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双翼のロストエデン Story2

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story4 封魔級 決意の時



――これは何度目の出会いのなのだろうか?


「おい。顔を見せろ。」

「あ、こんにちは。」

「……なんだそれは?」

「挨拶ですけど……? よくなかったですか?

囚われの身らしく、しくしくと泣いていた方か良かったですか?

そういうの、堅苦しくないですか?

私、自分のやりたいことは自分で決めますよ。

泣きたくなったら泣くし、笑いたかったら笑います。」

「名は?」

ルシエラ・フオルですよ。

あなたのお名前聞いていませんけど?」

「アルドベリクだ。」


――そしてこれは、何度目の別れなのだろうか?


「そういえばお前、なぜ魔界に来た?

自分で魔界に来たのか。それとも魔界に来ざるを得なかったのか?」

「内緒です。」

「……答えは帰って来てから聞くとしよう。」


――その答えを、俺はまだ聞いていない。


***


アルドベリクは何を考えていたのだろうか?

彼はじっと壁に背をもたせかけて、ミカエラたちの話を聞いていた。

君はただ、その様子を見ていた。


イザークの話は、クエス=アリアスの感覚からすると少し荒唐無稽に聞こえた。

アルドベリクとルシエラは、あらゆる次元で、存在を変えながら、出会い――

運命に引き離されるように、「死」という別れを繰り返しているらしい。


Eなぜ、そんなことか分かる。誰がそんなことを言いだしたのだ。

I時界の監視者が、妙な現象を発見したのが最初だ。

m世界の時間の流れからズレた、ひとつの小さな時間の流れがある、と。

それを先代聖王のイアデルが調査しました。そこでわかったのです。」


アルドベリクとルシエラが、延々とふたりだけで小さな時間の流れを繰り返していることが……。

神界のどこか、神界ですらないどこか、あらゆるところで、その小さな時間の流れは、繰り返されていた。

名を変え、姿を変え、あらゆる形で、彼らは同じ時間を繰り返していた。


A何のためだ? 何のために、俺達はそんなことを繰り返している。

mひとつの推測として、あなたたちかともに生きるという〈可能性〉を捨てたからではないか。と、イアデルは言っていました。あらゆる〈可能性〉を繰り返していますが――


ただひとつ、ふたりかともに生きるという〈可能性〉を捨てた。

その報われない想いは、永遠に、未練を残しながら繰り返されている。

そしていま、彼らの循環は、再びひとつの終わりへと向かっている。

いつも通りの繰り返しを行う為に。


mイアデルは、あなた達が、この神界の存在として生まれ変わった時、ルシエラを保護しました。

彼女は秘密の存在として、長く匿われてきました。

cだから、私も見たことがなかったんですか。


双方が出会わなければ、何も起こらない。少なくとも不毛な繰り返しを止められる。

そういう判断らしい。

そして、先代聖王のイアデルが崩御し、神界が7つの興界に分かれた、混乱の中ルシエラは逃げ出した。


Iそれを、俺が魔界で見つけた。

しばらくどうするか考えたが、結局会わせることにした。

ルシエラはきっとお前に会いに来たのだからな。


その言葉に、アルドベリクは少しだけ反応した。


Iそれに、ひとつだけ方法があるからだ。お前達の運命を切り開く方法が。

Aそれはなんだ?

mあなた達が〈可能性〉を捨てたのなら、〈可能性〉を拾いに行けばいいのです。

〈回廊〉を開きます。そこにはあらゆる〈可能性〉があります。

調和を重んじるイアデルは、その方法を避けてきました。

ですが、私は聖王の名において、それを行おうと思います。もちろん……。

A俺次第か。


そこまで話し終わって、エストラが口を開いた。

E馬鹿げた話だな! そんな話、誰か信じる。

アルドベリク、いくらお前でも分かるだろ。これがデタラメだということが!

見ろ、周りは皆、天界の奴らばかりだ! イザークも含めてな!

アルドベリク。お前がかつてどんな存在であったとしても、いまのお前は魔族だ!

……魔族であることを示せ。



アルドベリクは黙って、寝台の上に寝ているルシエラの元に歩いていった。

意識を失っていたはずの、ルシエラは足音が近づくと、薄く眼を開けた。


cあ、意識を取り戻しました。


アルドベリクがその顔を覗き込むと、彼女は言った。

Lアルさんでも……そんな顔するんですね。


それだけ言うと彼女はまた意識を失った。



mアルドベリク、どうしますか?

