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【黒ウィズ】フェリクス(GW2017)Story

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最終更新者:にゃん
2017/04/28 ~ 5/10

目次


Story1

Story2

Story3





story1



ボーディス王国、北部上空――


「こんな形で帰ってくることになるとはなァ。」


故郷の空は戦場。

それも、未だかつて見たこともない異様な戦場だった。

久しぶりの故郷を懐かしむ余裕など、ない。


「あれが……〈イグノビリウム〉の戦艦か……。」


奇妙な形をしているが、通常の砲撃が効かないようには見えなかった。

しかし、連合軍の苦戦ぶりからして、それは事実なのだろう。

とはいえ、被害状況は想定よりも悪くない。

「なかなか持ちこたえてるんじゃないか? 連合軍の連中がこんなに優秀だとはな。」


フェリクスは連合軍の旗艦と無線で連絡を取る。


“事前の情報通り、砲撃はまったく効きません!”

ボーディス防衛を任されている連合軍指揮官の声に張りがあった。

まだまだ士気は下がっていないようだ。


“接舷から白兵戦を展開しておりますが……徐々にこちらの戦力が削られており、一次防衛線、二次防衛線と撤退。

このままでは、ボーディス本土に攻め込まれるのは時間の問題です。”

「いや、よくここまで持ちこたえた。」

“それは、ひとりの竜使いの活躍あってこそです。”

「……竜使い?」

“竜使いは……所属不明でありますが、どうやら我々の味方のようです。

竜使いが先鋒となって〈イグノビリウム〉艦に攻め入ったところを、我々が続くという形が、奏功しております!

これで戦力の消耗が軽減しました。竜使いがいなかったら、敵に最終防衛線を突破されていたかもしれません。”

「〈ウォラレアル〉か? どうしてこんなところに……しかも単騎で。」


ディートリヒが竜の里〈ウォラレアル〉と交渉し同盟を組んだという話は聞いていた。

しかしボーディスへの援軍という話は聞いていないし、単騎というのも腑に落ちない。


「どういう事情かわからねえが……ありがてえこった!

……俺はとことん、竜に縁があるみてえだな。これが、因果ってやつかね。」

“しかし、竜使いも疲労してるようで、いつまで持つか……。”


傷つきながらも果敢に〈イグノビリウム〉と戦う竜使い。最終防衛線を守った立役者。

放っておくわけにはいかない。


“おい、シェーファー! 敵を叩く号令をかけるぞ! こちらは準備万端だ!”

クラリアから無線が入る。

ボーディス防衛戦に送られたシャルルリエ軍の指揮権は当然、クラリアにある。

しかしフェリクスの意向を聞くようにディートリヒがクラリアに言い含めたのだ。

だからクラリアは律儀にフェリクスの出方をうかがっている。


「待て。敵を叩くのに、ちょうどいい場所がある。……だがその前に、竜使いを助ける!」

“竜使い? なんだそれは! 聞いておらんぞ!”

「話は後だ! 中将閣下! しばらく待機願いますよっと!」



***



なにもないからこそ、まず信念を持ったのかもしれない。


――納得できない仕事はしない。

フェリクスはまずそう決めた。


どんな卑劣な行為だろうと、金さえ積めばなんでもやるという傭兵は少なくない。


(俺はそうはなりたくねェな)

