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【黒ウィズ】アリエッタ&エリス編(クリスマス 2018)Story

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開催期間:2018/12/15

目次


Story1

Story2

Story3





story1



この世の終わりを思わせる爆発であった。

凄まじい爆音と――それに負けない無邪気な大音声。

「わっはっはー! 世界を救うのは、このわたしだー!」

怪獣は椅子を勧めても座らず、へらへら笑いながらスカートの裾をつまんでみせる。

「ねーねー見て見てー。季節感-!」

エリスは季節感を無視して、怪獣の目をしかと見据える。

「魔道ラボラトリー爆破事件について、説明してもらおうかしら。」

「アリエッタ的危機管理なんだよなー。」

「どこが危機管理なのよ! 危機そのものじゃない!」

ハーネット商会からの多大なる援助によって生み出された最新鋭の魔道ラボラトリーが、跡形もなく吹き飛ばされた。

「ソフィの善意を無駄にしただけじゃなくて、先生の顔にも泥をぬることになったのよ?」

「イーニアの顔に泥? わたしも顔が煤まみれになったからそこはおあいこだ。

最新鋭の魔道研究施設はアリエッタにこそ相応しい。人類の進歩と発展のため、大いに魔道を探求するがよい――」

そう言ったのは、他でもないイーニアだった。

「どうしてこんなことしたの? なんとなく、っていうのはなしよ。」

「……爆炎のレナ。」

アリエッタは芝居がかった重々しい口調で言う。

「あいつは危険思想の魔道士だ。世の中のすべてのものを、爆破できるかどうかという観点で見てる。

そして、爆破できないと判断したものも結局爆破せんとする奴だ。」

「……さすがにそれは言い過ぎじゃない? レナにだって分別くらいあるわよ。」

……たぶん。

「今はな。だが、もしもレナが反体制勢力に加わったらどうする?魔道士協会に対抗手段はあるのかね?」

「いや、そういう想定はそもそも……。」

エリスが返答に窮していると、アリエッタが詰め寄る。

「わたしはその対抗手段として超火力魔法の実験をしてたんだが?

そして、成功した。その証としての魔道ラボ爆破!

幾重にも展開した魔道障壁を突き破るほどの威力。これを成功と言わずして何と言うのか!」

行いは99%間違っているが、残りの1%はアリエッタなりの正義なのかもしれない。

「まあ、けつが浮いたことのないエリス君には、わからんと思うがね。

この世には2種類の人間がいる。けつが浮いたことのある者と、ない者だ。」

「なによ……。お尻が浮いたからなんだっていうのよ。」

「ぷぶ。それだよそれ。けつが浮いたことない人はみんなそれ言う。

まあ、少し噛み砕いて言うとだな……。けつが浮くことを経験して初めて、けつが浮かないありがたみがわかるのだ。」

「……宇宙に行ったのがそんなに嬉しかったの?」

アリエッタはリルムと共に宇宙に行った。

魔道史の金字塔、グレエエーートギャラクシー計画の第一歩である。

何はともあれよくぞ無事戻つてきたとリルムやアリエッタは持て囃され――

エリスを含む協会の人間が、彼女たちに対し甘くなっていたことは否めない。

そろそろ厳しくいかなければならないだろう。

「魔道ラボ爆破事件で霞んでいるけど………あなた、他にもいろいろやってるわね?」

「心当たりはー、ござーせん。」

髪の毛をくるくるくるくる。 声高に『嘘ついてるよー!』と言っているようなものだ。

「市民からたくさん苦情が来てるわ。魚のにおいがする花を植えたり……。

石畳をメタリックに塗装したり……。店先に並ぶ大根を全部すりおろしたり……!

「これ全部アリエッタの仕業でしょう! 歳末魔道取り締まりキャンペーン中だっていうのに……!」

「それはそれとして、お昼だ! 聖なるなんやらが近いことだし、魔道ターキーでも食べにいこう!

「そんな時間はないわ。あなたのせいでね。

魔道ラボ爆破事件について、理事連中からの問責があるし、バーネット商会にも謝罪しないと。

「ソフィなら許してくれるでしょ。

ソフィはけつ浮いたことないけど、けつ浮きサイドの人間に近い、革新的な思考を持ってるからなー。

確かにソフィは笑って許してくれるだろう。しかし、彼女の懐の深さと財力に甘えてばかりではいけない。

「あのね、今回の件は、いろんな人たちに迷惑をかけているのよ? お友達感覚というわけにはいかないの。」

「エリスは大変だな! わはは!」

゛アリエッタが部屋から出ていく。

贄を使ってお仕置きする…………のはひとまず後回しだ。

「……とりあえず理事会ね。」

暗灘たる気持ちで一歩を踏み出すと、毛足の長い絨毯に足をとられ、つんのめって転んだ。

心身の疲労が溜まっているのだろうか。起き上がる気力すら、湧いてこない。

「……宇宙、か。」

なんとなく、お尻を浮かせてみた。

当然、何か変わるということもない。

「エリスさん……何してるんですか……」。

ドアを開けたミツボシが、うつ伏せになって尻を浮かせるエリスを見下ろしている。

言い訳は、特に思い浮かばなかった。



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「……ということがあったらしい。常識では考えられない奇行だ。」

