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ふたりの騎士と祈りの魔剣 Story3

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story4




「ねえアルド……。

ここのところ随分ディアドラに肩入れしているみたいじゃない。

ちょっと聞きたいことがあるんだけど……

「別に肩入れってわけじゃ……また問題行動でも発覚したのか?

「……逆よ逆。あの子最近は妙に静かすぎるのよ。

以前は事あるごとに騒ぎを起こしていたのに。

嵐の前の静けさでなければいいのだけれど……

ねえ何か知らない?どんな小さなことでも……

「ええ……っ?オレは何も聞いてな……


「その辺にしておけ。アルトは私にそそのかされた被害者のようなものだ。

「あら……アナタから私の前に現れるなんて珍しいこともあるものね。

「………………。

……ふん。今日はお前と言い争いにきたのではない。

「……えっ?

熱でもあるの?顔を合わせれば憎まれ口ばかり叩いていたアナタが……

「それはお前も同じだろう。しかし今はそれどころではない。

「なんだか調子が狂うわね……。

「アルド折り入って話があるんだ。聞いてくれるか?

「ああいいけど……。

「……魔剣がなしきりに囁くのだ。

『あの子を捜せ。全ての答えはそこにある』……とな。

「あの子を捜せ……?

「ああ!もしかして地下迷宮で見た女の子のことか?

でもあれは幻術だったんじゃ……

「ちょっと待って。アナタまさか魔剣の言葉に黙って従うつもりなの?

「そのつもりだが……

「相手は魔剣なのよ……!?悪魔のごとき者の囁きに耳を傾けるなど……

「……処遇を受けるのは覚悟の上だ。騎士団長にでも誰にでも伝えてもらって一向に構わん。

「……いいでしょう。このことは後で必ず団長に申し伝えさせてもらうわ。

今回ばかりはアナタも身の振り方を考えておくことね。

……ほんの一瞬でもアナタが変わりつつあるのではと考えた私か馬鹿だったわ。

「やれやれ……頭痛をおして出向いてみればこの有様だ。

私も随分と嫌われたものだな。

「………………。

それで魔剣があの女の子を捜せって?

「ああ。理由は全く分からないが……

残された時間は僅かしかないような……なぜかそんな気がしてならないんだ。

「……分かった。オレでよければ手伝うよ。

それじゃあまた地下迷宮へ行ってみようか。


「魔剣よ……お前は何を知っている?私に何をしろというのだ……。

「……魔剣はどうしてあの子を捜せなんて言うんだろうな。

もしかしてディアドラの知り合いだったりとか……?

「いやあの年頃の子どもに覚えはない……。ただあの子に会えば全てを取り戻せると……

「全てを取り戻せるか……。

魔剣の力を使うと最も大切なものを代償に失うってあの魔法使いは言ってたよな。

それなのに取り戻せるって……あべこべじゃないか。

「ああだから不思議なんだ。

お、おい……アルドあれ!

「あ……ああ……!よかったよかったよぉ……!

ねえお願い!お姉ちゃんを助けて……っ!

「お姉ちゃん……?キミの?もしかして怪我をしてるのか……!

「うん……っ血が……血が止まらなくて……!

「それは大変だ……!すぐに行こう!この先か!?

「うん……っあっちだよ!

「ぐ……っまただ……あの子を見ていると頭痛が……!

ち……っまるであいつを見るときのようだ……っ。

だがこんなところで立ち止まってなるものか……

真実をこの目で見届けてやる……っ!



「これは……鏡か?でも曇ってるわけじゃないのに何も映らないぞ。

「あれ……あれ……おかしいな……。

わたしぎゅーんって光るヘンな穴からここに来たの。でもなくなっちゃったみたい……。

「変な穴……?それってもしかして……

……真実を求める者よ。

「な、なんだこの声!

「今度ばかりはアルトにも聞こえたようだな。

……ということは今までの声もお前のものか?

左様……。

……我は真実を映す者。

数奇なる運命を持つ者たちよ。汝らは真実を欲するか?

「この声まさか鏡から……!?

「無論だ真実を映す者……!この少女と私の真実を映してくれ!

「ねえ鏡さん!わたし村に帰らなきゃいけないの……!

