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Birth of New Order Story 序章

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Birth Of New Order (バースオブニューオーダー)




「にゃにゃ!?」

君とウィズは、またしても見覚えのない世界に飛ばされてしまった。

「毎度のことだから、もう驚かないけど………。せめて、心の準備ぐらいさせて欲しいにゃ。

それにしても、ここはどこだろうね? と都市全体を見渡す――直後、君は彫像のように固まってしまう。

「どうしたにゃ、いったい……にゃにゃにゃ!?」


宗教的な建物が、都市全体を見下ろすように建てられている。問題なのは、その背後だ。

宗教的なモニュメントというにはやたら威厳のある巨大な建造物が聳えている。


「あなたたちは、ここの生まれではなさそうですが、どちらからいらしたのですか?」

「どこからといわれても、なんと答えればいいのやら……。」

「旅の方ですか? この聖域で暮らしたければ、〈善〉の刻印が必要になります。刻印を得るためには、審判(・・)を受ける必要がございます。」

男は、襟元をめくって鎖骨を見せた。印章の形をした火傷の跡が、肌に痛々しく浮かんでいた。

「それがないと、どうなるにゃ?」

「聖域の外に追放されてしまいます。」

「騎士様や、聖職者に目をつけられないうちに、審判を受けるか、聖都から出て行くか、決めた方がいいと思いますよ。」

厄介ごとに巻き込まれるのは、ごめんだった。

とはいえ、男のように焼印を押されてしまうのも気が進まない。

「わかったにゃ。一応、その審判とやらを受けてみるにゃ。」

それしか道はない、とウィズは判断した。郷に入っては郷に従う。これまでの旅で得た経験から来る判断だ。

その判断が、間違ってないことを祈ろう。

「なにか困ったことがあれば、いつでも訪ねてきてください。〈善〉の刻印を持つ人であれば、歓迎いたします。」



君とウィズは、審判とやらを受けるために教えてもらった場所に向かう。

大聖堂へとつづく道。

そこでは、生まれたばかりの子どもを抱えた母親たちが、列を作って並んでいた。列は、都市の外にもつづいている。


「これ、みんな審判とやらを受けに来た人なのかにゃ?」

そんな面倒な手続きを踏まないとここに住めないなんて、不便なところだね、と君は言う。

「まったくにゃ。」


列は順調に消化されていき、ようやく君たちの番になった。

「お前たちは旅のものか?この聖都の住人でない者は、外の列に並ぶ決まりなんだがな。

君は、余所から来たばかりでなにも知らない。道行く人に、審判を受けるように勧められただけだと伝える。

「この聖域で暮らせるのは、〈善〉と判断された者のみ。〈悪〉と判断された者は、ここから出て行ってもらう。よいな?」

「私たちは、なにも悪いことしてないにゃ。ふたり揃って善人にゃ。」

「それは、大審判獣様が決めることだ。」

背後に聳える巨大なモニュメント。あれが、大審判獣と呼ばれるものらしい。

聖職者は、大審判獣様とやらに芝居がかった調子で頭を下げて審判の結果を伺った。

「まず、旅人のお前に大審判獣様の審判が下った。

お前は、〈善〉なるものと判断された。聖域で暮らすことを許可する。おめでとう。」

「当然にゃ。キミが、悪人のはずがないにゃ。」

「もうひとつ審判が下された。そこの黒い猫。大審判獣様は、貴様を〈悪〉だと審判なされた。」

「なんでにゃ!?どうして私だけが〈悪〉にゃ!?」

「理由などない。大審判獣様が下された判決は絶対である。いますぐこの聖域から出ていけ!」

君は、袖の中に隠したサイコロのようなものを見せてくれと聖職者に言った。

「なんだと!? 神聖なる審判が、サイコロで決められているとでも言うつもりか!?」

その言葉を合図に、他の聖職者たちが、一斉に群がってきた。君からウィズを引き離そうとする。

君は、それに抵抗する。抵抗の意思ありとみなされ、周囲が、―気に慌ただしくなった。

「聖域の戒律に背く者は、誰であろうと重罪だ。それをわかって抵抗するのだな?」

戒律など関係ない。こんな見知らぬ土地で。ウィズと引き雌されたくない。その一心だった。

君は、なんとか逃げ出す道を探そうと視線を走らせた。


「お前たちは、狼籍者ひとり、速やかに取り押さえられないのか?」


静かな怒りを秘めた声と共に男が現れた。ほかの聖職者たちとのちがいは、全身を包む装束と――

男が背負っている奇妙な形の剣。柄まで刃の剣など、君ははじめて目にする。


「俺は、執行騎士のリュオン……。事情は聞かせてもらった。

審判獣が下した判決は絶対だ。そして、俺には、戒律に従わないバカを裁く権限が与えられている。」

「リュオン様のお手を煩わせるな! 大人しく、戒律に従え!」


どうしてもウィズと引き離そうとするなら、こちらにも覚悟がある。

カードを引き抜いて魔力を込め、叡智の扉の向こうからの呼びかけに応じる。

魔法発動。集まった聖職者たちに直接危害を加えないように、彼らの足元へ魔法をぶつけた。