「そうかー、エリスはけつを浮かせていたかー。」

「絨毯の上に倒れて尻だけ浮かせているというのは……うむ。精神的にかなり追い詰められていると言えよう。」

アリエッタはイーニアの私室に呼ばれていた。

「今は、不埓な魔道士を捕らえる、歳末魔道取り締まりキャンペーンの真っ最中だ。」

物置みたいでなんだか狭苦しいなと思ったが、これがイーニアサイズかと思うと俯に落ちた。

「そんな状況で、協会所属のお前があれこれ騒動を起こしている。

市民への申し開きや、ハーネット商会への謝罪。このままでは――」

「エリスの胃が死ぬ。あと心も死ぬ。」

「その通り。わかっているならもう少し振る舞いを考えろ。」

「確かに。胃が死んだらなー。一緒に魔道ターキー食べられないからなー。」

「……まったく。私か現役バリバリたったら、お前なんぞ捻り上げていたところだが、今では老身にこたえる。

それに、力ずくというのも、根本的な解決にはならんだろうと思ってな。」

「それは言えてる。力ずくよくない。」

「どの口が言うのやら。だいたいお前は――」

イーニアの小言を聞き流しながら羽根ペンの羽をむしっていると、肩を叩かれる。

「いっそやお前が死んだとき、一番悲しんでいたのはエリスなのだ。」

「ちょっとしか死んでないけどね。」

「気丈に見えて、あれには弱いところがある。

魔道の探求をやめろとは言わん。お前は未来を切り拓く稀代の魔道士なのだ。」

「照れるなー。褒めて伸びるタイプだけれどもー。」

イーニアが窓を指し示す。

外を眺めると、賑わう広場の様子が窺えた。

「もうすぐ聖なるなんやらがあるだろう。

聖なるなんやら。魔道ターキーを食べたり、プレゼントを贈り合ったり――

どこからか伐採してきた大樹にあれこれ飾りつけたりする、楽しいお祭りである。

「私が頼むのもおかしな話だが、エリスにブレゼントのひとつでも贈ってやれ。

「プレゼントかー。エリスは何が欲しいんだろう。

昔、杖をあげたことがある。また杖をあげる、というわけにもいかない。

「実は私も労いの意を込めて、エリスにプレゼントを贈ろうと思ってな。何か欲しいが聞いたのだが……。

私が欲しいのは、いい子のアリエッタです。他には何もいりません。……と、虚ろな目でそう言うばかりなのだ。

アリエッタは想像する。


「私が欲しいのは、いい子のアリエッタです。他には何もいりません。

そう、他には何も。ふふ、ふふふふふ……。

アリエッタァアアア……。いい子にしないと……あなたを殺して私も死ぬわ……」


「だいぶやべえな……。」

「アリエッタ。お前はいい子になれ。そして、エリスに何かプレゼントを贈ってやれ。」

「いい子か……言うは易しというやつだな。」


 ***


「しかしわたしは天才なのであった。」

アリエッタランドから持って帰ってきたブライベート用の魔道ラボにて、アリエッタは魔道実験を進めていた。

アトラクション防衛兼ハードモード化魔道機構「防衛ッタ」の原理をアレすれば――

「わたしの分身を生み出せるはずだ。出てこい、いい子のわたし!」

虚空から聖邪を超越したよくわからん光が溢れ出し――

「いい子のアリエッタ・トワだよ! いい子エッタって呼んでね!」

いい子エッタが生まれた。

いい子エッタ。活動時間は限られているものの、とにかくいい子なすごい奴。

おまけに、ピンチのときには圧倒的火力で自爆する機能も搭載している。

「問題は、本当にいい子なのかという点だが……。今一番やりたいことは何かね?」

