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【黒ウィズ】空戦のドルキマスⅡ Story3

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最終更新者:にゃん


story ディートリヒとエルナ



 戦いが終わってしばらく後。

君は、エルナとともにディートリヒに呼び出された。


確かに、魔法を使ってみせたのだな。

はい!いやあ、すごかったですよ!銃を持った暗殺者たちを、ばったばったと薙ぎ倒して!

ふむ……ありえないことではないか。今は失われたとはいえ、かつては存在したはずの技術だ。

 意外にあっさりと、ディートリヒは魔法の存在を受け入れた。

思い返してみれば、“使えるかもしれない”というだけで魔道艇を準備させていた男だ。

貴君の言をすべて信じるというわけではないが、非礼は詫びよう。魔法使い。

 ディートリヒは君をじっと見つめた。

蛇に呑み込まれるような圧迫感に、君は息苦しさを覚える。

そんなに睨んじゃだめですよ、閣下。魔法使いさんか緊張なさってます。

睨んだつもりはないのだがな。

 親しげな物言いを咎めるでもなく、ディートリヒは目線を外した。

ディートリヒ相手にそんなことを言える人間、初めて見たにゃ。

みなさん、元帥閣下を怖がりすぎなんですよ。それに、従兵のわたしがいちいち委縮してたら、料理をお出しするどころじゃないでしょ?

 にっこりと言われると、確かにそうかもしれない、という気もしてくる。

ディートリヒも、別段、そんなエルナの言葉に気分を害した風はない。

部下を救ってもらった恩ができた。貴君には今後、客室を使っていただこう。

〈イグノビリウム〉とやらについては。ドルキマス王を排除した後で、話を聞かせてもらう。

 それで構わない、と君はうなずいた。

それにしても、暗殺とは物騒な話にゃ。ドルキマス王の差し金なのかにゃ?

我が船に暗殺者を送り込むほどの器量があの男にあったなら、討つ必要などなかったかもしれないがね。

我が軍で最も警備の厳重な船ですからね。確かに、陛下じゃ何もできそうにないです。

 真剣な表情でエルナも同意する。

自国の王に対して、かなり辛辣な評価だ。軍人たちもそう感じていたからこそ、ディートリヒの謀反に賛同したのかもしれない。

想像はついている。

 ディートリヒが、目を細める。

もっと慎重な人物かと思っていたが……なかなかどうして、楽しませてくれるものだ。


 ***


討てぬにしても、もう少し、進軍を遅らせられるかと期待したのだかな。

あれしきで止まるような男ではない、と思ってらっしゃったのですな。

なんらか、果断な手を打つだろうとは思っていた。

だが、予想以上だ。全艦に細工を施させていたとは……。

他人を信用しない、あの男らしい行動です。

しかし、これは諸刃の剣と言うべきですな。その細工を施した者が裏切れば、全艦が一気に窮地に陥ることになる。

その手も期待したが、ローヴィが言うには、無駄だそうだ。

アーレントなる研究者な。狂気の徒だという。戦争が技術を加達させると信じ、戦争を拡大させるベルクに期待を寄せている。

噂には聞いております。扱いにくい女ですな。しかしベルクにとってみれば、信頼の必要も裏切られる不安もない手合いです。

正直、こちらとしても抱き込みたくはない。天才であることは認めるが、常に戦争を広げる者の側につこうとするのではな……。

殿下が戦争をされたがらないとわかれば、早々に敵国に寝返りかねませんからな。

それより、ユリウス。“卵”の首尾はどうか。

どうにか間に合いそうです。多少なりともベルクの進軍が遅れたおかげですな。

なら、それに賭ける。

もし、うまく行かなかった場合は――王都への到達は、止められまいな。

陛下のご様子は?

