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【黒猫のウィズ】

最終更新日時 :

白猫ストーリー

黒猫ストーリー


2017/00/00

目次


ディートリヒ・ベルグの過去

Story1 名もなき衝哭

Story2 進軍あるのみ

Story3 名もなき王

最終話 王の最後





ディートリヒ・ベルグの過去




ディートリヒ・べルクは、ドルキマス国の第三王子として生まれた。

しかし、彼の人生はそのときから既に“狂い始めていた”


前王によって、ディートリヒの母もろとも記録を抹消され、

幼少の頃は、ひどくつらい生活を送ってきた。



それは青年期になっても変わらない。

黒く深く淀んだ歪な世界に、まるでひとり取り残されたような感覚。


ディートリヒ・べルクにとっては、それが“普通”であり、

なにひとつ問題のない世界が広がっていたと言える。


ドルキマス国軍に配属されて以降は、度々強引な手段で敵国を襲撃した。

策とも作戦とも言えぬ、“戦の作法”を度外視した力技だ。


だがならず者、壊れかけの船を戦場に捨て去るその戦い方は、

ドルキマスにとって非常に有益なものであった。


問題があるとすれば、元帥という地位を得てからも、

その無作法であり、無法ともいえる戦い方を好んだことにある。



死にたがり、狂気の沙汰、戦争狂……様々な蔑称を受けてもなお、

ディートリヒは引き下がることはなかった。


視界に広がる“ドス黒い光景”は、依然変化することがなく――


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名もなき衝哭




「全軍、前進。」

ディートリヒ・べルクの言葉にあわせ、戦艦が進軍を始める。


  ルヴァル  

”あとは卿が始末をつけるのだ。”


「貴君らは指定の位置に待機。」

つまらなそうにディートリヒが視線を前へと向ける。

それは、初めて見る表情だった。


「貴君は、このまま私についてきたまえよ。」

君は、わかった、と言う。



〈イグノビリウム〉の多くの敵を倒して、ようやく辿り着いた場所。

怪しく淀む景色と奥に佇む古城……。


「貴君は、我々が正しいと思って行動しているか?」

突然の問いかけに、君はすぐ答えられなかった。


力を貸してくれるのか、そうではないのか、全くわからない。

聞いた話によれば、〈イグノビリウム〉は過去、魔法があった時代の残滓――

それは何百年と続き、残り続けてきた慟哭、怨嗟のようなものだという。


だがそれが事実なのか、そうではないのか……

それを確認するために、君はここにいた。



「何が正しいか、あるいは何か正しくないのか、貴君の目で判断することができるか?」

わからない、と君は言う。

「私もだ。そんなものわかり得るはずがない。」


ここがどのような異界だったか、君には想像もつかない。

だけど今の惨状は、はっきりいって異常だ。

人ではない何かが、圧倒的物量と物言わせぬ戦力で人間を覆い尽くしていく。


「さあ、進め。この先に貴君が求める答えがあるはずだ。」


 ***


 朽ち果てた古城


 ***


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story2 進軍あるのみ



「アウルム卿も人が悪い。何故、斯様な存在があると伝えてくれなかったのでしょう。

思念体。魔法時代の遭遺物……憎悪や慟哭の亡霊。アレらはそう呼ぶと仰られました。」


「思念だの、亡霊だの、何を勘違いしている。言語の通じない、ただのモノを我々の知る言葉でくくるな。」


冷たい声音に、君の背筋が凍りつきそうになる。

しょせんは“モノ”でしかない、とディートリヒは言う。


「仮に亡霊の類であったとして、だから何だというのだ。

戦争をするのに細かい理由がほしいのなら、貴族にでも喧嘩を売ることだ、ローヴィ。」

「…………」


ディートリヒの言葉は、その声音とともに、ずしりとした重みを与える。

思念体や亡霊がいようがいまいか関係ない、とディートリヒは言ってのけた。


「我がドルキマスの地に踏み入れたことを後悔し、奴らは朽ち巣てる。

その亡霊とやらも、私が炙り出してやろう。

戦争の意味を、味わわせてやるのだ。征くぞ。」


 ***


 イグノビリウム魔道要塞


 ***


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story3 名もなき王



何かがいる。君は直感でそう感じた。


いや、いないはずがない。

魔力、それと似た凶々しい空気感。



「進軍。」

ディートリヒは短く、それだけを告げ戦艦をすすめる。

クラリアに似た命令でありながら、こちらは“拒否することを許さない”雰囲気が漂っている。


「周囲はやはり敵艦で溢れています。何より侵入を拒んでいるようにも……。」

「2隻、先行させろ。沈んでも構わん。」

君が止める間もなく、既に戦艦は先へ先へと進んでいっていた。


「仮にあの2隻が沈んだ場合、撤退も視野に入れますか?」

「否、だ。ローヴィ。たとえそうなったとしても、進軍だ。

「ここに来るまでに費やした時間、戦力、それを考えれば、退くことなどありえない。」



ディートリヒの言葉を聞き届けるや否や、突如として轟音が鳴り響く。

先行した戦艦が狙い撃たれている――!?


