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【白猫】蒼き炎のテンペスト Story1

最終更新日時 :
1人が閲覧中
最終更新者:にゃん

開催日:2018/03/29





目次


Story1 呼ばれて飛び出て

Story2 その名はロイド

Story3 蒼炎きたる

Story4 リンツ会議

Story5 リンツの酒場にて

Story6 キャトラとアンジェラ

Story7 初陣



登場人物


エマ
アンジェラ
ロイド
グラハム
デクスター





story1 呼ばれて飛び出て



リンツ島――

連邦にある小さな島。そこに――



とうとうアタシたちの時代が来たみたいね!

キャトラ、いきなりどうしたの?

だって、今回、名指しで依頼してきたじゃない。

アタシたちもビッグネームになったってことよ!

あっ! サインとかも考えないと!!

キャトラはペン握れないでしょ……


姫様っ!

姫様、こんなところに! 爺は探しましたよ。

えっと……

アイリスにもファンができたのね!

それとは違う気が……その、おじいさん、初めて会うような気がするんですけど…

この爺をお忘れとは……姫様、グラハムです。近衛隊長のグラハム・オウガスタです!

グラハムさん、どうしたんですか?

エマ、姫様がワシを覚えていないのだ。

……その人、グラハムさんの姫様じゃないと思います。

あなた、お名前は?

アイリスです。

アイリス……そうか……姫様じゃないのか……

すまないな、お嬢さん。間違えてしまったようだ。

いえ、お気になさらず……

そうか、姫様じゃないのか……そうか……

……ごめんなさい。あの人、悪い人ではないんです。ただ人を間違えることが多くて。

あのおじいちゃん、お姫様を探してるの?

……そうなんだと思います。それで、あなたがたは?

ギルドの依頼で、このリンツの島に来ました。冒険家のアイリスです。

キャトラよ。で、こっちが主人公。

考古学者のロイド・イングラムってひと、探してるの。

……あの人の知り合いですか?

知ってるの? だったら、どこにいるのか教えてほしいんだけど。

……ついてきてください。



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story2 その名はロイド



ここがロイドおじさんの家です。

おじさん?

一応、母の弟だそうです。ほとんど知らない人なので、本当なのかも、よくわかりませんが……

おじさん、エマです。お客さんを連れてきました。

開いている。


そろそろ来る頃だと思っていたよ。飛行島の諸君。

アンタがロイド・イングラムなの?

ああ、そのとおりだ。噂どおり喋る猫がいるんたね。いやはや驚いた。これは驚いた。

それで君がアイリスくんかね? その隣の君が……

…………

この島には危険な兵器が存在するっ!

いきなり叫ぶなー!

はるか昔にあったとされる白の王国と黒の王国! その時代に作られた超兵器!

眉唾だと思うかね? 妄言綺語だと思うかね? だが事実だ! それは、君たちの存在が証明している!

例えば飛行島! これは黒の王国が作った空中要塞だと私はにらんでいる。

…………

君たちには古代兵器を持つ者としての責任があると思わないかね?

責任ってなによ?

破壊する責任だ。

飛行島を連邦が! 帝国が! 手にしたらどうなる? 戦場は大いに変わるぞ。

多くの血が流れ、多くの嘆きが生まれるだろう!!

それを止めることができるのは飛行島を継承した君たちだけだ。

飛行島を壊せって言うの?

いや、違う。それは後でいい。それよりも危険なものがこの世界には存在するのだから!

四魔幻獣と呼ばれる兵器だ。

…………

その一つが、この島にある! アレは危険だ! 破壊しなければならないっ!

違う……

エマさん?

幻獣様は兵器なんかじゃない。なにも知らないあなたが勝手なこと言わないで!

私は知っている。二十年前に地獄を見たからね。人が塵芥のように死んでいった。

私の知ってる幻獣様は、そんなことしないっ!

君が生まれる前だからと言って、事実は事実。それは捻じ曲がらないよ、エマ。

魔幻獣は破壊しなけれぱならない。島民も皆、それを望んでいる。

それはあなたが、煽ったからでしょう!

啓蒙だよ、エマ。無知蒙昧なる者たちの目を開いてやっただけだ。

だいたい君が島の人間につらく当たられるのだって魔幻獣のせいではないか。

いなかったくせに……母さんを捨てて逃げたくせに……

部外者のあなたが、勝手なこと言わないでくださいっ!

