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Birth of New Order Story1

最終更新日時 : コメント(0)
開催期間:2017/00/00

目次


Story1 向かうべき場所

Story2 蠍型の審判獣

Story3 遺されしもの

Story4 それぞれの傷





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story1 向かうべき場所



「おい、新入り。起きろ。先輩が起きてるのに、新入りのお前がいつまでも寝てるんじゃねえよ。

君の頬が、固いもので突かれている。

の冷たい風を吸い込みながら、君は目を覚ます。

「朝飯だぜ。さっさと起きて支度しろよな。まったく、だらしない新入りだぜ。

彼の名前は、マグエル。リュオンに付き従う、謎の生き物……ということ以外、すべてが謎だ。


1起きたか、魔法使い。スープが出来ている。さっさと食え。


リュオンは、たき火に乗せた鍋の中身を丁寧にかき回していた。

先程から、漂う匂いの正体はそれだったのか。それ、リュオンが作ったの、と君は訊ねる。

1衣食は俺が面倒を見ると言ったはずだ。だが、口に合わなくても俺は知らん。

大きなスプーンで中身をすくい出し、味見をする。

1うぐっ……。今日も、50点の出来だ。だが、俺のスープは、味じゃない。必要な栄養は、十分摂れる。

食べる気をなくす一言。君は、早くもリュオンの側から逃げ出したくなった。

スープを取り分けてもらった皿を覗き込む。中には、キノコや野草のようなものが、混ざりあって煮込まれている。

匂いはまだいいが、見た目は最悪だった。

固いパンと一緒にスープを口に含む。どろっとした食感と苦みが口腔を支配する。うっ、予想以上にまずい……。

mまずくても食いやがれ。栄養つけねえと、戦場で生き残れねえぜ?

そう言うマグエル先輩は、スープは口にせずにパンの切れ端を、くちばしで突いている。

君は、嫌々スープを口に運ぶ。

第一印象は最悪だったが、食べていくうちに、舌が慣れてきたのか、食べられなくはないな、と思いはじめた。

「これ、癖になりそうな味にゃ。」

もし、ウィズがこのスープを口にしたら、なんと言っただろう?

ウィズのことを思うと、目に涙が浮かぶ。いまどこで、なにをしているだろう? どうか、無事でいて欲しい。

r寝てる間にお前の外套を洗っておいた。

着慣れた外套が、几帳面に折りたたまれて君の側に置かれている。

r俺のものになったということは、お前も聖堂の騎士団の一員だ。あまり、みすぼらしい格好はするな。

衣食の面倒は見ると言ってたが、まさか、洗濯までしてくれるなんて。なんだか申し訳ない。

m聖堂から支給される服を着たければ、都合してやってもいいせ。な?

ありがたい申し出だが、ウィズと再会した時に、向こうが、見つけられないと困る。

だからいまの格好のままがいい。君は、マグェルの申し出を丁寧に断った。

mそうかよ。好きにしろよ。着たい服を着るのが一番だ。でも、おいらに服は必要ないけどな。


影が近づいてくる。リュオンと同じく、執行騎士の証しを身につけた女性だ。

鎖のついた鎌を引き摺っている。その切っ先は,背筋がぞっとするほどの鋭さだった。


「あら、お目覚め? あなた、死んだように眠っていたわよ?

リュオンと同じ執行騎士のラーシャを紹介された。

l魔法を使うんですって? まるで、伝説に出てくる賢者様ね。


ラーシャもリュオンと同じく、卿堂とその周囲の聖域を守護する執行騎士だ。

ただ、執行騎士は、ひとつの聖域にひとりだけしか、存在しない決まりがあった。

ラーシャが守っているのは、ここから、はるか遠くにある聖域だという。


l魔法使いさんとは、いつか戦ってみたいわ。

きっと大地を割り、雷鳴を自在に轟かせて、審判獣すら、一撃で葬るのでしょうね。


期待を裏切って悪いが、大地を割る力も、雷鳴を自在に轟かすことも出来ない、と君は答える。

話しながら、ラーシャはスープをすくって口にする。

lうん。苦みがあって、野菜は芯が残ってて、舌触りの悪いざらざら感があって、砂を呑んだように喉ごしが悪い……死ぬほどまずいわね!

