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【白猫】スタートライン Story2

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最終更新者:にゃん


2019/04/11



目次


Story7 ガールズ・ティー・パーティ

Story8 がんばる新卒、励む新卒

Story9 手取りは意外と少ない

Story10 ココロのトビラ

Story11 新卒の役目

Story12 きしむ牙、震える角




登場人物


ギャング<シガーファング>
部下フェネッカ・クロッカジェイク
自警団<ソルトホーン>
レイモンドリルテット・ミッケ部下


story7 ガールズ・ティー・パーティ



<フェネカとリルテットがあべこべの職場に採用されてから数日が立った――>


ウチで面倒見てる店から金、盗もうなんざ――いい度胸じゃねェか。

ひっ、ひぇえ……!す、すみません!

あ、あの!お金に困ってるんですよね?

これ、わたしの全財産です!足しにならないかもですが……!

勝手なことすんな新入り!お前、初任給もまだじゃねーか!

こういうときは先輩が出すんだよ!受け取れオラァ!!

ひいっ!?

…………


 ***


――やッ!

これでリルテットちゃんの5人抜き……!

――やるじゃないのォ。まさに期待の星……ってヤツだな!

……あなたはこないの?

ム……い、いいだろう!!ヘイヘイヘイ!どこからでもかかってこい新人!

どうした!?こないのか!?ならこっちから――

てい。

ンーフ!!

いくら体鍛えてたって、そんな腰が引けてたら意味ない。


 ***


今日こそツブしてやるよ……

こっちのセリフだ悪党ども!いくぞぉぉお!!


ひぇええ……っ!!あぶなーい!!

……あ、定時。

きょ、今日もゴングに救われましたぁ……!


 ***


「お仕事上がりにお茶するの。日課になっちゃいましたねー♪」

「……フェネッカが毎日、誘ってくるからでしょ。しかも、追いかけっこ直後に。」

「ご、ご迷惑でしたでしょうか!?定時も一緒ですし、つい~……」

「別に……迷感とは、誰も……」

「ほんとですか……?ならよかったです♪

――それにしても。<シガーファング>と<ソルトホーン>の人たちって、どうしてあんなに嫌い合ってるんでしょうね?」

「……自警団とギャングなんて、そういうものじゃないの。」

「そうなんですかねぇ……」

「私たちみたいな新人じゃ、わからないこともあるでしょ。」

「そうですね……あ、新人といえば。リルテットさんのところって歓迎会とかありました?」

「私、用事あるって断った。」

「えー、だめですよー!社会人はお付き合いも大事って、お母さんが言ってました!」

「フェネッカはいったの?」

「幹事、わたしでしたから!愚痴とかお説教とかいっぱい聞かされて、ちょっびり疲れちゃいました。」

「どうしてフェネッカの歓迎会の幹事をフェネッカが……」

「でも、わたし社会人なんだー!って感じがして、新鮮でしたよ♪」

「……すごいね。」

「?」

「私、そういうのできないから。誰かと仲良くしたりとか、一緒になにかしたりとか……」

「……もしかして、職場の人たちとあんまし打ち解けられてませんか……?」

「別に、興昧もないけど。」

「――あの、リルテットさん。今からわたしに、お稽古つけてもらえませんか!?」

「……なんで?」

「いっつもわたし、リルテットさんに追いかけ回されてばっかりですし!