Aそんな話を信じろというのか? 出来るわけないだろう。

mそうですね………

Iさすがに、そこまでお人好しではないか。

A勘違いするな。俺は行くぞ。……俺は行く。

何か理由が必要か? 俺は、そうは思わない。


mでは、〈回廊〉に案内します。


君はルシエラが言っていたことを思い出した。

何にでも理由を求める心要はない。

アルドベリクの言っていることは、少しだけルシエラに似ている。

そんな気がした。


E…………。


***



あらゆる〈可能性〉があるという〈回廊〉。

そこは見たこともない光景が広がっていた。


A思っていたものとは違うな。


アルドベリクの言う通りだった。言葉で説明されたものよりも、そこは歪だった。

〈可能性〉があるというよりも、必要と不必要すら区別されないまま〈可能性〉が投げ出された。

そんな場所のようだった。どちらかといえば、ゴミ溜めに様子が似ていた。


mここは7異界の狭間、すべての〈可能性〉があります。

ただし、あるだけです。見つけ出すのは………


L1至難の業ですよ。


ミカエラの言葉を継いだのは、大人しそうな少年だった。しかし………

彼の次の言葉は、驚くほど、粗暴なものだった。


L2だから、尻尾巻いて帰るなら今のうちだぜえ。


m彼はレイチェル。この〈回廊〉を管理する者です。

ああ見えますが、私達より長く生きています。

Aここに相応しい、混乱した奴だな。

L2おめえに言われたかねえな。お人好しの魔王なんて、訳の分からねえ奴にな。

L1あなたは何度もありえたかもしれない〈可能性〉を繰り返したことで、存在が混乱しているんだ。

それは、あなたの愛しい人も同じだよ。ずいぶん混乱した存在なんじゃないかな?

L2アルドベリク。たしか昔は、そんな名を名乗ってねえよな。

L1少なくとも、ここに自分の〈可能性〉を捨てに来た時はそんな名ではなかったね。

Aそれなら話は早い。捨てたものを返して貰いにきた。案内しろ。

L1うーん………その前に、まずは今ある〈可能性〉を捨てて来てほしかったね。

レイフェルの視線は、君とアルドベリクの背後に注がれていた。


Eアルドベリク、もうよせ。お前には魔族としてプライドはないのか。

天界の者を救うために、何をしようとしている! いや、それだけでないぞ!


L2あいつも、お前の〈可能性〉のひとつだ。残念ながら、取るに足らないものだけどなあ。

Aエストラ、邪魔をするな。それ以上は言わない。

Eわかった。ならば私も何も言うまい。魔族らしい方法で、決着をつけようじゃないか。


エストラは、怒りも悲しみも見せずに、そう言った。

ただ、魔族としての生き方を全うするだけの為に黒い羽を開いた。


E魔族なら、欲しいものは、奪い取るだけだ……。


***


BOSS エストラ


***



ひとつの〈可能性〉を選んだ時、もうひとつの〈可能性〉が潰える。

エストラが消耗しきった体を横たえているのを見て、君はそんなことを考えた。


「すまない、エストラ。」

「勝ったくせに謝るとは……魔王の風上にも置けない奴だ。とっとと失せろ。」

アルドベリクは彼女の言葉に従うように、〈回廊〉の奥へと目を向けた。

「タダで、戻ってくるなよ。」


そしてそれは、もうひとつ別の〈可能性〉が生まれたということではないか。

たぶんそれは間違いではない、と思った。


m私は、ここまでにします。聖王としてはここまでが限界です。

あまり、バランスを崩すことはできない、ということだろう。

L2ラッキー! 案内は少ないほうがありがてぇ。そこのお前はどうする?


wどうするにゃ?

mイザークが言ってました。もしあなた達がいなければ、いま私達がこうしている〈可能性〉も、なかったはずだ、と。

きっとあなた達がいたから、何かが変わりつつあるのです。

wそこまで言われたら、行かないわけにはいかないにゃ。

そうだね、と君は笑いながら同意した。

wほとんど、脅迫にゃ。

mすみません。


L1あの? 決まりましたか?

Aああ、決まった。


君は、自分の決断が、ひとつの〈可能性〉の扉を叩いたように思った。

そんな音が聞こえた気がしたのだ。



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最終話 絶級 永劫と無限の終り



L1アルドベリク、このあたりにあなたの捨てたものかあるかもしれないね。

w少し気になっていたんだけど、アルドベリクはなぜそんなことをしたにゃ。

L2そんなこと、俺が知るかよ。バカの考えることが分かるわけ無いだろ。

ぞんざいにそう答えたレイフェル襟首を、アルドベリクが掴み上げた。

L1イタタ。乱暴は反対ですよ!

Aまったく。都合のいい性格だな。


何かが聞こえた。



「ちょ、ちょっとお、まーた掃除当番さぼって、アンタいったい何様のつもり?」

「うるせえな。お前こそ、俺の、何様なんだよ。」

「な、何様って……馬鹿じゃないの!?」


w何の声にゃ?

