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【黒ウィズ】Divine Blader Story

最終更新日時 :
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最終更新者:にゃん
2014/06/21

登場人物






邪神のプライド



ここは魔界の最奥にある、とある神殿――。

牛頭を持つおぞましき魔物が、今その門を叩いた。


「ルルベル様! ルルベル様!」


「聞こえてるってば! いったいなんの用よ?」


門を押し開き、魔物の前に現れた彼女は邪神、ルルベル。この神殿の主である。

「毎日神殿にこもられて何をされているのですか? そろそろ人間と契約して頂かなければ困ります!」

ルルベルは生まれながらに、魔界において絶対的な力を持つ邪神となった。

それほどまでに彼女の魔力は強く、他の魔族を凌駕し、従えるだけの資質にも恵まれていた。

ただ、その若さゆえ、言動、行動は稚拙で、魔族の戒律にも疎かった。

そこで、神殿の守護者であるズローヴァがこの若き邪神の教育係を兼ねることになったのである。

「分かってるわよ! あたしだって毎日神殿に引きこもって遊んでるわけじゃないんだからね!」

スローヴァが神殿をのぞき込むと、魔族の祭祀に用いる道具や書物が散乱しているのが見えた。

「……ルルベル様。ご自身で努力をされていたとは……。」

「言ったでしょ? あたし、根は真面目なの。学ぶべきことは大体マスターしたつもりよ。

あとは人間と契約し、その者の望みを叶える代償として、欲望のままに堕落させるだけね……。」

「はい。見事人間と契約を結んだ暁には、ルルベル様は立派にー人前の邪神となられるのです。」

「ふふふ……。でも、ただ契約して堕落させるだけじゃ面白くないわね。

……自覚することもなく、気づけば堕ちるところまで堕ちている……そんな感じがいいわ……。」

ルルベルはサディスティックな微笑みを浮かべ、唇に舌を這わせた。

「ルルベル様……なんとご立派なお言葉……。」

その時、ルルベルはふと、誰かの呼ぶ声が聞こえたような気がした。

「しっ! 黙って! 今何か聞こえたわ!」

彼女は感激するスローヴァを鋭く制す。


 ……神……さ……ま。邪神……ルルベル様……


「ほら、誰かがあたしを呼んでいる。」

その声は遥か上空、人間界からルルベルの心に直接響いた。


 どうか私の願いをお聞き届け下さい……


邪神に祈りを乞う人間の声である。

「うん。どうやら遂にこの時が来たみたい。」

彼女はそう言うと、足早に神殿の中へ入る。



 ***



「邪神ルルべル様、私の声が聞こえておりますでしょうか?」

祭壇に立ったルルベルは、散らばる本の中から「邪神の心得」と書かれた一冊を拾い上げる。

「……えーと。人間との契約、人間との契約……っと。」

彼女は慌ただしく本をめくり、目当てのぺージを開き、書かれた台詞を確認し、

「……コホン。我が名は邪神ルルベル。汝の願いを述べよ。」

と、本に替かれた通りの受け答えをする。

「私は、世界から全ての争いを取り除きたいのです。どうか力をお貸し下さい」

「……え? あの……あたし、邪神なんですけど………。」

「高名な邪神の力を以ってしても、やはり難しいのでしょうか……」

その言葉が、彼女のプライドに火をつけた。

「な、なにを言うか! よかろう!汝にあたし……いや、我が力を貸してやろう。」

「ありがとうございます!」

晴れて契約を結んだルルベルは、彼女を堕落させるべく、行動を共にすることにした。

「ふふふ……。どうやってあの人間を堕落させてやろうかな……。」


 ***


しかし、ルルベルの思惑とは裏腹に、彼女が堕落することはなかった。

「あたしの力を使えは、いくらでもお金が手に入るし、綺麗な服だって好きなだけ……。」

「いいえ。人々の平穏がなによりの宝です。」

「……じゃ、じゃあさ。お腹空いてない? 私の力を使えばどんなごちそうだって……。」

「労働した後に食べる、ひとかけらのパンに勝るごちそうはありませんわ。」

「あっそうだ! だったらさ――。」

「ルルベル様! あの街でも人々が争っております。さ、お力をお貸し下さい!」

ルルベルの囁きを無視し、彼女は淡々と自分の目的、争いを無くすためだけに力を借りて行く。

あろうことか、ルルベルと契約を紡んだのは聖女だったのである。

そして世界から、少しずつ争いが減り始めた矢先、1体の魔神がその聖女に目をつけた。


「世界を救う定めの聖女か……。ならばその定め、この魔神ザラジュラムが歪めてくれよう。」

そう言い残し、聖女を抱いた魔神は彼方へと飛び去っていく。


「あたしの契約者をさらっていくなんて許せないわ。

待ってなさい! 邪神の名に懸けて、必ず取り返してやるっ!」






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