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メティース・ルタン

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メティース・ルタン 空見ゆき
2014/12/29


その日、私はいつものように卜ートの飼育小屋に来た。

私の名前はメティース・ルタン。職業は神官(見習い)。

歴史を司る神殿で働いてる。


トートっていうのは神殿で飼っているヘンテコな神獣なんだけど、

とりあえず世の中の生きとし生けるものすべての記憶を食べてため込む、なんていう唯一無二のスーパーな能力を持ってるの。

それで私たち神官は卜ートのため込んださまざまな記憶を取り出して、整理して、世の中に出回る『歴史』として記録していくわけ。

なんたって『神獣』ですから! とにかくスっごく神聖な存在でべらぼうに偉い!って言われてる(クロノワ先輩談)。


そしてこの私、メティースちゃんは何とその神獣卜ートの飼育係だったりするわけです!

この仕事に選ばれたときはもう最高にうれしかった!

胸、すっごい高鳴った!

何? この見習い神官らしからぬ抜擢は? 出世街道まっしぐら?

スッごい偉い神獣を飼育するんだから私はそれ以上のスッごいスッごい偉い存在? みたいな、ね……。

しかし、人生はそんなに甘くないのであった……。


初めて卜ー卜と会ったとき、純粋無垢な乙女の胸の高鳴りは、こんな感じでしぼんでいったのです。(以下回想)。


「おう! ねえちゃんが新しい飼育係やな! ワイはトート、オトコの中のオトコ! 神獣トート・タピーロや!」

「しゃ、喋った!」

「あったり前じゃ! ワイ偉いねんぞ、神獣やぞ! そら喋るわ! 喋りまくるわ!」

――しかもクセがすごい!

「あ、私、本日から神獣トート様のお世話をさせて頂く事となりました!」

限界を超えた衝撃を受けつつ、私はそう言って頭を下げた。

「ほなさっそく……」

下げた頭を上げきる前に、神速で私の懐に飛び込んでくる黒い影。

――ムギュ。

「ハぁ。やっぱ工工なぁ。若い娘は……」

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

上半身が重たい……そう思って恐る恐る下を向く私。

トートと目が合う。

「85点や! 合格!」

次の瞬間、私はその神獣……いや、ハレンチアニマルを引きはがし、正義の右ストレートをその顎に叩き込んだのだった!なによ85点って!

 (回想終わり)


というように、トートは神獣という言葉の持つイメージとはかけ離れた、まーいわゆる親しみやすいヤツなわけ。

『飼育係』というのも本来『御世話係』だったものをトートが変えさせたらしい。

本人日く「こういうくだけたカンジの方が成功率あがんねん」との事だが、なんのこっちゃ分かんない。

何はともあれ、そんな憎めないトートの飼育係を仰せつかってから早数か月。

私とトートはそれなりに友情を深めあってきた。

しかし、今日、私が飼育小屋を訪れたとき、そこにトートはそこにいなかったのでした!

ただ一言、「お腹が空きました」という書置きを残して……


 (報告終わり)


――私の書いたレポートを読み終え、クロノワ先輩が顔を上げる。

「……なにコレ? 日記?」

「い、いや、始末書? です。トートが居なくなりましたので!」

「はあ……まあいいよ。この際、お前の文章についてとやかく言うつもりはない」

「はい! ありがとうございます!」

「……う、うん。それでお前、トートに餌ちゃんとあげてたの?」

「はい?」

「飯、ごはん、あげてた?」

「え? だって記憶を食べるんじゃ……」

「それ別腹!食事は普通にするんだよ。神獣って言ってもほぼケモノだから、トートの場合」

「ええー!」

「とにかく、急いで探し行くぞ!」



こうして私は大冒険の扉を開いたのでした!

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