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【黒ウィズ】レツィーユ

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最終更新者:にゃん
炎竜レツィーユ






いかにして己の力を高めるか。

炎竜レツィーユは、それだけを考え続けてきた。


世界の習わしに従い、本能のままより強い敵と戦い、打ち負かす。

ずっとそれを繰り返してきたレツィーユは、竜族のなかでも屈指の力を得

るに至った。

だが、まだ足りない。もっと力を高められるはずだ。

飽くなき欲求が、レツィーユを衝き動かしていた。


ただ、問題があった。

強敵と戦えば戦うほど強くなる――それが竜のサガである。

だが、今のレツィーユにとって“強敵”と呼ぶにふさわしい敵は、もはや世界にほとんどいなくなっていた。

もしも彼らと戦い、打ち勝ってしまえば、もう自分は強くなることができなくなる……


悩んでいた時、レツィーユは、ある竜が人と契約し、力を与えたという話を聞いた。

竜と契約した者ば竜人、と化し、授かった力をさらに強く練り上げていくのだという。


これだ、とレツィーユは思った。

己の力を強き人間に授ければ、その人間はどんどん力を練り上げていくだろう。

そうやって“強敵”を“育成”していけば、自分は永遠に強さを求められる。


レツィーユは、さっそく強き人間を探し求めた。

強大なる晃翼灼竜レツィーユが契約者を求めているという噂は、

すぐに世界全土を席巻し、我こそはという猛者たちが、次々と現れた。

そのほとんどは、まるで見込みがなかったが……

ひとりだけ、おそろしく好戦的な男がいた。



「かはは――くっははははははは!」

レツィーユの猛烈な打撃を受け、満身創痍となってなお、男は愉悦に吼えていた。

 「楽しいぜ――おい! 楽しくて楽しくてたまんねーぜ! くははははは!」

何度倒されようとも立ち上がる、不屈なる意志。

倒されるほど盛んに燃え上がる、戦いへの愉悦。

この男なら、自分の竜力をどこまでも練り上げてくれるだろう――実力も、人間にしては申し分ない。


遠い未来、“強敵”と化した男の子孫と立ち会うことへの喜びを覚えながら、レツィーユは高らかに宣言した。


『おまえを契約者として認めよう。我が力、受け取るがいい!!』


    * * *


――数百年の時を経て、レツィーユは男の子孫と避遁することになる。

だが……


「やや、貴殿が我が先祖と契約された竜にござるか! その節は、先祖がお世話になり申した!」


現れた“強敵”は、からからと朗らかに笑った。

あの男のような相手を想像していたレツィーユは、思わず硬直したが、動揺を押し隠して対峙した。


『我と戦えば、おまえはさらなる力を得られることになる。さあ、おまえの力を見せてみろ!』

「いや、申し訳ない。先日、我が力はほとんど消え去ってござる」

『……は?』

「そんなことより、レツィーユ殿。この近くに、まこと悪辣な盗賊団が砦

を構えておってな! 世のため義のため、かの者らの討伐にお力をお貸しいただきたい!」

『義……? なんだそれは?』

知らぬ単語に首をかしげると、青年は、自信に満ちた笑みで答えた。

「強さの秘訣にござる!」


――そうと聞いては、その“義”とやらがなんなのか、確かめないわけにはいかない。

それに、青年が竜力のほとんどを失っているというのであれば、

それを取り戻してやらぬことには、“強敵”と戦う機会を得られなくなってしまう。


レツィーユは、しぶしぶ青年と行動を共にすることになる――






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