 ――


話を続けよう。

エマさんはいいんですか?

気にする必要なんてあるのかね?



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story3 蒼炎きたる




あの人はなにもわかってない……

(幻獣様だけが私の味方だったのに……)


(森が騒がしい……なにかあったのかな?)



あれは……飛行艇の艇団?

次から次に……


…………

……


ハッハッハ!いい風だっ!

姫様、中に戻ってください。甲板は危険ですぜ。

小言はやめよ、ザーラント。少しくらい乙女のようにはしゃがせろ。

……さすがにテンション、高すぎやしませんか?

ハッハッハ! こっちが私の地だよ! 残念だったな!

……はしゃぎすぎて、落ちないようお願いしますぜ。


…………

……



な、なんだあんたらは!?

我が名はアンジェラ・ベイリアル!嵐の国、西方戦線司令部、蒼炎の島ウルドを支配するベイリアル家第三公女である。特使と思え!

あ、嵐の国って……あの……

そう怯えるな。今回(・・)は侵略しにきたわけではない。

この島の代表者を呼んでこい! 言っておくが、ウルドの兵は短気だ。急げ!

は、はい!


…………

……



はあ、はあ、はあ……お話とはいったい……なんでしょうか?

貴様、名前はなんと言う?

エイブラムです。

エイブラム、この島には危険な兵器があるそうだな。

そんなもの、ありません!言いがかりです。

言いがかり……要するにウルド軍は巷のチンピラ風情と同等だと、そう言いたいわけか?

そ、そういう意味では……兵器なんて島にはありませんよ。

なんなら島中、探してもらってもかまいません。

魔幻獣……

この島にあるそうだな。二十年前に暴走し、島の半分を焼いたそうじゃないか。

た、たしかに魔幻獣はあります。でも、あれは危険な怪物で……

認識に齟齬(そご)がある。魔幻獣は怪物ではなく一夜で島を焼き尽くせる兵器だ。

我らが主は、かような兵器が他国に流出することを憂慮なされている。

……貴様らには過ぎたるものだ。我らベイリアル家で接収する。

ほ、ほかの者とも相談したい。時間をいただきたく……

……いいだろう。一晩だけ待とう。

あ、ありがとうございます!

ああ、待て。一つ覚えておけ、エイブラム。

味方には情けを。敵には蒼炎を……それがベイリアル家の家風だ。忘れたら高くつくぞ。


 ***


なかなか堂に入った脅し方ですね。

……弱い者いじめは好きにはなれんよ。



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story4 リンツ会議


というわけでな……

…………

ちょうどいい! あの厄介な化け物を持ってってくれるなら御の字だ。ひっく!

…………

でも、下手なことして、またお怒りになられたら……

問題ないだろう。魔幻獣の起動には巫覡の力が必要だ。

エマにしか、アレを起こすことはできん。

でも、二十年前の事件はどうなるんだ?

あの時の巫覡、エマのお袋さんは村にいたんだぞ。

仮定の話だが遠方にいながら魔幻獣の起動も可能だったのかもしれない。私と違い、姉には才があった。

おい、ふざけんなよ!俺の兄貴は、あの時、死んだんだぞ!

母さんは、そんなこと絶対にしない!!

可能性の話をしてるのだ。あるいは無意識のうちに、ということもあるだろう?

だいたい事実はどうあれ、私たち家族は、島民に恨まれてきた。もう充分、罰は受けた。

だからって許せるか!

許す必要はない。だが、あなたは怒りを向けるべき相手を間違えている。

真に憎むべきは、直接あなたの家族の命を奪った魔幻獣だろう?

けどよ!

わかっている。わかっているさ。あなたがたは魔幻獣を憎めど、あれには勝てない。

…………

だが、もう己の弱さを受け入れるのは、終わりにしないか?

これ以上、誰かのせいにして! 目の前の問題から目を背けるのは! やめるべきなのだ!!

じゃあ、お前さんは、魔幻獣を奴らに差し出せばいいと言うのか?

我々でアレをどうにかできないのならば彼女たちに任せるほかあるまい。


……私は絶対に反対です。

エマ、それはどうしてだね?

そっとしておけば、幻獣様はなにもしません。

また動くかもしれねえだろうが!

私が絶対にさせません!

