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ツバキ&ハヅキ(謹賀新年2018)Story【黒猫のウィズ】

最終更新日時 :

白猫ストーリー

黒猫ストーリー


2018/01/01

目次


Story1 賀正の花喧嘩

Story2 暗夜の閃斬、暁の雪月花

Story3



主な登場人物






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story1



「んが……。」


朝、雀が鳴き始める頃、ハヅキ・ユメガタリは、行きつけの小料理屋で目を覚ました。

それを見て、小料理屋の大将が、ぬるいお茶潰けをハヅキの前にドンと置く。

「あー、悪いなぁ、朝飯まで作ってもらって。漬物くれよ。」

「サッサと帰れって意味なんだけどな?」

「いいから漬物くれよ、塩味がねぇとそもそも箸が進まねぇだろ。」

言いながら、ハヅキは箸でチンチン、とお椀を叩く。

大変行儀が悪い行為であるが、もう大将はそれを止める気すらない。

「つーけーもーのー!」

「あぁもう、うるせーな! 新年だってのに全くよう……。」

ぼやきながら、ぬか床を漁る小料理屋大将。

その次の瞬間だった。

「新年ン!?」

叫び声とともに椅子を跳ね飛ばし、刀の柄を机に引っ掛けぶっ倒し、お茶潰けをまき散らしながら、ハヅキは勢い良く立ち上がった。

「うわぁ馬鹿野郎! 冷や飯とはいえ食いもん粗末に――」

「大将、折り入って頼みがある。」

ハヅキは突然真剣な表情になり、大将を見据えて言う。

その豹変ぶりに、彼はゴクリとツバを飲んだ。

「お、おう……なんだよ急に。」

「ツケといてくれ!」

「お前ぶっ飛ばすぞ! 待てコラァ!」


大将が止める間もなく、ハヅキは入り□の扉を勢い良く開け、賭場の方向へと全力で走り始めていた。

彼女の目的は賭け事ではない、そこで行われる――


「喧嘩だァ!」

賭け事長屋から飛び出してくる男たちの集団。外に出るとふたつに別れ、互いが互いを睨みつけた。

片方は町人連中、そしてもう片方は入れ墨を入れたあらくれ者たちだった。

「おうおう、新年―発目の運がねえからって突っかかるとはどういう了見だァ?」

賭け事長屋の元締めである『みずち屋』が大見得を切りながら、町人たちへと大きな声を上げる。

「何言ってんだ、サイコロ4つのチンチロなんか聞いたことねえぞ!」

「そうだそうだ! お前ら下手くそなんだから素直にサイコロ振ってろ!」

いつもの調子でヘタなイカサマがバレたのだろう、そんなヤジが大きく飛び、両者の間に熱が入り始める。

責められ続け、涙目になったみずち屋は腕まくりをすると、ついに喧嘩の口火を切った。

「いい加減にしやがれ! こうなったらやってやらぁ!」

あらくれ者たちは一斉に短刀を抜き放ち、町人たちにその切っ先を向ける!

だが、その時!