怯えておられる。明日にでも城を引き払われるおつもりだ。

元帥の謀反に怯えて王がお逃げあそばされたとなれば、いよいよ人心は離れますな。

そうあってくれればいい。

なかなかご退陣くださらなかったが、命の危険があるとおわかりになった今、ようやく諦めていただけそうだ。

だが――だからと言って、ベルクに実権を握らせるわけにもいかない。

王が退位し、ベルクが沈む。そうして初めて、このドルキマスに平和が訪れるのだ……。



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story 新兵器?



はい、どうぞ。

 笑顔で手渡された代物に、クラリアとヴィラムは困惑の表情を見せた。


……えーと。レベッカ・アーレント開発官?

なあに?ヴィラム・オルゲン大尉?

なに、っつーか……なんスかね。この、けったいなのは。

見てのとおりの、自律式小型戦車だけど。

その名も、メカシャルルリェアー!!

言いにくッ。

リモコンから電波を飛ばして遠隔操縦が可能。ちょっとやそっとの被弾なんてものともせず、敵陣に突撃して暴れ回る逸品よ。

敵陣っておっしゃいますがね。艦隊戦にどう役立つってんです、こんなもん。

接舷後の白兵戦のお供にどうぞ。

今どきいねえスよ、白兵戦なんざやる奴ぁ!

 後に“艦砲射撃がまるで効かない敵艦隊”相手に“接舷しての白兵戦”を強いられることになる未来を、このときのヴィラムはまだ知らない。

どうせなら艦隊戦用の新兵器を考えてくださいよ。アンタ、そのために元帥閣下の船に乗ってんでしょうが。

そりゃあいろいろ考えてますことよ。けど、今から兵器工場に打診しても、できたときには謀反も終わってんじゃない?

新兵器などなくとも、我が軍は無敵だ。国内の残存兵力など敵ではない。

 クラリアは、まるで興味のなさそうな様子で、水筒に入れていた紅茶を味わっている。

かもしれませんかね。楽ができるに越したこたァないでしょ、シャルルリエ少将閣下殿。

新兵器ってんじゃないけど。

 ぽん、とレベッカは手を打った。

あの……えーと、シェーファー傭兵隊長だっけ。彼が使ってる船、面白い砲を乗せてるみたいね?

そうなのか、オルゲン大尉?

ええ。ありゃあもともと、ザイデル辺境伯の国境警備隊の船でしてね。フェリクスは、教練役ってことで層われてたんですが――

いざってときのために必要だとかなんとかザイデル辺境伯を説き伏せて、あの“狙撃砲”を取り付けさせたんスよ。

見たところ、貫通力と射程重視の実弾砲ね。専用の測距儀も使ってるって話だから。じっくり狙えばかなり命中精度高いんじゃない?

我が軍には不要な品だな。じっくり狙っている暇があったら、突撃して殲滅した方が早い。

そりゃ、少将閣下はそうでしょうけどね。

コンセプトは面白いな~と思うのよね~。レーダー測距と連動する仕組みを作れたら。目視抜きで目標を狙撃できるかも。

そいつぁいい。射程の長さを活かせば、敵の射程外から狙いをつけて、一方的に当てられるってわけか。

却下だ。潔くない。

んじゃ、クラリアちゃん的にはどんなのほしい?

む……。

 クラリアは、じっと考えてから、言った。

超強い角。

当てんの!?

もしくは牙。

噛むの!!?

じゃあ、主砲の代わりに船首を衝角(ラム)にして~……敵艦にブッ刺すと同時に切り離して遠隔操作で爆発させられるようにしとこっか?

いいな。

主砲取っちゃダメ!!!!




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story 上級 空の迷い路



補給艦が近づいてきたみたいだぜ、少将さん。

 ドルキマス王都まで、あと数日というところだった。

燃料、砲弾、食糧。大軍勢を支える物資は数多い。

これまでは制圧地域のドックから補綸していたが、ここから王都まではドックがない。

そこでディートリヒは、国内の商人ギルドと約束を取り付け、補綸艦を用意させていた。

“ご苦労。戻っていいぞ、シェーファー”

いや。補輪中を敵に狙われる可能性がある。このまましばらく哨戒を続けるつもりだ。

“慎重だな。いいだろう、任せる”

傭兵なんてのは、慎重なくらいでちょうどよ、ちょうど。

 軽口を叩いて、フェリクスは通信を打ち切った。

その顔から、スッと表情が消える。

さて……仕事か――



 ***


内通者がいるんだろうとは思っちゃいたが、まさかあんただったとはね……。

しかし、ずいぶんすんなり打ち明けたもんだ。俺がその話を手土産にディートリヒと話すとは思わなかったのか?

