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【白猫】ホワイトビターアラカルト2020 Story

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最終更新者:にゃん

ホワイトビターアラカルト2020

2020/03/14



目次


Story1 スイート・ヒアリング

Story2 医師と患者

Story3 スピードを合わせて

Story4 素敵な価値観



登場人物


 ウォルター・スズキ・十七世 cv.小西克幸
商社の島カンパニア出身、ネプチューンPLC営業本部第一戦争支援部チーフマネージャー。
 アゾート・ヘルメス cv.手塚ヒロミチ
あらゆる医術に通じた魔道医師。生と死の堺目を見るべくメスを振るう。
 アレン・ルロワ cv.内山昂輝
最強を志す剣士の少年。独自の移動術による超高速戦闘を得意とする。
 ファクティス・イギスドラム cv.寺島拓篤
神出鬼没で大胆不敵。他人の価値観を盗む伝説の怪盗。


story



「すっかり遅くなってしまいましたね……

今日は丸ー日付き合わせてしまい、本当に申し訳ございませんでした。」

「いえいえ。お疲れさまでした、社長。」

「はい、お疲れさまでした。」

「我が社の今後を左右する重要な商談でしたが――

終始、とてもスムーズに話を運ぶことができましたね。」

「手ごたえ、バッチリでしたね!」

「……これも、あなたがそばにいてくれたおかげです。」

「――えっ!?」

「場の呼吸の合間を縫って補足を挟むタイミング……不測の質問に対する柔軟かつ適切なリカバー……!

どれをとってもパーフェクトでした!

今回の商談のサポートにあなたをアサインして、本当によかった!」

「――なんだ、びっくりした……」

「……?どうかされましたか?」

「いいえ、なんでも。」

「ふふ、そうですか。

さて、もう夜も遅いです。帰りましょうか――」

「……はい。」

「と、思ったのですが。」

「……?」

「どうかあと少しだけ、お付き合いいただけませんか?

是非、あなたにお願いしたいことがあるのです。」


…………

社長の社長の家まで、来たけれど――


「お待たせいたしました。

実はあなたに……これを食べていただきたいのです。」

「……チョコレート?」

「はい。手作りですので、少し不格好かもしれませんが……」

「どうして、いきなり――……あ、もしかして!」

「はい。今はホワイトデーの時期でしょう?

先月のバレンタインでは、女性社員のみな様に美味しいチョコレートをごちそうになりましたから。

せめてものお礼にと、ご用意させていただきました。

「これ、もしかして手作りです……?」

「はい。今年は、家族とー緒に手作りチョコにトライしてみようと思いまして……

クオリティを鑑みれば、市販品に敵うべくもないことは承知の上だったのですが……

手作りの方が、気持ちがこもる気がしまして。」

「…………」

「それで、ですね……お恥ずかしい話なのですが……

甘いもの好きだと噂のあなたに、是非フィードバックをいただけたらな、と……」

「……!」

「突然、申し訳ございません。こうして手作りにトライする以上、みな様全員に喜んでいただけるモアベターな結果を目指したくて。

……やはり、その、ご迷惑でしたでしょうか?」

「そんなことありません……!

……では、いただきます。」

「…………

……いかがでしょうか?」

「――っ!美味しいです、とても!」

「本当ですか!?それは良かったです……!