「その喧嘩買ったーーーーー!!」

群衆を飛び越え、みずち屋の前に飛び出てきたのは、ハヅキ・ユメガタリ

「来ると思ってたぜハヅキちゃーん!」

町人たちの声を背中で受け、腰の刀をジャランと抜くと、ハヅキはみずち屋にニヤリと笑いかける。

「あけましておめでとう、みずち屋!」

「て、てめえ急に出てきて何様のつもりだ!」

「お年玉ください!」

ハヅキのあっけらかんとした答えに、ついにみずち屋の堪忍袋の緒が音を立ててキレる。

「ふっざけんな、おめえら、やっちまえ!」

「「「おおおお!!」」」

こうしてハヅキの新年はみずち屋相手の大喧嘩で始まった。



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story1-2





都の西に、その屋敷はあった。

よく手入れされた道がまっすぐ突き剌さる門には、『リンドウ』と書かれた表札がある。

斜めになっているそれを直しながら、屋敷の主であるツバキ・リンドウは、ため息をついた。

「立ち寄る時は、手紙のひとつくらい寄越してね、と、あれほど言いましたよね。」

「悪い悪い、ちょっと近場で用事があってな。」

ムスツとした表情のツバキに対し、満面の笑みを浮かべているのは、友人のハヅキ・ユメガタリ

背中と腰に差した無数の刀を自慢気に鳴らし、彼女は無作法に屋敷の敷居をまたいだ。

「勝負事はほどほどに、そのうち身を滅ぼしますよ?」

歩きながらハヅキの刀を受け取り、ツバキは不満げに□を尖らせる。

「それに何ですかその格好は。あなたは器量はいいんですから、おしとやかにしなさいとアレほど――」

「だーっ! わかったわかった、とにかく、今は眠くて仕方ないんだ、客間借りるぞー。」

「……もう!」

麗々と身を探すハヅキに、ツバキは地団駄を踏む。

だが、ツバキはふっとその表情を柔らかくし、思い出すように空を仰いだ。

「……ホント、台風みたいな人なんだから。」


ツバキは、ハヅキが初めて道場に来た時のことを思い出す。

剣の道を極めんがため、道場破りをしに来たあの頃のハヅキは、それこそ抜身の刀のように気を立たせていた――




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story1-3



墨でべったりと塗り潰されたような暗い夜道を、雨が、これでもかとぱかりの激しさで叩いている。

まるで、夜と雨とが示し合わせて、目の前の光景を隠したがっているようだと、ツバキは思った。

分厚い雨雲で月光をさえぎり、激しい雨音で苦悶の声を消し去り、降り注ぐ雨粒で血の痕を洗い流す。

凄惨な光景を誰にも見せまいとする――そんな好意を、ツバキは図らずも、無下にしてしまったことになる。


提灯で照らし出した先に、少女がいた。

抜き身の真剣を、だらりと手に提げている。のみならず、背と腰に、馬鹿馬鹿しいほどの数の刀を帯びてもいた。

足元に、目を見開いた男の死骸があった。だの男ではない。腕が6つで足が8つ。

鬼か、はたまた妖(あやかし)か。


(あれは……)

ツバキは、思わず傘を放り捨て、腰の刀を抜き放っていた。

抜いた、という意識さえなかった。まるで刀が勝手に鞘走ったかのごとく、ツバキの手は、必死に刀を求めていた。


ふたつの銀光が同時に閃く。

佇む少女が振り向きざまに撃った一閃と、ツバキが咄嵯に振り抜いた一閃。

それらが宙で交わって、雨すら焦がす火花を咲かせた。


「――なんだよ。」

少女は、ニィ、と唇を歪めた。

「アタシの剣を防ぐたあ、おまえ、この蜘蛛野郎より強えじゃねえか。」

少女の刀の切っ先は、ツバキの首筋からわずかに離れたところで、ツバキの刀に受け止められている。

切っ先から放たれる壮絶な剣気は、ごくりと唾を呑むことさえ躊躇われるほどだった。それでもツバキは、どうにか声を発する。

「……寸止めする気だったでしょ。」

防いでから、気づいた。そうと見切れなかったことが、たまらなく悔しかった。

「アタシの近くで刀を抜くヤツにゃ、こうすることにしてんだ。」

少女の笑みが深くなる。夜と雨とが本当に隠したかったものを、今、ツバキははっきり目の当たりにしていた。

防ぐか、見切るか。それができるヤツなら、楽しめる……。


剣鬼。

そうとしか呼びようがない。

剣を交え、命を取り合う。その行いを、何よりの楽しみとする者。

自分の命も、相手の命も、彼女にとっては、勝負を熱く引き立てる賭け金にすぎない。

そんな人ならぬ理に生きる者を、鬼と呼ばずしてなんと呼ぼう。


「アタシはハヅキ。ハヅキ・ユメガタリだ。」

名乗り、ハヅキはスッと刀を引いた。その無造作な挙動のひとつひとつに細心の注意を払いながら、ツバキも名乗り返す。

「……ツバキ。天剣一刀流、ツバキ・リンドウよ。」

「天剣一刀流。いいねえ。素朴で洒落てら。」

ハヅキは刀を鞘に納め、足元に転がる妖怪の屍をつかんだ。

「ここで楽しみてえところだが、この腐れ妖怪を突き出さなきゃ、今宵の飯にもありつけねえ。

今度、道場にお邪魔させてもらうぜ。ツバキさんよ。」


彼女は、あっさりこちらに背を向けて、夜間の奥へ屍を引きずっていく。

ツバキは、ハヅキが雨の彼方に消えるまで、じっとその背中を見つめ続けた。


そして、ハヅキの発した鬼気の余韻すら夜の雨に流し尽くされた頃になって、初めて、ふうっ、と大きく息を吐く。

途端、どっと全身に冷や汗があふれた。

心臓が、赤子の泣きじゃくるように激しく脈打つ。決して外に出すまいとした恐怖や戦慄が、身体の内側で嵐となって荒れ狂っていた。


……未熟者。

弱い自分を、戒める。


「こんなざまじゃ……キリサメは、倒せない……。」

吐き出されたつぶやきは、雨にちぎられ、夜間に溶けた。


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story2



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story3-3





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