やっぱり、まずいのか。それでもラーシャは、食べるのが義務だとばかりに、スープを口に運んでいく。

rそこまで、まずくはないだろ……。

まずいと自覚していたリュオンも、少々むっとしたみたいだ。


食事が終わり、君は話を切り出した。

大聖堂の背後に聳えていた審判獣――とは、いったいなんなのか、ずっと気になっていたことを訊ねた。

l大地の支配者よ。人間を生かすも殺すも審判獣次第。人は、それに従うだけよ。

聖堂が〈聖域〉と呼ぱれているのは、聖職者たちが審判獣を祀っており、彼らの庇護を受けているため。

〈悪〉の焙印を押された人たちは、聖域以外の場所で、審判獣の怒りに触れないように、ひっそり暮らすしかないのだと説明してくれた。

l悪と断罪された人々のことをインフェルナ人と呼んでいるわ。


r審判獣は、聖域で暮らす者たちだけを庇護するが、最近になってインフェルナに味方する奇特な審判獣が現れた。

俺たち執行騎士に、その審判獣を処断せよとの命令が下った。いまから、そいつを討伐しに行く。

l殺された、私たちの仲間の仇を討ちに行くのよ……。


風が、森の木々を揺らす。

場は、静まり返っていた。森の葉と枝が、互いに打ち合う音だけが響いた。


仲間が、殺されたの? と君は沈黙を破って訊ねる。


l執行騎士サザ・ヤニタ。それが、殺された仲間の名前よ。

r殺したのは、撒のような尾を持つ審判獣だという情報は得ている。俺たちは、これからその審判獣を探して罰を下す。

lこれから私たちがするのは、ただの復讐よ。いきなり、こんな過酷な任務に付き合わせちゃって悪いわね~?


と言って、ラーシャは高らかに笑う。

どれだけ声をあげて笑おうとも、その笑顔の裏に隠された悲壮感は、隠しおおせてはいなかった。



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story2 蠍型の審判獣




「おーい、魔法使い。お前の肩、乗り心地がよさそうだな。おいらを乗っけてってくれ。

マグエル先輩は、鳥のような見た目をしている。飛べないんですか? と君は言うと。

「あ、ソコを突いちゃう? 人が気にしてる柔らかい部分突っついちゃう?

飛べないことを気にしていたようだ。傷つけてしまったお詫びに肩に乗せてあげることにした。


「よいしょ……。よいしょ……。ふう。ここは、見晴らしがいいぜ。

いつも、ウィズが乗っている場所に、いまは鳥なのか、なんなのかわからない生き物が乗っている。

しかも、マグエル先輩の体の表面は、ちょっとだけ湿り気を帯びてて不快だった。

「乗せてくれたお礼にさ、おいらのポケットに入れてあるお菓子食べていいぜ。リュオンたちには、内緒だけどな。

マグエル先輩は、お腹にあるポケットを手(?)で示す。


「おいらの手じゃ、ボケットに届かないから、勝手に手を突っ込んで取ってくれよ。

それで、どうやってお菓子をしまい込んだんだろうと思いながら、君は、マグエル先輩のポケットに手を突っ込んでみた。

中には、砕けたビスケットが入っていた。

「あっちゃー、割れちゃってたか。ビスケット以外にも、いろいろ入ってるはずだから、遠慮すんなよな。

いや、いいです。と君は断ってから、手を引っ込めた。

緑が生い茂る深い森の中を、リュオンたちは、黙々と進んでいく。

「ようやくサザの仇を討つ許可が、聖堂から下りたんだ。これで遠慮することなく蝋型の尾を持つ審判獣を討てるってもんだ。

リュオンたちは、君にわからないような些細な手がかりを辿りながら、標的の足取りを追いかけていた。

リュオンは、ふと足を止めて、近場にある木を突然蹴った。


「うわわわっ……。びっくりさせないでくださいよ!」

少年は、木の枝に寝転がって、果実を食べていた。


rシリス、お前は斥候だろ。情報はどうした?

sいま、報告しようと思ってたんです。やだなー、そんな恐い顔しないでくださいよ。

この先に標的とおぼしき存在がいます。警戒してください。

「早く言えよな! ……で、そいつは、標的で間違いないのか?

sこれまで見たことのない審判獣です。いや、あれは審判獣と言っていいのかな……?