では、こちらでFIXで!ふぅ、肩の荷が下りた気分です……」

「……ちぇっ。」

「え?あの……どうかされましたか?」

「なんだか少し、損した気分です。

私も社員なのに……私ひとりだけ、味見役なんて。」

「は、も、申し訳ございません……!決して、あなたを軽んじていたわけではないのです……!」

「本当ですか~?」

「もちろん、明日にはきちんとラッピングしたものをお贈りします!ええと、それにですね……」

「……?」

「……今のー粒は、私ー人だけで、最初に作ったチョコなんです。

ですからその、おそらくは……ー番、想いがこもっていると申しますか……」

「それじゃあ私だけ、ちょっぴり特別ですね!」

「今日のお礼代わり――と言っては、あまりにおこがましいですが……」

「いいえ。嬉しいです。

……社長でも、こうやってあわてることがあるんですね。」

「……それは、もちろんですよ。

私はまだまだ未熟な身です。経営者としても、人間としても。

それでも……こうして日々大きな問題なくやってこられているのは――

心から信頼することのできる仲間がいてくれるからこそです。」

「……社長。」

「私は、みな様のことを――

もちろん、あなたのことも――

――家族のように、大切に想っております。」

「……!」

「ですから、どうかこれからも私を支えていただけませんか?」

「……はい。もちろんです。」

「ふふ、ありがとうございます。

遅くなってしまいましたね。ご自宅までお送りさせていただきます。

さあ、お手を。」





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「――う……」

「目が覚めたかね。」

「――ここは?それに、わたしは……」

「私が借りている宿だ。私の部屋の前で、君が倒れているのに先ほど気がついてね。

勝手ながらベッドに運ばせてもらった。」

「そういえば、あなたを訪ねて、意識がもうろうとして……」

「安心したまえ。ただの貧血だよ。

せっかくの機会だ。

ベッドに座ってこちらを向きたまえ。簡単な問診を行う。」

「え?でも……」

「……ふむ。体重が落ちているな。血色もあまり良くない。

貧血の主な原因となるのは、血中の鉄分の不足によるものだ。

体調が万全でない状態での食事制限は、医師としておすすめしないな。」

「あの、わかりましたから……あんまり見られると……」

「心拍数の増大を確認。発汗と紅潮も見られる。

体温も上昇しているようだが……なんでもありません!」

「……君は病み上がりだ。油断はしないように。

それで、今日は?私に何か用事があって訪ねてきたのだろう。」

「――あなたが今日、この島を出ていってしまうと聞いて。」

「その通りだ。この島に巣食っていた疫病はすでに根絶した。

ここでの私の役目は、終わりだ。」

「でも、もう少しだけ、ゆっくりしていっても……」

「私は医師だ。

病に抗う者たちが待つ限り。定められた死の運命に満ちた地獄が存在する限り――

私はその地獄を、蹂躙せねばならない。」

「…………」

「……なぜそんな顔をする。

ああ、そうだ。実は、島を発つ前に、君にこれを渡そうと思っていた。」

「……チョコレート?

……これって、もしかして……」

「チョコレートには鉄分が多く含まれる。

貧血の予防には非常に効果的だ。」

「――あ、そうですか。アリガトウゴザイマス。」

「…………

推測ではあるが。君は今、機嫌を損ねている。」

「知りません……!」

「…………

そのチョコレートは、医師としての立場から君に勧めたものだが――

同時に――私個人の気持ちでもある。」

「……え?」

「先月。君は私にチョコレートをくれただろう。

あれは本当に助かった。私の体には、自動的に栄養が補給され続ける仕組みになっているが――

その栄養剤を重症患者の輸液として使用したため、ちょうど切らしたタイミングだった。

あの土壇場で糖分を補給できたおかげで、集中力を切らすことなく治療に専念できた。

治療を完遂できたのは、君のおかげだ。」

「……それだけですか?

