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st.Valentine2016 エリアナ編 Story

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st.Valentine2016 エリアナ編 Story
開催期間:2016/00/00

目次


Story1 ふたりの出会い

Story2 彷徨い歩く

Story3 新しい道へふたりで




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story1



いまはもう、忘れ去られた男の墓がある。

森の奥。しっとりと闇に包まれた場所に彼は眠っている。


「かつて軍神と呼ばれた男。……幾万もの兵をたったひとりで打ち倒した男。」


もう何年も人が訪れることが無くなったその場所にか弱い足音を立てて、その少女は現れた。

エリアナ・グロス。彼女の名である。

エリアナは軍神と呼ばれた男の墓に、願いを抱いてやってきていた。

墓の下に眠る男に願い? とても奇異なことのように思えるが、彼女にとっては――

それ以外の方法がなかった。

死者にすがるより手がなかった。


「早くしないと……。」

彼女の行いを見て人はどう思うだろうか。

おそらく、彼女が狂っているか途方もない絶望を背負っているか、そのどちらかだと思うだろう。

だがこの場合……。

彼女はその両方だった。ほんのひと時、この時だけは、そうだった。


自分ひとりを逃がし、処刑台の羊となった一族を救うため、エリアナはここに辿り着いた。

墓の下の男に救いを求めて、幽鬼のようにゆらめき誘われた。


 ***


「これが……。」


森の奥に、墓碑がひとつあった。

長い間、風雨にさらされたことで墓碑の文字は擦り切れていた。

それが誰の墓であるか……。もはや彼女にとっては大した問題ではなかったのかもしれない。

エリアナはひざまずき、祈り始めた。

「この身体、命、すべて捧げます。だからお願い。助けたい人がいるの……。」

そう願う者は多いだろうが、本心から願う者は少ない。

ただ彼女は本心から願った。彼女をとらえる深い絶望がそうさせた。


彼女は瞑目し、祈りを捧げる。


数秒や数分といった程度ではなく、数時間でもない。

数日そのまま祈り続けた。


彼女は狂っていた。静かに、穏やかに、一途に、『救いたい』という願いに、狂っていた。

彼女の想いにつられるように、ほんのわずかな時間、世界も狂った。

墓碑の上に現れた魔法陣から白銀の騎士はゆっくりと浮かび上がる。

「……ありがとう。」

薄れてゆく意識の狭間、わずかにその姿を見て、うわ言のように眩いた。


安堵の中に眠るエリアナを、銀の腕が抱き止める。

片腕に彼女を抱いたまま、白銀の騎士は周囲を見渡した。

少女が歪めた理は、白銀の騎士とともに人ならざるものを呼び起こしていた。

彼らにとって少女の身体と命は、彼女の願いの代償である。

くれると言ったものを、受け取りに来ただけなのだ。

だが、白銀の騎士は――。

『…………。』

それを認めなかった。


 ***


奇妙な夢を見た。私はそう思っていた。でも目が覚めた時、夢は現実だと知った。

「……うん。……あっ。」

目を開けると、エリアナは自分が騎士の腕に抱かれていることに気づいた。

意識を失う間際に見た光景が、幻でも夢でもなかったこともその時ようやくわかった。

背中に当たる鐙は固く冷たかったが、それでも疲労で重たくなった身体にとっては――

心地が良かった。彼女を安堵させ、安らぎを与えた。

そのままもう一度眠りかけたエリアナは、再びまぶたを上げる。

彼女は自分の願いを忘れていなかった。

「ち、違う……! 騎士さん、ここじゃないの。私が助けたい人が別のところにいるの!」

『…………。』

懇願する彼女の声を聴いても、白銀の騎士は動こうとはしなかった。

肯定とも否定とも判別できない沈黙を続けた。

「ねえ、動いて。お願い! 言うことを聞いて! 私には、私には……。」

救いたい人がいる。

一心不乱に唱え続けていた言葉は、不意に偽りの殼を破り、本当の姿を見せ、彼女の口を出た。


「……殺したい奴らがいるのよ!」

彼女の偽りのない言葉を聞いても、騎士は沈黙を続けた。

腕の中で暴れるエリアナをいさめるように、抱き止めたまま。