蠍のような尻尾を持っていますが、身体の半分が人間なんです。あんなの初めて見ました。わかりません。

僕の蛇(・)が、監視をつづけています。戦うのか。逃げるのか。判断するのは、リュオン団長です。

シリスと呼ばれた少年は、隣の木に飛び移り、また他の木に飛び移って、君たちの視界から消え去った。

飛び移った先の木の枝は、ほとんど揺れなかった。その機敏な身のこなしは、相当な訓練を積んだ証しだ。

mあいつも、執行騎士のひとりだ。おいらたちの仲間で、チームの斥候役だ。

音を立てずに移動する身のこなしや、気配の断ち方など。斥候役として、これ以上ないほどの適正を感じる。

r思ってた以上に、近くにいたな。これでようやく、仇を討てる。


リュオンたちが探していた標的は、たしかに進んだ先にいた。

見た目は、普通の少女。

違うのは、皮膚に密着する殼衣(・・)と呼ばれる外装の存在。

そして、彼女の容姿と相反するように禍々しい殺意を放つ、鋭い先端を持つ尾。

lあいつよ。……サザを殺した審判獣よ。間違いないわ。

聖都で見た巨大な審判獣とは、サイズがまるっきり違っていた。あれも審判獣なの、と君は訊ねる。

mおいらも、あんなのを見るのは初めてだ。審判獣かどうかは、戦ってみればわかるはずだ。

r俺が先に仕掛ける。ラーシャは、俺の邪魔にならないよう適当に援護しろ。

魔法使い、お前は俺の背中を守れ。殺されたサザは、背中からやられていた。あの尻尾は警戒する必要がある。

いきなりの実戦。実力も判らない相手だと言うのに、リュオンはラーシャではなく、君に背中を預けるという。

rお前が俺の背中を守るということは、お前の背後には、常に俺がいるということだ。その幸運を天に感謝しろ。

思いがけない、優しい言葉。初めての実戦で不安を感じている君への気遣いだろうか。

mそれにラーシャは、人の背中を守ることには適さないもんな。戦いになると、自分のしたいことしかしなくなるからな。

l失礼ね。戦いに狂っていたのは、若い頃の話よ。昔に比べて、多少は周りに目を向けられるようになったわ。


「誰……?」


l気づかれたわ。

もう隠れている意味はない。リュオンと君は、同時に木陰から飛び出す。



zあなたたちね? 聖域を守る騎士というのは……?

少女の声にリュオンは、首をかしげる。

r会話するだと……? 俺たち執行騎士以外に、審判獣と同調できるやつがいるのか?

少女の姿をしたそれ(・・)は、人間らしい意思を持ち、人間臭い動作で、こちらの気配を探っている。

r執行騎士リュオン。インフェルナに味方する審判獣に告げる。

聖皇(せいおう)に代わって、我ら聖堂の執行騎士が、汝をここで処断する。

l仲間の仇よ。覚悟しなさい。


「あなたたち聖堂の騎士さえ倒せば、戦争は終わると聞いたわ。だから、私も躊躇わない……。


少女の姿が忽然と消えた。

居なくなったのではない。瞬きする間に君の目の前まで距離を詰めたのだ。

鋭い先端を持つ少女の尾が、君を穿たんと迫っている。間に合わない!


r魔法使い! 死にたくなければ避けろ。

君は、とっさに上体を反らす。すべて刃で出来た剣――傑剣が、鼻先をかすめていく。

傑剣が鍬の尾を弾き返すと、少女は怯んだ。


「――さすがね。

でも、私だってインフェルナの戦士。殺されたインフェルナのみんなのためにも、ここであなたたちと決着をつける!