彼らには彼らの言い分があるのかもしれない。だからといってそれに倣う必要もない。

あるいは、怯えていたのかもしれない。

自分の意志で踏みとどらなければどこまでも堕ちていくというのは、ひたすら恐ろしい。

だから、最初から線を1本引いておこうと思ったのかもしれなかった。


それは信念というにはあまりに臆病で、芯というよりは命綱に近い。

しかし傭兵としての働き口を探していくうち、その想いが枷になっていつことをフェリクスは痛感した。


そもそも、ろくに実績もない小生意気なガキを雇う者など、そういない。

ありそうな仕事といったら、街の便利屋同然のつまらない労働か、悪どい汚れ仕事だった。

弱者から掠奪するか、女をさらって売り飛ばすか。


「……さすがにそこまで落ちぶれちゃいねェよ。」


フェリクスは選択を迫られる。

“むさ苦しいゆりかご”で大事に育てられるか、街の便利屋から地道に始めるか。

そんなふうに、早くも己の矮小さに嫌気が差し始めた頃だった。


 ***


「あんちゃん、小型艦の操縦ができるんだって?」

傭兵とならず者の狭間と言うべき男たちが集まるという薄汚い酒場で、男に声をかけられた。

「ああ。」

一見すると、くたびれた男だった。しかし瞳は炯々としている。

数多の死線を潜り抜けた男――フェリクスの目にはそんなふうに映った。

「ちょっと仕事をしねえか。」

すぐにでも飛びつきたかったが、気持ちを抑え、一呼吸置く。

「詳しく聞かせてもらおうか。」


男たちは、傭兵団とは言えないような、ほんの数人で活動している小規模な集団らしかった。

ある任務を遂行するにあたって、小型艇のパイロットが足りないのだという。

「で、その任務ってのはなんだい? なんでも引き受けるほど、俺は堕ちちゃいないんでね。」

「そのあたりの噂を聞いて、あんちゃんに声をかけたんだ。志の高い駆け出しの傭兵がいるってな。

報酬はそこまで弾まないが、やりがいはある。」

男はそこから声をひそめて、フェリクスに任務の内容を語った。


「……竜の卵?」

「ああ。ブツは特殊だが、話は単純だ。奪われたものを、取り返しにいく。以上。」

男はそう言って、不敵な笑みを浮かべ、フェリクスを見る。

あからさまに値踏みするような視線だったが、悪い気はしなかった。

むしろ大いに値踏みしてくれとフェリクスは思い、男を見返す。

「なるほど。嫌いじゃないな、そういう話は。」

「さっさと奪還して逃げる。余計な戦闘はやらない。まあ、荒事にならないとも限らんが。

……どうだい、やれるかい? あんちゃんよ。」

「その話、乗った。」

悪くない滑り出しだとフェリクスは思った。悪くないどころか、門出には相応しいとさえ思った。


はっきり言って、浮足立っていた。

だから、フェルクスはくたびれた男の歪んだ笑みを見逃していた。



 ***



連合国軍の先鋒部隊に指示を出し、竜使いを保護させた。

フェリクスは小型艇で連合軍旗艦に乗り込む。竜使いはそこで治療を受けていた。


「助かったよ。ちょっとひと休みしたいと思ってたところなんだ。」

痛ましい傷を負いながら、竜使いの少年は涼しげな顔でこともなげに言った。


「貴君の活躍、まとこに……いや、かしこまってもしょうがねぇ。マジで助かったぜ! ありがとな!」

フェリクスが手を差し伸べると少年は力強く握り返す。

「俺はリクシス、こいつはグウィス。アンタは?」

「俺はフェリクス。シェーファー。傭兵だ。今はドルギマス軍の……いや。」

フェリクスは地上を指差す。

「元はこの国のボンクラ王子よ。ま、第2だけどな。」

目をしばたかせてから、リクシスは笑い出す。

「王子様かよ……見えないなあ!」

「そらァよく言われるが、褒め言葉として受け取ってる。リクシスは〈ウォラレアル〉の竜使いか?