「ククッ……いるじゃないか。」

笑っている場合じゃない!今、目の前で撃たれたあの戦艦を助けなければ……!


 ***


 不吉な船影


 ***


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最終話 王の最後



暗黒。


最初の印象はそれだった。

黒く淀んだ何か――それは恐らく人型であった。



「…………」


黒の佇まいに息を呑む。


明らかに“異質”だ。

魔道艇を飛ばし、やってくる敵を倒してきた君は、やっとの思いで敵地に辿り着いた。

ディートリヒ・ベルクは君の隣に並び、異質な何かを睥睨する。


「これが私の敵か。存外、矮小に見える。」

ディートリヒは、まるで何も感じていないのか、その敵を前にしても普段と変わりない。


『――〈イグノビリウム〉我が肉体の名だ。完成されたこれは軍であり、群れ。』


「……耳障りな音だ。聞き苦しいにもほどがある。」

ディートリヒに、暗黒の言葉は届かない。

君には、しっかり言葉として意味が理解できている。


『我が体は、高位の生命体を探している。

だが、この世界に生命体は、我が肉体、ただひとつ。足りぬ。これでは足りぬ。』


「…………。」


君は、魔力を込め臨戦態勢を整える。


「撃て。」

「はっ。」


銃声音が響く。


『この肉体が、完全に覚醒めるために、血肉が必要だ。これでは、安堵に至らない。

異界の存在よ。その魔法、とくと見させてもらった。

幾度も幾度も幾度も……その魔法で、我が肉体が滅んだ。

だが届かぬ。その程度の刃では、我が肉体を殺し切るには至らぬ。』


「言葉に耳を傾けるな、とアウルム卿が仰っていました。貴官は下がってください。」

「ふん、くだらんな。私の敵がこの程度の“カタチ”など。」


『さあ、失せろ、異界の存在よ。』


黒い魔力が爆散する。

君は下がることなくカードを構え、戦いに備えた!


