあッ!!
でもやっちゃぁ~う!ギャハハハハハ!止めたきゃ試してごらんなさあ~い……♪
story10 散らせよ獅子吼、雨も泥も
――かあッ!!
<ルエルの放つ瘴気を吸って、ダグラスは強力な魔刃を放つ。
ルエルはそれを軽やかにかわし、ニヤリと悪らつに微笑んだ――>
ふむ……やはり。アナタ、瘴気を吸わねば生きてはいけない身体のようですねェ。
……ッ!
ミーチャ……、そんな――
化転融合臨説外法とは……いやはや、禁忌の術じゃないですか。おかわいそうに……♪
せめて、存分にごちそうして差し上げましょう!
<ルエルの全身から、膨大な瘴気が放たれダグラスの左目に吸い込まれていく……!>
ぐ――ああぁあああああーっ!ああっ……ああーっ……!あああああああぁああーッ!!
ギャハハハハハハ!いい、いい、美しいですよ、そのお顔!
人はやはり、散りざまこそ美しい!もっといいカオ、見せてください……♪
ギャハハハハハハハハ!
***
クロエ、こっちにはいなさそうね……
ダグラスさんの向かった方角にいるかもしれないわ。私たちも、そっちに――
……きゃあっ!?
<巨体を誇る魔獣が両目をらんらんと輝かせて立ちふさがる……!>
もー!こんなヤツの相手してるヒマなんてないってのに!
主人公!ソッコーで倒して、ダグラスと合流しましょ!
最終話
ぐぉあああぁああああっ……あぐっ、うううっ、ああぁああッ!あ、が、うぁっ、あぐぁあぁあっ!
いいねいいねー、いいですねェ~♪どんどん壊れていってますよ……♪
ワタシねェ……好きなんですよ。確固たる秩序にもとづくモノが、ぼろっぼろのぐっちゃぐちゃにブッ壊れていくのを見るのがねェ!
まあ、アナタ、禁呪やら何やらで、そもそもけっこうぐちゃぐちゃなんですけどね……♪
それでもまっとうな人間がましくあがいている!そこがいい!
まったく、ぐちゃぐちゃにしがいがあるというもの……♪ギャハハハハ!
が、アあっ、ひっ、ひいいああっ、あぅああああぁああーッ……!
ミーチャ――ミーチャぁ……!
<苦しみもだえるダグラスの姿に、クロエが悲痛の涙をこぼす――
――その瞬間。
ダグラスの左目に――突如、ぎらりと苛烈な光がまたたいた!>
……その、人は……!
その人は……オレの姉ちゃんだ!大事でッ……大切なッ!たったひとりの、姉ちゃんだッ!!
それを――泣かせてッ!!
た だ で す む と お も う ん じゃ……ねぇぇええええーーーーッ!!
<瘴気がー気に吸われきる――ダグラスの髪が、虹色に輝く!
誇りある獅子の猛り立つように――ぞわりと震え、燃え上がる!>
……ッ!?なんだ、これは……貴様ー瘴気を、いったい何に換えた!
決まってんだろ――言わせんなッ!
<疾駆するダグラス――虹の光の宿る刃で、ルエルを狙う。ルエルは瘴気の障壁を展開するが、大さく後ろに吹き飛ばされる――>
お~い!ダグラス、クロエ~!
チ――魔獣ごときでは、足止めもできぬか。
クソめが――ああ、気分が悪い……こうも汚らしいものを見せられては!
<うめいた直後、ルエルは影に沈み、その姿を完全に消し去った……
クロエをハリツケにしていた闇も消え――ダグラスは、あわててクロエに駆け寄り、抱き止める。>
姉ちゃんッ!!
ミーチャ…………あなた――
黙ってて……ごめん。ホント、オレ……こんなこんなになっちまって……でも――
虹――
え……
あなたの見せてくれた虹……とても、きれいだったわ――ミーチャ……
<ダグラスの腕のなかで微笑んで――クロエは、青年の頬を、そっとやわらかくなでる。>
昔から、何も変わらない。あなたはいつだって、きれいなものを見せてくれる……何よりも、きれいな光を……
姉ちゃん……
姉ちゃん――オレ……オレさ……!!
<そんなふたりの上に――>
ね……主人公。見える?あれ……
<小さな虹が、架かっていた。
ふたりを――ひとつ屋根の下に、守り置くように……>
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序章 バトルプレリュード