「うーんとねー、魔道炊き出しかなー? この世から飢餓を無くしたいなー。」

「よし、いい子だ。箱詰めしてエリスにくれてやろう。」




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story2



エリスは奇妙な威圧感で目を覚ました。

ペッドサイドに置いてあったローテーブルを押し潰す形で、巨大な箱が鎮座している。

「えっ……なにこれ……。」

おっかなびっくり杖で箱をつついてみる。すると――

「じゃじゃーん! ちょっと早めのプレゼントだよー!」

満面の笑みを浮かべるアリエッタが出てきた。

「エリス、イーニアに言ったでしょ? ブレゼントには、いい子のわたしが欲しいって。」

神経が衰弱していたのでよく覚えていないが、そんなことを漏らしたかもしれない。

「だからわたし、ブレゼントになったんだよ!」

「プレゼントになったって……。」

「さっそくいい子なこと、しちゃおっかなー? 新魔法書7万とんで46頁……匠の普請!」

アリエッタが詠唱すると、部屋中に淡い光が広がった。

「エリスの魔道アパートメント、隙間風が入るでしょ?

風邪ひいちゃうといけないから、魔法で隙間を塞いでおいたよ。」

「あ、ほんとだ……風が入ってこないわ。」

「わたし、いい子? いい子だったら褒めてー!」

「え、ええ……いい子よ。えらいわ。」

エリスは戸惑いながらも、アリエッタの頭を撫でる。

「わーい! エリスに褒めてもらってうれしいなー! もっと褒めてもらえるようにがんぼっちゃうね!」

目の前にいるこの生き物は一体なんなのか。

「えげつないほどいい子ね。」

こんなことが、あっていいのだろうか。

「あっ……そういうことか……。」

エリスは悟った。

「私……疲れて死んだのね。」

もしくは、今まさに死にゆくところなのだろう。

小さい頃に読んだ童話、『マッチ売りの魔道少女』と一緒だ。

このいい子なアリエッタは、今際の際に見る幸せな幻なのだ。

「最期くらい、報われてもいいわよね。」

エリスは穏やかな気持ちで、幸せに身を委ねようと思った。

「ねーねーエリス。お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

「なにかしら?」

「明日、魔道士協会主催の清掃活動があるでしょ? 清掃活動だけじゃなくて、魔道炊き出しもやりたいなー。

魔道炊き出し、やってもいい? 魔道シチュー、炊き出してもいい?」

何かと思えば、ボランティア活動の申し入れではないか。

「素敵な提案ね。やりましょう。」

「それからもうひとつ……わがまま言ってもいい?」

「わがまましか言ったことのないアリエッタの口から、そんな言葉が出るなんて……。」

「魔道シチューだけじゃなくて、魔道カレーも作ってあげたいなー。」

「きっとみんな喜ぶわ。いっぱい作りましょうね。」

「あとねー、にんじんを星の形に切ってあげたら、食べた人は元気になると思う。」

エリスは、目をらんらんと輝かせるアリエッタを直視できなかった。

「エリス……泣いてるの? 星の形は嫌だった?」

こんなに優しくていい子なアリエッタは、まぶしすぎる。

「嫌じゃないわ……。にんじんは星の形にしましょうね……。」



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「地面からうまみ成分が出る魔法を使ったら……人は這いつくばって生きるのだろうか?」

