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【白猫】サワワ・思い出

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最終更新者:にゃん

サワワ・カゼノカミ cv.伊藤かな恵
立派な風神を目指す風神見習いの少女。
教本の<風神の巻物>をいつも手放さない。
2015/06/26


思い出1



<見慣れない衣装の少女が、巻物を広げてブツブツ言っている。>

「ええと、人探しの項目から逆引きで検索して……あった!

<上昇気流の術>。まず、風を吹き上げて空の高いところに上ることで……」

なーに、それ?なにが書いてあるの?

ひゃあっ!? あ、あなたたちは?

あらあら、読むのに集中してアタシたちに気づかないなんてね。

こんにちは、私はアイリス。こっちはキャトラと主人公です。

失礼いたしました。私は、サワワと申します。<風神見習い>をしています。

<風神見習い>?もしかして、その巻物は風の力を使うための?

はい、そうです。<風神の巻物>といいます。

へえー、なんだか面白そう!ねえ、なにかやってみてよ。

え?いえ、たわむれに力を使うわけには……

いいじゃない、減るもんじゃないでしょ?

ですが……

ねえねえ、ちょっとでいいから見せてよ。サワワ、お願い!

いえ、でも……

少しだけでいいから!ピューッと風吹かせてみてよ。

……わかりました。きっと、これも修行……ですよね。

やった♪わくわく……

では、参ります。

<サワワは、不思議な印を結び始める。>

ヒュー・ピュー・ゴウ、ヒュー・ピュー・ゴウ、ヒュー・ピュー・ゴウ……

風、来!

<突如、突風が飛行島に吹き抜ける!>

え、ちょ……!にゃにゃにゃ!?ぎにゃーっ!?

あっ、キャトラ!


飛んでっちゃった……

す、すみませんっ!私、力の制御がまだうまくできなくて!

こんなときの解決法は……今、<風神の巻物>で調べますね!

いえ、それより、早く追いかけなきゃ……キャトラー!



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思い出2



キャトラさん、この間は吹き飛ばしてしまい、申し訳ありませんでした!

まったく、空の果てまで飛んでっちゃうかと思ったわ。

本当にごめんなさい。私たち、まだまだ見習いなので……

もういいわよ。……ん?『私たち』ってことは、他にもアンタみたいなのがいるの?

はい。私には双子の姉妹がいるんです。

双子って、やっぱり<風神見習い>なの?

いえ、私たちは、<風神>と<雷神>。二人で対になる存在なんです。

<雷神>……?

<雷神>の仕事は、空で稲光や雷を発生させ、地上に落とすことです。

私たちの故郷では、<風神>と<雷神>が協力して天気を司るお役目があるんですよ。

ただ、私と同じく見習いですので、頑張って修行しなければならないんです。

へえー。修行の旅かあ。

なのに、あの子ったら、このあたりが珍しいからと一人で行ってしまって……

あれま。

―緒に立派な<風神>と<雷神>にならないといけないのに……

まあまあ、そんなに気負いなさんな。

そうですよ。お二人はまだこちらに来たばかりなんでしょう?

いえ、でも……

適度な息抜きも必要よ。アンタも、もっと楽しめばいいじゃない。

<息抜き>……ですか?<息>ということは、何やら風の力に関係がありそうですね。

え、そうなのかしら?

わかりました。では、<適度な息抜き>のしかたを調べますね。

いや、そーいう意味じゃないんだけど。

<&風神の巻物>に書いてあるかもしれません。ええと、<息抜きの方法>とは……

じゃなくてー!適当に楽しみなさいよ、っていってるの。

<適当に楽しむ>ですって?それも初耳です。

では、<適当に楽しむ方法>を調べますね。

アンタねー。


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思い出3



うーん、こんなときはどうすればいいのでしょう。

サワワ、また<風神の巻物>読んでるの?飽きないわねえ。

はい、判断に迷うことがありまして……

なにがあったの?

今まで私たちは、あまり人間の皆さんの住んでいないところにいたんです。

ですので、風を吹かせても、あまり皆さんの生活にも影響を与えなかったのですが……

こっちだと、どうなるの?

私が風を吹かせれば、雲の移動などで、天候に影響を与えます。

そうすると、必然的に農業や漁業にも影響を与えてしまうんです。

たとえば、作物のため晴れてほしいのに、雨が降ったり逆に日照りが続いて……

天候は屋外での活動全般にも影響を与えますので、商取引にも関係してきます。

アタシ猫だから、よくわかんないけど、いろいろ面倒なのねえ。

こうした天候の変化で困っている方がいる一方、喜んでいる方もいて……

なるほどねー。けっこう難しそうね。

ええ、私の風で大勢の方に影響を及ぼすということは、責任重大ですから。

もっと、私に知識があれぱよいのですが……先人の知恵をお借りしなければ。

<サワワが、<風神の巻物>を広げる。

広げられた巻物には文字がびっしり詰まっている。>

うわあ………よくそんなの読めるわねえ。

過去の事例を確認できれば……

<風神の巻物>第6条第1項。人間の生活をみだりにおびやかしてはならない。

やはり、そうなのですね……

<風神の巻物>第15条第3項。公共の利益のため、風の力を公平に行使すべし。

『公共の利益』……やはり、好き勝手してはいけないのですね。

<風神の巻物>第58条第7項。

第79条第5項。第96条第2項などにも同様の記述が……

ちょっと、ちょっと、どれだけクドクド書いてあるのよ、それ。

でも、やっぱり、解決策が見つかりません。いったい、どうすれば……

そんな細かいだけのルール気にしなきゃいいのに。

いえ、ダメです。<風神見習い>としての責任を果たさなければ。

あーあ、せっかくの風を操る能力なのに、そんなのに縛られるなんて……

第129条第1項。第202条第3項。第121条第5項……



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思い出4



……はあ。

どうしたの、元気ないわね。

サワワさん、どうかされたんですか?