リュオンと獄型の審判獣。お互いの殺気がぶつかり合い、どちらからともなく戦闘が開始された。

君は、約束どおり彼の背中を守るべく、カードを引き抜いて戦闘に加わった。



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story3 遺されしもの



「きゃああああっ!」


襲い掛かる凶刃。

メルテールを寸前のところで救ったのは、半審判獣の少女だった。


「ありがとう。助かっちゃった。」


仲間を救った半審判獣の少女は、悲しげに振り返る。

鮮血に染まりながら息絶えているのは、聖域を守るサンクチュアの騎士。

小女は、はじめて人の命を奪った。戦場に出る以上、覚悟は出来ていた。……はずなのに。


様々な思いを断ち切って、少女はその場から立ち去った。



 ***



サザ・ヤニタが死んだ。

第4の聖域を守る執行騎士のひとりであり、優秀な騎士だった。

「サザを殺したのは誰だ?」

審判獣と契約した執行騎士には、契約の際に差し出した代償に応じた力が与えられる。

並の人間の手にかかって命を落とすなど、ありえない。

「答えろ、ラーシャ。誰が、サザを殺した?」

冷たくなったサザの骸を抱いたままラーシャは、徴動だにしない。

「蠍のような尾を持った人……いえ、あれは審判獣だったわ。鋭い尾の先端でサザを背後から串刺しにしたの。

サザ……。あなたへの返事、まだしてなかったわね。」

溢れ出る感情をぐっと抑えつつ、ラーシャは冷たくなった手を握る。

執行騎士は、その身を審判獣に捧げたも同然の存在。ゆえに、伴侶を持つことは許されていない。

「あなたは、かけがえのない仲間であり、同し志を持つ騎士であり、頼もしい相棒だったわ。

私の兄にも等しい存在であり、よき相談相手であり、心の半分を預けたも同然の人だったわ。

そのあなたが、どうして私に指輪をくれたの? 私、よくわからなくて、まだ返事をしてなかった。」

死んだ人間から、答えが返ってくることはない。ラーシャは、胸の内側に冷たい風が、流れていくのを感じた。


「どこに行かれるつもりですか?」

立ち去ろうとするリュオンの行く手を少年が塞ぐ。

「サザが死んだ。俺には、兄同然の存在だった。ラーシャの哀しみは、俺の哀しみだ。」

「我々は執行騎士です。相手が誰であれ、審判獣の判決が下っていない相手に手は下せません。わかっているはずです。

「シリス、そこをどけ。

「リュオンさん。……これからは、あなたが我々執行騎士の団長になるんです。

これから僕たちを引っ張っていく立場のあなたが、いきなり戒律違反だなんて……。大教主様に知られたら、まずいですよ。

「戒律……。戒律……。戒律……。なにかとあれば、俺たちを縛ろうとする。いい加減うんざりだ。

俺は、仇を討つことが出来ないのか? 親しかった仲間の仇も、自分の意思で討てないのか?

「審判獣が、対象を〈悪〉だと断罪すれば動けます。審判が下るのを待ちましょう。

「くそ……っ。くそおおおおおっ!

「柱に当たってもなにも解決しませんよ。あーあ、血が出てるしやないですか。治療しますから、そこに座ってください。

「……いらん。俺なんかよりも、ラーシャのことを気にかけてやれ。


リュオンたちは、サザの亡骸を丁重に葬った。

ラーシャは、埋めた亡骸に向かって、太古の昔、英雄たちへ贈られた歌を鎮魂歌として口ずさむ。

切々と流れる旋律は、ラーシャの故人への思いと混ざり合って、それぞれの胸に刻まれた哀傷をえぐる。


「ところで………ササが、生前言ってた言葉なんだけど、これ、どういう意味かわかる?