お願いあのヘンな穴を出して!

……ならぬ。

「ど……どうして!このままじゃお姉ちゃんが……っ。

「オレからも頼む!この子のお姉さんを助けたいんだ!

今の汝らでは運命は変えられぬ……。

……力を得よ。運命に抗うための果てなき力を……。

「鏡……?おい鏡!

「……どうやらフェアヴァイレに魔力を溜めるほかないようだな。

「……ああ。ごめんな少しだけ待っててくれるか?

「うん……!

わたしここで待ってる!すぐ帰ってきてね……っ。


……力を得よ。

運命に抗うための果てなき力を……。



「お兄ちゃんお姉ちゃん!

「待たせたな。さあディアドラ!

「わかっているとも。鏡よ私たちの用意はできたぞ!

これより先は汝ら三人を除き進むこと能わず。

重ねて問わん……

汝らは真実を欲するか?

「問われるまでもない!今こそ真実を私たちに示せ!

力ある者に真実の全容を……

「わぁ……っ!ここに来たときの穴だよっ!

お姉ちゃん……!待っててすぐに行くから!


「時空の穴……!やっぱりあの子は別の時間から……!

まさか過去に繋がっているのか……?

「だとしたらあの子は本当に……。

「考えてる時間はないな。行くぞディアドラ……!

「ああ覚悟はとうにできている……っ!



「ここは……?見たことのない村だけど……。

「……うぐぁああっ!!

あ、頭が……割れ……る……っ!

「お姉ちゃん大丈夫!?

「流れ……込んで……き、記憶……が……っ!

「ど、どうしたんだ……大丈夫か!

はぁ……っはぁ……っ

ここの村を……私は知っているんだ……!

……いま流れ込んできた。記憶が滝のように……。

「知ってる……?じゃあここは一体……!

「かつて魔獣の襲撃を受け滅びてしまった……

私の生まれ故郷だ……!

そういう……ことだったのか……ならば私が為すべきことは……


「……なんだ貴様ら。まだ生き残りがいやがったとはな。

待てよそのガキ……いきなりいなくなったと思ったらのこのこ戻ってきやがった!

「こ、こいつらよ……お姉ちゃんに酷いことしたの……!

お願いお兄ちゃんお姉ちゃんこいつらをやっつけてお姉ちゃんを助けてね……!

「………………。

「へっ今まで隠れてたような弱腰どもに遅れを取る俺たちじゃねえよ!

「来るぞディアドラ!


 ***


「……消えろ。魔剣の贄にすることさえ穢わらしい。」

「お兄ちゃんお姉ちゃんやっぱり強いんだね!」

「……………………。」

「そうだ怪我してるっていう君のお姉さんは?」

「こっちだよ!お願いお姉ちゃんを助けてあげて……!」

「……ダメだ。」

「……えっ!?」

「……私たちに君のお姉さんを助けてあげることはできない。

「そんな……っいじわる言わないでよ!

「と、突然どうしたんだ?せっかくここまできたんじゃないか!

「言葉のとおりだよ。私が手を貸せることはもうない。娘……あとはお前次第ということだ。

「……………………っ!

いいもん!お姉ちゃんのことなんか大嫌い!

お兄ちゃんは助けてくれるよね?」

「あ、ああ……オレにできることなら。」

「ありがとう……こっちだよ!」


「……………………。」


 ***


「早く……っ!こっちこっちだよ!

お姉ちゃん!

やだ起きてよ!どうして返事してくれないの……っ!


「………………っ!

(胸を貫かれてる……まだ息はあるけどこれはもう……)


「お兄ちゃん……?

お姉ちゃん助かるんだよね……?

ねえ何か言ってよ……

「………………。

君のお姉さんは……

……誰だ!


……あんたは一体……この村の生き残りか?

「……私はその子たちに用があって来た者だ。そこを退いてほしい。

「お、おい……!


「だれ……あなた?お姉ちゃんを助けてくれるの?

残念だが……私にもお前のお姉ちゃんを助けることはできない。

「そんな……

「この場でお姉さんを助けられるのは……お前だけだ。

「え……っわ、わたし……?