皆さん……

私たちでよければ、相談に乗りますよ。

このキャトラさんに任せなさい!

ありがとうございます。実は……

さっき、風船を飛ばしてしまって、泣いている子を見かけたんです。

かわいそうにと思って、つい、私の風の力で風船を戻してあげてしまったのですが……

へえ、アンタ、いいことしたじゃない。

ですが、そういつも、誰かが困っているからといって、力を使うわけにはいきません。

<風神>の本来の役目とは、些細な個人的理由で風を吹かせることではないのです。

でも、サワワさんは、そのとき、その子を喜ばせたい、と思ったんでしょう?

はい。たしかに、そうでした。ですが……

別に、いいことしたんだから、いいんじゃない?

でも……<風神見習い>の立場として、これでいいのでしょうか。

そんなに、面倒くさく考えることじゃないと思うけどねえ。

やはり、ここは、<風神の巻物>を読んで、どうすべきか調べますね!

またかい!

あれ? そういえば……

どうしたの、アイリス?

サワワさん、いつも、<風神の巻物>に書いてある通りに力を使っているのに……

あ、そうか。風船を返してあげたのって、サワワのとっさの判断よね。

やっぱり、<風神の巻物>にも書かれていないようです……

……この子、自分のしたことに気づいてるのかしら?



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思い出5



<黒い雲が空に広がっている。飛行島に嵐が近づいているようだ。>

きゃあ、雨!ぬれちゃう~!

風も強くなってきたわね。このままじゃ、飛行島の物が飛ばされちゃうわ。

皆さん、ごめんなさい!私、<風神見習い>なのに、嵐の気配に気づかないなんて。

ずっと考え事をしていて……うっかりしてしまったんです。

嵐は嵐、サワワさんのせいじゃないわ。気にしないでください。

それより、サワワの力でなんとかできないの?

わかりました。では、やってみます!

<風神の巻物>第10条第5項によりますと……

は、はやくしてよー!

はいっ!ただいま、調べています!

<突然、激しい風が、サワワたちに吹き付ける。>

きゃっ!?

<広げられた<風神の巻物>は、空へと舞い上がった。>

ま、巻物が!

どうしましょう、あれがないと、私……!

落ち着いて、サワワさん。雨が激しくなってきたわ。今はまず建物に入りましょう。

そうね!このままじゃみんなずぶぬれよー!

でも、<風神の巻物>を取り戻さないと……

<遠くで稲光が見え、その後、雷の音が響く。>

きゃあ!

大丈夫よ、キャトラ。飛行島は頑丈だから……

ほんとに?

ええ、きっと、おそらく……

わーん!

<皆の不安に呼応するように、嵐の黒雲は飛行島に覆いかぶさってくる……>

私が、なんとかしなければ……私が……でも、どうすればいいんでしょう?



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思い出6



この光……嵐の中なのに、まるでお日様のぬくもりのようです……

そうですね……私がこちらに修行に来た意味が、少しわかった気がします。

教本に書いてあることをただ守るだけでは、一人前にはなれませんものね。

そうよ、サワワ。アンタ、ほんとは自分の意志で行動できるんだから。

サワワさん、もっと自信を持ってください。

ありがとうございます、皆さん……!

私、今、自分にできることをします!

その調子よ、サワワ。いけいけー!

<サワワは、嵐の中、静かに空を見上げる……>

この嵐に、真っ向から力で対抗しても、押さえつけることはできません。

ならば、無理をせずに、なんとか、やりすごすことができれば……!

<サワワは、大きな風神のうちわをかまえ、目を閉じ、精神集中する。>

ヒュー・ピュー・ゴウ……ヒュー・ピュー・ゴウ……ヒュー・ピュー・ゴウ……

ヒュー・ピュー・ゴウ……ヒュー・ピュー・ゴウ……ヒュー・ピュー・ゴウ……

ヒュー・ピュー・ゴウ……風、来!

<柔らかな風が、飛行島を吹き抜ける……>

これって!?

風が、収まっていく……?

サワワ、嵐を静めたの!?

いえ、飛行島の周囲に、うすい空気の膜を張らせていただきました。

嵐はいつか通り過ぎていきます。それまで、やりすごしましょう。

<――こうして、飛行島は、無事に嵐を抜けることができたのだった。>

やったわね、サワワ!

ありがとうございます。サワワさん。

いえ、ルーンの光のおかげです。私は大切なことに気づきました。

これは飛ばされてしまった<風神の巻物>!拾ってきてくださったんですね。どうもありがとうございます。

よかった……。<風神の巻物>はとても大切なものですから。

でも、これからは私、なるべく巻物に頼らずに自分で考えて頑張ってみます。

そうね、それがいいと思うわ。

はい、きっと、これが、立派な<風神>になるため、私のなすべき修行なんです。

<さわやかな風が、サワワと主人公たちの頬をなでていく……>

なんだか、身も心も、とっても軽やかになった気がします……!




  サワワ・カゼノカミ



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