「〈ウォラレアル〉? 知らないな。俺はとある子を探して旅をしているんだ。

そしたら、あのバケモノたちの戦艦に遭ったってわけさ。一体あいつらは何者だ?」


何者かと言われても、正確なところはフェリクスにもわからない。

自分が持っている知識、信じている常識では説明できない存在なのだ。


「〈イグノビリウム〉。古代に滅びた思念体だかなんだかって言ってたか。小難しいことはわからねぇ。

俺たち人類に、いや、竜も他の動物も含めたこの世界に敵対する、言葉の通じない侵略者だ。

正体不明のバケモノ相手によく戦ってくれたな。改めて例を言う、ありがとよ。」

「困ったときはお互い様さ。」


理屈としては単純だが、それを実践して〈イグノビリウム〉とやり合うとは、只者ではない。

「それに、あの妙な船を見てグウィスが怒ったんだ。こいつはむやみに襲いかかるようなヤツじゃないのに。」

リクシスは羽をたたんでおとなしく伏せているグヴィスの頭を撫でた。

「竜は賢いからな、下手な人間よりずっと。本能的にわかるんだろう。」

「フェリクスは竜のことわかるのか!」

「昔、ちょっと縁があってな。」

縁というより、恩と言うべきか。


「今回を世話になったなァ。恩を受けっぱなしじゃあ傭兵の名が廃るってなもんだ。

あとは俺たちに任せて、ゆっくり養生してくれ。」

リクシスはかぶり振って立ち上がる。グヴィスも低いうなり声をあげる。

「いや、このくらいの怪我なら大丈夫だよ。今までの冒険の旅で、鍛えたからね。

それに、火がついたっていうか、ここまで来たら最後まで戦いたいよ!」

「ここは別にお前さんには縁もゆかりもない国だ。どうしてそこまでやれるんだ?」

「俺はやりたいようにやってるだけさ。自分に嘘はつけないんだ。」

「そらァ立派なもんだ。」

「ははっ! そんなかっこいことじゃないんだけどね!

俺は単純なのかグウィスが賢いのか、嘘をつくとすぐにバレて、言うことを聞かなくなるんだよ。」

グウィスの喉元をなでるリクシスを見て、フェリクスはまぶしげに目を細める。


あの頃の自分は、こういうふうになりたかったのだ。

今の自分はあの頃の思い描いたなりたい傭兵だろうか?

(ちっとばかりつまんねえ大人になっちまったかもしれないが、悪かァないだろ?)