ちゃんと鍛えて強くなって、たまにはこう、ばちこーん!ってやり返しちゃうんです!」

「それを私に頼むのか……」

「仕事終わったあとに自分磨きって、かっこよくありませんかっ!?」

「……ハンバーガー、おごってくれたら、いいけど。」

「おごりますおごります♪それじゃさっそく移動しましょう!」




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story8 がんばる新卒、励む新卒



「はぁ、はぁはふぅ、あ、ありがとうございました……!」

「だいじょぶ……?」

「ご心配なく……! いやぁ……わたし、ほんっとにダメダメですね……」

「……そんなことない。最後の方はちゃんと、ついてこれてたし。

ただ、フェネッカはすぐ目つぶる。最後までちゃんと、相手のこと見て。」

「肝に銘じます! ――ところで、ひとつ提案なんですが!」

「……?」

「自警団の人たちとも、こうやって親睦を深めてみてはいかがでしょうか?」

「こうやってって……特訓で、ってこと?」

「コミュニケーションの方法って、言葉だけじゃなくって、いろいろあると思うんです。

苦手なことだと、弱気になって物怖じしちゃいがちですけど……

でも得意なことでしたら、なんかこう、なんか……自信わいてきませんか?」

「やだよ。くだらない。」

「そ、そうですか……」

「でも――覚えとく。一応。」

「……はいっ♪ またお稽古、つけてくださいね!」


 ***


はぁあッ!!

で、できた……!ありがとう、リルテットちゃん!

わかりやすかったよ。教えるの上手いんだね。

別に……

フッ……入ったばかりの新卒が、先輩に格闘術の講義か。

……だめならもう、やらないけど。

みんなだけズルいぞ。オレにも教えてくれ!!

……仕方ないな。

(ム……? 今のは……)


 ***


野郎、待ちやがれ!!

カタギにふざけた商売しやがって! 逃がさねえぞコラァ!!

チ……!!しつけぇな……!

新入り! そっちいったぞ!!

は? えええ!?

(わたしがこの島にきた日に、男の子いじめてたおじさん!――悪い人だったんだ……!)

どきゃあがれえええ!!

(……しっかり踏ん張って……最後まで目を……つぶらない!)

(……新入りの<大志のルーン>が……?)

てりゃーーーーい!!!

うぉぉおああああ!?

今だ、捕まえろォォ!!

……えっと。できた……?

おい。

――よくやった。


 ***


「褒められちゃいましたっ!!」

「そ。よかったね。」

「エヘヘー♪リルテットさんのおかげです!

今さらなんですが、リルテットさんってどうしてあんなに強いんですか?」

「……父親、デカ島の刑事だから。小さい頃から、護身術とかいろいろ教わってて、それで。」

「なるほど、納得しました!お父さんと仲いいんですね♪」

「…………」

「リルテットさん……?」

「――なんでもない。

ごめん……今日、用事あるから帰る。」

「あ――は、はい……」



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story9 手取りは意外と少ない



(……リルテットさん、昨日、悲しそうな顔してたな……はあ……)

珍しく遅くまで残ってると思ったらなにシケたツラしてる。――受け取れ。

あ、すみません……!えっと、これは?

給料だよ。テメエの。いらねェのか?

い、いりますいります!はぁあ……これが噂の初任給!!ありがとうございますー!!

エヘヘ……なにに使おうかな~♪あ、でも実家に仕送りして、貯金もして――

なンだよ。

……なんか、保険とか、結構いろいろ引かれるんですね!

ウチはそのへん、ちゃんとしてンだよ。文句あんのか。

め、めっそうもないです!!では、お先に失礼しまーす!

あ、待て!テメエに言っておくことが――って、速ェな。

なんですかい?フェネちゃんに言っときたいことって。

<ソルトホーン>の新入りと、馴れ合ってるだろ、アイツ。

いい加滅――潮時だろ。


 ***


ヘイ、リルテットじゃないか。珍しく残業ご苦労!

……レイモントが泥棒、取り逃がしたせいでしょ。

まあいいじゃないか、最終的には捕まえたしな!もう、職場には慣れたか?

先輩たちも君を褒めてる!もっといろいろ話してみたいとみんな言っていたぞ?

……私は、別に……

別に――なんだ?

……なんでもない。

君は実にシャイだなぁ。言いたいことはもっとガンガン言葉にしないと伝わらないぞぅ!

レイモンドは体格のわりに度胸がなくて弱っちい。

そういう心にくるのじゃなくて、もっとこう前向きなやつな!

……まあ、君の言う通りなんだが、な――

――それより、これを受け取れ!念願の初任給だぞ!