我々執行騎士にも、いつか信じる正義が見つかる。その時、いまの己の立場と見つけた正義。どちらかを選ぶことになる――

「せいぎ? ……“せいぎ”とはなんだ?

「私もわからなかった。だから、サザに聞いたの。すると彼は、私の胸を指さして、ここにあるものだと答えたわ。

リュオンには、意味がわからなかった。

ただ、サザは時々本で読んで知った言葉を教えてくれることかあった。

「本を良く読む人でしたからね。きっと大昔の人たちが持っていた概念しゃないでしょうか?

「俺たちは、執行騎士だ。聖域の民と聖職者たちを守るために武器を振るう。余計なことを考える必要はない。

いま考えるべきは、サザを殺した審判獣を探し出すこと。

執行騎士として、聖域を守るものとして、使命を全うする。立ち止まる暇などない。


「サザ。これで永遠の別れだ。あんたを討ったインフェルナの審判獣は、俺が討つから安心して眠れ。

あんたが残した“せいぎ”という言葉の意味を探しに行くのは、そのあとだ。」


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story4 それぞれの傷



小さな影が木々の間を疾走し、十字型の刃が、新緑の壁を切り裂きながら、それを追走している。

リュオンの肉体と鎖で繋がれた執行器具――傑剣(スタヴフォス)。

穎敏な動きで、舞い散る木の葉を切り裂き、審判獣の少女が向かった先へと回り込む。


「厄介ね。剣に、追い回されてるみたい。

少女は、自ら攻めようとはせず、機敏な身のこなしで森の中を駆け回り、こちらを翻弄する。

r女……。ひとつ聞かせろ。お前は、本当に審判獣なのか?

「私からも聞かせて。あなたたちが守護するのは、聖域の民だけなの?

向こうは、リュオンの質問に答える気がないようだ。

リュオンが、鎖を引いて傑剣を引き戻す。そのタイミングで君は魔法を発動した。

この一撃は――しかし、目くらましにすらならない。

m魔法使い。休んでいる暇はねえぞ。もうー度だ!

もう一度?

リュオンの傑剣が、空中で浮き上がり、大きく旋回して戻ってくる。この機を逃すなという意味だと君は受け取る。

背後から迫る危機を感じて、審判獣の少女は、飛び上かって傑剣を避ける。

狙いどおりだった。君は、宙に浮いたイスカに魔法を放った。

「きゃっーー!

女性らしい悲鳴。肉体的ダメージは、微々たるものだろうが、今度は、目くらまし以上の効果はあったはず。

l死角から、失礼するわね。

怯んだ機会を逃さないとばかりに、ラーシャの執行器具である大きな鎌が、空を切り裂く。

リュオンが、全刃の傑剣を得物とするなら、ラーシャは、鎖で繋がれている湾曲した大きな刃を得物とする。

その半月型の刃の鎌をラーシャは、執行器具――首狩り鎌と呼んでいた。

lサザが死んだ時、去って行くあなたの背中を眺めることしかできなかった。

いまは後悔しているわ。どうしてすぐに、追いかけて地獄の果てまで追い詰めなかったのかって。

蠍型の審判獣の尻尾の先よりも鋭く研がれた切っ先は、一度食い込めば、少女の硬質な殻衣を突き破るだろう。

lふふっ、私の鎌。よく、しつこいって言われるの。一度、狙いを付けたら、いつまでもいつまでも付きまとうから……。

あまりにもしつこくて、やがて敵は、大人しく殺される方を選ぶの。あなたは、どこまで粘ってくれるかしら?

追尾する復讐の鎌。イスカは、華麗な身のこなしでそれをかわす。

だが、君の魔法。そして、リュオンの傑剣の波状攻撃は、少女が対応できる範囲を超えつつあった。

mどうやら、頭上に目は、ついてないようだぜ!

傑剣が大きく旋回し、空から少女を襲った。

「くっ――!

審判獣の少女は、右手でそれを受け止めた。その隙を衝いて急襲するラーシャの鎌。

l言ったでしょ? 私の鎌はしつこいって……。

「たしかにね。でも、このぐらい素手で受け止められる!