傭兵は金で動くものでしょう。

 ローヴィは、1枚の小切手をフェリクスに手渡す。

これだけあります。成功報酬はこの2倍です。

……なるほどね。こいつは確かに、大したもんだ。

加えて申し上げますが――我々は、あなたの素性もつかんでいます。

ボーディス王国……2年前に閣下が攻め落とされた国の、第2王子であらせられる。

…………。

アルトゥール殿下は、ボーディスを属国ではなく、独立国として扱う用意がある、と……。

ついでに、引き受けなかったら、俺が敗戦国の王子だって情報をディートリヒに流すつもりだろ。

ふん……選択の余地はないってわけか。


 ***


こちとら傭兵なんだ。悪く思うなよ……。


 ***


 到着した補給艦がディートリヒ軍と合流し、空中で勧資の受け渡しを行っていく。

早々に補給を済ませたクラリア艦は、敵の襲撃に備えて目を光らせていた。

その甲斐あって、“謎の飛行物体の襲来”に気づいたのは、彼女の船が最初だった。

――って、あれは――

翼を広げて大空を舞い、激しい咆嘩を上げて迫り来る、その巨体は。

ド――ドラゴンんん!?


 ***


魔法使い!

 警報が鳴り響くディートリヒ艦。

その廊下で、君はルヴァルに呼び止められた。

卿に頼みがある。力を貸してほしい。

 いいけど、何を?と尋ねる君に、ルヴァルは苦々しい顔をしてみせる。

実は今、この艦隊をドラゴンが襲っている。

ドラゴン!?ひょっとして、〈ウォラレアル〉にゃ!?

 竜とともに戦う者たちの国が、この世界にはあるはずだった。

いや。彼らとは違う。別口のドラゴンだ。

ドルキマスの隣国の山に棲む、古の竜。人語を解するほどの知性はないが、本能的に魔力を操るのに長けている。

万全の状態であればともかく、補給中に奇襲を受けたのでは、この軍とて蹂躙されかねん。それほどの相手だ。

どうしてそんなものが襲ってきてるにゃ!?

怒り狂っている。魔法で呼びかけてみたが、我を忘れているため、交渉どころではない。

ただ、竜はこう叫んでいる。“我が卵はどこにある”――と。

ひょっとして……。

 ルヴァルは、静かにうなずいた。

竜の卵が、運び込まれたのだ。補給艦によって。この軍の、いずれかの船に。

それを探さねばならない。手伝ってくれるか、魔法使い。

 一も二もなく、君はうなずいた。

卿にこれを預ける。

〈天翔靴〉だ。空を駆けるように跳躍できる。これを使って卵を探してくれ。

竜の卵は魔力の塊のようなものだ。魔道士である卿ならば、近くに行けば感知できるだろう。

 靴を受け取った君は、ルヴァルの魔法で、一瞬にして船の上へと転移した。

そこからは、状況がよく見えた。

ドルキマス軍艦の2倍近い大きさを誇る竜が、艦隊のど真ん中で、めちゃくちゃに暴れ回っている……!

何隻もの軍艦が竜の腕や牙を受けて火を噴き上げ、高度を落としていく。

ドルキマス軍も竜に砲撃を繰り返しているが、竜にはいっさい痛打を与えていない。魔力の膜が、その全身を守っている。

ディートリヒのことだ。すぐに対処手段を講じ、竜を撃墜するだろう。

だが、あの竜は周辺地方の季候の安定を司る存在でもある。殺させるわけにはいかない。

私が竜を抑える。頼んだぞ、魔法使い……!