その声は、アルドベリクトとルシエラの声に少し似ていた。


「アンタかい。俺に仕事を頼みたいってのは、ずいぶん高貴な身分なようで。」

「無暗に近づくな。貴様に頼みたいのは、仕事だけだ。それが終われば、どこへでも失せろ。」

「まあ、いいさ。俺だって金以外には興味はない。」


また、別の声が聞こえた。古い記憶のようにその声は君の耳に届いた。


L1んー。これは多分………


「何か、言い訳はしないのですか?我が父の敵として、このまま斬られるつもりですか。」

「ないよ。」

「なら、私の許婚だった男としては、なにか………」

「どうか、お幸せに………」


L1多分これは、これまでアルドベリクとルシエラが繰り返してきた〈可能性〉の声だろうね。

L2おめえらは、こんなことをずっと繰り返してきたんだよ。そのたびに、悲惨な末路にたどり着く。

とっても哀れな存在だよ。失礼な言い方だけど。


突然、身の毛もよだつような声が、君の背筋を剌した。


「うあああああ……! 
ああ……ああああああ!」


その声を聞いて、誰もが顔をしかめた。


L1もしかすると、最初の〈可能性〉の声かも。

きっと〈とても良くないこと〉があったんだろう。

L2よくいるだろ。一番最初に貧乏くじをひく奴がさ。

だから、おめえらは自分たちの運命を閉じた。

L1そして永遠に終わらない関係を得たんだ。

L2最悪の結果から永遠に逃れ続ける関係だ。

L1それを幸せだと思う人もいるだろうね。

本当に、それを終わらせてしまって、後悔しないかい?


沈黙の後、アルドベリクは口を聞いた。


Aもし目の前で苦しんでいるあいつの為に、何もしようとしないのが、以前の俺だったのなら。

俺はそいつを殴りに行く。……それだけだ。


永遠に終わらないもの、それはまるでまがい物だ、と君は思った。

終りがあるから、終わらせないでいようと思える。と君はアルドベリクの言葉に付け加えた。

wそうにゃ!


L2へっ! かっこつけやがって。



***



『俺はそこまでお人好しではない………』


Aこいつは?

その化け物は激しい魔力と、憎悪の感情を撒き散らしていた。


L1あらゆる〈可能性〉の中で、最強で、最悪の、あなたです。

L2最低の選択を、全部やってみたら出来た奴だな。

L1普通に考えれば、あなたが勝てるわけないんだよ。どうする?


wそれは、どこかの異界から、お人好しの魔法使いがやってこなかった場合じゃないかにゃ?

L2ケッ。ずりぃの。ま、今回はいいけどさ。


Aいいのか?

と、君に向かってアルドベリクは言った。君はただ……。

もちろん、と答えた。

Aお前は、俺以上のお人好しだな。

そう言って、アルドベリクは少し笑った後、鋭い視線を目の前の化け物に向けた。


A遠慮はいらないだろう。お前は、俺なんだからな。



***


BOSS アルドベリク


***



wやったにゃ!


その化け物を倒すと、〈回廊〉は世界を閉ざすように、暗闇に呑まれた。


L2いやー、めでてー。めでてーな。でもよ。

L1勘違いしないでね。これはただの始まりだよ。永遠に終わらない関係の方が良かった。

そう思う時もきっとあるはずだけど………

Aああ、そんなものには、もう頼らない。

L2当たり前だ! さて、魔法使い! お前たちがここにいる〈可能性〉ももう終りだ。

L1とっとと失せやがれ、だよ。


***


アルドベリクが神界の神殿に戻った時、

青ざめた顔だったはずのルシエラか何事も無かったように、神殿の中を飛び回っていた。

その光景は、何かが変わったことを、彼に教えてくれた。



Lあ、アルさん!もー、一体どこに行っていたんですか?

目が覚めた時、いなかったから置いていかれたのかと、思っちゃいましたよ。

これからは勝手に出て行くのは禁止ですよ。あと、私を置いていくのも、もちろん禁止です。


「ああ。」

「あれ? なんか素直ですね、今日は。」

「ああ。」

「ふふふ。ならもっと近くに来てください。」

「ああ、わかった。」

「もっとです。……もっと近くです……。

そうです。それでいいですよ。

……ところで、今まで、一体どこで何をしていたんですか?」

アルドベリクは少し微笑んでから、答えた。

「……内緒だ。」

「ああ、ずるいー! それは私の得意技ですよ。

返して。返してくださーい!」




エピローグ



「どうしたにゃ?」

君は、自分のローブに空いた大きな穴から手を出してみた。

「もうそれは買い換えなきゃいけないにゃ。やれやれ、出費が増えるにゃ。」

君がローブを払うと、一枚の羽が落ちた。


「きっとアルドベリクの羽にゃ。せっかくだから、何かの記念にするにゃ。」


君は、栞にでもしようか、と考えながら、窓辺に歩いていく。

窓辺に、もう一枚。今度は真っ自な羽が落ちていることに気づいた。

君はその羽を手に取ると、二枚を揃えて、読みかけの魔道書に挟んだ。



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双翼のロストエデン - 完 -


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