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ツクモ・アラナギ

最終更新日時 : コメント(0)
ツクモ・アラナギ CV:
2017/00/00



ツクモ・アラナギは、寡黙かつ無愛想な少女だった。

必要最低限のことしか口にしようとせず、それ以外には感情らしい感情も表に出すことは無い。

器量は良かったが、それすら長い前髪に隠し、頑なに人との交わりを絶っていた。


理由は簡単だった。

彼女は人ならぬ力を持っていたのだ。それも強力な”過去視”の力を。

そして、その力ゆえに何もかもをなくしていたからである。


まず彼女は、生家のある村の人々に恐れられ、故郷をなくした。

故郷を追われた旅の途中、両親と弟を崖崩れの事故でなくした。

行く見世物のような扱いを受け、行き場をなくした。

絶望した彼女は自らの生命を絶とうとも思った。

だが、その能力を利用できると踏んだ金持ちに買われ、座敷牢へと幽閉され、死に場所さえも失った。

そして先日、運悪く屋敷が大火に襲われ、牢は焼け落ち、辛くも生き残った彼女は居場所を全て失った。


焼け跡から救い出された彼女は、色街の娘たちに養われ、いつしかその片隅で占いをするようになった。


その折、彼女は恋をする。とある壮絶な過去を持つ浪人の男に。

男はいつも笑っていた。胸に突き刺さる様々な過去の刃を、微塵も感じさせない晴れやかな表情。

太陽のようなその微笑みは、彼女の心を少しずつ、少しずつ溶かしていった。


彼女は思う。私も、こうなりたい、と。私も、この人のようになりたい、と。


恋は人を変えるという言葉があるが、それは彼女も例外ではなかった。

寡黙だった少女は、少しずつ思いを口にするようになり、下手くそながらも笑顔を浮かべる練習を始めた。

毎日、毎日、少しずつ。

話すのも、聞くのも、たくさん練習した。

そしてあの人が帰ってきた時は、せめて明るい笑顔で迎えられるよう。


彼女は今日も一人で空を仰ぐ。

あの人がいつかもう一度、私の話を聞いてくれるように。

その笑顔は、雲ひとつない晴れやかなものであった。



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