少女は、やむなく鎌も手で受け止めて防ぐが、かすり傷ひとつついてない。その殼衣の堅強さは、さすが審判獣というところか。

だが、これで少女の両腕は塞がった。

上空に飛んで逃げようとする少女だが、その足に、蛇腹のついた鞭状の物体が、巻きついた。

s接近戦は苦手ですけど、後方からの支援なら、いくらでも助太刀しますよ。

4人を相手に互角に立ち回った技量は、敬服に値する。

だが、両手と足を塞がれた以上、少女に打つ手はない。勝負は決した。

r魔法使い。とどめはお前に譲ってやる。あの娘を、ここで灰にしろ。


君にだって、これまでの旅で培ってきた戦闘の経験と知識がある。

ここで躊躇すれば、せっかくの好機が失われ、味方に再び危機が訪れるのは必定。

――ゆえに、躊躇う理由などない。


カードを引き抜く。君は、魔力がつづく限り、全力で魔法をぶち込んだ。

二度と立ち上がれないよう、魔法による衝撃で、圧倒し、圧倒し、圧倒し尽くす。

黒煙と爆圧に押しつぶされ、蠍型の審判獣は、悶え苦しんでいた。


l避けて!


煙の中から、素早く動く細長い影が飛び出してきた。

それが、蠍型の審判獣の尾だと気づいた時には――

君は、赤い血の雫を腹部から滴らせていた。

だが、タダではやられない。君は、蠍の尾をつかんでその動きを封じた。


rよくやった。お前の受けた傷、流した血を俺は決して無駄にはしない。

傑剣が飛翔する。剣光が一閃走り、君を襲った尾の先端を切断することに成功した。

赤い人間のような血が飛び散った。審判獣の少女は、悲鳴をあげる。


r執行騎士サザを殺した審判獣。貴様は、ここで死ぬ。

lサザが受けた痛み。苦しみ。未練。後悔。哀切。別離。すべて飲み込んでもらうわ。

r死ね。


審判獣が哭いた。少女の声ではない。その身に宿る因果の血脈が咆嘩をあげているのだ。

人間の耳では絶えられないほどの音域と音圧。たまらず、君たちは両手で耳を塞いだ。


「聖堂の騎士たちよ。また、会いましょう。

少女は、空へと飛び上がる。

青い空に高々と舞い上がると、まるでこの大陸の支配者のように、地上を見渡してから……。

どこぞへと飛び去っていった。


r逃すか! マグエル、飛べ!

mだから、おいらは飛べないんだって! て、知ってるだろうが!?

r魔法使い、お前は?

悔しいが、魔力はもう使い切った。君は、残念そうに首を横に振る。

rくそっ。


サザの冷たくなった死に顔が、リュオンの脳裡に浮かぶ。

兄であり、仲間でもあったサザの死は、リュオンの心に消したくとも消せない〈後悔〉の刻印を刻んだ。

それを消す方法は、仇である審判獣を斬ることのみ。そう思って臨んだ戦いだったが……。


rあそこまで追い詰めておきながら、取り逃がすか……。無様だな。

lサザも、笑ってるでしょうね。

mそれよりも魔法使い、腹の傷は大丈夫かよ?

問題ない。かすり傷だよと君は、ケロッとした顔で答える。

リュオンが無言で君のお腹に蹴りをぶち込む。君はたまらず咳き込んだ。


r嘘はついていないようだな? 身体を張って戦闘に貢献したことは、褒めてやる。傷の手当をしておけ。


大丈夫だったのに、今の蹴りで逆に深傷になったかも。と君は、芝居がかった調子で大げさに倒れこんだ。

リュオンは、気にせず立ち去る。

そんな小芝居ができるなら平気だろう、と心の中で笑われた気がした。


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~ 白猫プロジェクト ~
登場人物画像ストーリーテニスの話

~ 黒猫のウィズ ~
登場人物イラストストーリー

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