 ***


“なるほど。竜の卵、か……。”

 君は、ドルキマスの艦隊を跳び移りながら、ディートリヒ艦と通信していた。

これもルヴァルに借りた〈天想羽〉なる道具によるものだ。

どれかの船にこっそり積まれてるはずにゃ。こっちでも探してみるけど、そっちでも探してみてほしいにゃ!

“ローヴィ。”

“はっ。各艦に伝達いたします。”

助かるにゃ!

“ところで、あの竜に砲撃が効かないのは、魔力による防御のせいだと言ったな?”

 そうだよ、とうなずいて、君は遠くに視線をやる。

砲弾の雨をものともせずに暴れる竜が、また1隻、軍艦を叩き落としたところだった。

“魔力とは、無限に湧いて出るものか?”

そんなことはないにゃ。使い続ければいずれ枯渇して――

 言いかけて、ウィズがハッとする。

が、遅かった。

“そうか。”

 ディートリヒは、それしか言わない。

だが、彼の頭のなかに対抗策が生まれたことはまちがいかなかった。

おそらくは――きわめて非情な対抗策が。

待つにゃ、ディートリヒ!あの竜を倒したら、隣国の季候が荒れるらしいにゃ!

“ドルキマスに害はないということだな。”

 あっさりと彼は答える。

ウィズは、がっくりと肩を落とした。

ごめんにゃ。私がうかつだったにゃ。ディートリヒが何かするより早く、卵を見つけなきゃいけないにゃ……!

 だいじょうぶ、と君は答える。

ちょうど、新たな船の上に跳び移ったところだった。

足元から、驚くほど濃密な魔力の気配が、ぞくぞくと伝わってくる。

あった!卵にゃ!

 あとはこの船の人間に話を通して、竜に卵を返せるようにすれば――

卿!

 突然、目の前にルヴァルが飛んできた。

ルヴァル、ドラゴンはどうしたにゃ!?

どうにかこちらに誘導した。

 ルヴァルは天の使いの証たる翼を広げ、手に聖なる光を放つ剣を携えている。

しかし、竜の怒りは頂点に達している。このままでは卵を渡すと言ったところで聞いてくれはしないだろう。

卿の魔法なら、あの竜にも打撃を与えられる。荒っぽいやり方になるが、いったん武力で鎮めるぞ!



 ***

BOSS

 ***


 君とルヴァルの攻撃を受けて、巨竜はふらつき、攻撃の手を止めた。

よし。私は竜に呼びかける。卿はこの船の者と話してくれ!


“竜の卵?確かにその話は聞いているが――は!?この船にか!?

……それを渡せば、竜は攻撃をやめるんだな?

わかった。――貨物庫、開け!他の物資が壊れてもかまわん!”


動きを止めた竜――その目の前にある船の貨物庫が、ゆっくりと開いていく。

 そのさまを、フェリクスの船は捉えていた。

なだらかな山脈の影に隠れ、息を潜めて戦いの様子をうかがっている。

そういうことかよ……。

 依頼内容を思い返し、フェリクスは舌打ちする。


――距離を取って待機し、もしシャルルリエ少将の船に竜が近づいたら、貨物庫を狙撃してください。――


wどうすんだい、隊長。“敵さん”射程内に入ったぜ。

 フェリクスはわずかに考えてから――

撃ち方、始め。

 静かに命じた。


 ***


 君とウィズは、ルヴァルの魔法でディートリヒの船に戻った。

にゃはは! なんとかなってよかったにゃ!

 そうだね、と君は苦笑する。

卵を取り戻したドラゴンは、ルヴァルの説得の甲斐あって、怒りを錆め、山に帰ってくれた。

助かった。卿のおかげで、事なきを得た。

しかし、相手も大胆な手を打ってくる。古の竜の卵を利用してまでディートリヒを討とうとは……。

補給艦に敵がまぎれこんでたのかにゃ?