む、無理だよわたしなんか……。お姉ちゃんと違ってとくべつな力も持ってないし……。

「この魔剣には膨大な魔力が込められている。

これを使えばお姉さんは一命を取り留められるはずだ。」

「ほ……ほんと!?」

「もちろんだ。ただし……

魔剣の力を使うには願いの代償に最も大切なものを手放さなければならない。」

「手放す……?よくわからないけどそうしたらお姉ちゃんは助かるのね?」

「そうだな……だがよく考えることだ。

ひとたび魔剣の力を使えばお前は魔剣の契約者となる。

わかるか?魔なるものと共に歩むのだ。

お前の未来には想像を絶する苦難の道が待ち受けることだろう。

「………………。

「……受け取るか受け取らないかはお前の自由だ。

ただ私からお前に言えることがある。

……お前は特別な存在じゃない。

大切なものを守るためには手段を選べぬこともあるだろう。

その在り方はときに人から蔑まれ拒絶されるものかもしれない。

それでも……その選択に誇りを持て。お前の想いを認めてやれるのはお前以外にいないんだ。

そんな不安そうな顔をするな。大丈夫だお前なら必ず乗り越えられる。

他ならぬこの私か……保証しよう。


行こうアルド。あとは彼女に委ねるしかない。

「えっ!?あんたどうしてオレの名前を……?

お……おいあんた!待ってくれどういうことなんだ!


 ***


「あんたは一体……

「……私だよアルド。

「え……っディアドラ……!?

どうしてフードなんかかぶってたんだ?

「魔剣が私に語りかけてきたのだ。いまこそ真実の始まりと終わりが結びつくときだと……。

記憶に忠実に振る舞わねば過去は歪み未来が消えてゆく……。

だからああして彼女に魔剣を渡す必要があったんだ。

「よくわからないけど……さっき手を貸せることはもうないって言ってたよな。

それなのにどうして急にあの子のお姉さんを助ける気になったんだ?

「いいや……私は助けてなどいない。今なお全ては彼女の決断次第だ。

「大丈夫なのか……?

「心配するな。彼女ならやり遂げられる。

それよりも今はあの時空のはころびを探そう。元の時代に戻らなくては……

「……わかった。話は後で聞かせてもらうよ。


 ***


恐い……恐いよお姉ちゃん……

でも私かやらなきゃ……

ぁう……っ!

やっぱり無理なのかな……わたしなんかじゃ……

ううん……魔剣さんはきっと私を試そうとしてるんだ……

かくご……決めなきゃ。

 ……我が名はフェアヴァイレ。

フェア……ヴァイレ……?

 我を手にすることの意味そなたは既に知っていよう。

 願いを叶えるための代償を……差し出す覚悟はあるか?

「………………。お姉ちゃんより大切なものなんて……なんにもない!

うぅ……っ!!

痛い……苦しいよぉ……っ


 よくぞ魔力の重圧に耐えた。

 我が契約者よ……名を聞かせるがよい。

「……ディア……ドラ……

 ……ではディアドラよ。そなたの願いを叶えよう。

「うん……っ。

わたしお姉ちゃんには助けてもらってばかりだったから……

お願いフェアヴァイレ……お姉ちゃんを……

アナベルお姉ちゃんを助けて……っ!

「ぁ……う……

あれ……わたしどうして……


 ***


 目覚めよ……ディアドラ……

「う……ここは……?

 そなたの願いの代償……確かに受け取った。

「えっ!?だ、だれ……?

 我が名はフェアヴァイレ。閉ざされた時の環に棲む魔剣……

「ねえ教えて!わたしどうしてここにいるの?何も思い出せないの……!

 それこそが願いの代償……そなたの大切なものは失われたのだ。

「な、何を言ってるの……?わからないよ……

「おお?おい見ろよ人間のガキだぜ。

「小せえのにひとりか?不用心だねえ。

「ひ……っ!た、助けておね……

わたしいま誰のこと……

「助けを呼ぼうったって無駄だぜ。人間の町は遠いからなァ。

「や、やめて……来ないで……!

 ディアドラよ……我を使え。魔剣フェアヴァイレはそなたと共にある。

「………………っ!