アリエッタは哲学的思索に耽りながら往来を歩いていた。すると、誰かとぶつかってしまい――

「どこ見て歩いてんだてめえ! おいおい壷が粉々に割れちまったじゃねえか!」

どうやら壷を壊してしまったようだ。

「わーごめん! ちょっと考え事してて。」

「超高級な壷だぞ! どう落とし前つけてくれるんだ? ああん!?」

「でもなー、正面衝突だからなー。ここはひとつ、お互いさまということで。」

「そっちが走ってぶつかってきたんだ。きっちり弁償してもらうぜ。金貨100枚だ!」

「……ははあ、なるほど。さては貴様……魔道チンピラだな!?」

八つ裂きにしてやろうかと思ったが、あとでバレると人道的にまずい。

せっかく身代わりがいい子ポイントを稼いでくれているのだ。

それを無駄にするほど、アリエッタは愚かではなかった。

「魔道チンピラよ。ここは話し合いでスマートに解決しよう。その壷、金貨100枚の価値と言ったな?」

「お、おう、そうだ。1枚も負けねえぞ。」

「ということは……あっちじゃ高すぎるな。」

相対的に安いほうでいこう。アリエッタは魔道空間から魔法書を取り出し、詠唱する。

「新魔法書19万とんで3頁! 知り合いだけど決して友達ではない相手を呼び出す気まずいやつ!」

まばゆい光を放ちながら、知り合いだけど決して友達ではない壷が現れる。

「え……え……何!? あっ、おぬしは……。いつぞやわしの魔道金山をふっ飛ばした怪獣!」

「はい、ということで、見るからに金貨100枚分の価値がある壷です。

このひとを、あげます。」

「あげますって……。わしはおぬしの所有物じゃないだろ!」

「おい! 本当にこいつが俺のものになるのか!? なんか当人に話通ってないっぽいけどよ。」

「そのへん、両者言い分はあると思いますので、話し合いで解決してください。」

アリエッタは魔道チンピラと金の精を魔道障壁で囲って逃げ遭を塞ぎ、その場から立ち去った。

聖なるなんやら前日である。広場は例年以上の賑わいを見せていた。

「さあさみなさん、魔道カレーの列はこっちだよー。」

「魔道シチューはこちらにお並びくださーい。」

いい子エッタとエリスによる、歳末大魔道炊き出しである。

「おー、やっとるやっとる。おぞましいほどにいい子だなー。」

アリエッタは陰からふたりの様子を窺うことにした。

「エリスの魔道シチュー、人気だねー。わたしの魔道カレーも負けないもん! 競争だー!」

「ふふふ、私だって負けないわよ! みんなに元気を配りましよう!」

「ぶひゃひゃ。エリスめ、あれを本物のわたしだと思い込んでる。」

魔道ジャーキーをかじりながら長蛇の列を遠巻きに眺めていると、ひと際汚れた服の男が目につく。

誰かと思えば、先はどの魔道チンピラだった。

腫れあがった顔とボロボロの服を見るに、金の精と殴り合って負けたのだろう。話し合いでは解決できなかったようだ。

やがて、カレーの列に並んでいた魔道チンピラに順番が回ってくる。

「お前は……さっきのガキじゃねえか……。あの壷と戦って……ギリ負けたわ。」

「よくわからないけど、元気ないね。特別に具をいっばい入れてあげる!」

「肉多めに入れろ。それで許してやるから、とにかく肉を多めによこせ!」

横柄な態度の魔道チンピラは、地面に腰を下ろしてカレーを食べる。

「どうしたの!? 辛かった? シチューにする?」

「星のにんじん見てたら……小さい頃に食べたお袋のカレーを思い出しちまってよ……。」

すると――ひと口、ふた口とカレーを食べるうちに、涙をこぼし始めた。

「立派な魔道士になるって田舎から出てきたのに、魔道チンピラになっちまった……。ああああああチクショウ!」

魔道チンピラはカツカツとカレーを食べきると、濡れた目元を拭った。

「俺は……やり直してえ! 立派な魔道士になりてえよ!」

「きっとなれるよ! がんばって!」

「魔道士協会は、魔道チンピラの更生にも力を入れているわ。

心を入れ替えて、魔道の力で社会に貢献しましょう。」

魔道チンピラはいい子エッタとエリスに頭を下げると、駆け出していく。

その笑顔は、晴れがましかった。

気づけば、広場中が笑顔だ。その中で一番きらびやかな笑顔は、いい子エッタである。

「いい子エッタはなー。わたしと同じ見た目のくせにいい子すぎて気持ち悪いんだよなー。」

いい子エッタの無垢なる笑みを見て、アリエッタはちょっと胸やけがした。

「大魔道炊き出し、大成功ね。みんなに元気を配れたのは、アリエッタのおかげよ。えらいわ。」

そしてエリスである。しまりのない笑顔でいい子エッタの頭を撫でている。その様は、どこか牙を抜かれた獣を思わせた。

「そろそろ私たちも食事にしましょう。」

「わーい! わたしはエリスの魔道シチューが食べたいなー!」

「なら私はアリエッタの魔道カレーをもらうわ。星のにんじん、たくさん入れてね。」


「これは……新しい魔法を試すチャンス!」

アリエッタは素早く魔法書を取り出し、詠唱。

「新魔法書21万とんで6頁! 強制変身! カレーを食べるのにふさわしくない服装!」

アリエッタの魔法によって、カレーを食べるエリスが光に包まれた。

「ぶひゃひゃ……首に白いふわふわ巻いてカレーを食べるなんて、愚の骨頂!」

突如として衣服が変化したエリスは戸惑いを見せたが――

「なにこれ……どうなってるの? まあ、白いふわふわは外せばいいんだけど。」

白いふわふわを外して、カレーを食べ始めた。

「エリスめ……こしゃくな……。」

「ねーねーエリス。明日は聖なるなんやらだよ。一緒に魔道ターキー、食べよっ!」

「そういえば、前にそんなこと言ってたわね。明日は一緒に魔道ターキーを食べましょう。」

「……魔道ターキーの話……わたしとしたやつ……。」

楽しげに話をするふたりを見て、アリエッタはもにゃりとした疎外感を覚えた。



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