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【黒ウィズ】覇眼戦線2 Story1

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最終更新者:にゃん


目次


Story1 燃え盛る戦場

Story2 凛眼と昏眼の解逅



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story1



……ここはどこにゃ?

 君はかぶりを振る。突然の出来事に、まだ状況を整理できていない。

轟々と音を立て燃え盛る村。

断末魔の叫び声。悲鳴。熱気に当てられたような咆哮。

ここは間違いなく戦場だ。

だが記憶を辿っても、この場所に覚えはない。


……戦いに巻き込まれる前にここから離れるにゃ。

 ……ここには、何故か村人の気配がない。

あるのは兵と兵……いや村人がいたとして、助かることはないだろう。

それほどまでに、ここには血の匂いが漂っていた。

キミ!伏せるにゃ!!

 思いがけない師の言葉に、君は咄嗟に反応して身を屈める。

風を切り伏せるような音とともに、“君が先ほどまでいた”ところに巨剣が奔った。

首を落とさんとする刃の軌道は、ウィズの言葉のおかげで空を切る。


…………。

 ひとりの女性が、君を冷たく見下ろしている。

君は起き上がってカードを取り出し、力を込めていく。

戦うつもりはさらさらなかった。

ここがどこかもわからないから、距離を置いて状況を肥握するつもりだった。

だが君の本能が告げていた。

強いか弱いかもわからない眼前の女性――これは本当に“まずい”敵なのだ、と。

――魔法。

 君の行動、そして魔力を感じ取ったのか、その女性は小さくそう漏らした。

キミ、距離を開けなきゃ分が悪いにゃ。

 ウィズの言葉を聞き、君は頷く。

目眩まし程度にでもなれば、と魔法を相手に向けて放つが――


ふっ、児戯か。

“今は人が魔法を使うのだな”。


 女性は、躱すことなく真っ直ぐに進み、剣の一振りで“魔法を斬り伏せてしまった”。

力を込めた魔法が斬られ霧散したのを見て、君は背筋を凍らせる。


――逃げるにゃ!距離を置いて態勢を立て直さないと、戦えないにゃ!

 一も二もなく首肯する。

戦うことを一切放棄して逃げに徹すれば、この混沌とした戦場だ、無理なく離れられるだろう。

君は覚悟を決めて、敵に背を向けて走りだした。


 ***


 君は背後を確認した。

 追ってきていない……

ウィズとふたりで、ほっと胸を撫で下ろす。

あの時、背後に立たれたことさえ気づかなかった。

……いったいアレは何だったにゃ?

 君はそんな疑問を抱きながら、歩き続けた。

キミ、気づいてるかにゃ?

 何に?と問いかける。

この雰囲気……それと重々しい空気。ここは間違いなく――

zあら。

 声は突然、何の前触れもなく訪れた。


魔法使いとウィズちゃんじゃない。あんたたち、こんなところで何をしているのよ。

リヴェータにゃ。

 君は目を見張った。リヴェータだけではない。

そこには、ジミーもアマカドもゲルデハイラもガンドゥも……みんながいる。

久しいのぅ、魔法使い。何じゃ、また弾除けにでもなってくれるのか?

おお、魔法使い。黒猫。また会えて、ガンドゥは嬉しいぞ。

ふふ、戻ってきたのね、あなた。

…………

 ジミーは君をじっと見据え、やがて小さく頷いた。

どこ行ってたのよ、全く。わざわざ兵を使って探したのよ。いきなり帰ってきて何のつもり?

 リヴェータを前にして、君はごめん、と返す。

謝ってんじゃないわよ。別に責めてるわけじゃないんだから。

リヴェータの心中も察してやってくれんかの。

魔法使いがいなくなってから誰かに捕らえられたか、はぐれてしまったか、悩んでたぐらいじゃからの。

余計なこと言ってんじゃないわよ、ゲルデハイラ!

 懐かしい面々を見て、君は少し気が緩んだ。

ガンドゥたちはな、グラン・ファランクスを追っていたんだ。

グラン・ファランクスは、出兵を終えて城へ戻ろうとしていたのじゃが、漆黒の兵団の強襲を受けたようじゃ。

それがあったせいか、騎士団は進路を変えたみたい。

 漆黒の兵団……聞き覚えのない言葉に、君はつい首を傾げた。

異形異質の兵団をそう呼んでいるのよ。言っていて馬鹿馬鹿しくなるわ。

とにかくそれを見て、横合いから殴りつけようと思ったんだけど、漆黒の兵団に妨害されて戦いになったってわけ。

 グラン・ファランクスと漆黒の兵団の衝突を知ったのは偶然だったが、割り込んでやろろとしたらしい。

理由はさておき漆黒の兵団は、ハーツ・オブ・クイーンも敵と認識していた。

仕方ないからそれと戦ってたら、あんたが走ってきたのよ。

でもちょうどいいわ。魔法使い、あんた戻ってきたなら手伝いなさい。

 そんなつもりでここに来たわけでは、と君は伝えようとしたが……

さあ、行くわよ、ハーツ・オブ・クイーン!敵の首級をあげたら、褒美を上げるわ!