……仕事の役に立ったから。……それだけ、ですか……?」

「いいや。

君のくれたチョコレートは、とても美味しかった。」

「……!」

「だから、感謝を伝えぬまま島を発つのは、君に対して不義理だと思った。

昨日、菓子屋の店主に相談して、年頃のお嬢さんが喜ぶ品を選んだつもりなのだが――

あいにく世事には疎いものでね。何か不手際があるかもしれない。

それでも。もしも君が喜んでくれるのなら、私は嬉しく思う。

受け取ってほしい。」

「――ありがとうございます。」

「礼は不要だ。君の施しに応えただけ――」

「――私を助けてくれて、本当に、ありがとう。」

「……!」

「――いつかまた、会えますか?」

「死がある場所には必ず戦いがある。私自身が倒れる日も、いつか訪れるかもしれない。

あるいは君自身、他の病やその他、外的要因によってあっけなく命を落とす可能性もある。

命とはそういうものだ。だから約束はできない。」

「そう、ですか……」

「だが、それでも――私は生きることの苦しみを享受し、それを愛おしいと感じている。

そして君も、死の淵に瀕しながら、その苦痛と恐怖に打ち克ち、死神の誘いをはねのけた。

私たちはそれぞれ、死の定めと向き合い、そして――それに抗って生きると決めた者同士だ。

生きている限り、いずれ再会する日も来るのかもしれないな。」

「――じゃあ、約束してください。」

「……履行を保証できない約束など、本来したくはないのだがね。

だが、約束する。――また会おう。

こうでも言わなければ……君はこの手を、いつまでも離してくれなさそうだ。」




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「少し早く着いちゃった。待ち合わせまで時間あるなぁ。」

「ケケケケ!」

「お姉ちゃん、ひとりで何してるんだよ。」

「可愛いじゃん。暇だったら俺たちと遊ばねーか?」

「待て。屁皿薄汚い手でそいつに触るな。

「誰だお前。何か関係あるのかよ。」

「俺の女だ。文句あるか?」

「おい、この人……アレンさんだ!」

「し、失礼しました!」

「……大丈夫か?」

「う、うん!助けてくれてありがとう。」

「ひとりにしてすまない。」

「気にしないで!俺の女はびっくりしたけど……」

「……説明が面倒だったからな。――気にするな。

「う、うん。」

「とにかく、何もなくてよかった。じゃあ行くぞ。ついて来い。」

「どこへ行くの?」

「ついて来ればわかるさ。」

「アレンくん、足が速いからなぁ。」

「今日はお前に合わせて歩く。それくらい、俺にもできるよ。」


…………

……


「ここだ。」

「わぁ……星がとても綺麗だね。」

「シートを用意した。ここに寝転がってみろ。」

「ふふ、準備がいいね。ありがとう。」

「上を見てみろ。」

「……すごい!」

「宝石箱をひっくり返したような空だろう?ここは、いい場所だ。」

「近くにこんな場所があるなんて、知らなかった。」

「俺も偶然見つけた。誰かを連れてきたのは今日が初めてだ。

最初に見せたかった。」

「ありがとう。

でもアレンくんがこんなことしてくれるなんて、意外だな。」

「……お礼だ。」

「?」

「チョコをくれただろう。

……あまり人と関わりのある生活をしてこなかった。

ああいうものをもらうのは、初めてだったから――

嬉しかったよ。ありがとう。」

「いいえ、こちらこそ。」

「あと、これだ。」

「……いい香り。これ、ココア?」

「そうだ。ヴェルガ産のチョコレートを使っているらしい。

流行りだそうだ。」

「ふふ、温かくて美味しいよ。」

「そうでなくては困る。」

「あはは、そうだね。」

「…………」

「どうしたの?」

「俺なりに考えたつもりだが、血これくらいしか思いつかなくてな。」

「ううん。真剣に考えてくれたことが、とっても嬉しいよ。」

「恥ずかしげもなく、よく言えるな。」

「今日のアレンくんも素直だと思うけど……」

「……今日だけだ。

笑うな!まったく、調子が狂う!

ふっ……だが、まぁ……

今日だけだ。今日だけはお前のペースに合わせてやるさ。





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「お嬢様、起きてらっしゃったんですね。」

「あなたこそ、どうしたの?こんな時間に……」

「いえ、今宵は月がキレイだなと思いまして。」

「あなた、変よ……?まさか……!」

「俺の名は怪盗ファクティス。

予告通り、あなたを頂きに参上した。」

「あ、あ……」

「会うのは久しぶりか。」

「誰か――」

「しー。静かに。」

「狙いはなに?お金?」

「金などに興味はない。興味があるのはあなたの――

――邪魔が入った。場所を移す。

しっかり掴まってろ。舌を噛むぞ。」

「え?ちょっと……

コラ、放しなさいよ!」

「いいのか?地上に真っ逆さまだぞ。」

「やっぱり放しちゃダメ。」

「フッ……」

「で、どこに連れていく気?」

「着いてからのお楽しみだ。」


…………

……


「わー、キレイな夜景……

じゃなくて、なんでこんなところに?」

「俺はただ、あなたに喜んでほしかっただけだ。

屋敷に閉じ込められて、窮屈な生活を強いられているあなたにな。」

「どうしてそれを?」

「そんなことはどうでもいい。

それより、今を楽しむべきじゃないのか?

この瞬間だけは誰にも盗めない、特別な時間だからな。」

「キザね……」

「こういうのもか?」

「氷の……花……?」

「俺からのプレゼントだ。受け取ってくれ。」

「う、うん……」

「気に入ってくれたか?」

「ま、まあ……キレイかも……」

「よく似合ってる。」

「へ、へえ……ありがと……」

「なに?聞こえないぞ。」

「ちょ、顔近い!」

「……フッ、冗談だ。」

「もお……」

「……少しは気が晴れたか?」

「うん、まあ……」

「それはよかった。

……さて、そろそろ帰る時間だ。

今宵はずいぶん楽しめたよ。目的のものも頂戴したしな。」

「目的のもの……?」

「俺は価値観を盗む怪盗だ。

あなたの変わる姿が見れてよかった。」

「なにそれ?」

「チョコレートのお返しというやつだ。

覚えてないかもしれないがな。」

「えっ……?」

「いいから帰るぞ。家まで送ってやる。」

「いいけど。そんなことしたら、捕まるんじゃ……?」

「そんなヘマはしない。それに、捕まりなんかしたら……

もう二度と、あなたに会うことができないだろ?」







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