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story2



私は、私の願いを叶えられなかった。……私はただ、この世の理を曲げた。

たぶん私は、狂っていたんだろう。



街道を行く足を止め、エリアナはふと自分のつま先を見つめた。

そのつま先を背後から大きな影が覆う。彼女のあとを追っていた重たい足音も止まる。

『』

彼女は影の方を見やる。

『』

「どうしてついてくるの? 私の願いは……。助けたいと思う人たちはもういないの。

私にはなんの願いもない。……だからあなたは必要ない。」

『』

好きなところにいけばいい。どこかの街でも、国でも、土の中でも……。どこへでも。

私のそば以外ならどこへでも。……さよなら。」


彼女はその場を足早に立ち去る。 

けれども彼女の足音に続き、鉄を打つ音、軋む音が後を追ってくる。


「もう! どうして付いてくるの! 私を自由にして!」

エリアナは逃げるように駆けだした。懸命に足を前へ前へと運ぶ。

少しでもあの怪物から遠ざかろうと駆ける。自分が生み出した狂気から逃げ出すために。


「はあ、はあ、……や、きゃ! 痛……。」

『』

白銀の騎士は、転んでその場にうずくまる彼女の華奢な身体を優しく抱え上げる。

「やだ! 離して、離して!」

抵抗するエリアナは滅茶苦茶に暴れて、騎士の顔や胸を思い切り蹴り飛ばすが、

「い、痛ーい。」

ひ弱な彼女の足の方が悲鳴を上げてしまう。


何事もなかったように、騎士は彼女を肩に乗せて街道を進み始める。

そこまでいくと、エリアナも大人しく彼の肩に収まっている。

なにより、足が痛くてそれ以上歩けそうもなかった。



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story






「命まで奪うことはないわ。」

エリアナが騎士の肩をひと際強く握りしめた。

「ありがとう。とりあえずあの人たちを懲らしめましょ。」

応じるように、騎士は大剣を抜き放つ。

お願い、力を貸して。」

ううん。私たちがやらなきゃいけないことが見つかったの。

「ねえ、少しだけやってみたいことがあるの。力を貸してくれる?

彼女の街を襲い、彼女の一族をだまし討ちにした者たちのように。

そしてその街の警護を担う者をだまし討ちするとともに街を襲撃する。

彼らは必ず襲う街を下見する。配下の者を街に忍び込ませる。

戦術と統率を以って都市を襲う。

野盗といっても以前は騎士団を名乗っていた者たちや傭兵団崩れの者たちの集団である。

彼女がそう思ったのは、かつて父親が野盗の手口を教えてくれたからだった。

「野盗……。」

遠くにいくつかの騎影が見えた。都市の城塞の周囲を何度も回っていた。

「あれは……。」

自分というものが押し潰されそうな虚しさと目的を見失った宙ぶらりんな時間。

だが激しい願いの果てに、彼女、いや彼女たちが手に入れたのは……。

全て、正しい判断だった。

白銀の騎士は主の生命を守ろうと、雨露をしのげる場所へ彼女を運んだ。

なによりも彼女自身が著しく衰弱していたこと。

あの時、すでに彼女の『救いたい人』は救えなかったこと。

時々苛立ちをぶつけることはあったが、エリアナも理解していた。

「……知ってる。あなたもわからないんだよね。

『』

「ねえ、私たちはどうすればいいの?

復讐という、私の願い……。

もうひとつだけ、私には願いがあるけど、それは叶えてくれないようだった。

私の願いに応じて現れた彼は、私の願いが消えたことで、存在する意味を失った。


 ***



ふたりは街の方へと向かった。

「ありがとう。賛成してくれるんだね。……何も言わないから、勝手にそう思っちゃうね。

相変わらず返事はない。

『』

「あの街を守りましょ。

おそらくこの後、街に野盗たちが押し寄せる。エリアナが最後に見た故郷のように。

笑顔を胸にしまうと、エリアナは街の方を見て言った。

「次は……。

何かが取り戻せるような気がする……。その予感を信じたいとエリアナは思った。

エリアナは久しぶりに笑ったことに気づいて、思わず自分の頬に触れる。

「勝手にそう思っておくね。

ふとエリアナは笑顔を見せて、言った。

白銀の騎士は相変わらずの沈黙を返すだけだった。

「そんな風に見える。だから私の願いも受け入れてくれなかったの?

『』

「あなたは人を傷つけるのが嫌いなの?