…………

さて、エマの意見も聞いたところで島長、考えをまとめたまえ。

ここにいない者たちの多くは、あの怪物を恐れている。エマのような意見は少数派だろう。

どうして勝手に!

事実だからさ、エマ。そうだろ? 島長。

まあな……そういう話はよく聞くよ。

エマ、空気を読むんだ。ここだよ。ここが分水嶺だ。君がこの島の人間に受け入れてもらうためのね。

私は受け入れてもらいたいなんて思ってません。今さら、どうして仲良くできるって言うんですか……

君の母親の手紙には自分のせいで君が島民から疎外されていることを深く悔やんでいることが書かれていた。

姉さんの望みを叶えてあげなさい。

っ! あなた、最低ですね。そうやって人の心を!

もういいです! 私は勝手にやります! あなたたちも勝手にやればいい!



いいのかね?

ええ、問題はないでしょう。この場に呼んだだけでも充分、義理は果たしました。

さあ、島長、ご決断を――



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story5 リンツの酒場にて



なんかすごいことになってきたみたいね。

そうだね……

四魔幻獣……黒の王国が残した兵器……本当なら破壊しないと。

そうね。やっぱり壊すしかないわね。


「それは困るな。」


アンタ、何者!?

喋る猫だと!? ハハハ、面白いな! その上、かわいいではないか!

あら、抱き方上手ね。

猫は好きだからな。動物はいい。嘘はつかんし、裏切りもしない。

それは偏見ね。アタシは嘘もつくし、場合によっては裏切るわよ!

ハッハッハ、そうか!愛い奴め。名前はなんと言うんだ?

アタシに名前を尋ねる前に自分の名前を言うべきじゃない?

なるほど、確かにな。これは失礼した。

私はアンジェラ・ベイリアル。蒼炎の島ウルドの第三公女だ。

それって……

現在、武力でリンツの島を脅している大悪党と言ったほうがわかりやすいか。

じゃあ、アンタ、悪い奴なの!?

この島の人間からみれば、そうだろう。私の命令一つで、この島は火の海になる。

本当にやるの?

必要に迫られれぽな。そうならないことを祈るよ。

これもなにかの縁だ。一杯、奢ろう。

この島の人たちからしたらアンタ、悪い奴なんでしょ? しんな堂々としてて大丈夫なの?

誰だって死ぬ時は死ぬさ。細かいことは気にするな。


…………

……


ハッハッハ! キャトラよ、お前は愛い奴だな! もっと近う寄れ。

からみ酒やめなさいよ! ふんとにもう!!

私はかわいいものが好きなんだ。お前のように愛い奴をな、こうギュッと抱いてると落ち着くのだよ。

猫は自由でいたいのよ一!

よいではないか~。よいではないか~。

ぎにゃ一! 放してー!!


こんなところでなにやってんですかい? 敵地でハメ外しすぎですぜ。指揮官殿。

ザーラント、見て見て~! キャトラ、か~わ~い~い~!

ぎにゃ一! 助けてー!!

……よくわかりませんが、アンタがたも今日のことは忘れてください。

おい! ちょっと待て! 引っ張るな! ザーラント! キャトラ、アイリス! 主人公!

私は魔幻獣を絶対に持ち帰るぞ。でなければ、兄上に超殺されるからな!

これは私の生死を賭けた作戦だ。ハッハッハ! 超ピンチだ! テンション、アガってくるな!

ほら、帰りますぜ。きちんと歩いてください、指揮官殿。

ハッハッハ!キャトラ、二軒目に行くぞ!

行かないわよ!



…………

なんかすごい人だったね。

そうね。悪い奴って言うより、迷惑な奴だったわね。



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story6 キャトラとアンジェラ




そして――

――夜が明けた。


結論は出たようだな。

魔幻獣を差し出しましょう。ただし、他の島のものには一切手出し無用でお願いします。

よかろう。兵たちの乱暴狼籍は一切禁じよう。もし規律を破る者がいたら、私が手ずから首を刎ねる。

ザーラント、兵たちに徹底させよ。

はっ!