でも、それなら、伏兵を置いていてもよさそうなものだったけどにゃ……。

 確かに。もしあの状況でさらに敵の攻撃を受けていたら、と思うと、ぞっとする。

兵力の少なさが敵のネックらしいからな。竜を利用したのも、その弱点を補うためだろう。

なんにしても、おかげで竜を死なせずに済んだ。心より礼を言う、魔法使い。

お礼は、この靴と羽でいいにゃ!

すまないが、それはちょっと……。

 本気で申し訳なさそうな顔をするルヴァルに、君はあわてて、ウィズ流の冗談であることを伝えた。


 ***



報告は聞いた。卵を狙っていた敵艦を沈めてくれたそうだな。

さすがに敵さんも。ドラゴンを放り出しておしまいってんじゃなかったわけだ。

そのへんはカンがきくんでね。主砲を撃とうと首ィ出したところをズドン! てなもんさ。

働きには、相応に報いよう。今後も、貴君の力を見せてくれたまえよ。

あんたが俺らを買ってくれている限りは。ご期待に添えてみせるとしますかね。

ところで、貴君。ボーディス王国の第2王子だな。

 さらりと言われ、フェリクスは言葉に詰まった。

……なんだ、バレてんのかよ。

王子って言っても、今はしがない傭兵だ。我が国は傭兵大国でね。家督を継がない王子は傭兵をやる決まりなのさ。

とはいえ、疑うなってのが無理な話かもしれんが……。

いや。

 ディートリヒは、静かに笑みを深めた。

貴君はもはや王子という器には戻れまい。すでに戦争のにおいにまみれすぎている。

身だしなみには気をつけるタチなんだがね。

どう繕ったところで、わかる者にはわかる。

沁みつくのだよ。血と、鉄と、火の香りが――その魂にな。


 ***


 ディートリヒの部屋を辞し、しばらく歩いたところで――

通路の先で待つローヴィに出くわし、フェリクスはニヤリと笑った。

美人に出待ちをしてもらえるなんてなァ、男冥利に尽きるね。

金で動くのが傭兵……ではなかったのですか? フェリクス・シェーファー

 硬い表情を見せるローヴィに、フェリクスは悪びれた風もなく、肩をすくめる。

契約中に乗り換えるってのは、ま、さすがにちょいとね………仁義にもとるって、考え直したのさ。

それに――積み荷を撃つとは聞いたが、それが卵とあっちゃあね………

傭兵にしては甘いことを言いますね。

自分で納得できないマネはしたくないのさ。

 フェリクスは、ふと真剣な顔になって言った。

そいつを許すと、なんでもありになっちまう。俺みたいなごろつきは。どっかで歯止めをかけとかなきゃならん。

それと、理由はもうひとつ。あんたの瞳が揺れてたからさ。

私が……。

 予想外の言葉で切りこまれ、ローヴィは思わずたじろいだ。

ブレてる奴の側につくのは、リスクが大きい。こいつは俺の経験諭だ。

 フェリクスは、ローヴィの手に小切手を押しつけ、すたすたとその横を通り過ぎていく。

安心しな。あんたのことは言わんよ……。

別に情けをかけるってんじゃない。言ったところで、俺の方が信じてもらえないだろうからな。

だが――

そろそろ、選ぶ時期が来てるんじゃないのかい。大元帥の副官さんよ。

…………。

 ローヴィは答えず、じっと沈黙を保っていた。


 ***


貴君。

 唐突に廊下で呼び止められ、ルヴァルは振り返って敬礼した。

いかなる御用でしょうか、元帥閣下。

 顔を近づけ、ささやくような声で、ディートリヒは問うた。

貴君は、何者だ?

この船で貴君だけが唯一、熱を帯びていない。聞こえないのだよ。戦争の鼓動が……。

 ルヴァルは答えない。

ディートリヒは、喰らいつく隙をうかがう蛇の瞳で、名を呼んだ。

答えたまえよ。ルヴァル・アウルム………




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