騎士が野盗たちの一味を捕らえ、縛り上げる様子を見て、エリアナは言った。

敵とはいえ、自分は人を殺し過ぎた。それだけが彼自身を納得させうる理由だった。

人を殺し過ぎた……。

長い夜の間で、彼は自分を納得させるだけの理由をひとつだけ見つけることができた。

国を守り続けた自分がなぜ死ななければいけないのか。

最後の夜、彼は自問した。

それゆえ彼は、王から死を賜った。

平和ボケした王やその側近には、彼の行動が理解されず……。

ある時、中央に召還されたが、攻め入った敵軍に相対するために、それを固辞した。

彼には不溝はなかった。都の豪暮な文化にも、権力にも、興味はなかったのだ。

にもかかわらず、彼は寒く荒れ果てた国の辺境で外敵との戦いに明け暮れていた。

その時代、国の都は栄華を極め、百年を超える太平の時を過ごしていた。

彼は辺境警備の将であった。幼い頃、父に連れられ、その地にやってきて以来、彼は戦い続けた。



幾万、幾十万の敵兵をたったひとりで打ち倒した。ただ彼は――。

その男はかつて軍神と讃えられていた。


 ***


『』

「騎士さん!」


そして、南の門が破られたという知らせがエリアナと騎士の元に入る。

『』

「騎士さん、何があってもここを守ろう。

絶望に打ちひしがれ、忘れられた墓標の前に立った少女エリアナは、いまはもういなかった。

騎士の沈黙は自然とエリアナを成長させた。

『』

「ごめん。私が決めるんだね。

エリアナが恐れた時も、不安になった時も、苛立った時も。どんな時も。

もちろんそれはエリアナも同様である。だがどんな時も騎士は沈黙を貫いた。

外界から閉ざされた焦燥と包囲戦の緊張が人々を蝕み始めていた。

次第にエリアナと騎士の手に余る状況になりつつあり、

一騎当千の騎士がいると言っても、戦うべき相手も、守るべき者も多すぎた。

『』

「……でも耐えなきゃいけないんだよね。

『』

「それまで耐えられるかな?

だがそこから同じ時間をかけて、救援はやってくるのだ。

助けを呼びに出たものは、いまごろ別の街にたどり着いただろう。

とはいえ、街は野盗たちに包囲されていた。

エリアナが野盗たちの襲撃を街に知らせたおかげで、不意打ちは避けられた。



 ***


「まっかせてください!

「……物騒なことが得意なんだね。でもそれなら……ちょっと手伝ってください。

「ざんとーがりですね! ヴィクトリア、得意ですよ!

「でもまだ残っているみたい。

騎士は門外の野盗たちの方を睨んだ。

『』

「うん、やっちゃったかも。

「そうか……。やっちまったなあ……。

「いまあなたがほとんど吹き飛ばしちゃったけど?

野盗たちはどこでしょうか……?

「はい! 助っ人としてこの街にハケンされました。あれ……?

「えーと……どなた?

『何か』はビシィッ!と決めポーズらしきものをエリアナに向ける。

「おまたせしましたぁ! ヴィクトリア・ネルド、ただいま参着ですー!

「……人?

立ち込める砂煙の中からようやく「何か」の正体が透けて見え始める。

どうやら街の中に押し寄せていた野盗たちはことごとく吹き飛ばされたようだ。

騎士が盾を使い、衝撃波をいなしたおかげで、エリアナたちは無傷であったが……。

『』

目の前の地面に激突した「何か」は猛烈な衝撃波を周囲に発散する。

「きゃあ!!」

「おまたせしましたーーー!!

南の門に向かうエリアナたちの頭上を凄まじい速さで小さな「何か」が通過していく。

『』

「早く行かなきゃ……。


 ***



誰かの救いたい人を助けることはできる。そのために私たちは出会ったんだから……。

私の願いは叶わなかったけど………。


「何も言わないと、勝手に決めちゃいますよ。

『』

「アップルパイ将軍とビスケット大将。どうですか、騎士さん?

「じゃあ、アップルパイ将軍でいいんじゃないですか? ビスケット大将でもいいですよ。

「そういえば、名前知らない。

とヴィクトリアは白銀の騎士を指さした。

「エリアナさんが副団長。で……誰ですか?

「いいですよ。

「ヴィクトリアが団長でもいいですか?

「チョコレート傭兵団。ふふ、いいかもね。

と片手に持ったチョコレートを掲げて、言った。

「チョコレートでいいんじゃないですか?

「傭兵団、楽しそう! 名前はどうしようか?

「まっかせてください! それなら、いまからヴィクトリアたちはよーへいだんの仲間です!

だからヴィクトリアさんにいろいろ教えてほしいの。……だめかな?

「うん。いまなったばかり。

「エリアナさんはよーへいですか?

「ありがとう。何も言わないから、勝手にしますね。

『』

そうすれば、きっと今日みたいにいろんな人を救えるから……。だから傭兵になりますね。

『』

「騎士さん。私、傭兵になります。

彼女は白銀の騎士の顔を見る。

「楽勝か……。

「なれますよー。楽勝です!

「ふふ。私でも傭兵になれるかな?

「はい! すっごくおいしいです。

「でもそれ……お菓子だよ。

「はい! ヴィクトリアはよーへいなので、戦ってほうしゅうをもらっています。

「それが報酬なの?

ヴィクトリアは『ほうしゅう』のお菓子をむしゃむしゃと食べていた。

「あ、このチョコレートも食べていいですか?

「ざんとーがり」も無事終わり――。






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