それを今、証明しよう。

この竜使いの少年は、ボーディスのためにここまでやってくれたのだ。

それを無駄にしてはいけない。ボーディスもリクシスも、絶対守ってみせる。


「さあ、戦闘再開といこう!」

「……わかった。いい作戦があるんだ。協力してくれ。」


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story2 祖国の危機



「本当にきちまったか……。」

〈イグノビリウム〉が大陸北部に出現し、侵攻を開始したとの報せを聞き、フェリクスは重いため息をついた。


近いうちに、〈イグノビリウム〉によって大陸が侵略される。魔法使いはそう言った。

魔法使いを信用していないわけではなかったが、化け物による侵略の予言など外れてほしいとフェリックスは思っていた。

しかし、フェリックスの願いも空しく、予言は見事に的中した。

「まあ、外れてたら魔法使いの命はなかったろうなぁ。」

人を信じないディートリヒは、どういうわけか、魔法使いの言を全面的に信じているようだった。

聞けば聞くほど眉唾の〈イグノビリウム〉。ディトリヒはそれに対抗するための兵器開発、軍事拡張を最優先で進めた。

フェリクスの目から見ても、魔法使いは只者ではなかった。

しかも、あのディートリヒの信頼を得ているという事実が、魔法使いの特殊性を確固たるものにしていた。


「ボーディスにいる連合軍の戦力だと……陥落は時間の問題じゃねえか?」

〈イグノビリウム〉はフェリックスの祖国であるボーディス王国の侵攻を開始した。

相手は、人間の言葉が通じないという。降伏ができないという点において、これはもはや戦争ではないのだ。

「俺ァ、祖国の危機には出払ってるっつう運命にあるみたいだな。」

数年前、ボーディスがドルキマスと交戦した際、フェリックスは傭兵として他国と契約していたため国の窮地に駆けつけることができなかった。

あの時の後悔を、再び味わいたくはない。

ドルキマスに侵略され属国となったとはいえ、祖国も家族も未だ健在である。易々と見殺しにできるはずもなかった。


しかしフェリックスには傭兵としての仁義がある。

ドルキマス王国に雇われた立場である以上、私情で持ち場を離れるわけにはいかない。

傭兵産業が盛んなボーディスの王子が傭兵としての仁義を捨てる。それはボーディスの誇りに関わる。

「まァ、誇りってのも、生き延びてこそのもんだがな。」

家柄だけの貴族が将ならば、丸め込むのはたやすい。

しかし相手はあの奸計大元帥ディートリヒ・ベルグだ。

地の利があるからという理由のみでは、ボーディス防衛戦への配置換えは難しいだろう。


対峙を想像するだけで恐ろしい相手を説得する手を考えながら、フェリクスは艦内をうろつく。

ドルキマス軍の主戦力には本国最北端の要塞で待機という指示が下っていた。

ディートリヒ軍も、フェリクスが目下配属されているシャルルリエ軍も、戦局を見守るのみ。

そんな状況下にあって、焦れているのはフェリクスだけではないようだ。


「連合軍には任せておけん!ゆったり構えている場合か!今すぐ私がいって叩き潰してくれる!

魔法使いの話では、戦艦こそ特殊だが中の兵は人間と変わらぬ、いや、人間よりあっけなく倒せると言うではないか!

そんな軟弱な連中、接舷からの白兵戦で一掃してくれる!」

「いやいや、中将閣下。せっかくバケモノ退治用の新兵器があるんだ、正面から突っ込んでどうすんですか。」

「……なんだと?もう一度言ってみろ!」

「いやだからね、魔法使い殿の進言で作ったバケモノ退治用の新兵器が……。」

「そこはわかっている!その前だ!」

「その前って……中将……閣下?」

「……うむ!」


つい先日。少将だったクラリアは中将に昇進した。

日頃、軍人然と振る舞っているが、中将という名の新鮮さを味わうときは年相応の少女らしい顔を見せる。


(こっちは祖国を潰されかけてんのに、嬢ちゃんは気楽でいいよなァ)

フェリックスはそう思ったが、口には出さない。


配置換えの志願をするにあたり、すぐに〈イグノビリウム〉を叩くべきだと主張するクラリアは追い風になるかもしれない。

うまくクラリアも巻き込めないだろうか。


「シエーファー、貴様、なんだその目は?」

「いや、中将閣下が新兵器についてどう考えているのか、疑問に思っただけさ。そこのところ、どうなんだい?中将閣下。」

「ふん、ベルク元帥が信頼を置く魔法使いとアーレント開発官が生み出したものだ。さぞ有用であることだろう!」


魔法使いの言によって、魔道艇なる古代兵器が発掘された。

その兵装は、魔法の力で特殊鉱石を燃焼させ、光砲発射や障壁展開に利用するというものだった。

レベッカ・アーレントの調査・研究によれば、魔法以外の方法で特殊鉱石を燃焼させれば、魔道艇の兵器を再現できるという。

さらに研究が進められ、エネルギー効率が落ちるものの、魔道艇の兵器を再現することに成功した。

開発された擬似魔法艇は、魔法使いが太鼓判を押す性能らしいが、〈イグノビリウム〉との実戦はなされていない。


「魔法も科学もさっぱりわからねえ身としては、信じて戦うしかねェわな。」

フェリクスは気づく。擬似魔法艇の実践データを持ち帰ると言えば、配置換えの追い風になるかもしれない。

(さて、問題は俺が元帥閣下の信頼を得られるかどうかだ)

国王に反旗を翻した先の戦いが終わった後も傭兵として雇われているのだから、ある程度の信頼は得ているだろう。

傭兵にしては随分と厚遇を受けたと思う。裏があるのではないかと恐れを戦くほどの扱いだ。

しかし今回の件はまた話が別だ。

(ま、やるしかないんだけどな)

かつてボーディスを侵略したのは、ディートリヒだった。

自分は今、祖国のためにディートリヒのもとへ配置換えを志願しに行く。

(……なかなか皮肉なもんじゃないの)

そして、かつて祖国を捨てようとした自分が、こんなにも祖国を案ずるのもまた皮肉であるとフェリクスは思った。


 ***




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