渾身の魔力を叩き込むと、暗黒の何かを後退させることができた。

もう一撃――いや、君の魔力は、既に限界を迎えつつある。


「ふっ、さすがは魔法、といったところか。」

ディートリヒが感嘆の声を上げる。

それは君が初めて見た、彼の感情だったのかもしれない。


君という足止めが機能したことに、ほんの少し高揚した……だけ。

あるいは君が倒れても、第二、第三の手があったのかもしれない。


――否。あった。

君がいなくても別の手段をとっていたに違いない、という確信が君にはあった。


『まだこの肉体は、完全ではない。

我が身、我が心は満たされないままだ。』

それだけを言い残し、漆黒が姿を消した。


いったいアレは何だったのか、君にはわからない。



「ふふ……くっ、ふふ、はははっ!そうか、逃げるか、我が敵よ。」

愉快げに、ディートリヒが感情を露わにする。

「炙り出してやった。“これでいい”。これでいいのだ、〈イグノビリウム〉。」

いったいどういうこと――と君が尋ねる。


「戦艦に乗ってここから離れようとするはずです。しかし、元帥閣下はそのときのため……」

3軍を残し自らがこの要塞に乗り込みました。貴官の船を使うことも想定済みでした。」

また、そんな大切なことを言ってくれなかったのか、とため息が出る。

「血肉がほしいのなら、くれてやる。〈イグノビリウム〉の肉をな。」


「……これだけの技術力を誇りながら、決してあの者は外に出なかった。

過去の遺物など、もはや信じようにも信じられません。」


要塞にいた黒い者を倒し、外へとおびき出すことができたものの、

驚異の大戦艦を前に、しばらく口を開くことができなかった。


〈イグノビリウム〉の大戦艦。

今まで見てきたものとは、全てが違う。


中に入り込んだ瞬間に防れた強烈な圧迫感は、息をすることさえ困難になるほどだった。


「寒気がするにゃ……」

「進め。命をなげうってでも、この戦艦を沈めろ。」



これを落とせば――

この大陸にわだかまっていた魔法という遺物を全て捨て去ることができる。


この長い時間、彼らといてわかったのは、彼ら自身は魔法を必要としていないということ。

そういう生き方をしてこなかった、といえばそれまでだが、

君にとっては、それはそれでありなのかもしれない、と不思議な感情をいだかせるものだった。



 ***



「ローヴィ、撃て。」


戦艦内部を歩いていると、“あの黒い者”と再び相まみえた。


『異界の者よ。我が力――取り戻させてもらった。

魔法の体現者……異界の者よ。貴様を壊し、私は私の世界を広げよう。』


「なんと言っている?」

君は、眼前の敵が言っている言葉をそのまま伝えた。


「壊す……ふん、壊す?罵鹿をいえ、壊せるものか。

たかが戦艦10隻を落とした程度で侵入を許される貴君が、何を壊すというのだ。」

ディートリヒは、“小罵鹿にするような声音で”暗黒の者に声をかける。


『飽いて飢えるまで、この肉体は血肉を求め続ける。

喰らうために、誘い込まれたとも知らずのうのうと近づいてきた――

異界の者よ。その肉を、我が肉体の糧とさせろ。』



 ***


 BOSS ノグズエル


 ***


『……な、くッ、わ、我が肉体が……。

消えてゆく……この心、この体……滅びゆくのか……。』


「…………。」

ディートリヒは、ただ黒を見下ろしていた。


『この世界はまだ狭すぎる。さらなる広大を求めた我が身が……

生命たりえない、其の方に……我が心が……。』



暗黒は高く手を伸ばす。

そこには何もない。


ただ広い世界が欲しかったから、侵略したというのか。

何のため、人々の世を奪ったのか。

そんな疑問を、君は投げかけようとした。

だが――


「無駄だ。聞くまでもない。」


『だが――我が心、我が思念は……幾度も蘇る……。

次の世界のため……この身の世界のため……幾度も……幾度も――。』


そして〈イグノビリウム〉を自称したその敵は、音もなく、灰のようになって散っていった。



「……出ましょう。もはやここに用はありません。」

ローヴィに止められ、叶わなかった。


「早く出なきゃ、この船もどうなるかわからないにゃ。」


君は振り返り、〈イグノビリウム〉がいた場所を見た。

最後に聞いた言葉は、執念、あるいは呪詛だったのかもしれない。

いや……魔法文明を生き、滅んでいった哀れな“何か”の最後の魔法だったのかもしれない。



 ***



…………


どこか憂いを秘めたディートリヒ・ベルクの眼差しを、君は今でも思い出す。

黒く淀み、まるでこの世界にひとりきりであるかのような表情を見せる男。

ディートリヒという男は、もしかすると――“求めていたのかもしれない”


「キミ、船の乗り心地はどうだったにゃ?」


いきなりウィズがそんなことを口にした。

君は、どうして?と問いかける。


「いつだったか、キミ、トルリッカで船に乗りたいって言ってたにゃ。」


そうだけど、よりにもよって戦艦や魔道艇に乗ることになるなんて……

いや、あるいはそれがきっかけとなって、君はこの異界に飛ばされたのかもしれない。


「ディートリヒは不思議な人間だったにゃ。」


そうだね、と君は答える。

甲板に立ち風を浴びていると、やはりこの異界に住む人たちのことを考えてしまう。


「あんな人間に会ったのは初めてにゃ。」


敵を見たとき――いや、それが敵と認識したときに見せた、歪な笑み。

だがそれは一瞬のことだった。

〈イグノビリウム〉を統べていた者を倒したあとで、彼はつまらなそうに息をついた。

それが余計に、ディートリヒ・ベルクという男を知りたいと思わせた。


「……きっと戦争にしか身を置くことができない人間にゃ。」


生きるか死ぬかじゃなくて、もしかすると死にたいとさえ思っているのかもしれない。

だけど死ねない。何をしても、誰と戦っても、生き残ってしまう。

ディーリヒ・ベルクの憂いは、あるいはそこから来たものなのかも、と君は考える。


どこかから、床を蹴りつけるような足音が聞こえてくるようだった。


「さあ、そんなことより帰る方法を探すにゃ。」


ウィズには聞こえていなかったのだろうか?

しかし、そうだ。君たちは帰らなければならない。

だがどうやって来たのか、どうやって帰るのか、そこから考えなければならない。


君たちがクエス=アリアスに戻るのは、まだ先のことになりそうだ。






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