お願いいたします。

だが、島民に協力を要請することはあるぞ。我々は、この島の地理に疎いからな。

それは……

なにもタダでやれとは言わん。それと、兵たちの無聊を慰めるため、酒場などは使わせる。

その際、島民とイザコザが起きる可能性もあるが、酒の席だ。多少は許せ。

……わかりました。

すぐに魔幻獣の眠る遺跡へ向かう。詳しい者に案内させよ。

はい。

下がってよい。

失礼します。


 ***


……ザーラント、何人か供回りを用意せよ。

まさか、姫様自ら遺跡に行くんですか?

当然だろ。ついでに島の地形も把握せねばならん。

……了解しました。島の連中に気づかれないよう、島民の人数や村の地理も調べさせます。

村の地理なら昨晩、把握したぞ。

もしかして、そのために飲みに行ったんですかい?

斥候ついでにストレスも発散してきてやった。ハッハッハ!

……食えない姫様ですぜ。


…………

……


これはこれは姫様! ご機嫌うるわしゅう。

まさか城から逃亡した貴様とこんなところで再会するとはな、ロイド・イングラム。

おや?ウルドで拝顔した折と、雰囲気が違いますな。


やっほ一、アンジェラ!

こんにちは、アンジェラさん。

そこの三人は冒険家だろ? 土地には詳しいのか?

私の護衛です。あなた様に斬られるかもしれなかったので。

あやしい動きをしたら斬り捨てる。貴様らもな、キャトラ。それでかまわないか?

かまうわ。

では、連れていけないな。

いいでしょ一! 連れてって! 連れてってよ! アンジェラ~! おねが~い!

くっ……猫が猫をかぶるとは……忌々しいほど愛い奴め……!

アタシの肉球、触らせてあげるから~。ねー、ねー、おねが~い。

……うん、わかった。

(わかっちゃった……!?)

……猫、好きなんですかい?

兄上の前で猫をかぶる私が猫を嫌うわけなかろう!



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story7 初陣


そう! 魔幻獣は闇の王が作りし破壊兵器なのです!

これを、このまま放置するのは危険極まりない!

だから我々が兵器として活用してやる。

それが可能ならば、それも良いでしょう。その可能性は存分にありえます。

戦乱渦巻く嵐の国。それを圧倒的な武力で併合できるならば、正しい力の使い方でしょう!

ですが、ですがですよ?コントロールできなければ、どうします?破壊する他ありません。

……貴様はウルドで富国強兵に勤しめと民を煽っていたではないか。

改めて魔幻獣を確認した結果、アレは人の手に余ると結論づけたのです!

唐突な宗旨替えだな……貴様の目的は最初から魔幻獣の破壊か?

人は変わるものです、閣下。昨日の無知さを恥じ、戒めをもって前に進むのですよ。

よく回る口だ……まあ、良い。貴様の目的がなんであれ、利用できるものは利用する。

害が出るとなれば、斬り捨てる。そのつもりでいろ。

アタシたちはどうする? その魔幻獣だっけ? 壊すの?

もし、ロイドさんの言ってることが本当なら、破壊しなくちゃならない。

そうね。でも……

この状況だと無理なんじゃないかしら?

ぎゃあ!


これはこれは……これは困りましたな。

<兵士が数名ほど、落とし穴に落ちていた。>


おい、大丈夫か?

すいません! 一人、足を折りました!

ぎゃあ!

ったく、今度はなんだ?


大丈夫ですか?

お、降ろしてくれー!

また罠か……姫様、そこら中にあるみたいですぜ?


ロイド・イングラム、貴様、謀ったか?

滅相もない。これはエマの仕業でしょう。魔幻獣の献上を嫌がっておりました。

エマ……何者だ?

私の姪で魔幻獣の巫覡。管理者の一族です。魔幻獣を神格化していて、頑固です。

……姫様、どうしますか?

見つけだして捕らえよ。下手に命を奪えば、島民の反感を買いかねん。

そううまく行くでしょうか? というのも……

魔幻獣の巫覡は獣と心を通じあえます。

巫覡の感情に魔獣が感応するのですよ。この島の魔獣はエマのために行動する。

厄介な話だな。

エマはあなたがたに敵意を抱いている。となれば、魔獣にとっても敵になるでしょう。



ハッハッハ! 囲まれたようだな! 地の利は相手にあり、こちらは罠にかかっているっ! なかなかに窮地ではないかっ!

テンション、アガってきたぞ! 囲みを崩す! 皆の者、私に続けえええっ!

「「「うおおおおおおっ!!」」」





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