この世界では、魔法が珍しいようで、威嚇手段としては効果抜群だった。


「執行騎士リュオン様! こやつは大罪人です。刑の執行を求めます!」

リュオンは、心の中で舌を打った。思った以上に面倒な狼籍者だ。

切っ掛けを作ったものを睨み付ける。

「し、失礼いたしました。どうか……お願いします。」


リュオンは、鎖を手にする。柄の無い剣を、いかにして扱うつもりなのか。


「定められし戒律を破る者に天の裁きを――

審判獣ネメシス。我と汝の契約に従い、罪人を処断する力を。」


背負った刃が中空に飛び上がる。

柄のない十字の剣は、まるで血肉が通った生き物のように宙を自在に動き回っている。

――あの鎖で操っているようなら鎖を切り落とせば済むと思ったのだが、どうやら簡単にはいかないようだ。

「逢か昔より伝えられし英雄の中に、魔法を使う賢者がいたと聞く。だが、実際に魔法を使う奴を見るのは、はじめてだ。」

十字の剣は、宙で旋回し、君を襲った。君は防御結界を張り、攻撃の手から逃れる。

そのような攻防が、二度、三度つづいた。リュオンは、表情を一切変えずに、淡々と君を、ある場所へ追い詰めていく。

「その黒猫は、お前のなんだ? 命を懸けてまで、守る必要があるのか?」

ウィズは単なる黒猫じゃない。師匠だと君は答える。

「その黒猫がお前の師匠だと? ……ふざけているわけではなさそうだな?」

「キミ、うしろを見るにゃ!」

聖職者たちが、武器を持って君たちを捕まえようと取り囲んでいた。

その背後には、騒ぎを聞きつけて集まった野次馬が、人垣を作っていた。

「あいつ、偉そうなことを言う割りには、距離を取るばかりで、なにもしてこないにゃ。キミ、隙を見て逃げるにゃ。」

ウィズの言葉に従い、君は後に飛び下がった。

「そうだ。その位置に立って欲しかったんだ。」

「にゃ?」

頭上で、重たいものが切断された音がした。

十字架の形をした剣|が、君の頭上に聳え建つ、尖塔の先端を切断――

「危ないにゃ!」

ウィズが叫んだ時には、もう遅い。

君は、落下してきた塔の破片を頭に受けて……意識を失った。



 ***




牢獄に叩き込まれて、一週間ほど経っただろうか……。

その間、君の側にウィズはいなかった。

気を失っている間に、引き離されてしまったらしい。己の不覚を呪うしかなかった。

「お前の師匠は、いまごろインフェルナにいるはずだ。会う方法は、ひとつだけある。

俺たちはいま戦争をしている。インフェルナという、聖域から追放された奴らとな。」

審判などというあんな強引なやり方で住人を選別していたんじゃ、反発を受けるのも当然だと君は告げる。

「だが、聖域は異物を排除してきたおかげで平和を保てている。くだらん感傷など、なんの役にもたたん。」

冷酷で冷静な男。きっと情に流されるタイプではないと君は分析する。

この男のせいで、君はウィズと引き離されてしまった。君にとっては憎い敵……。

「あの黒い猫に会いたいか? ならば、俺たちに手を貸せ。戦場に出れば、インフェルナの奴と嫌でも顔を合わせる。

お前の師匠を知っている者と出会えるかもしれんぞ。」

ウィズと再会できるのであれば、どんなことでもするつもりだった。

問題なのは、このリュオンという男が、約束を守ってくれる男なのかどうかだ。

「俺と来い。魔法を使えるお前は、貴重な戦力になる。黙って、俺のしもべとなれ。」

しもべになれとは、完全に隷属しろということか? 誰がお前のものなんかに――怒りと共に吐き捨てる。

とつぜん、顔面の真横に強い衝撃を受けた。

リュオンの足が、君の背後の壁を蹴ったのだ。蹴った衝撃で、壁が崩れ落ちた。

「俺は強制は嫌いだ。だから、一応聞いたまでのこと。ハナからお前に選択権はない。

お前は、旅の人間だから知らないんだ。聖職者がこの聖都で、どれほどの地位を持つかを。」

彼らに逆らった君は、たとえ〈善〉だと審判されていたとしても立派な重罪人だと告げられる。

よくて終身刑。下手をすれば死刑もありうると――

「この牢で死にたくはあるまい?

だが、俺のしもべになると誓えば、俺の力で、お前を牢から出してやれる。師匠とやらにも会いに行ける……。」

だれが敵に下るか、と言いかけたが、ふと思い直す。

いま優先すべきは、意地を張ることじゃない。ウィズを探しに行くことだ。

脱獄するには、相当なリスクが付きまとう。リュオンに従えば、牢の外には出られる……。

しばし考えたのち、君はリュオンに従うことにした。

「では、お前は今日から俺のものだ。異論があるとは、言わせんぞ。」

牢が開け放たれ、君は出獄する。

うーんと大きく背伸びをする。肩にウィズがいないのは、やはり寂しい。

開放感もそこそこに、いつ出発するのか訊ねた。

「出発は明日だ。俺に従属している以上、お前の衣食はすべて面倒をみてやろう。師匠とやらを探すのも手伝ってやる。

お前は、魔法で戦闘に貢献すればいい。多くは望まない。」

口ではそう言っているが、人を根本から信用していない目をしていた。

この男の本性は、いったい善なのか悪なのか、君には判別できなかった。

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