 そんな間もなく、君はゲルデハイララが従える獣に乗せられてしまった。


 ***


 グラン・ファランクス騎士団とは、遠からず当たると考えていたようだ。

それは既に逃れ得ない運命めいたものである、と移動のさなか、ゲルデハイラが語ってくれた。

事実、リヴェータ、ルドヴィカを筆頭に、お互い兵の士気は高く争いを待ちわびている者までいるらしい。

しかし、漆黒の兵団の存在がそれを許さない。

グラン・ファランクスの行く先々に現れ、妨害を続ける異形の集団。

さしものルドヴィカも手を焼いている、とリヴェータが笑いながら笑っていた。


魔法使い、お前がギルベインを倒したことで、俺たちがかの騎士団に敵と認識されたのは間違いない。

まあ、ね。グラン・ファランクスもまた、私たちのことを狙っているのは確かだけど。

漆累の兵団がそうはさせてくれない……。

しかし不思議じゃのう。お前という異質な者がおると、何かが起きる気がしてならん。

ガンドゥたちは戦うだけだ。

そう。それがわかりやすいですね。ふふ。


……大変なところに来ちゃったにゃ。

 君もウィズと同じ思いを抱いていた。


グラン・ファランクスを追うわよ!

 指揮官の言葉に呼応して、兵は大きな声をあげる。

ここまで来て、退くことはできないようだ。





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story2



 アシュタル・ラドは、セリアル、そしてルミアと旅を続けていた。


今日は、やけに暑いな……。

そうさな。もう夏も終わりだというのに。

馬のひとつでも買っておくべきだったか?

そんな金があるのならな。全くお前は、甲斐性がないにも程がある。

そんなもの何の役に立つんだ。

 アシュタルは、理解できないといった顔で、肩を竦める。

どこへ行っても、どこに隠れても、争いが絶えない世界だ。

逃げ道がないのだから当然、甲斐性などというものがあったところで、飯の種になるわけもなかった。

……アシュタル、あれ見て。

 小さな少女――ルミアが口を開く。

騎馬だな。それも比較的でかい部隊だ。

 3人の前方から蹄の音が聞こえてくる。

急速に近づいてくるそれは、まるで何かから逃げているようにも思えた。

こんなところにいたら危ないよ。踏まれちゃう。

ま、そうだな。馬を斬るわけにもいかない。

馬鹿を言ってないで道を譲ってやれ。よほど急いでいると見える。

うん。でもあれ……。

 素直に頷きはしたが、ルミアはまだそこに立ったままだ。

そして、その先陣を奔る者を指差した。

……こいつは、運がいい。

何をやってるんだ、お前たちは。退け。

お前たちふたりは、命を軽んじるきらいがある。いいか?命というのは幾つもあるものでは――

セリアル、静かに。

 騎兵が、徐々に近づいてくる。

やがてそれは眼前にまで迫ってきて――

w止まれ。

 先頭を走っていた女の一声で、停止した。


…………私は夢でも見ているのか。それとも亡霊か?

 騎乗の主は、馬から降りることなく、アシュタルを見下ろしていた。

ルドヴィカ様、止まっている暇はありません。

 ルドヴィカの隣に並ぶ男が、彼女を諌める。

今、我が拠点にはギルベイン以下、騎士団の精鋭が控えてはおりますが……。

先の戦いでの負傷者も多く、帰陣し拠点を知られるのはリスクが大きい。

ここは漆黒の兵団と距離を保ち、時が来たところで討たねばならず――。

 だがルドヴィカはそんな男の言葉を手で制し、再び口を開いた。

貴様、こんなところで何をしている。

久しいな、ルドヴィカ。息災で何よりだ。

 亡霊などという皮肉を受け流し、アシュタルは甘く涼しげに微笑する。

おどけた風情でありながら、決して眼を合わせようとしない。

覇眼を知るものであるからこその行動であった。

お仲間の諌言を無視して、亡霊と話している暇はあるのか?

訊いているのは私だ。貴様、無垢な子どもと亜人を連れ何をしている。

……いいや、何を企んでいる?

無垢だなんて酷い言われようだ。

ガキの遊びで騎士団などと謳うお前らよりは、聡明な子だ。なぁ?ルミア。

……知らない。

 ルミアは表情を崩さず、ルドヴィカ以下、数名の兵を見やった。

これだけの騎兵がいるというのに、恐れることなく堂々としている。

対照的に、驚きにほんの一瞬、表情を歪めたのはルドヴィカだった。

ルミア……ルミアだと?

どうした、ルドヴィカ。お前、仮面が剥がれかかっているぞ。

……ミツィオラの娘か。

 ルドヴィカは、あの日の暑い夜を思い出したのかもしれない。

ほんの数瞬、ルミアに向いた意識を、無理やりアシュタルヘ戻した。

ああ……覚えていたか、ルドヴィカ。

そうだ。あの日、カンナブルで死んだミツィオラ・スアの娘だ。

…………。

 ルドヴィカが瞠目し、そして静かに呟く。

……そうか。ミツィオラは死んだのか。

だとするなら、ますますここでお前を見逃すわけにはいかなくなったな、アシュタル。

返答如何によっては、殺さねばならん。

ははは、底が知れるぞ、ルドヴィカ。イレの当主のように俺を殺すだと?

アシュタル。無駄な争いを起こそうとするな。

言え。貴様は――スアの娘と亜人を連れて、何を企み、何をしようとしている?

 ついさっきのように肩を竦めたアシュタルは、グラン・ファランクスの騎兵でさえも身震いするような冷たい顔で言った。

俺は、ゲーを……。

イリシオス・ゲーを殺しに来た。





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