……ん。もらう。

これで名実ともに、立派な社会人だな!もっと胸を張れ、胸を!!

ところで初任給はなにに使うんだ?やっぱり今の若い子は貯金か?それとも親御さんにプレゼントか!そのへん、たまにはメシでも食いながら語り明かさないか!

リルテットちゃん、もう帰りましたよ。

帰りたがり屋さんめ!……そろそろ、ちゃんと言っておこうと思ったんだがな。

<シガーファング>のあの子とはもう関わるな――と。


 ***


(初任給……これでもう、いつだってこの島から出ていける。でも――)

「<シュテルフ>のぬいぐるみ、セールは本日まででーす!みな様、ぜひお買い求めをー♪」

(……フェネッカって、なんかこういうの好きそう。けっこう高いけど……でも買えないこともない)

「――買っちゃおうかな。」

「なにをですか?」

「ひゃいっ!?買わないいらないあげない!!」

「なにかの標語ですか!?……今日はお互い、ちょっぴり遅めですね!」

「ざ、残業だったから……」

「奇遇ですね、わたしもです♪……ところで、ご飯ってもう食べちゃいましたか?」

「いまから買って帰る。」

「またハンバーガーですか?だめですよー、野菜もしっかり食べないと!」

「はいはい……それじゃあね。」

「――あの、よかったらわたしの部屋、遊びにきません?」

「……フェネッカの部屋?」

「一緒にご飯食べましょう!栄養あるもの、作りますから!」

「でもそれ、なんか……友だち……みたいだし……」

「はい?なんて?」

「……なんでもない。まあいいよ……別に。」

「では決まりですね!さっそくお買い物にいきましょう♪」



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story10 ココロのトビラ



「ごちそうさま。」

「お粗末さまでした。お口に合いましたか……?」

「ん。フェネッカは料理、上手なんだね。」

「エヘヘ。……それで、あの……リルテットさん……

昨日は本当にごめんなさい……!」

「……? 昨日って、なにが?」

「わたしお喋りで無神経だから、嫌な思いをさせてしまって……」


「なるほど、納得しました!お父さんと仲いいんですね♪

「…………」


「あ、あれは違う……っ!別に、フェネッカに怒ってないから……!」

「ほ、本当ですか!?傷つけてしまったのではないかとほんっとうに心配で……」

「いや、大げさすぎ……」

「……大げさなんかじゃありませんよ。

誰かを守るどころか傷つけてしまったら……わたし、お父さんに顔向けできなくなっちゃいますから。」

「お父さんって……フェネッカの?」

「はい……わたしが自警団を志望したきっかけって、お父さんに憧れたからなんです。」

「フェネッカって……父親と仲良さそうだもんね。」

「あ、うちのお父さん、もうお星様になってて。」

「……そう……なんだ……」

「そんな顔しないでください。わたしが赤ちゃんだった頃の話ですから。」

「……ん。どんな人だったの。」

「わたしは憶えてませんけど、優しくて強くてかっこよかったってお母さんが言ってました。

昔、故郷に大きな嵐がきたとき――わたしとお母さんを守って、それで死んじゃったそうです。

それを聞いて以来、わたしもお父さんみたいに、大切なものを守るために命を懸けられる……勇気のある大人になりたいなって。

「……そっか。」

「って言っても、今んトコぜんぜんダメダメですけどね。ちょっとでも怖いなって思うと、体が動かなくなっちゃうんです。

私……弱虫なんですよ。」

「別に、そんなこと……」

「……ありがとうごさいます。優しいんですね。

リルテットさんはどうして、ギャングに入ろうと思ったんですか?」

「故郷も、周りの人たちも、――父親も、嫌いだったから。

だからぜんぶ捨てて、別のどこかに行きたかった。別にどこでもよかった。」

「やっぱりお父さんのこと……好きじゃないんですか?」

「好きになれるわけない。いつも仕事のことばかりで、ママのこと、悲しませてた。」

「……リルテットさんのお父さん、刑事さんなんですよね。

きっと、たくさんのものを守りたくて……だから必死に、働いてたんじゃないでしょうか?」

「……知らない。ママが出てった朝にケンカして、もう何年も……話してないし。

アイツは、私に興味なんてない。昔も、今も、これからも……」

「そ、そんなこと……」

「……なんでフェネッカが泣きそうな顔してるの?」

「だ、だってぇ……」

「ごめん、めんどくさい話したね。明日も仕事だし、帰る。」

「――リルテットさん!!

