スクブス・アリュール
スクブス・アリュール:長谷美希 |
2014/12/29 |
どうも、魔界のセクシークイーン、スクブス・アリュールよ。
実は今回の珍獣……じゃなかった神獣の誘拐&歴史の改ざんを計画したのは私なの。
すべてはあの忌々しい無表情仮面のアモンを出し抜いて。
ブラフモ様のハートをつかむ為にね。
今日は特別に、そんな私の半生を聞かせてあげるわ――。
私は魔界のド田舎で生まれたの。
絵に書いた様な農村の貧しい大家族……なんたって13人兄妹なんだから。
ちなみに私は長女ね。そりゃ、苦労したわよ。かなりね。
でもさ、「悪魔は2物を与えず」って言うでしょ? アレってホントね。
だって私は貧乏な少女時代を強いられたけど、見た目はこの通りゴージャスに生まれたんだから。
とにかくね、私は自分の美しさに気づいた時から、必死にそれを磨き始めたの。
小さい弟を背負って、畑耕しながらさ……。
例えば収穫に使う鎌だって、エクササイズの為になるたけ大きいのを使ったり。
だから今ではありえないサイズの鎌振り回す様になったわけね。
そんな涙ぐましい努力を積み重ねていった私は、「準ミス魔界」に選ばれた。
まあ、「ミスどてかぼちゃ」やら、「ミスおたんこなすび」やら、「ミス豊作」やら、農村のミスコン荒らしとして知られた私が選ばれるのは必然だったわけ。
しかも「ミス」じゃなくて「準ミス」! ほら、よく言うじゃない?
ミスコンでは一番じゃなくて審査員特別賞とか、ちょっとオシイ感じのポジションのほうが大成するって。
そしてご多分に漏れず、私は使い魔として王宮に呼ばれたの。
そりゃ嬉しかったわよ。故郷に錦飾る気マンマンよ。
勿論、幼い弟たちと別れるのは辛かったし、王宮での生活に不安はあったわよ。
でもまあ、期待と不安の割合で言えば8:2で期待よね。
気分的にはもはや9割シンデレラよ。
だって私、準ミスよ!
そりゃあ、大魔王ブラフモ様だって一目でメロメロになるわよ!
メロメロになる前提で呼ばれてるわよ!
そう思った私は、嫁入り道具の粗末な箪笥と目一杯の野菜を積み込んだ大八車を引いて王宮に向かったわけ。
「よく来たな、農村の田舎娘よ。早速自慢の大鎌を振るって見せよ」
とかなんとか、訳の分からないことを言いながら私を出迎えたのは、ブラフモ様の腹心、アモン・バッケンだった。
そもそも王宮に私を呼んだのもこの仮面オヤジだったらしい。
つまり、私に求められていたのは、この美貌ではなく、大鎌を使った戦闘だったっていう……ね。
確かにミスコンでは特技として大鎌振ったわよ! だってそうでしょ?
あんな大っきいヤツをこんな可愛い私がプンプンやるんだから、そりゃインパクトあるわよ! 審査員にウケるわよ!
当然、一戦闘員がブラフモ様にお会い出来るはずもなく……、私の夢見たシンデレラライフは露と消えたわけ。
でも私、負けない! あんな仮面ジジイのアモンなんかよりも活躍して、ブラフモ様のハートを掴んでやるんだから!
――そう思ってカレコレ結構がんばって働いていた私に、ついにチャンスは訪れた。
この間たぶらかした旅の神官から、歴史を作っている神殿やら珍獣やらがいるっていう噂を聞いたってわけ。
そしてさっそく私は、この歴史改ざん大作戦を決行する為に、こっそり魔界を旅立ったのでした!