クロノワ・モントル
クロノワ・モントル CV:伊達忠智 |
2014/12/29 |
バックストーリー
いなくなった神獣トートを捜すため、クロノワは魔界へと降り立った。
「まったくいつも面倒ばかり……」
クロノワは毎回ふらりといなくなるトートに頭を悩ませていた。
いままではメティースとイストワーレの目を盗んで、ちょっと散歩に出る程度で済んだのだが、今回はどこか様子が違っていた。
いつもなら行きつけの飲食店や歓楽街、公園などにいるのだが、どこを捜しても彼の姿が見つからなかったのだ。
そんなとき、トートの姿が消えた小屋に落ちていた『黒い羽』。それを見たクロノワは、彼が魔界へ連れ去られたことを直感し、こうして魔界へとやってきたのだ。
「無事でいてくれればいいが……」
するとトートを捜し歩くクロノワの耳に、
「そ、そんなことしたら窒息してまう……」
どこからか悲鳴にも似た叫び声が聞こえてくる。
「あの声は!?」
声のした奥の間へ向かったクロノワが、中の様子を覗いてみると――
トートが、黒い羽を持つ妖しい雰囲気の女性に羽交い絞めにされているではないか!
「早く助け出さないと!」
クロノワはすぐさま女性の前に飛び出した。
「やあ、クロノワはんやないか」
女性の膝の上にいるトートは意外とあっけらかんとした様子でこちらに手を振った。
「チェッ、邪魔が入っちゃったか……」
「この女、それ以上トート様に危害を加えるとタダではすまないぞ!」
「この女なんて失礼やで。この子はスクブスちゃん言うねん」
「もー、あと少しだったのにぃ……」
スクブスと呼はれた女性は歯噛みして侮しがる。
「『あと少し』だと? まさか、『歴史の改ざん』の手伝いを!?」
クロノワは絶句してしまう。
「いや、ちょっとだけやて……」
「あなたは自分が何をしようとしてるのか分かってらっしゃるんですか!?」
「そりゃ、分からんことないけど……」
「いいから帰りましょう」
しどろもどろになるトートを連れ帰そうと腕を引くが、スクブスは連れ去られまいとトートを抱きしめ、
「そう簡単に手放すもんですか。っていうか卜―トちゃんだって帰らないと思うけど?」
「いやな、これにはいろいろ訳があんねん……」
「訳は後で伺います。さあ、帰りましょう!」
「バカ言わないで、今トートちゃんを渡してたまるもんですか!」
スクブスは立ち上がり、不意に攻撃の魔法を唱えてきた。
「うっ!」
見た目と裏腹に強力な攻撃を繰り出すスクブスにクロノワは圧倒されてしまう。
「暴力はいかんよ、暴力は。ここは話し合いでもしよか。な?」
「いい加減にしてください! ……いいからすぐ帰りましょう」
只ならぬ強い口調にトートは口をつぐんでしまう。
「勝手な真似は許さないから!」
再び攻撃の姿勢を見せるスクブスに対し、クロノワは魔法を詠唱する――
指先に炎が見えたかと思うと、スクブスは襲い掛かろうとした姿勢のまま固まった。
「刻止の神炎やな?」
「さあ今のうちに」
名残惜しそうにスクブスを見返すトートを抱えたクロノワは、別の呪文を唱え、その場から姿を消した。