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【白猫】スタートライン Story0

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最終更新者:にゃん


2019/04/11



目次


Story1

Story2

Story3




story1



――自然に囲まれた、とある辺境の島にて――


「名前、よし!学歴、よし!資格、なし!趣味特技、よし!

志望動機――ぜんぶ、よーしっ!!

おかーさーん!ちょっと出かけてくる一!」

「どこいくの、フェネッカ?」

「郵便屋さんのとこー!履歴書出しに!」

「……気持ちは、変わらないのね?」

「……うん。危なくたって、怖くたって……あのお仕事、やってみたいって思ったから。」

「受かるといいわね。――いってらっしゃい!」

「ありがと!いってきまーす!」



「おお、フェネッカ。このまえ焼いてくれたクッキー、とても美味しかったよ。」

「どういたしましてー!ちょっと自信作だったんですー!」


「あら、フェネッカ!この間は、うちの子探すの手伝ってくれてありがとう♪」

「いえいえー!困ったときはお互い様でーす!」


「フェネッカおねーちゃーん!あ一そ一ぼー!」

「ごめんなさーい!帰ってきたらねー!」


「ひぃ、ひぃ……ふぅ……重い……」

「こんにちは、おじさん!荷車押すの、手伝いますよー。」

「おお、フェネッカ。しかし、悪いだろうに……」

「お気になさらず♪ちょうどコレ出しに、郵便屋さんのとこに向かってる途中ですので!」

「トシン島・自警団<ソルトホーン>様――

そうか……フェネッカもついに勤め人かぁ。」

「エヘヘ……」

「ただでさえへんぴな島だし、お前さんが出ていったら寂しくなるなぁ。」

「採用されるかどうかは、まだわかんないですけどね……」

「ん?ずいぶん弱気じゃないか。」

「だってわたし、これといって取り柄もないですし……おばかですし……弱虫、ですし。」

「大丈夫さ。お前さんは年々、親父さんに似てきてるよ。」

「ええ!?そ、そんなにわたしっておじさんくさいですかっ!?」

「はは、違う違う。

困っている人、孤独な人を守ってやれる……優しい人間ってことさ。

もし向こうに行っても、がんばれよ、フェネッカ。

無事に採用されたら、島じゅう総出で祝ってやらんとな!」

「――はいっ♪」

「それと、団体宛の敬称は『様』じゃなくて『御中』な。」

「はぅあ!?書き直しです!?」



名前――

 フェネッカ・クロッカ。16歳。

就職志望先――

 トシン島の自警団<ソルトホ一ン>。

志望動機――

 一身も心も強くなって、たくさんの人を守りたい!




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story2



――すたれ寂れた、とある小さな島にて――


(……はぁ、お腹すいた。

さっさとコレ出して、ハンバーガー買って帰ろ。

……履歴書の書き方、ちゃんと合ってるのかな?)


「なあ、いいじゃねえか。ちょっとお小遣い分けてって頼んでるだけだろぉ?」

「……なにしてるの。」

「チッ……リルテットか。なんの用だよ?」

「……やめれば、そういうの。みっともない。」

「関係ねーだろ。お前、コイツと友だちってワケでもねえだろ?

つーか、お前に友だちなんざひとりもいねえもんなぁ?」

「……じゃあ、友だちの友だち。」

 「じゃあってなんだ!?」

「つーかお前、大事そうになに抱えてんの?ちょっと賃してみ。」

「あっ……」

「なになに?トシン島・ギャング団<シガーファング>さんへ……?

なにお前、ギャングになるの?」

「……返して。」

「なあ、お前の親父って、デカ島の刑事だよな?

お前、親父に憧れてるから、こ一していっつも厄介事にクビ突っ込んでたワケじゃなかったんだ?」

「パ――……アイツは、関係ない。

私は、ただ……こんな島、出ていきたいだけ……!」

「んで心機一転、向こうで人生やり直そうってか?ムリムリ!!