わたし、リルテットさんのこと守ります!守れるくらい、強くなります!!」

「……は? なに、いきなり……」

「そうしたいなって――いえ!そうしなきゃって、思ったんです!」

「なにソレ……変なの。」

「わたしみたいなみそっかすが、ナマイキですかね? エヘヘ……」

「――ねえ、フェネッカ。私ね……私、フェネッカと――」

「?」

「……ごめん。やっぱ、なんでもない……」


 ***


「……はぁ。」


――父親と最後に話した日のことは、よく憶えてる。

悲しかったこと、寂しかったこと、嫌だったこと、辛かったこと――

ありったけの正直な気持ちを、ぜんぶぶつけて、それっきり。


それからは、ぜんぶがどうでもよくなって……

独りの時間がどんどん増えて……

私の周りからは誰もいなくなった。


だから、決めたんだ――

――もう二度と、素直な気持ちを言葉になんて、しないって――



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story11 新卒の役目


ゆ、許してください!!ほんの出来心で……!

その出来心とやらで何人、危ねェ橋、渡ったと思う?

――償え。

ひぇぇえええ……!!

お疲れ様でーーす!クッキーたくさん焼いたので、みなさんで食べてくたさい♪

……あ、あれ?お取り込み中でした……?

フェネちゃん……今はやめとけって……

でもその人、血出てますよ……?それに、仲間……ですよね?

制裁だ。コイツは金のために組織を売り、全員を危険に晒した。

先週の<ダダン団>からの襲撃は、コイツか流した情報のせいだ。

フェネちゃんだって、危ねえ目にあっただろ。

でも、みなさんが守ってくれましたし……

関係ねェ。落とし前はつけさせる。わかったら、下がって――

せ、セーサイとかオトシマエとかよくわかりませんけど……仲間同士で傷つけあうなんて、絶対よくないですよ!!

行動には責任が伴う。それが社会のルールだ。

そ、それなら……下っ端のわたしが、責任とらせる係やります!!

廊下に二時間立たせたのち、おしりペンペンと平行しつつ反省文を書いてもらいます!たぶん死ぬよりつらいやつです!

とにかくまずは、みんなでクッキー食べて落ち着きましょう!甘くて美味しくて、きっとみんな笑顔になっちゃいますから……!


…………



――っはぁぁあ~~……こわかった~~~~……

フェネちゃん、ボス相手に相変わらず無茶すんなぁ……

き、嫌われちゃったでしょうか?わたしのキャリアがヤバイ……

いや、アレはたぶん……止めてくれて感謝してる、って感じだったぜ。


 ***


ムウウ……数が多いな!倒しても倒しても滅らん!!

ヘイみんな、島民たちを守れ!気合入れろよォ!!

「「「はいッ!!」」」

……後ろもちゃんと、注意。

あ、ありがとう……!助かったよ!

通りがかりの君たちもスマン!恩に着るぞ!!

困ったときはお互い様よ!

気をつけて!まだきます……!

うォォォオ!?こっち来るぅうう!?

……相手、よく見て。ちゃんと腰落として……

その体格なら、気合い入れればそうそう競り負けない……

!!

島民たちの安全と平和は……このオレが守ォォォオオる!!

フゥウ~……!どうだった、オレの勇姿はッ!!

ちょっと、あっちにまだいるわ!!

――ツメが甘いンじゃねェのか。

……遅いご到着だな。義賊気取りの悪党どもめ。


仲悪いとは聞いてたけど、ここまでなの!?コラー!やめなさーーーい!!