「ンだぁ……?どこから出しやがったその剣……

「ひゃッはは気にすんな!身の丈に合わねえ武器を持ったところで逆に振り回されるのがオチだぜ!

「自分を信じて……前に進む……っ

大丈夫……わたしなら必ず乗り越えられるから……っ!


 ***


「帰ってきたんだな……。あの子本当に大丈夫だったかな。

「大丈夫だとも。あの少女は……魔剣の力を使う前の私だったのだから。

そしてイメージの中で垣間見たフードの女もまた……他でもない私自身だったんだ。

「じゃああの子の言ってたお姉さんってのは一体……

「……アナベルだよ。もっとも私自身今の今まで忘れていたことだがね……。

「アナベル……?つてあのアナベルか……!?

「……私が彼女を毛嫌いしていた理由がようやく分かった。

私が最も大切にしていたものは絆。そう……確かに姉妹の絆だったんだ。

それを願いを叶える代償として手放してしまった……。

「だからあんなにいがみ合ってたのか……。

「ご丁寧に仲睦まじい頃の記憶まで奪っていくとはね。

なんて皮肉だ。私は姉さんのために魔剣を手にしたというのに……。

「……色々話したいことはあるけど一旦外へ出ようか。

もうこの地下迷宮に居座る理由もないわけだし。

「そうだな。思えば長い……長い旅たった。

「アルド……なんというか……

「ん……?

「……本当に世話になったな。この礼は我が信念にかけて必ず返そう。

しかしフェアヴァイレが閉じた時の環を巡り続けているとすれば私とアルトの出逢いもまた必然だったのだろうか……?

「偶然でも必然でも構わないよ。奇跡があったとすればオレなんかよりアナベルと再会できたことだろ?

「……そうだな。今回の件であいつの言う騎士というものが少しだけわかったような気がするよ。

今後は私も誰かのために剣を振るおう。私のような者にしか斬れぬものもきっと……あるだろうからな。


 ***


「……帰ってきたな。なんだか久しぶりな感じがするよ。

「アナタたち……

ずいぶん迷宮にご執心なのね。私には関係のないことだけれど。

「………………。

……ああ済まなかったな。私の用は全て済んだ。二度と出入りしないと誓ってもいい。

「ちょっとどうしたの……?また急に毒気が抜けたような顔をして……

……いえそれが本題ではなかったわね。

アナタが魔剣に従う意思を見せたこと団長に報告させてもらいました。

「そうか……それで団長は何と?

「今後アナタが魔剣を所有しているかぎり……

魔剣はどこへやったの?

「……力を必要とする者のところへ。もう私には無用の長物だからな。

「そ、そう……それならいいのだけれど。

「………………。

「……どうしたの?私の顔に何かついている?

「……胸の傷は痕など残らなかったか?

「傷……?私の胸にあるのは聖痕だけ……

ってどうしてアナタがそれを知っているの?

「……いやならばいいんだ。本当によかった……

「ちょっと……今日のアナタ本当におかしいわよ。熱でもあるんじゃないの?

具合が悪いなら素直に救護班を当たることね。

これまでのような無茶はしないで。

「………………。


生きていてくれて本当によかった……アナベル姉さん……っ。

「……いいのか?本人の前でそう呼ばなくて。

「……私が呼んだところで姉さんに記憶は戻らないさ。いたずらに困惑させてしまうだけだ……。

だが……すまないアルド。わがままを承知で頼む……

もう少しだけでいい……私を姉さんの妹でいさせてくれ……

「………………。

……よく頑張ったなディアドラ……。

「うう……姉さん……っ


 ***


「……もう大丈夫だ。見苦しいところを見せたな。

……これでいいんだ。絆は失ったが思い出は取り戻せた。

私はこれからアナベルの助けになるよう影に徹するだけだよ。

「……ディアドラは強いな。

「……よしてくれ。強くあらねば生きられなかっただけだ。

さよならだフェアヴァイレ……半生を共にした我が片割れよ。

お前がいなければ私はここまでの道のりを超えることはできなかっただろう。

私はもう閉ざされた時の環の外に出てしまったが……

……心配はいらない。お前を手放しても今の私には……仲間がいる。

……幼い私を頼んだぞ。

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