ガキの頃から嫌われ者のお前にゃ、誰も近づきゃ――」

「――返して。それ。」

「……ッ!てめ――」

 (……くそ、もう行こうぜ。あいつけっこ一強えぞ)

「チッ……しらけちまった。おらよ。」

「ふん……」


「……あの……どうして……助けて……」

「理由とか、いるの。」

「ひっ……ごめんなさい!」

(……ほんと、くだらない。この島も、周りの人たちも、――家族も、何もかも)

だからぜんぶ、置いていくんだ)

「あ、そのぉ~……

団体さんに送る手紙の敬称……『さん』じゃなくて『御中』……」

「……!!」

「ひぃ!ごめんなさい!!」


名前――

 リルテット・ミッケ。16歳。

就職志望先――

 トシン島のギャング団<シガー・ファング>。

志望動機――

 ――退屈だから。


 ***


「配達物は……あと二件か。<シガーファング>と、<ソルトホーン>ね……

は~~、だりぃわ~~……とっとと終わらせて帰ろ……」



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story3



――トシン島――

才気ある若手を、島の外から積極的に迎え入れることにより、ここ十数年で飛躍的に栄えた島――


はぁあ……!ここがトシン島!!高い建物たくさん……!」

(書類審査は無事に通った……今日の面接に通れば、わたしも自警団の一員に……!

お化粧、変じゃないかな……お洋服、しわになってないかな……はぁ、緊張しすぎてお腹痛い……)

――うわぁああん!

捕まえたぜぇ。ダメ親父と仲良く働いて、きっちり借金返しやがれ。

はぅあ!?――た、助けなきゃ!で、でも……あの男の人、怖そう……

うぅぅ……勇気出せ……勇気出せ……勇気出せ……フェネッカ!


……子どもいじめて、楽しいの。

失せな。このガキの身内だってんなら話は別だがよ。

……じゃあお姉ちゃん。

じゃあじゃねえよ!そんな雑な身内がいるか!

あんまトンガってっと、そのカワイイお顔を――

……服ひっぱらないで。ボタンちぎれる。

ってえな……このアマ!

そ、それ以上、乱暴したら……お、大声を出しちゃいますから……!

き、君も早く逃げて……っ!

ったく、次から次へと……女だろうが容赦しねえぞオレぁ!


「コラー!!!」


詳しい事情は知らないけど、とにかくケンカはやめなさいな!

チッ……!


あ、ありがとうございますぅ……助かりましたぁぁ……

困ってたみたいならよかったわ♪

君も、大丈夫でしたか……?怪我はありませんか……?

うん……ありがとう……

とりあえず、私たちと一緒にいようか。困っているなら力になるから。

……私、これで。

あ、待ってくださいっ!ボタン、取れかけてますよ?すぐに縫い直しますから、じっとしててください♪

……いや、別にこれくらい――

あの――さっき、すっごくかっこよかったです。

……私?かっこいいって、なにが。

勇気がある人だなぁって。――はい、終わりました♪

……早。

そういえば、自己紹介がまだだったわね。アタシはキャトラよ♪

私はアイリス。彼は主人公です♪

フェネッカです!よろしくお願いしますねー♪

……リルテット。

アタシたち、冒険家なの。ギルドの依頼でこの島にしばらく滞在するから、また会えるといいわね。

はい♪……って、もうこんな時間!!すみません、わたしもう行きます!

リルテットさんも、また♪

…………

(……『また』なんてない。どうせ、あんな子とは二度と関わらないだろうし。

私は今日から――ギャングの一員なんだから)


 ***


「ようこそウェルカムだ新人!!

今日からオレたちと一緒に、熱く!激しく!猛々しく!島の平和を守ろうじゃないのォ!」

「……なにこれ。」


 ***


「――テメェが入団希望者か。

のっけから遅刻たァ、ウチも舐められたモンだな。」

「……シュミマセン……」




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