ちょっとリルフェネ!アンタたちも止めるの手伝って――


……いくよ、フェネッカ。

ばっちこいです!特訓の成果、今日こそ見せちゃいますよー!

なんでじゃーー!!

どうしよう……!?

もー、なんだってこんなに仲悪いのよ!!


――無駄さぁ。あの日から続くヤツらの因縁は、終わりゃしねえのさぁ……

誰よ!!でもキョーミあるから詳しく!

今そいつを語るにゃあ、時間も酔いも足りねえなぁ……

おれぁただ、ヤツらのケンカをツマミに飲んだくれるだけのダメなおっちゃんよ……

わかったもういいわありがと!

アイリス、主人公!戦いを止めるわよ!

(キャトラの切り替え……!)

やれやれ~ぃ!みんなそろって元気元気ィ~!



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story12 きしむ牙、震える角



……あ、定時。

はふぅ……今日は結構、張り合えましたよ……!

さっきまで戦ってたくせに、なに平然としてんのよー!!

ケガはありませんか……!?

……ん、へいき。フェネッカには、まだまだ負けない。

いつか追い抜いちゃいますよ♪

あ、このあと、今日も一緒にお茶を――


――おい新入り。アジトに戻ったら話がある。


――リルテット。この後、少し付き合ってくれ大事な話がある。

じゃあやめとく。

じゃあってなんだ!?


ギャングも自警団も、帰っちゃったわ。まったくもう……

やれやれ、今日は一段と激しかったな……

ねえねえおじーちゃん?自讐団とギャングのひとたちって、ずーっとこんなに仲悪いの?

ん?ああ……昔から仲はよくないし、事あるごとにいがみ合ってはいたんだがな。

けれど、やつらはずっと島の平穏を守ってくれとった。表と裏からな。

なら、少なくとも憎み合う関係じゃなかったってことよね……?

それなら、どうして……

発端は……もう三年前かな。

当時の自警団のリーダーが、当時のギャングのボスに和解を呼びかけたんたよ。もういい加滅にしよう、とな。

仲直りして、これからは力を合わせようってことよね?

ああ。そんでまずは親分同士、杯でも交わそうぜっつって、サシで会ったんだが――

――ふたりは死んじまったんだ。お互いを撃ち合ってな……


 ***


<ソルトホーン>は、オレらのボスを騙して、始末しようとしたのさ。

ボスのいなくなった<シガーファング>は、統制を失い、徐々に腐っている――



……リーダーの誠意を、卑劣な<シガーファング>は踏みにじった……

彼を失った<ソルトホーン>は、どんどん仲間が滅って、いつしか烏合の衆になってしまった……


オレは、器じゃなかった。ボスから受け継いだ組織をみすみす腐らせちまった……

だがどうなっても、ヤツらだけは許すつもりはねェ――

は、話し合いましょうよ……なにかの間違いかもしれませんし……!

居合わせたバーのマスターから、言質はとった。

銃声は続けてふたつ。振り向いたときには、ふたりとも倒れていたってな。

――先に撃ったのは、ギャングの方だ。そうに決まっている……

そんなの、わからないでしょ……

わかるさ。死んだリーダーは、強くて、優しくて、正義感にあふれた最高の男だった。

組織の士気低下はオレの責任だ。弱虫のオレに、リーダーなんて向いちゃいなかったんだ……

そんなこと……

――だが、やつらだけは許さん。<シガーファング>の連中だけはな。


テメエは力も度胸もねェ半人前だが――ウチに迎えたことをオレは後悔してねェ。

え……?

腐って淀んだここの空気を、テメエは少しだけ変えてくれた。だからこそ――これァ命令だ。

君には感謝している。何者にも臆さない君の勇気は、オレや団員たちの心を奮い立たせてくれる。

リルテットがきてくれて、本当によかった……オレたちはそう思っている。

…………

だからこそ――君に命じる。



あの女とは、縁を切れ。

あの子と、二度と関わるな。




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